14話 冒険者登録とギルドマスター
周りで野次馬をしていた冒険者達が僕達が冒険者登録に来た事を聞いて驚き騒いでいた。
軽装の冒険者「な、なぁ、君達、本当に冒険者になりに来たのか?それになんか有名そうだし、その、使役獣が聖獣だって聞こえたんだが・・・・・」
「え?、そうだけど?確かにこの子達は神様から授かった聖獣達だよ、でも僕達は家族だから使役はしてないよ?それに僕達が冒険者になっちゃダメなのかな?」
「「「「「「「えぇーーー!本当だった!!」」」」」」」
今日1番のギルド内に驚愕の声が響き渡った瞬間だった。
軽装の冒険者「い、いや、なっちゃ駄目なんて事はないが、何でなりたいんだ…ですか?」
「え?なりたいから なるんだよ、他に貴族の子供で冒険者になってる人なんていくらでもいるでしょ?」
(珍しくないはずでしょ?)
天華『珍しくは無いですが、多分アトリーの年齢で冒険者になる人は珍しいと思いますよ?普通は学園を卒業してからなるものですから』
(あれー?本登録できるのは10歳からなのに?)
天華『それは平民の子供がなりたい職業の見習いになる年齢が10歳からだからです、7歳でできる仮登録は冒険者の指導者で保証人がいないと仮登録できませんけどね』
(あー、だから7歳の時に冒険者ギルドに行かせてくれなかったんだ)
天華『そう言う事です、連れて行って登録できなかったらアトリーがガッカリすると思ったんでしょうね』
(うん、理解した!父様達が優しいって事だね!)
天華『そうですね』
父様達の事を天華と会話していると。
?「これは、何の騒ぎですか?」
軽装の冒険者「ギ、ギルマス!」
ギルド内の1番奥にある階段から1人の金髪の女性が降りてきていた、どうやら騒ぎに気づいた職員がギルドマスターに知らせたようだ。
(へぇ~、この人がギルドマスターかぁ美人さんだ、そしてダークエルフさんか)
降りてきた女性は褐色の肌にエルフ特有の長く尖った耳そして透き通ったブルールチルクォーツのような青い瞳をしていた、瞳の中に濃ゆい青の線が無数に入っている特徴的な瞳をしている、ボンキュボンのけしからん体をうまく大切なところを隠した布生地が少ない服にローブを着た女性だ。
(あのギリギリの服装、特にスカートのスリットから見えそうで見えない太ももチラリズムを分かって着ているな、胸もこぼれんばかりの大きさ、実にけしからん!さすがダークエロフ・・・)
天華『こらっ!アトリー、思考がおっさん化してますよ』
ジュール『ブフフフッ、おっさーん』
(おっと、僕の心の内のおっさんが解き放たれてしまった!)
こんな くだらないやり取りをしている間に周りで一連の騒動を見ていたギルド職員や冒険者達がギルマスに事の始まりから終わりまでを話していた。
ギルマス「そうですか、分かりました」
事情を聞き終わったギルマスが当事者の僕達に近づいてきて僕を見た後、数秒フリーズした。
(おぅ、やっぱりダークエルフでもフリーズするんだね、しかも今回は目がバッチリ合ってしまっているんだが・・・き、気まずい)
ギルマス「・・・・・はっ!す、すみません、不躾に凝視してしまいました、初めまして、私はここ王都の冒険者ギルドのギルドマスターをしています、“ディーネー・ノービレ・シャリテ“と申します、畏れ多くも国王陛下より“一代栄誉子爵“を賜っていますがほぼ平民と変わりませんので気になさらないで下さい」
僕が困った顔をしているのに気づいたシャリテギルマスがすぐに自己紹介してくれた。
「丁寧な挨拶有り難う御座います、僕はデューキス公爵家当主が三男、アメトリン・ノブル・デューキスと申します、以後お見知りおき下さい」
「「「「「っ!公爵家⁉︎」」」」」
と、貴族の挨拶を返すと周りから驚きの声が上がったが気にせずソルやイネオス達の自己紹介をして、今回の僕達の引率 兼 保護者役のオーリーとカインが挨拶し、今回の目的を告げた。
ギルマス「そうでしたか、冒険者登録を…、そうですね、ここでは落ち着きませんので良ければ応接室に移動しましょう、ご案内致しますわ」
オーリー「お気遣い痛み入ります」
ギルマス「いいえ、お気になさらないで下さい、あ、そこの倒れている彼は医務室に、それと当事者の貴方達2人も着いてきなさい」
「「は、はい」」
ギルマス「この件はギルドが持ちますので、他の人達はいつも通りになさって下さい!以上!」
周りの冒険者に向けてキビキビと指示を出したギルマスはにこやかな笑顔で僕達に向き直り応接室に自ら案内してくれた、各自 応接室内のソファーに座りギルド職員の1人が持ってきたお茶を一口いただき一息ついてからギルマスが口を開いた。
ギルマス「この度は当方の冒険者達がご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでした」
席を立ち深く頭を下げ謝罪をしてきた、その横でついてきていた女性冒険者と軽装の冒険者2人も慌てて立ち上がりお茶を持ってきた女性のギルド職員も深く頭を下げた。
「皆さん頭を上げて下さい、今回の件に関しては既に僕から罰を与えている様なものなので此方からはこれ以上の処罰は求めません」
ギルマス「寛大なご処置、有り難うございます、ではギルドとしての処罰はランクを一つ下げ、強制的な奉仕活動を1週間させる処罰とします」
ギルマスからの処罰を聞いた女性冒険者がほっとした表情をした、まぁそれもそうだろう貴族の子供にちょっかいをかけた罰は最悪 除名処分になってもおかしくないだろう、ランクの引き下げと奉仕活動1週間で済んで安心したのだろう。
ギルマス「それで、ご子息のくだした罰が禁酒が二、三週間だとかその間お酒が飲めなくなると聞きましたがその罰はやはり・・・」
視線は僕達が座るソファーの横で寛いでいるジュールに向いている、噂通り神々がしているのか、はたまたジュールがしているのか、真実が知りたいのだろう。
「あぁ、それは“神罰“なので“絶対“逃れられません、彼は今日から酒を口にした瞬間から全て水になってしまう“神罰“を受けたので、むしろ“神罰“のおかげで健康になるかもしれませんね」
ギルマス「やはり…、そうなんですね、その、神罰はご子息の要望で決まるのですか?」
「いいえ、僕が願っても神々がその罰が軽いと思えば重い罰が降りますし、逆に重すぎると思えば軽くされる事もある、要は「神々のお心次第です」と、天華達が言ってました」
ギルマス「そ、そうなんですね…、今回はご子息の要望が通った、と言う事でしょうか?」
「うーん、今回の内容は「お酒が飲めなくなると良いな」とは言ったのでその通りにはなったのですが期間が「この国を出るまで」と言ったのですが実際に降りた神罰は二、三週間と曖昧なものになって少し長引いている気がしますね、多分軽いと思われたのでしょう」
ギルマス「そうでしたか、…確かにこの国を出ようとすれば近くの国境なら急げば1週間ほどで着いてしまえますからね、二、三週間と曖昧にすることでより深く反省するでしょう、さすが神の采配ですね・・・、これで疑問も解決しました質問にお答えいただき有り難う御座います」
「お気になさらないで下さい、それ程 秘密にしている訳でもないので」
ギルマス「お気遣い痛み入ります…、それでは本日のご用件に関してはサブギルドマスターの彼女、グノーメ・シエリーに案内させますので分からない事がありましたら何でも聞いて下さい」
疑問が解消され納得がいったのか新たにサブマスを紹介された
サブマス「先程シャリテギルドマスターからご紹介頂きました、ギルド長の補佐をしておりますサブマスターのグノーメ・シエリーと申します、冒険者ギルドの事に関してご質問があれば何でもお聞き下さい」
ギルマスの後ろで立っていた女性がお手本のようなピシッとしたお辞儀をした、彼女は部屋に案内してもらった時にお茶を持ってきてくれた茶髪で茶色い目のキリッとした美人のギルド職員さんがこの冒険者ギルドのサブマスだったらしい。
(あのお姉さん、サブマスさんだったんだね)
「お気遣い頂き感謝いたします、それでは・・・」
「あ、そう言えばそこのお二人の名前をお伺いするのを忘れていました、良ければお名前を教えて頂いても宜しいでしょうか?」
立ち上がり応接室を出ようとして聞き忘れていた事を聞いた。
女性冒険者「え、あ、はい、私はノルテ魔王国のAランクパーティー“小さき戦武“の“スペルビア“と言います、種族はラミア族です、それとご迷惑をお掛けした彼はジャイアント族の“ガリーザ“と言います、今日は本当にご迷惑おかけしました!」
ガバッと立ってガバッと頭を下げた“スペルビア“さん。
(気になってた事がやっと聞けた!ラミア族だったんだねこのお姉さんいや“スペルビアさん“、ラミア族かぁ~確か蛇に近い特徴があったよね、だから種族的には高身長なのかな?)
「はい、謝罪は受け取ります、スペルビアさん、ジャイアント族のガリーザさん?に飲酒はほどほどにとお伝えください」
スペルビアさん「はい!目が覚めたら“きつーく“言い聞かせます!」
「あははっ、それは良いですね!お願いします♪」
スペルビアさん「はい!頑張ります!」
「ふふっ、頑張って下さい」
スペルビアさんにエールを送り、視線を最初に話しかけてきた軽装の冒険者に移した、視線に気づいた彼は背筋を伸ばした。
軽装の冒険者「俺はギルドの依頼で周辺警戒をしていたソロのBランクでエレオス・シエリーと言います、公爵家のご子息と知らなかったとは言え大変ご無礼を働いてしまい、申し訳ありませんでした!」
サブマス「愚弟の無礼、私からもお詫び申し上げます」
どうやらこの2人は兄弟らしい2人並んで立って頭を下げてきた。
「いえいえ、気にしてませんよ、エレオスさんは僕達を心配して声をかけてくれたのでしょう?しかし、周辺警戒とは?最近は治安が良くないと仰ってましたよね?」
エレオスさん「あ、はい、最近“護衛依頼“で“色んな国“の冒険者が多く この国に来ており多種多様の人種が王都に滞在している状態なのです、他国の冒険者はこの国の冒険者の流儀を知らないので無駄な争いを防ぐために俺が周辺警戒の指名依頼を頼まれたんです、それに少し前から隣国の“ズューウス王国“と海を挟んで向かい側のノルテ魔王国“との間で小さな争いが多く頻発しているそうなのでそれに嫌気が差したズューウス王国の冒険者が流れてきているそうなんです」
それを聞いたスペルビアさんの表情が少し陰った。
「そうなんですね、“色んな国“の冒険者が…それは大変ですね、・・・ん?あぁ!分かった、そう言う事ですか」
ベイサン「アトリー様、何が分かったんですか?」
それまで静かにしてしていたベイサンが不思議そうに聞いてきた
「うーん、なんとなくだけどエレオスさんの言った“色んな国“とは“近隣諸国“だけの事はなく“遠方の国々“も入っているんだよ、多分 その“色んな国“の冒険者達の“護衛対象“が僕達の学年に入ってきた留学生達なんだと思う、で、まだ各国の冒険者達が王都にいるのは留学生と一緒に来ていた国の代表で外交目的の官僚がまだこの国でやることが残っているから冒険者達も帰らないんじゃなくて帰れないんだと思う、帰りもその冒険者達が護衛して帰る依頼だからじゃないかな、多分だけどね」
ベイサン「あぁ、確かに入学式の時に各国の代表の方が挨拶なさってましたね、そうか、あの方々はまだお帰りになって無かったんですね」
ソル「まぁ、この国までわざわざ来て入学式に参加するだけでは国として余りにも旨味がなさ過ぎるので外交で自国に有益な条件の貿易取引を結ぼうとしているんでしょう」
イネオス「むしろ、各国の代表と称した外交官でしょう、この国の入国審査と貿易の商品の検査は他国より かなり厳しいことで有名でしょうから、そこら辺の緩和を求める貿易交渉を行なっているんでしょうね」
「まぁ、その交渉もサフィアス叔父様、国王陛下が首を縦に振るかはまた別の問題だよね、それはさておき僕はもう一つの理由の“ズューウス王国とノルテ魔王国との小競り合い“の方が気になるな」
へティ「あら、そうなんですの?現在の各国の冒険者の揉め事より そちらの方は小競り合いで済んでいる様ですし、我が国は関係ないのでは?」
「それは違うよへティ、隣国で起こる事は必ずしもこちらは無関係とは言い切れないんだよ、もし このまま小競り合いが続き戦争にでもなったら移民が多くこの国に流れてくる、それを養うための食糧問題や働き口が無い人が溢れかえる事での治安の悪化など必然的に色々問題が増えるからね」
へティ「・・・そう考えると他人事ではありませんわね、現状実際に隣国からの冒険者の数はどこまで増えているんでしょうね、それによっては入国制限がなされるんでしょうか?」
「さぁ?分からないけど、入国制限して国内情勢を安定させるか、受け入れて適切な労働力にするか、そこは国の政策次第じゃないかな?まぁ、後者は凄く大変だろうけどね、それに今はそこまでする段階でもないだろうから そんな話はまだ先だと思いたいね」
へティ「そうですわね、今 私達が考えても意味はないですしね」
「でも、先の事を自分なりに考えることはいい事だよ、考えずにいつの間にか自分の周りが取り返しの付かない事になってたりするよりは何倍もマシだよ」
オーリー「アトリー様、そろそろ本題の冒険者登録をなさった方がよろしいのでは?」
「あ、そうだった、有り難うオーリー、・・・エレオスさん、治安の悪化の理由を教えて頂き有り難う御座いました、多分 他国の冒険者達の滞在は国との交渉次第になるでしょうからそれまで周辺警戒 頑張って下さいね」
(まぁ、あと数週間はかかるだろうな、それまでの辛抱だ、頑張れ!エレオスさん!)
脱線しまくった話を本題に引き戻してくれたオーリーに感謝してエレオスさんにエールを送った。
エレオスさん「あ、あぁ、有り難う、頑張る、ます・・・本当に子供か?」ボソッ
「じゃあ、僕達はこれで失礼しますね、では、シャリテ ギルマス、シエリー サブマスをお借りいたします」
最後の方はよく聞こえなかったが気にせず本来の目的のためギルマスに挨拶をして皆んなと一緒に頭を下げた。
ギルマス「え、えぇ、・・・皆さんのこれからの冒険者としてのご活躍楽しみにしていますわ、グノーメ、あとは宜しくね」
サブマス「は、はい、では登録は一階の受付で行いますので移動お願いします」
「はい、有り難う御座います、じゃあ皆んな行こうか、ジュール、夜月、行くよ」
僕達が話している間はソファーの横でのんびり寛いでいた2人に声をかけるとゆっくり起き上がり僕の横に来て体を擦り付けてくる、可愛いので撫で回しといた。
*ここ最近、天華が僕の膝の上にいるので無意識に撫でていたら2人がそれを見て、自分も撫でて欲しいと言うので、2人が撫でて欲しい時は体を僕に擦り付けるのを合図に僕が2人を撫でてると言う事が日常になっているので条件反射的に撫で回す。
僕達が応接室を出ていると後ろで何やらカインがギルマスに話しているがよく聞こえなかった。
「ん?カイン?どうしたの?」
カイン「いえ、何でもありません、ギルマスへの伝言を旦那様から頂いていたのでお伝えしただけです」
(父様の伝言ねぇ~、僕のことかな?)
「ふーん?伝言?」
ジーッ
首を傾げて考えてみたが何の伝言か検討もつかなかったのでカインをジッと見つめて見ると。
カイン「旦那様のお仕事の要件ですよ」
「お仕事、それじゃ仕方ないね」
(聞く必要はないって事かな?)
誤魔化された感はあるが聞いても答えてくれなさそうなので聞くのを諦めた、その後はサブマスに促され一階の中央受付まで来た。
サブマス「では、コチラで冒険者登録をいたします」
(おぉ~!ついに来た~!念願の冒険者登録!どうやってするのかな?ワクワク(((o(*゜▽゜*)o))))
先程までの疑問を吹っ飛ばし目前に迫った念願の冒険者登録の事で頭がいっぱいになる僕だった。
*ちょろいアトリーだった。