間話 神罰の後
天照 視点
『うーん?、これだけ?そんなはずは無いと思うんだけど~』
今、ティーナちゃんが頭を抱えながら何かをしている様なのですが はたから見ると頭を抱えたままトイレで踏ん張っている人に見えますね。
『う~、なんでぇここから先は出てこないの~』
そろそろ声を掛けた方がいいでしょうか?月詠も帰って来るでしょうから、今 月詠は私達の世界 地球の神々から“咲子ちゃん“いえ、今は“アトリーちゃん“の前世での行いとそれによる魂の器の大きさの記録を見せて貰いに行っている所です。
アトリーちゃんの前世での行い対しての魂の器の成長具合が他の世間一般の方とどれぐらい差があるのか確認して、その差が現れたのはいつ頃なのかと色々調べる所から始めていたのですが、私達が常にリンクしている地球の“総合データ管理システム“には改竄された後が見られ、その資料データには咲子ちゃんの魂の器は成長を殆どしていない事になっていたんです。
さすがにコレはおかしいと月詠が生前 “咲子ちゃん“がお正月に毎年参拝に訪れていた地方の有名な神宮に行き、その神宮に祀られている神が管理している“地方データ管理局“が“咲子ちゃん”が毎年訪れて参拝するごとに前年度の日頃の行いと成し得た功績の記憶と魂の器の成長の記録をデータとして回収しているはずなのでそこにアクセスしてデータを引き出す手続きをしている最中です。
このデータが届けば総合データ管理局に上がってくる前の正しいデータが見れるはずです、それで また少しは“咲子ちゃん“の魂の器の成長を妨げた原因に近づけるのでは無いかと期待しているのですが…
今は、ティーナちゃんの問題を解決した方がいいかもしれませんね・・・
『ティーナちゃん、そろそろ何が起こっているか教えてくれませんか?、1人で奇声を発しながら頭を抱えているより現状を共有して知恵を出し合った方が良い解決策が出るかも知れませんよ?』
『!、そうね!天照ちゃん!、聞いて!今アトリーちゃんを殺そうとして来た男がいるんだけど、そいつの記憶を見て出てきた宗教団体の神官がそいつをそそのかしてアトリーちゃんを襲わせたのは分かったのよ!その宗教団体の幹部らしき奴の姿が分からなくてデータも見れないの神罰を与えようとしても姿か名前が確認できないと他の幹部も見つけられなくて困ってるのよ!どうしたら良いかしら?』
『一緒に考えて!』と、手を合わせながらお願いして来たティーナちゃん。
『⁉︎、今アトリーちゃんを殺そうとしたって言いました?』
『うん、言ったわよ、だから今その黒幕を見つけ出すのに良い知恵は無いか聞いたんじゃない』
『そう・言う・事・は!事件が起きた時すぐに言って下さい‼︎』
『うっ…、はーい、次から気をつけます!・・・で、どうしたら良いかしら?』
全然反省していないですね…
『・・・はぁ、では まずこの世界の管理システムがどうなってるか教えて下さい』
『あのねまずこの世界は子供が生まれて7歳になったら“祝福“をして魔法属性やスキルを与えるでしょう?、その時までは私達神が彼等の素質なんかを見極めたりして加護なんかも付けたりする事になってるんだけど最近はシステムをオート化していて素質の見極めを今までの膨大なデータから傾向や体質による相性を弾き出して“祝福“をしているの、今回アトリーちゃんの件があって改めてシステムの欠陥が分かっちゃたのよねぇ』
『それが人探しの件とどう関係してるんですか?』
『それがね、今までこの世界の人達の動向を全て見ることができると思っていたんだけどそれが可能だったのは“祝福“のオート化する前の私達が全ての人々の“祝福“を担っていた時だけだったのオート化したことで私達が直接“祝福“を与えなくなったから 生まれた人々 一人一人を直接見ることがなくなって見ることで繋がっていた人々のデータが私達に入って来なくなっていたの、その代わり管理システムのデータ保存機関には全て入っているかと思っていたんだけどそれも完璧では無いようで7歳の“祝福“をした後の個人のデータはリトス教や他の現存する神々の神殿へ赴き祈ることで更新していたみたいなの』
『?、それは普通では?』
私達の管理する世界の地球ではそれが当たり前なのだからそう聞いたのですが、
『それはそうなんだけど、この世界にはそんなに神殿があちらこちらにあるわけじゃ無いのよ?よくて一つの街にリトス教の神殿が一つあれば良い方、村に関して言うなら世界の全ての村の内の半数に神殿があれは良いでしょうってくらいだから、
その上 人が生活できる場所は限られているの場所によっては外に凶暴な魔物とかが普通に生活してたりするからね、それに現存しない邪神を崇めている宗教団体はまず現存する神々の神殿などを参拝してないし辺鄙な所に拠点を作って神殿がある普通の街に来て大々的に勧誘したりもしてないのよ、
幹部に至ってはその拠点を離れることは殆どないんでしょうね、だから私達の神殿の記録管理の範囲に入ってこないから姿を見てデータを見ることもないし出て来たと思ったら、全てをローブなどで覆い隠して性別すら分からない状態でなおかつ強力な認識阻害の魔道具まで使ってまで徹底的に正体を表さないんだから、多分 国の捜査の手から逃れるための対策としてそんな事をしてるんでしょう、一度壊滅まで追いやられたから慎重になってるのね、おかげでこっちはお手上げ状態なのよ』
『うーん、それは大変ですね、確かに私達の世界にはかなりの数の神社や教会など人が暮らしている所には必ず複数ありますし山の中にも沢山あったりしますね目の届かないところは殆どありませんあえてあげるならかなり高い山の頂上ぐらいですかね?
それでも人々が山全体をご神体として祀ったりして祠や祭壇などを作ったりしてますからね、そもそも私達の世界では自然そのものを神と崇めたりする人がいた場合、結構簡単に神が生まれますから、山全体が神になったりするとその記録管理の範囲が広くなるので人間を見逃すってことはそうそう無いですし、それが良い神とは限りませんが…、
まぁ ティーナちゃんの世界はそう簡単に神が生まれたりしませんからその辺りもシステムの穴が大きくなった要因でしょうか?』
『やっぱりそう思う?天照ちゃん、私もね今の神の人数だと世界の維持管理が大変になると思ってはいるんだけど、この世界全体のエネルギーが地球世界と違って人間と共有して取り合ってるからそう簡単に神が生まれることがないのよね、人間が魔法を使うからエネルギーの消耗が激しいの、少しずつは溜まってるんだけどこの間“神獣“作っちゃったから、今は新たな神を作ることはできないのよね~』
『あぁ、確かに地球世界には魔法と言うもの自体がないですから、世界に溜まりに溜まっているエネルギーの使い所が神を生み出すことでバランスを保っている節がありますしね、それにこちらの世界はまだ生まれてそんなに経って無いですからエネルギーの貯蓄が足りないんですね、
そこにアトリーちゃんへのお詫びの為に“神獣“創ったちゃったんでしたね…』
しかし、最初は“聖獣“を創るはずだったのにいつの間にか“神獣“になってたんでしたね、『込めるエネルギーを間違っちゃった!テヘペロッ♪』とか言ってましたし、わざとしたんでしょうけどあの時は少しイラッとしましたね、でも“神獣“の方が都合が良い時もありますからね、そこは評価しましたけどおかげで私達も急遽 地球世界のエネルギーを引っ張ってきて“神獣“を創ることになってしまいましたが…(後で怒られる事を覚悟で)
まぁでもアトリーちゃんが喜んでくれたのでよしとしましょうか。
『そう言うこと~、だから私達の目から逃げ回っている邪神教の幹部達を見つけるのにはどうしたらいいと思う?』
『そうですねぇ、・・・ここは一度この国だけを対象に一斉にデータの強制スキャンをするってのはどうです?』
『それはちょっと無理かなこの国この世界の中でも結構大きい国だからこの国の国土全体を全部スキャンするとなる約5年はかかるわ』
『そうなのですか?それは流石に時間が掛かり過ぎですね…』
うーん、どうしたら良いのでしょう?なるべく早くアトリーちゃんを付け狙う宗教団体を特定するにはあの国 全土の人間を確認する一斉スキャンをした方が確実なのは確かなんですが国が広すぎるとは思いませんでしたね…ん?
『・・・ねぇ、ティーナちゃん、広いなら区切れば良いのでは?その宗教団体のいそうな場所に目星をつけて スキャンすれば一斉にやるより早く済むのでは?』
『‼︎・・・・・・』
ティーナちゃんはびっくりした後 考え込み始めた。
『うーん、その方が良いのかな?・・・、いや、確かに言われてみると・・・、うん、その方がデータの処理速度にも負担がかからないかも?・・・、でも目星の付け方次第では・・・、早く済むかも?』
ティーナちゃんの口に出しながら考えを纏めている姿はいつもより真剣で真面目だ、やればできる優秀な子なのは確かなのだけれど少しおっちょこちょいなのがたまにキズなだけで…
私はティーナちゃんの考えが纏まるのを出してあったソファーセットに座り湯呑みで緑茶を飲みながら待つ。
『うん‼︎そうしよう!、それなら後で纏めてシステムチェックして新しいデータ回収のやり方のモデルケースになって良いかもだし!後の問題は回収した個人データをどこに綺麗に纏めるかよね!・・・あ、そう言えばアトリーちゃんにあげた“情報開示スキル“と連動させておけばアトリーちゃんの周りもデータ回収の範囲になってアトリーちゃんを付け狙う不埒物をいち早く見つけることができるかも!後はデータ整理の問題は・・・ん!、新しく回収した区画ごとに分けて納めれば検索もしやすくなって良いかも!、うん!よし!これで行こう!』
どうやら考えが纏まったらしいですね、ですが・・・
『ティーナちゃん、データの整理整頓は常日頃からちゃんとしなさいといつも言っているでしょう?』
ニッコリッ
『あ、・・・・・やばっ』
ティーナちゃんが『バレたっ』と顔に出して後ろに後ずさりしている。
『・・・はぁ、今回は急いでますから見逃します、なので早急に仕事に取り掛かって下さいね』
ニコッ
『あ、はい・・・』
素直に返事をするティーナちゃん、本当やればできる良い子なんですけどねぇ。
『それで?どのようにデータ回収する事に決めたんですか?』
『えっとね、まず、この世界の国ごとに分けて、その国の領地?の境界線で区切るでしょ、で、区切った領地をスキャンしてその土地の全てのデータ回収をする事にしたの、データ管理は国ごとにファイルを分けてその中に領地ごとの名前をファイルにつけてちゃんと収める事にしたわ、
今まで人間は人間、動物は動物、種族関係なく纏めて管理システムのファイルに収めていたから国や地域ごとに分けるって事してないから、今度から色々検索するのが楽になると思う、
まぁ所謂この世界全ての住所別“生態系データ管理ファイル“って感じね、今までは街や村ごとにある神殿でその役割をして貰ってたんだけど さっき見たいなデータ回収のムラができてたから今後は私達の方からこのやり方で回収していく事にしてムラをなくす事にしたわ、重要な所は今まで私や他の神で担当者を決めて小まめにデータ回収していたけど今後は国ごとに担当をつける事にしたわ、もちろん私はアトリーちゃんのいる国を担当するけど♪』
『じゃあ今から早速始めるんですか?データ回収』
「うん、早急にするわ、今回は新しいやり方だから他の神達にもアトリーちゃんがいる国のスキャンを手伝わせてやり方を学んで貰ってから担当地域を任せるわ、それにウチの世界の神は私も含め7柱いるから一度に7箇所同時にスキャンできるから あの宗教団体を見つけるのが早まると思うのよ!』
『そ、そうですね、他の神々に頑張って下さいとお伝え下さい』
すでに手伝う事が確定している気の毒な他の神々に心の中で合掌しておいた。
『うん、分かったわ早速始めましょう!やっぱり最初は王都や王都周辺の領地からした方が良いかしら?』
ピラッ
ティーナちゃんは何やら簡易的な地図を取り出して見ていた。
どうやらこれがアトリーちゃんの住んでいる国の大まかな地図のようだ、アトリーちゃんに関わりがあった貴族の領地には名前が書かれている
それを見ながらどこから始めるか悩んでいるみたいですね。
『?、それなら王都と王都周辺の山や大きな森などに接している領地を優先的にスキャンしてはどうです?』
『山や森…、そうね!山や大きな森に潜伏してるかも知れないしね!、教えてくれて有り難う天照ちゃん♪』
『ふふっ、どういたしまして』
『よーし、じゃあ ここと ここと~・・・・・』
作業に集中し出したティーナちゃんを見ていると暫くして月詠が戻ってきました、何やら記録保存用の宝玉を片手に眉間に皺を入れて難しい顔をしています。
『お帰りなさい、月詠 “咲子ちゃん“のデータは残っていましたか?』
『あぁ、残ってはいたがこれも不審な点が多い』
『?、どこら辺がです?』
月詠が差し出してきた宝玉を受け取り“咲子ちゃん“の記録を読み取りました。
『・・・・・・ん?、これは…変ですね』
『そうだろう?“咲子“が働いていた時の功績は横取りのような形で達成感が無くて魂が成長しなかったのは理解できるが 、あの子が生活していく中で家族の手伝いや他人を助けた時にも魂の器の成長が他の人間に比べ少なすぎる』
『そうですね、“咲子ちゃん“が中学生時代に暮らしていたアパートのお隣さんが火事になった時に当時 生まれて間もない妹さんを抱いて怪我もさせないで脱出しているのに魂の器がさほど大きくなっていない?、普通こんな事件を経験して生き延び、なおかつ小さな命を助けたりしたら人としても魂の器も大きく成長するはずなのですが他の方と比べると殆どと言って良いほど成長してませんね、やはり有り得ません、誰かが“咲子ちゃん“の魂の器に細工をしたとしか思えません、それに“総合データ管理システム“のデータを改竄するなんて そんな事ができるのは我々と同じ神々ぐらいでしょう』
『私も同じ意見だ、それで そのデータを改竄した神に心当たりはあるか?天照』
『・・・・、いえ、私には有りませんね、ですが、絞り込む事はできるかと…、まず“総合データ管理システム“にアクセス可能な神である事 と“総合データ“を編集改変できる能力 又はかなり高位な神格がある事ですかね?』
『まぁそう言う結論に至るよな、だから そこも少し調べてきた、アクセス許可がある神はかなりいるが、データの編集が可能な神は地球世界の神の中では我らを含め5柱ほどだ、だが 他世界の最高神や全ての世界を管理する次元を司る神々ぐらいだ、正直 次元を司る神々はこんな事はしないと思う、あの方々は忙しいから こんな事している暇もないし する理由も見当たらない』
『確かに…、では やはり候補に上がるのは私達以外のデータ編集をできる神の3柱と他世界の最高神ですか…、じゃあまず、同僚から調べてみますか?』
『あぁ、そうだな、奴らなら聞けば普通に答えそうだがな』
『まぁ、いい意味で裏表がはっきりしている方々ですからね…』
その後も先程あった事などを月詠に話していると。
『あ‼︎、そう言えばあの子達に教えるの忘れてた!』
『『?』』
『どうしたんですか、ティーナちゃん?』
『や~、先日送り出した“神獣“のあの子達まだ小さいでしょう?この先どれくらい大きくなるのか悩んでたみたいで、その事を教えてあげるの忘れてたんだよね、で、今さっきまでアトリーちゃんのお父さんの疑問に答えてあげてたんだけど、その時 夜月くんに成長の事 話すのまた忘れちゃっててそのまま通信切っちゃったんだよね~、けど、どうやら今度向こうから神殿に行って聞きに来ると思うからそれまではそのままでいいかな?』
『?それは良いですけど、どうして“神獣達“は成長するかで悩んでるんですか?』
不思議に思って聞いてみた。
『あー…あのね、大きくなったら一緒にベットで寝れなくなるでしょう?それが嫌みたいでね“神獣達“は悩んでるみたい、今は抱っこできるサイズだから良いけど陽天竜の天華ちゃんは竜種だから成長して大人になったら部屋どころかお屋敷にも入れなくなると思うんだよね』
『あぁ、それは流石に無理だろうな、それでアトリーと過ごせなくなるのを危惧していると』
『それは、考えても見ませんでしたね、定番だからと安易に創ってしまって将来の体格まで気が利きませんでした、どうしましょうアトリーちゃんを守るために創った子なのに側にいることができなくなるのは誤算でしたね、それに天華ちゃんにはとても気の毒なことをしてしまいました』
『そうよね~、もう既にアトリーちゃん大好きになっているし大きくなったからって離れて過ごすのは可愛いそうだものねぇ』
『で、対策はあるのだろう?ティーナ』
『フフフッ、さすが月詠!正解よ!対策はもう思いついているわ!名づけて!〈大きいなら小さくなれば良いじゃない!作戦‼︎〉』
ババーンッ
と、効果音まで付けて変なことを言い出したティーナちゃんを私と月詠は白けた顔で見つめていた。