30話 初めての王都散策
どうも、お早うございます私です。
今日も朝早くからお出かけの準備で大忙しです。
朝食は大広間でビュッフェ方式で皆んなとの会話もそこそこに軽く朝食を済ませる、皆んなもこの後お出かけの用意があるからか手早く朝食を食べていた、
部屋に戻ってお風呂は無しのここ数日同様に着替えと髪のセットアップをして貰って玄関前に急いだ、もちろんソルも聖獣(神獣)3人も一緒だ。
(イネオス達は来てるかな♪)
三階の通路から吹き抜けになっている玄関ホールを覗くとまだ全員来ていなかったがイネオスとベイサンそれと友人勢の父親達は既に来ていた、
ウチの家族も兄様達は来ていたが父様とお祖父様がまだ来ていない。
(あれ?家の男性陣の中で父様とお祖父様がまだ来てない、ご婦人方が遅いのは仕方ないけど、父様達はどうしたのかな?急用でも出来たかな?)
と、考えつつ 皆んなを抱っこしているのでゆっくり階段で玄関ホールに降りて行くと、私が降りて来ているのに気づいたライ兄様がこちらを見上げた。
ライ兄様「お、来たかアトリー、早かったな」
「そうですか?そんなに早くないと思いますが…」
カイ兄様「ふふっアトリーはここ最近 出掛ける前に色々お手入れされていたからね、それに比べると早い方だよ」
「あぁ、今日は入浴もマッサージもして無いですからね、それと比べると確かに早いですね」
そう会話して階段を降りていると玄関ホールに到着した。
「皆様お待たせしました」
玄関ホールの端で所在なさげに立っていたイネオスとベイサンとその父親達に挨拶すると。
イネオス父「い、いいえ、大して待っておりませんよアメトリン様、それに我が妻の方がお待たせするやもしれませんし」
ベイサン父「そうですね、家の妻も出かけの支度は長いですからね」
へティ父「家は2人分ですから なお遅いかもしれません」
父親勢は苦笑い気味に答えた。
イネオス「確かに母上達女性陣はいつも遅いですね」
ベイサン「なんでそんなに時間が掛かるのかはいつも不思議です」
まだ2人は女性陣の支度の大変さを知らないみたいだ、まぁ まだ7歳の子供だからしょうがないが・・・
「クスッ、しょうがないですよ女性は自分をいつでも綺麗だと言ってほしいですからね、特に大切な方達には」
クスクスと笑いながら答えると父親勢は呆気に取られた後に少し照れていた。
ベイサン「綺麗ですか?」
イネオス「確かに母上はいつもお綺麗ですが…」
「そうでしょ?その綺麗って言われる美しさをいつも努力を怠らず保つ母様達を僕は尊敬するし、なんなら自慢したいぐらいだよ、僕の母様達は世界一美しい人達だよって♪」
そうドヤ顔で言うとそれを聞いてた聖獣3人が、
ジュール『アトリーちゃんのお母さんは凄い美人で優しいもんね!』
天華『そうですね大変気品があってお美しいお方ですからね、それにいつもアトリー様の事を優しい眼差しで見ておられますしね』
夜月『確かに美人だがアトリーも十分美人だろう、まぁ魔力が他の家族よりアトリーの魔力に近い性質を持っていて近くにいても不愉快では無いしな、顔も他の兄弟より似ているからか?』
ジュール『ん?そうなると、今でもかなりの美人さんなアトリーちゃんもシリーお母さん似の美人さんだから将来もっと凄い美人さんになるのかな?』
天華『そうですね、今は子供特有の愛らしさがありますから美人でも可愛い寄りですしね、大人になられると綺麗寄りの美人になりそうですね』
夜月『まぁどちらにしてもアトリーが美人なのは変わらんだろう』
(んん゛っ!)
と、私にしか聞こえない念話で会話しているから1人で密かに気恥ずかしさを感じつつ 友人の会話に集中する。
イネオス「自慢ですか?」
「うん、そうだよ、だって僕達家族のためにいつも綺麗にして 側にいてくれる母様達を自慢しないでどうするの、それに女の子は褒めて貰えると、とても喜ぶし褒められた分だけまた可愛くなろうとより努力してもっと可愛くなるんだよ、イネオス達も剣の稽古とかで褒められたりしたらもっと稽古 頑張ろうって思うでしょう?」
今だに私の美人話で盛り上がっている聖獣達の会話を逸らそうと男性陣に力説していると。
父様「ふふっ言うようになったねアトリー」
後ろから父様が母様をエスコートしながら近づいて来ていた。
「あ、父様 母様、今日の父様と母様の衣装はお揃いの色なんですねとてもお似合いです 母様はいつも以上にお綺麗です」
今日の両親のお出かけコーディネートは薄い水色をベースに互いの瞳の色を差し色にしたペアコーデのようだ。
母様「ふふっ有り難うアトリー、貴方は今日も凛々しい感じで素敵よ」
私の側まで来て優しく頬を撫でてくれた、父様も頭を撫でてくれて嬉しくてニコニコしていると。
イネオス母「すみません、お待たせしてしまったでしょうか」
父様「いえいえ、こちらも今来たばかりですし、まだ家の娘達と両親が来ていませんからお気になさらずに」
そう挨拶を交わしている大人達の横で私は、
「へティ、今日の髪型はふわふわしてて可愛いね、それに髪留めの大きなリボンがよく似合ってるよ」
と、母親勢と一緒に降りてきたへティの今日の髪型を褒めていたら。
ジュール『アレかな?アトリーちゃんは将来“女たらし“になるのかな?』
(ブッ!・・・な、何故そうなるのかなぁ?普通に似合うから褒めただけなの!他に意味はないのっ!)
ジュール『ふーん?』
天華『こらっジュール、意味も分からず言っては駄目ですよ“女たらし“とは良い言葉ではないですからね』
ジュール『はーい、ごめんなさい』
(あ、“女たらし“の意味は分かっていなかったんだね、うん、それなら仕方ないね次から気をつけようね)
少しシュンとなったジュールの頭を撫でながら言うと『はい!』と元気なお返事が返ってきて ほっとした 、しかし急なジュールからのディスりにかなり焦ったが何とか表情に出さずにすんだ。
へティ「あ、有り難うございますアトリー様、ア、アトリー様も今日も凛々しくて素敵ですわ」
「ふふっ褒めてくれて有り難う今日は初めての王都散策だから皆んなが気合を入れて支度をしてくれたんだ」
今日の服装は夏場と言う事もあり散策する上で暑苦しそうな長袖ジャケットを着ないで フレアーになっている襟を薄い水色のクラヴァットで飾り、袖はゆとりがあり袖口は幅広で三つボタンがついている白いドレスシャツを着た上に 、テールコート見たいに後身頃の裾が長くなっている 大きなダブルボタンでとめた青系統のベストを羽織っている。
ズボンは薄い水色の細身のスラックスを履き、靴はふくらはぎまで有る紺色のブーツでトップエンドに折り返しがついていて、その折り返しの部分に金色の刺繍が施されているブーツだ。
シャツの袖口の先やベストの前合わせ部分の裾には白いフリルがふんだんについている、これぞ夏の爽やか“ゴスロリ風王子様ルック“になっていた。
それに、髪型は両サイドの髪を後頭部に向けて編み込み襟足辺りで余った髪と一つにまとめて紺色のリボンで飾り後ろに流してあるシンプルな仕上がりだ。
(あ、紺色のリボンは聖獣皆んなとお揃いだよ、この紺色のリボンよく見ると両縁に金色のラインが入ってて可愛いんだよね、
あれ?よく見ると両親と色味が似ているな 今日は両親のペアコーデじゃなくて私も入れた親子コーデだったか・・・)
宝飾品はクラヴァット部分に例の“強力なお守りと化したアメトリンのブローチ“を付けてあるだけ、見た目に反して動きやすいのが特徴だ、なのでいつも通り聖獣皆んなを抱き上げても苦にならない。
そうしてへティと互いの装いを褒めているとソル他男子2名が難しい顔でどう褒めるべきか悩んでいた。
「ふふっ皆んなそんな難しく考えないで素直に可愛いよって褒めれば良いんだよ」
私に言われて3人は「可愛いよ」とか「似合ってる」とへティを褒めていた、褒められているヘティは嬉しそうに頬を赤く染めながら恥ずかしそうに「有り難う」とお礼を言ってた。
その光景を親達は微笑ましそうに見ているのも気付かずに子供達は今日の王都散策の話になって、楽しく話しているといつの間にか姉様達やお祖父様達も降りてきていた。
その事にお祖父様達が先に来ていた人達に挨拶を交わしいる時に気づき 私は一通り女性陣の装いを褒め お祖父様には女性褒めていたことを褒められた。
その後すぐに出発する事になり玄関を開けると そこには・・・
お子様5人「「「「「わ~!凄い!」」」」」
(おぉ、何これ初めて見た!マイクロバスみたい!これも馬車なのかな?あ!、前にいつもの馬さん達が四頭並んでる!)
それは横に長い全長6~7mはある箱馬車だった見た目は前世でよく見たマイクロバスみたいな形状だが、この世界の大きな都市の大半にある辻馬車がこの形状をしているので珍しくはないが今 目の前にある長い箱馬車は貴族使用で美しい装飾が施されていた、
*本でこの長い箱馬車の存在は知ってはいたけどこんなに長いとは思っていなかった、せいぜいファミリーワゴン程度だと思っていたアトリーであった。
「凄い長い馬車だね!」
ソル「初めて見ました」
イオネス「僕は領都の市街地で似たような辻馬車は見たことありますがこんなに綺麗な装飾がされた長馬車は見たことありません」
ベイサン「僕もです」
へティ「私もです、でもとても綺麗で素敵ですね♪」
「へぇそうなんだ市街地の長馬車も見てみたいなぁ」
父様「ふふっ 王都の市街地にもあるから通りがかりに見ることが出来るよ、さぁ皆んな 中に入って出発しようか」
お子様5人「「「「「はーい!」」」」」
ワクワクしながら皆んなで馬車に乗り込むと、
お子様5人「「「「「⁉︎」」」」」
(え⁉︎中が外見より広い気がするんですけど!、・・・あれかな“空間拡張“ってやつかな?しかしそんな高度な魔法を付与された馬車をしれっと使う我が家はさすが公爵家なのか?ん?そう言えば全員乗れるのは良いけど合計何人乗るのかな?それに馬車に繋がれていたお馬さんは四頭…
これ普通なら20人以上乗ったら四頭で動かせるものなのかな動かせたとしても馬の負担が半端ないと思うけど そこは大丈夫なのかな?それともその負担も軽くするような付与もされているのかな?そうなると“重量軽減“かな?てか これ絶対 値段高いヤツだよね)
父様「ほらほら早く好きなところに座りなさい他の人が乗れないよ」
お子様5人「「「「「!、はーい」」」」」
中は広いだけあって色々と快適空間を極めている内装だった前 三分の一は両側を2人掛けのソファーが間隔をあけて3列並び中央の通路は人が2人並んで通れるぐらい空いていた。
その奥に行くとここはリビングかなっと思うほどのくつろぎの空間が広がっていた両側の窓際沿いにベンチぽいソファーが置いてあり窓を背に座れるようだ、その両端には小さな机も置いてある 。
中央はカーペットの上に大きめのソファーセットが置いてあり、そこでゆったりとお茶をする事ができるようになっていた、そのさらに奥には壁になり扉が1つあった。
私達は、はしゃぎながら中を見て回りベンチぽいのソファーを窓の方が見れるように移動してもらって並んで座った。
父様「皆んな そこで良いんだね?」
お子様5人「「「「「はい♪」」」」」
父様「では着くまで大人しく座っているんだよ」
お子様5人「「「「「はーい!」」」」」
元気よく返事をして、次々入ってくる大人達を眺めていると 母様の専属メイドのリアさんが奥にある扉に入って行ってしまった、奥に何があるのかと不思議に思っていると扉が開きリアさんがトレーにお茶の準備をして戻ってきた。
(ほうほう、扉の向こうに給湯室があるのかな?しかしこの長馬車?だっけ?これだけ広ければここで寝泊まりもできるよね、キャンピングカーみたいで楽しいな♪)
そう考えていると私達の膝の上で寛いでいた聖獣3人を撫でながら窓の外を見ると景色が動き出した。
「動き出した」
イネオス「あ、本当ですね、今日は最初はどこに行くんでしょうか」
ソル「確か昨日のお茶会にも参加されていたヘンドラー商会に行くそうですよ」
イネオス「ヘンドラー商会?」
「お祖父様達が僕達の誕生日とかにいつもくれる おもちゃやパズルとかを取り扱っている 商会だよ 昨日見に行くって約束したんだ、急に行くことが決まったから皆んなが楽しんでくれると良いけど…」
(まぁ、父様は元々連れて行く気だった見たいだけどパズルの専用ケースの話が出た事で本決まりした感じだったからね)
へティ「そこはおもちゃを主に取り扱っている商会なんですか?」
「どうだろう、僕はそう聞いたけど他に取り扱っている物があるかは知らないんだ、ごめんね?」
へティ「い、いいえ、そんな気になさらないで下さい、ただ何があるかなって思っただけですから、それに着いてからのお楽しみになって良いじゃないですか」
「確かに何があるのかは着いてからの楽しみだね、おもちゃ屋さん行くの初めてだからワクワクするよ♪」
ベイサン「僕も楽しみです!おもちゃ屋は何度行っても飽きなくて楽しいですよ♪」
「そんなに?ふふっ もっと楽しみになってきたよ♪ 」
そう話しているうちに馬車はいつの間にか貴族街を抜け王都の市街地に出ていた。
「あ、大通りだ」
市街地のもメイン通りに出てきていた。
(お~!ちゃんと大通りを見るのは初めてだなぁ)
「人が沢山いるね、それに凄くこっちを見てるね」
ソル「多分この装飾された長馬車が珍しいんでしょう」
「そうか、目立つもんねコレ」
ソル「そ、そうですね」
ついポロッとでた本音に皆んな苦笑いだ。
そんな目立つ長馬車で人目を引きつつお大通りを進んでいくと、周りの建物より一際新しい建物が見えてくる、その建物の前にゆっくりと私達を乗せた馬車が停車した、少しすると周りを護衛していた我が家の騎士達が馬車の扉から建物の入り口までの歩道に2列に並び真ん中を開けるように通行している人の流れを一時的に止めていた。
通行を止められて不満顔の人もいれば今から何が起こるのかと、興味津々で騎士達の間から覗き込む人もいたりと様々な表情の人を見ながら私は(そこまでするぅ⁉︎)っと心の中で叫んでしまった、それに急に通行止めにあった人達に申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。
元日本人の他人に迷惑を掛けてはいけない精神がチクチク痛みながら、その光景を見ていると馬車入り口でいつものやり取りをしていたカイルさんが2人掛けソファーの1番前に座っていた、車内護衛の騎士達を先に下ろし次にその後ろに座っていたイネオス達のご両親やソルの家族達と本日の外出の世話役のメイドや執事が降りて行った。
そしてソファーセットで寛いでいた私の家族が年齢順に1番年上のお祖父様達が降りて行き、私達お子様組は1番後に降りるようだ、最後はカイルさんが降りて馬車の戸締りをするみたい。
順調に降りていくと外が通行人と野次馬でごった返してとても騒がしい、そんな中で母様や姉様達が降りる度に歓声?が起きていた、その音にいつも通り私の肩の上に移動してきた夜月が、
夜月『騒がしいな、人が降りるだけで何が面白いのだ?』
と、やや呆れた感じで呟いていた。
(うーん、なんか前世で言う所の人気アイドルの出待ちしているファン達の声援みたいな感じだね、皆んな美形だらけだからかな?)
夜月『そう言うものか?』
(多分?)
あまり確信が持てない予想をしながら降りる順番を待っていると、イネオス達が先にそれぞれの父親に手を借りながら降りて行き、ソルの次に私が降りるようだ。
(ありゃ、私が1番最後か1番最後って注目を集めるからあんまり好きじゃないんだよねぇ~)
そう思いながらソルがセルドスさんの手を借りながら降りるのを見送ると、次に父様が入り口に来て手を差し出してくれたのでその手を取り、外付けの階段を慎重に降りた。
(うわぁ、この取り外し可能の階段って不安定で怖いなぁ)
そんな事を思いながら降りていると、階段を降り切ると先程まで騒がしかった周りが今は静まり返っている事に気づいた、不思議に思い周りを見渡すと周りの人全員がこちらを凝視している。
(え、な、何?これは何で皆さんこちらを見て固まってるのかな?)
周りの反応に戸惑っていると父様が、
父様「アトリー気にしなくて良いよ、さぁ中でアビル達が待っているよ」
「は、はい父様、ここがヘンドラー商会の店舗なのですか?周りの建物より随分 新しい感じがしますね」
と、手を繋ぎ先に建物の入り口の方に歩いて行っている皆んなの後に続いた。
父様「そうだねここの店舗は2年前に建て替わったばかりだからね周りの建物よりかなり新しい方だよ」
「そうなんですね、しかしこんな大通りの良い場所に店舗を出せるなんてヘンドラー商会は凄い商会なんですね」
父様「そうだね、ここ数年で新しい商品をいくつも売り出して急激に業績を伸ばして大きくなった凄い商会だよ」
と、会話しながら歩いていると 通行人を押しとどめている騎士達の間から3歳ぐらいの小さな女の子が後ろから押し出されるように前のめりにこちらに向かって転んでしまった、その時 手に持っていたクレープのような食べ物が宙を舞い 私の肘あたりに直撃 肩に乗っていた天華には当たらなかったが 転んでしまった女の子は転けた事によって今にも泣きそうにして地べたに寝そべっている。
(あらあら、コレは痛い転け方をしちゃったね)
私はとっさに父様と繋いでいた手を離し、女の子に近づいて屈み 抱いていたジュールを脇に下ろして女の子を抱き上げて立たせた。
「大丈夫?何処か怪我してない?」
女の子のスカートや髪についた汚れを軽く叩きながら怪我の有無を確認していると、後ろから父様とオーリーとカイルさんが近づいてきた。
オーリー「アトリー様お召し物が汚れておりますのですぐに落としますので少しお待ち下さい」
「うん、分かった、…あ、ここ怪我してるね、痛い?大丈夫?お母さんかお父さんと一緒に来たのかな?」
女の子はまだ涙ぐんでいるけど私の顔を見て固まったままだ。
オーリー「“クリーン“…、はい、綺麗になりましたよ」
淡い光が汚れた部分を包み光が収まるとそこにあった汚れが無くなっていた。
「あ、うん 有り難うオーリー、…ん?そうか君動かないでね、えーと“キュア“ついでに“クリーン“」
オーリーの“生活魔法“で綺麗になった服を見て“生活魔法“の中にある軽度の怪我を治すことができる“キュア“の魔法を思い出し女の子に掛けたついでに“クリーン“の魔法も使って見たらオーリーより明るい光を放ち思った以上に早く怪我が治り、汚れもかなり綺麗に落ちて少しびっくりしたけど、これで女の子が痛くないならいいかと思い納得した。
「うん、よし綺麗になったね、君お名前は?」
女の子「マ、マリサ」
小さな声で名前を告げた女の子の頭を撫で。
「マリサちゃんね お名前言えて偉いね、でもごめんね マリサちゃんの持っていた食べ物は僕の洋服が食べてしまったみたいなんだ、だから後でまた同じのを買ってもらってね、・・・ねぇオーリー、さっきの食べ物って値段はどれくらいかな?」
オーリー「そうですね、100リトスほどかと…」
「そう、今それぐらいのお金持っているかな?マリサちゃんにあげたいんだけど…」
そう言うと後ろにいたカイルさんが質の良さそうな皮の巾着袋を取り出し、そこから銅色の硬貨を2枚出し私にくれた。
カイルさん「アトリー様こちらが一枚100リトスの銅貨になります、先程のお菓子は100リトス前後しますので多めに200リトスあれば十分かと…」
「うん、分かった有り難うカイルさん」
その銅貨を受け取り女の子の手に握らせた。
「マリサちゃん これでまた買って貰ってね、それとお母さん達とはぐれない様にちゃんと手を繋いで歩こうね」
私がマリサちゃんの相手をしている間に父様が指示を出し彼女のご両親を探していてくれていた様で、ご両親は青い顔をしながらひたすら父様と私に頭を下げて謝っていた。
「気にしないで下さい、でも小さいお子さんから目を離すのは危ないので今度からは気をつけた方がいいですよ」
*この時、周りにいた大人達は(あなたも十分子供ですけどね‼︎)と心の中で叫んでいただろう。
と、一応 注意しておいた、最初は固まっていたマリサちゃんも最後の方は笑ってバイバイと手を振っていたので私も手を振って返すと嬉しそうに。
「おにーちゃんありがとー」
と、言ってくれた。
(やっぱり小さな子は可愛いな~、前世での妹や弟の子供時代はめちゃ可愛かったし、姉や妹が産んだ甥姪達もめちゃくちゃ可愛くってよく面倒見てたなぁ)
と、前世を思い出しつつ父様とまた手を繋ぎ 商会の入り口に向かい歩いていると。
父様「アトリー、いつの間に“生活魔法“を使えるようになったの?」
と、聞かれたので、
「?さっきオーリーの“魔法を見て初めて使いました」
と、素直に話たら。
父様「え!、初めて使ってちゃんと発動したのかい⁉︎」
「はい、試してみて発動しなかったらオーリーにして貰うつもりでしたが意外と簡単に発動したのでびっくりしました」
(そうなんだよね~失敗覚悟でしてみたら簡単に発動できたから拍子抜けだったんだよね、初めて魔法を使う為にはかなり練習が必要だと本に書いてあったのに案外あっけなくできたから びっくりしたけどなんか「これから頑張って練習するぞ!」と思ってたけど物足りない感じがするんだよね)
と、少し残念に思いつつ父様に言ったら。
父様「そうか、アトリーは毎日 真面目に“魔力操作“と“魔力循環“の鍛錬をしているから発動しやすかったのかもしれないね」
「そうですか?それならもっと鍛錬して沢山魔法を使いこなせるように頑張りますっ!」
フンスッ!と気合を入れた。
父様「鍛錬するのも良いけど無理はしないようにね」
と、苦笑い気味に言いながら頭を撫でてくれた。
「はい、無理はしません」
(そうだ、月詠様からも無理をしないように言われてたんだった)
頭を撫でられとたん力を抜きへにゃっと笑った。
夜月「なぁーう」『そうだぞ、無理は禁物だぞ』
と、他の聖獣2人にも続けて『無理は駄目!』と言われてしまって無理しない程度に鍛錬をすると約束されてしまった。
(むぅ、まだ始めても無いのに注意されてしまった…)
そう会話しいると店舗の入り口で母様が待っていたので急いで近づくと、
母様「アトリー小さい女の子を助けてあげて良い子ね」
と、頭を撫でられて褒められたのが嬉しくてニコニコのまま店内に入っていった、そこには先に入店していた家族とソルやイネオス達友人家族達も入り口近くで待っていたので遅くなったことを詫び、その後はソルやイネオス達と店内を見て回ることになった。
(転生して初めてのお店でのお買い物楽しみだ♪)
と、ワクワクしながら店内を見渡した。
*アトリーが馬車から出てきて小さな女の子を相手している間の様子を一部始終みていた通行人や野次馬達は、最初はアトリーの美貌に目を奪われ黙り込んでいたが小さな女の子に対する対応を見て誰かが「まるで慈悲深い聖女様のようだ」と呟いたことにより、その場にいた人達が「服装から見て男の子だから聖人様では」と言い出し、
その上 先日 貴族街にあるリトス教の神殿で行われた“洗礼と祝福“の最中に公爵家の子供に起きた奇跡を知っていた誰かがアトリーの肩や腕に抱いていた動物が聖獣様ではと言い出し、結局はその事でアトリーの素性がバレて最終的には「聖獣様を連れた公爵家の麗しの聖人様」と言われるようになってしまった、その後もこの話が方々に広がり 後にこの名称が定着してしまうのであった。
当の本人はあまり目立ちたくないと思っているがその容姿と家の位の高さ、そして聖獣や主神の加護、全ての要素が合わさりどうしても目立ってしまうアトリー、そんな彼にのんびり冒険者ライフは訪れるのであろうか?