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40話 親父会と様々な報告 父:アイオラト視点

+ーーーーー+ーーーーー+ーーーーー+


*時間は初めての動物サーカスの夕食後まで遡ります。


>ーーーーー<>ーーーーー<>ーーーーー<


  父:アイオラト視点


 今日は家族全員とアトリーの友人家族も連れ王都の観光をし、その最中に色々と問題が起こったが1人も怪我人はなく済んだのでよしとしたいが、今、新たな情報がもたらされた、何とアトリーが今日ハント親方の武具店で購入した 短剣と投げナイフを結界を発動させる魔道具にしてしまっていたと、しかもその魔道具をソルや友人達にあげたらしい。


 報告が来たのは丁度 アトリーの友人の父親達と執務室のソファーセットで今日の“神罰“の事と今後どうやって子供達を交流させるかと話し合っていた時だった、報告を受けた私は動揺を隠し 父親達にその事を話した、どうせ部屋に戻ったら知ってしまう事だから今のうちに色々と言い含めて“神罰“の事と魔道具のことは他言無用として貰った。


ブラーブ殿「しかし、凄いですね御子息様の才能はとても7歳に見えません、家の子は剣の才能ぐらいしかありませんからね」


ツァルト殿「イネオスは剣の才能があるから良いですが家のへティは末っ子で初の女の子でしたから多少甘やかしてしまって これと言った才能はないですよ」


オネスト殿「家のベイサンにも何か才能があったら良いんですけど平凡そのものですから、もしくは将来 何かしら仕事に役立つ特技があれば親として多少は安心できるんですけどね…」


ツァルト殿「そうですねぇ…」


 不安視していた“神罰“事で子供同士の喧嘩ぐらいでは“神罰“を受ける事はないと言われホッと安心していた所に先程の“魔道具“の話になり今度は自分の子供の将来への不安が押し寄せてきたようだ、オネスト殿とツァルト殿が自分の子供に才能が無いと嘆いている姿を私とブラーブ殿は苦笑いで見た。


「まあまあ、私が言うのも何ですが子供達はまだ7歳なんですから、もしかしたら これから得意な事や興味を持って熱中できるものが見つかるかも知れないですよ」


ブラーブ殿「それにベイサンとへティに何も取り柄がないわけでは無いだろう?ベイサンは素直で友達思いの頑張り屋じゃないか、へティは草花に詳しくて優しい動物好きの良い子だし、何より父親のお前達が子供の良い所を認めてやらないでどうする」


 ブラーブ殿の言葉で思い直したのか。


オネスト殿「そうだな、“祝福“で魔法が使えるようになって少し魔法に興味があるようだったから その中でベイサンにも得意なものができるかもしれないしな」


ツァルト殿「そうですね、へティは草花が好きですからね、最近は薬草にも興味が出てきているようですし」


 と、少し前向きになったようだ。


「そうなんですね、子供達の成長が楽しみですね」


ブラーブ殿「そうですね、家のイネオスにも剣以外のものにも興味を持って欲しいですよ」


 子供の成長を願いつつ、これからの子供達の交流を増やす事で良い刺激になればと思い、今後も連絡を取り合い時期を見てお互いの領地へ赴く事になり後は大体の予定を組もうとしている時 私は聞きたい事を思い出した。


「こちらはいつ来て頂いても大丈夫ですのでそちらのお忙しくない時期など教えていただきませんか?、あ、それと子供達の学園の事で少しお聞きしたいことがあるんですが」


ブラーブ殿「あ、はい構いませんが…」


 他の2人も頷いて同意してくれたので会話を進める。


「すみませんね、それで大変お聞きしにくいんですけど子供達の学力の方は学園の入学試験には間に合いそうですか?」


ブラーブ殿「あ~、それはですね、家のイネオスは多分 間に合うのですが・・・」


ツァルト殿「そ、そうですね、私の所のへティは今の所は大丈夫ですが・・・」


 2人の子供は大丈夫だと言いつつ歯切れが悪い言い方だそして目線が頭を抱えたオネスト殿に向かっているので 私も黙って視線をオネスト殿に向けた。


オネスト殿「はぁ~、家のベイサンは勉学が苦手でして、入学試験まで間に合うか怪しい状態です…、はぁ」


 盛大なため息と共に頭を上げベイサン君の学力が怪しいと言いまた頭を抱えた。


「そうなんですね、失礼ですけど、何名か家庭教師をお雇いですか?」


オネスト殿「いいえ、家は雇っていませんがヴィカウタ子爵家で雇われている教師に追加料金を支払い ヴィカウタ家の子供達と一緒に勉強を見て貰っています」


ツァルト殿「家の子供達も同様にお願いしています」


「そうですか、教師は1人ですか?」


ブラーブ殿「いえ、初等部基礎の教師と暦学の教師の2人を雇っています」


「2人…、オネスト殿、ベイサン君はどちらの授業が苦手とかお聞きしていませんか?」


オネスト殿「え、そうですね・・・・」


 一通り聞き取りをしてベイサン君が勉学の苦手な理由が大体分かった。


「ふむ、ベイサン君の勉強に支障が出ているのは初等部基礎の教師の授業内容が原因かもしれませんね」


オネスト殿「え!、どう言う事ですか?」


「先程お聞きしたことで気づいたのですがベイサン君は素直で頑張り屋だと、その彼には初等部基礎の教師のくどい言い回しが授業を分かりずらくしているのではと思いまして、それとあまり言いたくは無いのですが授業について来れていないベイサン君にわざと分かりずらい言い回しを使い自信を無くそうとしている節がありますね」


オネスト殿「なぜそんな事を・・・」


ブラーブ殿「・・・アイオラト様は何故そう思われるのですか?」


「あぁ、それはですね我が家でも似たような事が起こったんですよ、家の長男と次男の家庭教師が長男のカイヤトを持ち上げるために次男のシーライを落ちこぼれの様に扱って長男に優越感を覚えさせ その優越感を与えてくれる教師の言うことを聞くように仕向けるためにね」


ブラーブ殿「そんなことが…」


ツァルト殿「その教師は公爵家の後継であるご長男を操ろうとなさったんですね、ですがそのお話をなさっていると言うことは計画がバレた教師はその後どうなさったんですか?」


「もちろん解雇しましたよ、そもそも我が家の兄弟仲はとても良いので授業を受けていた長男自身が私に報告してきたぐらいですし、それからどうやらその教師に裏で指示を出していた者がいる事が判明しまして その黒幕にもそれ相応の罰も下しました、ところでブラーブ殿が雇っている教師はどこかの貴族からの推薦か紹介で雇われたとかではないですか?」


ブラーブ殿「え、あ、はい、確か同じマルキース侯爵様の寄子のイヌーティル男爵家の推薦でカーエド商会の遠縁で学園を特待生で入学し高成績で卒業した教師がいると言うことでその人物を紹介して貰って雇っています」


ツァルト殿「え!、あのカーエド商会の遠縁ですか?」


ブラーブ殿「そうだが、それがどうかしたか?」


ツァルト殿「ええ、その2年ほど前にですねカーエド商会の会長からへティにご子息との婚約の申込みがありまして、その時はへティには早いのでお断りしたんです、ですがその後もしつこく婚約の申込みをして来るので婚約候補がいるのでと再度お断りしたら婚約の申込みも来なくなりましたね」


「うーん、怪しいですね…、そのカーエド商会の会長は何故まだ“洗礼と祝福“も終わってないへティちゃんに婚約の申し込みなんてしたんでしょうね?」


ツァルト殿「そうなんです、私もそこが不思議で少し不審に思ったのもあってお断りしたんですよ」


「他のお二人は何か心当たりはありますか?」


 ブラーブ殿とオネスト殿にも聞いてみたが2人も心当たりは無いそうだ。


「うーん、何かありそうな感じがしたんですがねぇ…」


オネスト殿「そうですねぇ、かなり怪しいんですけどね・・・あれ?そう言えばブラーブ、お前いつイヌーティル男爵と知り合ったんだ?」


ブラーブ殿「あぁ、それは2年前に教師を探していたときに毎月の定例報告会議の休憩中に声をかけられて話していたら家庭教師の話になってなそれでカーエド商会の遠縁を勧められたんだ、しかし、へティちゃんの事を知ってたら雇わなかったんだが…」


ツァルト殿「すいません、ブラーブ、2人に話すほどでもないと思いまして」


ブラーブ殿「いやいや、気にするな 話しにくいこともあるさ、それに今 分かって良かったよ領地の屋敷に帰ったらすぐにあの教師は解雇するよ」


 その言葉にオネスト殿とツァルト殿がホッとしていた。


「しかし これは一度詳しく調べたほうがいいかも知れませんね」


ブラーブ殿「そうですね、マルキース侯爵様にも報告して調べてみます」


「その方がいいでしょうね、そう言えば代わりの教師に当てはありますか?よければ私の所の子供達を見ていた者が今 暇をしているので紹介しますよ?」


ブラーブ殿「え、それは有り難いのですが宜しいのですか?」


「?、えぇ、いいですよ?」


ブラーブ殿「や、あの、御子息、アメトリン様の家庭教師になるお方なのでは?」


「あぁ、それは大丈夫です、元々アトリーには勉学の教師はつけておりませんから」


父親達「「「?」」」


オネスト殿「えっと、それは…、アメトリン様がお勉強をされてないと言う意味ではなくて?…もしかして・・・」


「えぇ 、家庭教師をつける必要がないと言うことです」


父親達「「「っ⁉︎」」」


「あの子は1歳の時 妻の絵本の読み聞かせで字を覚え、本をめくるのが自分でできるようになったと思ったら領地の屋敷にある図書室の本を読み漁り、今では殆ど読み終わっている可能性がありますね、それに加え興味が向いた薬草学や錬金術、先程の魔道具に関しての本や魔法陣の専門書などをプレゼントで貰って喜んで熟読する子なんです、そしていつの間にか字を書けるようになっていて、4歳の時に長女の持ち帰ってきた6年生用の算学の問題集をスラスラ解いていた時は顎が外れるんじゃないかと思うくらい驚きましたよ」


 自慢ではないがアトリーのしてきた事の全てを事実として話すと、ブラーブ殿達は口を半開きにしたまま驚いていた。


(まぁ、そうなるよね)


父親達「「「・・・・・・・」」」


「と、言うことでアトリーに教師が教えることは5歳にして何も無くなってしまっていたんです、それに剣術や体術は家の使用人や騎士団に混じって訓練していますし、今後は魔法の教師を雇うか悩んでいましたがどうやら魔法に関しては聖獣様方にその都度教えて頂いているようなので下手に教師を雇うより聖獣様にお願いした方がいいと思っているんです」


(うん、魔法は教える以前にもう自分で使えていたからねぇあの子は常識の型にハマらない規格外の子だ)


 自分でも話していてかなり規格外な息子を持ったなと1人再確認していると。


ブラーブ殿「あ、あの、大変失礼かと思いますがアメトリン様は本当に7歳のお子様なんでしょうか?」


「確かに、私も今話していても信じられないぐらい凄い子だと思っていますが正真正銘7歳の子供ですよ、かなり規格外だが生まれてから7年ずっと側で成長を見守った自慢の可愛い息子です、

 それにいつもは大人びた態度や気遣いをする遠慮がちな我が子が ここ数日 年相応の反応や表情をするようになって楽しそうにしているのは多分、イネオス君達と一緒にいて遊ぶようになったからだと思ってます、だからアトリーの年相応の反応を引き出している あなた方のお子さん達にはとても感謝しています、

…有り難う」


 私はこの頃 年相応の感情豊かなアトリーやソルの反応を見てやはり外へ連れ出して多くの同年代の子供達と触れ合う事が大切だったんだと思い、今まで領地の屋敷にあの子達を閉じ込めていた事への罪悪感があり心底後悔した、そして イネオス君達はあの噂に惑わされる事なくアトリーに接してくれた事に心から感謝している。


父親達「「「⁉︎」」」


オネスト殿「え、あの、そんなお礼を言って頂けるような事は何もしていないんですが…」


ツァルト殿「そ、そうです、こちらがお世話になりっぱなしで私達も感謝しても仕切れません」


ブラーブ殿「私も感謝しております、そして何もしてはおりませんが我が息子が御子息のお役に立たのなら幸いです」


「ふふっ、何もしなかったとは言いますが公爵家の子供だからと媚びる事も萎縮する事もなかった お子さん達の自然体でアトリーに接してくれた事が1番難しいんです、なので本当に感謝しているんですよ、これからもこの関係が続くのを私達は望んでいますので困ったときはいつでも相談して下さい」


 彼等には理解できないだろう、時には普通に接する事が1番難しい事があると…


ブラーブ殿「…はい、こちらこそ宜しくお願い致します。」


 ブラーブ殿は何か察したのかそれ以上は言う事はなくオネスト殿とツァルト殿も深くは聞いてはこなかった、その後は互いの今後の予定と領地での予定などを考慮していつ頃ならお邪魔して良いかと話し合い大体の予定を立てた。


「これで大体の予定は立てられましたね、この予定を知ったら子供達は喜ぶでしょうね」


ブラーブ殿「ふふっそうですね、きっと大喜びするでしょうね」


オネスト殿「この予定を教えた時の反応が今から楽しみですね」


ツァルト殿「それまで気づかれない様にしませんとね」


「ふふっ、そうですね」


オネスト殿「いや~、私は顔に出やすいので気をつけないとすぐにバレようで少し不安です」


ブラーブ殿「大丈夫だ、私から奥方にちゃんと誤魔化すように言っておく」


オネスト殿「おう、頼んだ!」


ツァルト殿「はぁ、オネスト、少しは自分でも気づかれないように努力してくださいよ」


オネスト殿「うっ、一応 努力はするぞ?」


「ふふっ、仲が良いですね」


ブラーブ殿「あ、すみません、お恥ずかし所をお見せしてしまって」


「いえいえ、私は楽しそうで良いと思いますよ?それにここは堅苦しい公の場ではないんですしお気になさらずに」


ブラーブ殿「お気遣い有り難う御座います」


 ブラーブ殿達のこの気安い雰囲気が子供達にも現れているんだろうと思い、アトリー達もこの様な友人関係が築かれる事を期待したい、そう思いつつ彼等を眺めていると。


コンコンッ ガチャッ


カイル「旦那様、失礼致します」


「あぁ、カイルどうしたんだ?」


カイル「皆様、お話し合いの所失礼します、先程 御子息達がお休みになられるためにお部屋に向かわれましたのでご報告に参りました、それと旦那様、シベラス様から本日の事でご連絡が来ております」


「そうか、子供達はもう寝る用意をしているのだね、こちらも先程 話が纏まった所だから丁度いいね」


(シベラスから連絡か…)


「御三方、私達もそろそろお開きにしましょうか、子供達も部屋に戻って来てるでしょうから、今日は色々ありましたし、ゆっくり休んで下さい」


ブラーブ殿「そうですね、アイオラト様、本日は本当に息子共々お世話になりまして有り難う御座います」


オネスト殿「先日は子供達だけではなく我々にもお気遣い頂き有り難う御座います」


ツァルト殿「アイオラト様のご配慮のお陰で子供達に楽しい思い出を作ってあげる事ができました本当に感謝申し上げます」


 と、それぞれが礼を述べてくれた。


「こちらこそ、急に提案したにも関わらず快く参加いただけて感謝しております、お陰で此方も家族共々楽しく過ごさせて貰いました、また冬にお会いできるのを今からでも楽しみにしていますよ」


ブラーブ殿「そうですね、今度は私達がおもてなしさせて頂くこととなりますがご期待に添えるように頑張ります」


「えぇ、期待してます」


「「「「ふふっ」」」」


 互いに笑い合いブラーブ殿達は執務室を退出していった。


コトッ


カイル「旦那様、随分打ち解けられましたね」


 執務机の方に場所を移動し座っているとカイルがブラーブ殿達を見送った後、お茶を入れ直して持ってきてくれた。


「あぁ、同じ年頃の子供を持つ者同士 悩みや子供達の小さい頃の話など色々共感できる事があったからね」


カイル「それは良かったです、これからもアトリー様との交流も快くして頂けるようで安心致しましたね」


「そうだね、子供達はすぐに仲良くなったようで嬉しいよ、コクッ、ふぅ・・・そうだシベラスからの連絡とは?」


 入れたてのお茶を飲んで要件を思い出した。


カイル「はい、こちらにお手紙が届いております」


 と、懐から手紙を出し差し出してきた、手紙を読むと今日突然起こった現象の報告だった。


「やはり、王城の方でもあの“神罰“は確認されたか…」


カイル「詳細はなんと?」


「あぁ、今日の昼頃 私の報告が着く前に “王城内の大掃除“と称しての一斉摘発の最中に急に数十人の文官やメイドなどが淡く光ったかと思ったら額に真っ赤な色の太い線で✖︎印が浮かび上がったそうだ、

 その後すぐに私の報告を持った影がきて報告の内容を見てすぐさま印が浮かび上がった者達を拘束し、その上でジルが“鑑定“し“称号“の欄に“大嘘つき“や“嘘を信じる大馬鹿者“、“洗脳されし者“などが多い中で殆どの者に“マルヴァジタ教の信徒“と言う“称号“の裏に隠蔽されていた“新マルモーヴェ教の信徒“が表に出たと書いてある、

 その他にも“嫉妬に駆られる者“や“逆恨みする者“、“私利私欲に溺れる者“、“無垢なる少年に懸想せし変態“など様々な“称号“が出たそうだよ、そして顔全体に一際大きい✖︎印が出た者には“神々の寵児を侮辱する首謀者“と“称号“にあったらしい」


カイル「それは また…、分かりやすく“神罰“が降りましたね」


「あぁ、顔全体に誰が見ても分かり易いく他の誰よりも大きな✖︎印が出ていて “称号“に“神々の寵児を侮辱する首謀者“と出ていれば言い訳もできないしな、それに加えてスキルが数個無くなっていたようだ」


カイル「そうですか、まぁ妥当な罰でしょうか?それで首謀者とはやはり?」


「お察しの通り、王城の“財務局“に勤めている“メスキノ・ノブル・ルマン伯爵当主“だ」


カイル「そうでしたか、それでルマン伯爵はなぜ公爵家の悪い噂をばら撒くなんて お馬鹿で無謀なことをしたんでしょう?動機など書いてありましたか?」


 手紙を読みつつ聞かれたことに答えていたので まだ読んでいない手紙の続きに目を走らせると、


「ふむ、あぁ、書いてあるな、・・・・・はぁ?」


動機と思われる部分を読んで思わず呆れた様な声が出てしまっていた。


カイル「?、旦那様、どうなさいました?」


「・・・どうやらルマン伯爵はウチの領地の隣にある領を治める“ジャオフア伯爵“に我が公爵家の名を陥れ領地を取り上げて空いた領主の座にジャオフア伯爵がつく事ができればルマン伯爵にも利益を回すと言われたかららしい…」


カイル「・・・はぁ?、その方々は馬鹿なのですか?」


「まぁ、馬鹿じゃないとこんな事はしないだろう、それでルマン伯爵の証言によればジャオフア伯爵は“マルヴァジタ教“の信者のようで数年前にその“マルヴァジタ教“の神官に我が領地を手に入れる事ができれば莫大な富を得る事ができ王家をも操る事ができると吹き込まれていたようだ、

 確かに我が領地を拝領できれば莫大な富は手にはできるかもしれないが、まず、あの噂 程度の事で我が公爵家がそう簡単に失墜できるなんて思っているなんて馬鹿馬鹿しいにも程がある、それにあの土地は王家の血筋以外が拝領される事はあり得ないのだから、まぁこれで彼らが王族を狙った国家転覆を画策したと判明したから、すぐさまジャオフア伯爵の元に騎士を派遣して拘束するそうだ」


カイル「そうですか、しかしジャオフア伯爵はデューキス公爵領を狙うにしても今まで公爵家とズローバ伯爵家のやり取りを知らないはずはないと思うんですけど…」


「そうだな、あのしつこいズローバ伯爵にあの土地を公爵家以外が拝領させることは出来ないと何回言い聞かせているか…ズローバ伯爵がダメなら自分もダメだと少し考えれば理解できるはずだがな、多分ジャオフア伯爵は“マルヴァジタ教“、いや“新マルモーヴェ教“の神官に“洗脳“されている可能性が高いな、そうでは無かったなら かなりの大馬鹿者だろうな」


カイル「そうですねぇ、そこは“洗脳“の疑いの方が濃厚ですね、でもルマン伯爵は“洗脳“されてなかったんですか?」


「あぁ、ルマン伯爵に“洗脳されし者“の“称号“はなかったようだ」


カイル「はぁ、“洗脳“されていなくてあのお粗末な噂騒動だけで公爵家を陥れようとしていたのですか無謀にも程があります、真の大馬鹿者はルマン伯爵でしたか」


「まぁ、報酬に目が眩んだんだろう、ルマン伯爵は“財務局“の役人だから家の領の“納税額“を知っているだろうからね」


カイル「“納税額“を知っているならその管理も大変なのもわかるでしょうにね、まぁその考えまで至らなかったから あの様な馬鹿げた事をしでかしたんでしょうし、これから彼を見る事は無いでしょうから今後は少しは周りが静かになるでしょう、あのズローバ伯爵も寄子のブーゼ男爵がした事を知れば暫く大人しくなると思いますし」


「あ、その事でシベラスがズローバ伯爵に多額の賠償金と我が公爵家の領地への接近通行禁止令を陛下に発行させたらしいよ」


 と、読んでいた手紙を軽く持ち上げながら言う。


カイル「ほう、それはズローバ伯爵が今回の件に直接関係してない事になっているにしては中々厳しい処分を陛下が許しましたね?」


「どうやら今回の件で思った以上に城内の役人達が“新マルモーヴェ教“の信者になっていた様だから気を引き締めて厳しく処罰したんだろう、今後 王城に務める事になる者には定期的なステータス“鑑定“を実施する事になったそうだ」


カイル「それは良い事ですね、それなら入信したかどうかすぐ分かりますし、やましい事を隠している者達の炙り出しにも役に立ちそうですね、でも人数が多くなると“鑑定“をする方の負担が大きいのでは?」


「これから重役を雇うときは魔法制約を交わす事で多少は手間を軽減させるみたいだな、まぁ元々大臣職の者達には似たような契約があったしその制約を各部署のまとめ役まで広げるだけのようだ、それでも下っ端達は範囲外だから定期的なステータス“鑑定“は大変だと思うよ」


 鑑定スキル持ちの役人を集めたとしても全ての王城勤務の人間を鑑定するのは1日では終わらないし、現存の鑑定の魔道具では犯罪以外の隠された称号は見ることが出来ないから かなり大変だろうと思い、鑑定役の職員に同情を禁じ得ない。


カイル「そうでしょうね、鑑定役の代わりに鑑定してくれる魔道具がもう少し性能が良ければ彼等の負担軽減になると思いますが “今まで“の魔道具技術では不可能ですしね…ままならない物ですね」


 カイルが鑑定の魔道具の性能が良ければ良いのにと無い物ねだりをしているのが珍しいなと思ったが、


「カイル…、それはアトリーに鑑定の魔道具を新たに開発させたらどうかと言っているのか?」


ジロリとカイルを睨めつけながら問いただす。


カイル「そんな怖い顔をなさらないで下さいよ、ラト、何も私はアトリー様をこき使おうなんて思っていませんよ、アトリー様の才能には目を見張るものが有り その才能を披露できる場があるのならば教えてあげた方がいいのでは?と思った次第ですよ、それに王家に貸しを作る事が出来れば、今後アトリー様にちょっかいをかけてくるであろう国々の問題で、矢面に立って頂く為には必要な労力ではないかと…」


 カイルの言い分を聞いて理解はできるがまだ7歳の子供のアトリーにそんな重要な仕事をさせて良いものかと悩むな。


「はぁ、分かった まずシリーや父上達に意見を聞いて見てから検討しよう、それでいいな?」


カイル「ご検討頂き有り難う御座います、旦那様」


「ふん、私がそう答えるのを分かっていたくせに白々しい、それで?シリーや父上達は今どこに?」


 このカイルがこんな話を持ちかけておいて私の相談相手の居場所を把握してない訳がないと分かっているので素直にシリーや父上達の居場所を聞く。


カイル「はい、奥様や大旦那様方はアトリー様以外のお子様達とリビングで寛いでおられますよ」


 ニッコリと笑いながら教えてくれるカイルに呆れながらソファーから立ち上がり執務室を出てリビングに向かった…












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