ルーアンという人間の最期
〝交渉成立だ〟
その言葉をきっかけにルーアンは我に返る。
しかしそこは変わらない牢獄の中だった。
「そうだ……俺は捕まったんだっけ」
何故か組織はルーアンを取り押さえ『裏切者』というレッテルの下、投獄した。
ルーアンには身に覚えがないが、無実の罪で処刑された仲間をたくさん見てきたので「ああ、今度は自分の番か」程度だった。
ある意味、この場から解放される嬉しさの方が勝っていたかもしれない。
ルーアンはゲリラ兵として生まれた時から『教育』を受けていた戦闘員だった。
今年二十歳になるが、今までやってきたことを『悪い事』だと思ったことは一度もない。
ありとあらゆる命令……何でも命じられるまま応じてきたが、それが当たり前の『日常』だったからである。
命じられれば赤子から年寄りまで、誰でも手にかけた。
自分と生活を共にしてきた友までも命じられれば殺してきた。
もう何も感情が湧いてこなかったのは、それが『普通』だと思っていたからである。
「今日……確か処刑だったな」
ルーアンは自分の死についてドライだった。
死ねと言われたら躊躇いなく自分の頭を打ち抜ける。
ルーアンにとって『自分の死』もまた日常だった。だから処刑の朝でも特に取り乱すことなくこうして座りぼーっとしていた。
何気にさっきの言葉を思い出す。