50話 領地に帰宅中2 空気を読めないお馬鹿もテンプレです?
襲い掛かって来たガラの悪い冒険者が怪我をして のたうち回っている姿を見ながら、
(あーあ痛そう、まぁ自分達の攻撃が勢いが良かっただけに、壁にぶつかった時のダメージも半端なかったんだね、自業自得だからこれっぽっちも同情はしないけど・・・)
と呑気に思っていると、街の中心部に繋がる道から、品の良いスタイリッシュな銀色に輝く揃いの甲冑を纏った騎士達が、総勢30人ほどが近寄って来た、その騎士達は豚親子を含め、そこら辺に転がっているガラの悪い冒険者達を取り囲んだ。(勿論その中心にいる僕達も含めてだけど)
ザッ! チャキッ!
騎士達が剣に手を掛け臨戦状態をとった。
父豚「な、何だ!お前達!私達に対してこんな事をするとは無礼だぞ!」
と喚き、近くにいたガラの悪い冒険者達のリーダーは騎士達を見て狼狽えていた。
(わー、この父豚 家の紋章を知らないのかな?それとも気づいてないだけ?)
そう、今、僕達を取り囲んだのは、デューキス公爵家の紋章が入った甲冑を纏っている騎士団、つまり我が家の護衛騎士団が到着したと言うことだ、騎士団の先頭にいた人が進み出て来て僕の前で止まった。
「皆さんお疲れ様です」
「勿体無いお言葉です アメトリン様、お怪我はございませんでしょうか?」
膝を突きながら右手で拳を作り胸に置き頭を下げて、騎士の礼をし話しかけて来たのはリカルド団長だ。
「はい、僕はどこも怪我はしていません、リカルド団長」
リカルド団長「お待たせしてしまい申し訳ございません、それで、こちらの者どもがアメトリン様に危害を加えようとしたのは、間違い無いでしょうか?」
到着が遅れたのを詫びたリカルド団長は立ち上がり、周りに転がっているガラの悪い冒険者達と、派手な格好した他国の貴族をジロリッと睨みつけた。
「そうですね、間違いないです」
父豚「な、貴様!たかが地方駐留騎士ごときが!先程から帝国貴族の伯爵である私を無視して、無礼だと思わんのか!」
身体全体をプルプル震わせながら喚いている父豚を、リカルド団長はさらに無視し。
リカルド団長「“紅の牙“の皆さんもお怪我はありませんか?」
パルガンさん「あ、あぁ、大丈夫だ、・・です」
ロッサさん「えぇ、怪我はありません」
と他のメンバーも頷いて同意した。
子豚「父上!アイツらまだ僕達を無視してる!おい!そこのお前!早くその子ドラゴンを僕によこせ!」
父豚「そうだ!そこの駐留騎士のお前!その子供ごと子ドラゴンをこちらに連れて参れ!そしたら私が報酬を出してやろう!」
と、子豚まで喚き出した、リカルド団長は片眉を器用にあげ「何言ってんだ?こいつ、本気で言ってんの?」って怪訝そうな顔で豚親子を見た後、僕を見て視線で確認を取って来たので無言で頷いた。
(えぇ、リカルド団長、あなたの言いたい事は凄く分かります!)
頷いた僕を見たリカルド団長は、
リカルド団長「あなた方が何処のどなたか存じませんが、我々はあなた方の言う事を聞く義務はございません、あなた方には我らの主人がお会いになるそうです」
と言い、来た方向を見た、そこには公爵家の馬車が一台来ており、馬車の入り口の両側に騎士が並んでいた、入り口の扉をカイルさんがゆっくり開けて中から父様と母様、リアさんが降りてきた、父様達が降りて来たのを確認したリカルド団長が騎士の礼をすると、同時に他の騎士達も騎士の礼をした。
ザッ!
一糸乱れぬ行動に周りの見物人達も驚いていた。
(あ、父様達も来てくれたんだ!)
僕はてっきり騎士団が来て、豚親子を追い払ってくれるものだと思っていたが、やはり他国の貴族が関係しているからか、父様達が直接来たみたいだ、父様達は急がず優雅に騎士達の間を歩き、騎士達が囲んでいる場所の入口まで来た、騎士達が素早く動き父様達が通れるぐらい間を開けた。
開いた囲みの中にゆっくり入り、周りを見渡し僕達を見つけると柔らかく笑いかけて来た。
父様「アトリー、大丈夫かい?」
「はい、父様、僕達は何ともありません」
父様「そうか、良かった無事のようだね怖かっただろう此方においで」
と言われ、側に行こうとすると、リカルド団長が手を差し出しエスコートしてくれるみたいだ。
*貴族の子供は公の場では男女関係なく、小さい時は護衛の騎士や両親にエスコートされるのが一般的らしい、ソルにも取り囲んでいた騎士の1人が手を差し出していた。
僕が差し出された手を取ると、リカルド団長が子供の僕の歩調に合わせてゆっくり歩き、エスコートしてくれた、その後ろをソルとオーリーに近くにいた騎士に促されて、“紅の牙“のメンバーもついて来ていた、僕の両肩や腕には聖獣3人がいるから、3人を落とさないようにエスコートされるのは少し大変だけど、リカルド団長が気を遣ってゆっくり歩いてくれているから3人を落とさずに済んだ。
その間に転がっていたガラの悪い冒険者達が、取り囲んでいる騎士達を見て「話と違う!」と言いながら雇い主の豚親子に詰め寄っていた。
(へー、護衛の冒険者達の方が公爵家の紋章を知っていた見たいだね)
冒険者達に詰め寄られて、訳が解らないと言う顔でこちらを見ていた豚親子、
どうやら、自分達が絡んでいた子供の親が、自分が思っていた貧乏貴族らしからぬ豪奢な馬車に乗って現れ、この街の関所に駐留している騎士かと思っていた騎士達は、子供の親の騎士団だったとは思いもよらなかったらしい。
確かに、この街は領地を区切っている川に沿って造られており、対岸の他領地との関所の役割もしている、この街の領主コンテ伯爵の騎士団が駐留して居るのは確かだが、そもそも関所を管理している騎士達が、街中のトラブルにわざわざ駆け付けないし、30人も一斉に来たりもしない、なおかつ、コンテ伯爵家の紋章と明らかに違う紋章を付けている騎士を、コンテ伯爵家の駐留騎士と間違うとか色々ありえないし、ツッコミどころが多すぎて呆れ返ってしまった。
そう頭の中で考えていたら、いつの間にか父様達の元に辿り着いていた。
母様「アトリー、ソル君、無事で良かったわ」
ふわっ と、優しく僕とソルを抱擁してくれた。
「すみません、ご心配お掛けしました 母様」
ソル「僕もご迷惑をお掛けしました、奥様」
母様「貴方達が謝らなくて良いのよ」
僕とソルの頭を撫でてくれた。
アトリー&ソル「「はい」」
揃って返事を返した僕達を、優しい目で見てふんわりと微笑んでくれた母様、怪我ないのを確認して僕達の背に周り肩を抱くように手を置いた。
父様「“紅の牙“の方々には子供達を守ってい頂いたそうで感謝します」
と、父様が言うと、“紅の牙“のメンバーは、
パルガンさん「イヤイヤ、自分達は何もしていませんよ、撃退出来たのはご子息達がお持ちだった魔道具のおかげで、俺らは何もしていませんから、“公爵様“」
片手を振りながら謙遜するパルガンさんの後ろで、激しく頷き同意している“紅の牙“メンバー。
そして、パルガンさんの言った言葉に、顔を青ざめさせる豚夫婦と護衛のガラの悪い冒険者達。
ガラの悪い冒険者リーダー「ヒェ、や、やっぱり、ま、間違いなかった…」
父豚「な、な、なんでこんな所に こ、公爵家のご子息が護衛もつけずに冒険者などと一緒にいるんだ…」
子豚「父上?どうしたんですか?早く僕にあの子ドラゴンを寄越すように言ってください!」
と、空気が読めない子豚に。
父豚「こ、こらっ!だ、黙れ!ヒュース!今はそれどころでは無いっ!あの方々はなっ「ほう、貴殿の子はドラゴンの子が欲しいと・・・」っ!」
父様「もしや、此方に居られる竜の聖獣様である、テンカ様を寄越せなどと言ってるのですかな?」
豚夫婦と冒険者達「「「「「せ、聖獣様⁉︎」」」」」
1人意味が解っていない子豚は「せいじゅう?って何」と頭を傾げていた。
(おおぅ、父様 怒ってるね、笑っている様で目が全然笑ってないよ!しかし、あの子豚は頭 大丈夫かいな?聖獣を知らないなんてどう言う教育されてんのさ、多分 僕より年上だろうに…)
天華『そうですね、11歳ぐらいですかね?』
(え⁉︎ま、マジか!今年12歳のライ兄様達と1歳しか違わないなんて!図体はデカいと思っていたけど、あんな おバカ丸出しの発言してるからよくて発育のいい9歳児かと思った!場合によってはライ兄様達と同い年かも知れないよね⁉︎)
天華『確かに、そう思いますよね でもあの発言は本当に気持ち悪いです!』
(おぅ、天華さん かなり激おこだったのね、確かにさっきの「僕がペットにしてやる」発言は無いわーって思ってたけど)
天華『それもですが、あの父豚のアトリー様の顔を見ながら私を連れてきて、子豚の従者になれなんて言った時の顔が気持ち悪くて、生理的に無理でした!』
夜月『それは、私も思った、アトリーを見る目が嫌らしく気持ちの悪いから、あの目をいつ潰してやろうかと・・・今も思っているぞ?』
ジュール『私もアイツら気持ち悪くってキラーイ!何なら氷漬けにしてあげるよ!』
と、殺意高めの返事が返ってきた。
(おっふ、皆んな僕の為に怒ってくれてたんだね…、ふふっ有り難う)
皆んなと念話で会話していると、
子豚「父上“せいじゅう“とはなんですか?珍しい品種なのですか?それなら尚更欲しくなりました!おい!銀髪の子供!早く持ってこいよ!お前は僕の従者になるんだろ!言うことを聞け!じゃ無いと罰で鞭打ち50回だぞ!」
と、子豚は空気読めなさマックスで意味の分からない事を言い放った。
それを聞いた豚夫婦側と公爵家側の表情がかなり違っていた、豚夫婦側は顔が絶望的な表情をしている、反対に公爵家側の騎士達は顔を顰め殺気まで出てる気がする、父様と母様達は笑顔が深まり此方も少し殺気立って魔力も漏れている、頭に怒りマークが出てそうな雰囲気だ。
(あーあ、僕、知ーらない!あれだね、子供の教育って大事だね!)
これは収集が付くのかな?と頭の片隅で思いながら父様の出方を見る。
父様「はははっ、面白いことを言うご子息ですね、そうだ私達はまだ自己紹介していませんでしたね、私はこの王国、ウェルセメンテ王国の公爵家の当主を務めています、アイオラト・ノブル・デューキスと申します、以後お見知り置きを…」
父様は礼儀正しく優雅微笑みに自己紹介をした後、
父様「と、言っても今後2度と会う事は無いでしょうがね」
一段と低い声で言い放った父様の顔が“無“だった、それと同時に、父様の体内に押し留められていた魔力が解放され豚親子側に襲い掛かった。
グンッ!
ヒュッ
誰かが息を思いっきり吸い込んだ音がした、解放された父様の魔力が相手の豚親子を威圧している、これには流石の空気の読めない子豚も歯をガタガタ鳴らしながら震えている、物理的にも重圧が掛かっているようだ。
父豚「も、も、申し訳有りません、こ、公爵様、わ、私どもは貴方様のご子息様とは し、知らなかったのです、お、お許し下さい!」
震える声で許しを乞う 父豚。
父様「知らなかった、ですか…、白昼堂々と貴族家と分かる子供を攫おうとして置いて、それを「知らなかった」では済まされませんよ、それに聖獣様をペットにしようなどと、畏れ多い事を言うとはこれも「知らなかった」ではすまないでしょうね、
大体、聖獣様とは知らなくても我が息子とテンカ様が一緒にいる時点で、それは我が息子の大切な竜だと分からないはずは無いですよね?それを無理矢理奪おうとした時点であなた方は立派な“強盗犯“、犯罪者であるのは間違い無いでしょう?
そんなあなた方を誰が“許す“と言うのです?」
父様の正論がブスブスと豚親子に突き刺さり、どんどん強くなっていく“魔力威圧“のせいも相まって、息も絶え絶えになっている豚親子、子豚に至っては失禁しているようだ。
(うわっ、子豚が失禁してる汚いなぁ これじゃあ 子豚じゃなくて汚物になっちゃうよ、豚は綺麗好きだからアレでは豚に失礼だね、ん?そう言えばあの人達の名前 聞いて無いや、名乗っていた気がするけど…うん、まぁ、あまり興味もないからいいか♪)
父豚「お、お慈悲を、わ、私達は手を出してません!危害を加えようとしたのはコイツらです!」
と、自分が護衛に雇ったガラの悪い冒険者達を指差し、罪を逃れようとしている、それに反応したガラの悪い冒険者達も黙ってはおらず、父豚に食ってかかって行った。
ガラの悪い冒険者リーダー「おい!ふざけんなよ!お前が子供と子ドラゴンを連れて来い!って言ったんじゃねーか!それに何だったか?女も捕まえて奴隷にすればいいとか言ってたよなぁ!」
父豚の襟首を掴んで怒鳴っている。
父豚「わ、私は知らん!お前達が勝手にやったことだろう!離せ!穢らわしい!」
言った言わないと、不毛な言い合いをし出した彼等を父様は呆れた表情で・・・
父様「いい加減にしなさい、あなた方の言い合いには何の意味も無いのですよ、すでに多くの目撃者がいてあなた方の罪は明白なのです…、リカルド団長、彼等を1人残らず捕縛して下さい」
リカルド団長「はっ!承知しました!総員!捕縛開始!馭者や使用人も残らず捕らえよ!」
騎士団員「「「「「はっ!」」」」」
リカルド団長の号令により、こっそり市民に紛れて逃げ出そうとしていた、馭者やメイド達も素早く捕らえて、次々と縄で縛って行く。
(わぁ、早い!さすがリカルド団長!指示も完璧だね!)
夜月『ふむ、中々優秀だな』
天華『的確な指示で市民にも迷惑が掛かっていませんでしたね、騎士達の連携も中々目を見張るものが有ります』
と、2人から、大絶賛されている公爵家の騎士団に、自分が誉められた時と同じくらい嬉しくて顔がにやけてしまう。
リカルド団長「閣下、全員捕縛完了しました、それとこの町の衛兵隊が此方に到着したようです」
父様「ご苦労様、団長、衛兵隊は隊長だけを連れて来てくれるかい?」
リカルド団長「はっ、承知しました、暫くお待ちください」
と、僕達から離れて衛兵達がいる方向に行った。
今僕達は、先程まで“紅の牙“のメンバーとお茶していた飲食店の屋外席を丸々借りて、この店の人気商品と言われて注文したアップルパイを食べながらお茶しつつ、あの捕縛劇を見守って(アップルパイうま~!)と、してると、そこにリカルド団長が捕縛完了の報告に来ていたと言う所だ。
リカルド団長が来るまでは、貸し切った屋外席には僕や父様達に“紅の牙“のメンバーも席に座り、食べていなかった昼食を軽く食べながら、父様に何があったのか細かく話していた。
なお、その周りに護衛騎士が5人ほど残り、周りの警戒警備をしているので近づく人はいない。
僕はリカルド団長が去った方向を見ながら父様に話しかけた。
「父様、ここはお披露目会の時にお越し頂いていた、コンテ伯爵様の領地の街でしたよね?」
父様「そうだよ、それがどうかしたのかな?アトリー」
「いえ、大した事では無いんですが、コンテ伯爵様が大変 屈強な体格をなさっていたのを思い出しまして、ここの衛兵隊さん達もあの様な体格の方が多いのかなって思っただけです」
父様「ふふっ、そうだね確かにコンテ伯は屈強な体格をしているけど、さすがにここの衛兵達まであの様な体格では無いと思うよ、でもコンテ伯 自身も相当 鍛えているから、周りの騎士や兵達も負けじと鍛えていると聞いた事があるね、コンテ伯まではいかないにしろ、隊長格の者は他所の領地の衛兵よりは体格が良いのでは無いかな?」
(最初、コンテ伯爵に会った時かなり驚いたんだよねぇ、多分 身長2メートル以上あるんじゃ無いかってぐらいの身長で、顔を見るのにも首が痛くなったし、それに加えて筋肉モリモリのゴリマッチョで、肩の筋肉が前世でよく見ていた漫画の登場人物の、アーム○トロング大佐みたいな人だった、「本当に存在したんだこんな体型の人って」しみじみ思ったよ、雰囲気も何となく似てたし…)
「そうなんですね、やっぱりコンテ伯爵様が特別大きい体格の方なんですね」
父様「そうだね、さすがにコンテ伯並みに大きい体格の人はそういないね」
と、コンテ伯爵の話題で盛り上がっていると、リカルド団長が衛兵隊の隊長を連れて戻ってきた。
リカルド団長「ご歓談中失礼します、衛兵隊の隊長をお連れしました」