5話 カイ兄様の婚約者
学園から帰ってきた僕達、馬車から降りて屋敷に入るとすぐにメイド達に父様や母様達のいる大広間に案内された。
父様「おかえり皆んな、そして、学園入学おめでとう!」
「「「「「「「「「「おめでとう‼︎」」」」」」」」」」
ワ~ッ パチパチパチッ
「「「「「有り難う御座います」」」」」
大広間にはもうすでにイネオス達のご両親やご家族が来ていて入学祝いの準備万端で迎えてくれた。
かなりの人数の人が来ているようだ参加しているのは家の家族含めソルやイネオス達の家族に加えカイ兄様の婚約者の家族、合計6家族ぐらいのはず、なのに予想より人数が多い気がする、よく見るとチラホラ招待されてないであろうと思われる人物が数人いる。
(シベラス叔父様が来てくれたのは嬉しいけど、良いのかなアレ、威厳も何も無い感じになっているけど・・・)
他の招待客の人も見て見ないフリをするぐらい あかん感じの光景が大広間の一角に広がっていた。
シベラス叔父様「アトリー、大きくなったね、学園入学おめでとう」
「シベラス叔父様お祝いに来て頂き有り難う御座います♪で・・・あそこは何故あんな事になっているんですか?」
近づいてきたシベラス叔父様とにこやかに挨拶を交わした後、あかん感じの大広間の一角を見て その原因であろう人に説明を求めた。
シベラス叔父様「あぁ、アレはね招待もされていないパーティーに無理やり付いて来た人に条件付きで参加させる為の試練の場所なんだ」
「あ~、そうなんですね、その~、条件とは・・・」
シベラス叔父様「まぁ見ての通り、私が作り出した氷の檻を抜け出せたら参加できる事になってるよ」
「そ、そのようですね・・・」
大広間の一角で薔薇をモチーフにした綺麗な鳥籠のような檻の中で今日の入学式でも見かけたこの国の国王陛下のサフィアス叔父様と先代国王のロブル大叔父様の2人が火魔法で氷の檻をせっせと溶かそうとしている所だった、王族のそれも現国王と元国王の2人を氷の檻で拘束している現状は流石にあかんと思う僕だが、シベラス叔父様の魔力が強いのか溶かした氷の檻が溶かした側からすぐにまた凍って元に戻っているのでいまだに脱出の目処は立ってないようだ。
「うーん、先は長そうですね、しかし何故、お二人は火魔法で溶かそうとしているのでしょうか?風魔法か剣などで氷の檻を一気に折ればすぐ抜け出せるんじゃ・・・」
叔父様達は氷の檻の柵の棒を一本づつ頑張って溶かしているから、次の棒を溶かしている間に先に溶かした棒が修復されていた、おかげで全然脱出できていなかったみたい。
シベラス叔父様「おやおや、アトリーは賢いですね、すぐにバレてしまいましたか」
「「‼︎」」
ガシャーンッ!
僕の発言でその方法に気がついたのか檻の中の2人は自分の得意な方法、サフィアス叔父様は風魔法でロブル大叔父様は剣で氷の檻を壊し脱出してシベラス叔父様に詰め寄ってきた。
サフィアス叔父様「シベラス!、騙したな!いつもの条件では抜け出せない様な檻をわざと作ったな!」
シベラス叔父様「おや?何の事でしょう、私はいつもの様に“溶かして“抜け出して下さいになんて一言も言ってませんよ?」
サフィアス叔父様「くっ!た、確かに言ってない・・・、いつもと同じだとたかを括って挑んだ私がいけないが・・・あぁ~っ!嵌められたっ!」
悔しそうに頭を抱えるサフィアス叔父様その横でムスッとした顔でシベラス叔父様を見るロブル大叔父様。
(うん・・・、いつも何やってんだろうね?この人達?)
僕の心の声は招待客の全員が思った事だろう、暫くすると落ち着きを取り戻したサフィアス叔父様達から入学のお祝いの言葉とプレゼントをもらい、その他の招待客のに挨拶をして回った、イネオス達の家族に挨拶を済ませるとカイ兄様が1人の女性を連れて現れた。
カイ兄様「やあ、アトリー少し良いかな?」
「あ、はい、大丈夫です、カイ兄様」
カイ兄様「うん じゃあ まず彼女を紹介するね、彼女は私と婚約したコミス伯爵家の令嬢“シンパティア・ノービレ・コミス嬢“だ、パティ、この子が僕の下の弟のアメトリンだ、仲良くしてくれ」
コミス伯爵令嬢「初めてお目に掛かります、アメトリン様、聖獣様方、私はシンパティア・ノービレ・コミスと申します、この度カイヤト・ノブル・デューキス様の婚約者に選んで頂きました、デューキス公爵家様の恥にならない様に努めてまいりますので以後お見知り置きください」
めちゃくちゃ緊張してお堅い挨拶をしてきた女性は少し明るい色の金髪ストレートに綺麗に透き通った“グリーンメノウ“みたいな新緑色の瞳をした穏やかそうな雰囲気の清楚系美少女だ。
(うーん、雰囲気が母様に似てる、やはり 気にいる女性の好みは似るのか…親子だねぇ)
「ご紹介頂き有り難う御座います、僕はアメトリン・ノブル・デューキスです、僕のことは気軽にアトリーとお呼び下さい未来の義姉様♪、それとこちらにいるのが聖獣のジュールに天華、最後に夜月です、いつも僕といますがたまに屋敷内を散歩している時もありますのでその時は気軽に挨拶してあげて下さい」
これから家族となるのだから堅苦しくしてほしく無いので軽い挨拶をして見た。
カイ兄様「ふふっ、ほらパティ、言っただろう?アトリーは堅苦しいのは好まないって」
コミス伯爵令嬢「ですが、カイ先輩、聖獣様方にも失礼があってはならないでは無いですか」
(おぉ、カイ兄様の事を“先輩“呼びしてたんだね、仲良さそうで良いねぇ~)
「ふふっ、皆んなは自分や僕に害意がある人には厳しいですがそれ以外の人には普通に接してもらう方が好きみたいですから、そんなに畏まらなくて良いですよ」
コミス伯爵令嬢「ほっ、お気遣い有り難う御座います」
「イエイエ、それこそお気になさらないで下さい、僕達は家族になるんですから」
リラックスさせようとニコリと微笑んだ。
コミス伯爵令嬢「!、・・・ほぅ、カイ先輩もお美しいですがアトリー様はまた違った美しさがありますわね、こんな可愛い方の義姉になれるなんて私は幸せ者ですわ♪、アトリー様、聖獣様方、これから頻繁にこちらにお邪魔させて頂く事があると思いますので今後とも宜しくお願いします、それと私の事は“パティ“とお呼び下さい」
「はい、パティ義姉様♪これからカイ兄様を宜しくお願いしますね、ふふっ」
パティ義姉様「はい、宜しくされましたわ、ふふっ」
カイ兄様「おやおや、もう仲良くなったんだね少し焼けちゃうよ?」
すぐに気があった僕達は笑い合い今後も良好な関係が築けそうで安心しているとカイ兄様が少し拗ねていた、(カイ兄様の拗ね顔可愛い!)
僕はその後すぐにソル達を紹介した、パティ義姉様からもご家族も紹介して貰った。
パティ義姉様のご両親はとても仲が良さそうで常にニコニコなさっていて娘を宜しくっと言われた、次に紹介されたパティ義姉様のお兄さんの“タアーワンお兄様“はカイ兄様の同級生の友人だったようでカイ兄様とは気軽な感じで話していて僕の事はいつもカイ兄様から聴かされていたと言って、「やっと本物に会えたよ、聞いていた以上に可愛くて素晴らしい弟君だね」と、ちょっと意味がわからなかったが友好的なのですぐに仲良くなった。(どんな話してたんだよ!カイ兄様!)
最後に紹介されたのはパティ義姉様の今年7歳になる弟さんの“エモシオン君“を紹介されたのだがあまりにもご家族が僕の事を可愛い可愛いと連呼するので少し拗ねてしまっていた。
弟くん「パティ姉様は僕の姉様なんだからなっ!だからパティ姉様の1番の弟は僕なんだ!お前じゃ無いんだからなっ!」
(⁉︎・・・・っ、カワイイ!何あれ可愛いんだけど⁉︎どうしようツンツンしてるのがたまらん可愛い‼︎撫で回したい!)
パティ義姉様「こ、こらっ!シオン!そんな事言っては駄目でしょう!」
「ふふっ、気にして無いですよ、それにエモシオン君の言いたい事は何となく分かりますから怒らないであげて下さい、
エモシオン君、僕は君の姉様をとったりしないよ、僕にも素晴らしい姉様が2人いるからね、だから安心して?ね?」
少し屈んで覗き込むように笑いかけ説得したら、顔を真っ赤にして固まってしまった一白置いて我に帰ったエモシオン君は慌てて母親のコミス夫人の後ろに隠れてしまった。
(ふふっ、照れてる可愛いなぁ)
夜月『アトリー、あまり揶揄ってやるな』
天華『最近、アトリーは自分の容姿を有効活用してますね』
(ふっふっ、使えるものは何でも使うよ、まぁ たまに忘れちゃう事もあるけどね~)
隠れたまま出てこなくなってしまったエモシオン君をニコニコ笑って見ていたら父様達がやって来た。
父様「ふふっ、仲良くなったみたいだねアトリー・・・、コミス伯、夫人、ご子息達も今日はわざわざ来て貰って感謝するよ、おかげで慶次事が華やかに祝えて嬉しい限りだよ」
コミス伯「いえいえ、こちらこそご招待頂き光栄です」
父様「正式な婚約発表はまた今度する事になるけど、今日は陛下達もお越しだから婚約許可もこの場で頂けたし、婚約発表は憂いなく盛大に行えるよ」
コミス伯「!、婚約許可が頂けたのですね、良かったです、陛下方に感謝申し上げなければ、一時はどうなるかと思いましたが本当に良かったです」
コミス伯爵一家が安堵の表情で頷いた。
(ん?どこからか横槍でも入ってたのかな?カイ兄様イケメンで次期公爵家当主の優良物件だからなぁ、国内国外問わず引っ張りだこだったもんね、仕方ないか…、あ、婚約と言えば今日の王女サマの事聞いた方がいいかな?)
「父様、お話中申し訳ない無いのですが、今お話に出た婚約許可の事でお聞きしたかった事がありまして、コミス伯、少し父をお借りして宜しいでしょうか?」
父様「うん?なんだい?」
コミス伯「えぇ、私は構いませんよ」
父様は日頃大人の会話に口を挟まない僕からの質問に疑問に思いながらも要件を聞いてくれる体制に入った、コミス伯も嫌な顔をせず快く父様との会話を僕に譲ってくれた。
「コミス伯、有り難う御座います…、それで父様 婚約許可の事なんですが、僕達 王家の血筋は国の許可が無いと婚約できないのは知っているのですがその婚約の話は本人の知らぬ所で許可がおりる様な事はありましたか?」
父様「?・・・、いや、王家の血筋の婚約は本人の意思が尊重されるから本人が知らない なんて事はない・・・、知っているだろう?どうしてそんんな事を聞くんだい?アトリー?」
「やはり、以前聞いた事と変わりませんよね?今日の帰り際にアナトリ王国の第8王女殿下に声を掛けられまして、そこで何故か僕が王女サマの婚約者だと言われたので、僕はその場で何かお間違いでは無いですか?と否定してきたのですが…、あの対応で良かったのか少し不安だったので一応確認までにお聞きしたかっただけですので気にしないで下さい」
しっかり確認をとった後で今日の出来事を軽く話した。
父様「それは・・・、大変だったね、他に何か言われたかな?」
「他には入学式後の学園案内前に王女サマがご自分の供をする様に命令したりして来ましたね」
父様「学園内で…そうか…、ふむ、あちらから何か仕掛けて来るとは予想はしていたけど、その様な手で来るとは予想外だったよ」
父様はヘリー姉様の発言通りアナトリ王国からちょっかいを仕掛けて来ることは知っていた、だが婚約者と偽って王女サマを投入して来るとは思っていなかったようだ。
「僕も突然の事で驚きましたが王女サマと世話役の方達の反応を見ているとどうやら本当に僕と婚約していると思い込んでいた様ですので、でもこの件に関してはアナトリ王国の総意と言うわけでは無さそうです」
一応相手の反応から予測できたことも報告しておく。
父様「うーん、それならこちらに仕掛けて来たのでは無くアナトリ王国内のお家騒動の可能性が高いね」
「えぇ、僕そう思いましたのでキッパリ知らないと告げておきました、それと疑うのなら直接確認を取って頂いても構わないとも言っておきましたので今日中に確認が来るかと思います、あと王家の方にも確認が来るかもしれませんが対応の方お願い致します」
父様「分かったよ、他に気になる事があったらいつでも聞いて良いからね」
母様「大変だったわね、アトリー」
母様が労わるように僕の頭を撫でてくれた。
この会話が気になったのか近くまで来ていたサフィアス叔父様にも対応のお願いをしておいた。
サフィアス叔父様「あぁ、任せなさい、こちらからも一応 探りを入れてみよう」
「宜しくお願いします、・・・・あ!、後と父様にお願いがあったんでした!」
父様「うん?なんだい?お願い?」
「はい!明日の学園帰りに冒険者ギルドに行ってきて良いですか?」
父様「あぁ、そう言えば入学できたら連れて行ってあげると約束してたね・・・そんなに行きたかったのかい?」
「はい!冒険者ギルドに登録したくて!「「「「「⁉︎」」」」」それにギルド内がどんなふうになってるのかも気になってたんです!」