18話 “学園祭“準備開始!!
はい、どうも、僕です。現在、夏の長期休暇も終わり、紅葉が色づく頃、僕は、“学園祭“の準備に忙殺されている所です・・・
ソル「アトリー様、バター醤油焼き用の貝類が届きました、どこに置きましょうか?」
「あ、貝類は中庭方面の入り口近くにある冷蔵庫に入れておいてー」
ソル「分かりました、一応、種類別に入れておきますね」
「うん、よろしくー」
ベイサン「アトリー様ー、こっちの届いた果物、ゼリー用に使うのは何箱分でしたっけー?」
「それは各種二箱分だよ!盛り合わせ用は三箱分ねー!」
ベイサン「はーい、分かりましたー!このまま、ゼリー用の果物は絞り始めて良いですかー?」
「あ、良いけど、リンゴとナシは気をつけてねー、色が変わっちゃうから、レモン汁を少し垂らして置いておくか、すぐにアイテムリングに入れて置いてー!」
ベイサン「了解でーす!!」
へティ「アトリー様、タマネギの千切りが終わりましたので、次のキュウリの方を始めて良いですか?」
「あぁ、ヘティ、早かったね。皆んな疲れてない?キュウリは休憩してからでいいよ?」
ヘティ「あ、そうですね。一旦休憩をとります、アトリー様も御休憩なさってください」
「あー、うん、この白身のフライ用の最後の1匹を捌き終わったら休憩するよ」
と、今日は“学園祭“の前日で朝から出店する飲食店準備中です。
今はマルキシオス領で手配していた食材が次々学園の入り口まで運び込まれ、それをソルや他の男子生徒達が僕達の出店場所となる食堂まで運んで来ては、置き場所を聞いてきたり、届いた食材の下拵えの量や手順の確認などをして、その間に僕は届いた魚をメニューに合わせて片っ端から捌いていっている最中だったが、ヘティが休憩を勧めてきてくれて、今やっと自分が休憩していないことに気づき、手を止めた。
へティの後ろをよく見てみれば、ヘティと一緒にタマネギを薄切りしてくれていたクラスメイト(包丁が使える貴重な戦力の女子2人)が、ボロボロ涙を流しながら懇願するように見ているのに気づき、少し申し訳ない気持ちになって、今持っている魚を捌き終わったら自分も休憩することにした・・・
そうするとソルやイネオス、ベイサン、ロシュ君、リリ嬢達、お手伝いしてくれているクラスメイトも作業の手を止めて、厨房内でお茶の準備をし始めた。
(休憩の準備早いなぁ、皆んなは外でのんびりしても良いのに、ここから離れられない僕に付き合ってくれて申し訳ねぇ(*´ー`*)・・・)
今日、“学園祭“の準備をしているAクラスのクラスメイトの中で、僕達、“軽食制作班“と“飲料制作班“は、この大きな食堂の厨房を半分に分けて使用しているのだが、物資の搬入と下拵えの段階から、この場所には特定の人しか出入りできないように結界を張って、その上に僕の薬物や体に害になるものを検知できる“加護の結界“広げているので(それが学園から飲食店を出店するための条件だった)、僕はこの場から離れる事ができないのだ。
そんな僕を気遣って、この“軽食制作班“の人員は厨房からすぐに出れる中庭にも行かず、厨房の流し台付近で魚を黙々と捌いていた僕の側で休憩のお茶をしてくれている。
これまで、学園入り口とこの食堂を行き来してくれていたソルやイネオス、ベイサン他数人の男子や、朝からずっと下拵えを手伝ってくれていたへティやリリ嬢、ロシュ君他2名の女子達、そんな彼らを見ながら(これが終わればまた別のメニューの下拵えが待っているのに・・・)、と思って僕はもっと自由に過ごしてくれても良いと思うのだが、皆んな笑顔で楽しそうにお茶をしている。
(まぁ、ソルとイネオス達は、それとは別に僕がここを離れられない理由があるから、一緒にいてくれているんだけどねぇ( ̄▽ ̄)・・・)
その理由は、夏の長期休暇が終わって、休みの間の浮かれた気分が抜けてきて、“学園祭“をやるぞ!と言う空気感が出てきた頃、そのやる気の中で、僕に関した変な噂が流れ出してきたのだ。
その噂を聞いた所によると、
“とある、一部の女子生徒だけで構成された部活動?の様な事をしている組織?団体?と言って良いのか分からない所が、“学園祭中“に僕にある事をするために何やら作戦を立てている?“とか、
“以前、揉めたボレアースの貴族子息を雇っていた、例の“ボレアースの王女殿下“が、“学園祭“の別クラスの催し物である“腕試し大会“を利用して、僕に“求婚の決闘“??とやらを申し込むつもり“だとか・・・
その他にも嘘か本当か分からない噂が次々出てきて、幼い頃に闇の精霊王の“オスクリタチェーニ“こと“リタねぇね“に紹介された、闇属性の上位精霊に頼んで調べて貰った結果、先の二つの噂が本当にやるつもりだと判明し、その怪しげな作戦や申し込みに備えて、僕は“学園祭中“もこの結界の張られた食堂の厨房から出ないことにしたのだ、ソルやイネオス達は、いつも側にいるジュール達が厨房に入れないから、その代わりにその凸って来る人達から僕を守ると言って、今もそれを警戒して一緒にいてくれていたりする。
(“まじ、申し訳ねぇ“、と思うと同時に“心から感謝!!“・:*+.\(( °ω° ))/.:+)
そんな強い味方に囲まれて、まったりお茶をしていると・・・
?「あ、あのっ!よ、宜しければ、私達の作った飲み物を味見していただけませんかっ!?」
と、少しおどおどした様子の隣の班、“飲料制作班“の人員の1人の女子生徒が、僕に出店用のドリンクメニューの一つ、“抹茶“を持ってきた。
ソル&イネオス達「「「「「っ!!」」」」」 ガタガタッ!!
女子クラスメイト「えっ!?」ビクッ!
「皆んな、落ち着いて、厨房の中に持ち込めたって事は大丈夫だよ」
突如、飲み物を勧めてきた女子クラスメイトに、ここ最近、噂の件と以前の帝国であった毒殺未遂の件も相俟って、警戒心がマックスになっていたソルやイネオス達が敏感に反応し、素早く警戒体制に入った。皆んなの急な警戒態勢と威嚇に驚き固まった女子クラスメイト、僕はすぐに大丈夫と判断し、皆んなに警戒を解くように言うと、ゆっくり力を抜き、警戒態勢と威嚇も解いて、少し離れて行く。
ソル「・・・そちらは僕がお預かりします・・・」
そう言って、ソルだけは僕の側を離れず、飲み物を持ってきた女子から、その飲み物を受け取り様々な角度から入れ物を観察し、常備している銀のスプーンでかき混ぜてみたり、匂いを嗅いでみて、最終的に銀のスプーンで一口飲んでみてから僕にその飲み物を渡してきた。
(そこまでしなくても、と思うけど・・・まぁ、前回の件やここ最近の不安な動きの件もあるからなぁ、やめろとは言えないんだよねぇ(*´Д`*)・・・)
「・・・ごめんね、ソルは僕のためにしてくれている事だから、僕に免じて許してほしい・・・」
と、過剰な反応とは思いつつも、高位貴族としては当たり前の警戒すべき事柄なので、ソルを咎めることもできず、そう言って謝ると、
女子クラスメイト「は、はわわっ!い、いいえ、き、気にしてません!む、むしろ、考えなしに、も、持って来てしまって!!す、すましぇんっ!!」
(あ、噛んだ・・・( ´ ▽ ` ))
「「「「「ぷっ・・・!!」」」」」
ガチガチに緊張した彼女は言葉を噛んで涙目、その様子に皆んなは先程の警戒態勢とは打って変わって、笑いを堪え出した、それで一気に緊張感は抜けて、軽く息を吐いたソルから飲み物を受け取ってゆっくり飲んだ。
「ふぅ、この“抹茶“かなり良いの使ってるね、でも、今回の軽食のお供には合わないんじゃ・・・」
女子クラスメイト「あ、そ、それはその、デューキス様がお好きだと言うのをお聞きして、み、皆んなで相談してメニューに加えたんです・・・」
「!、そうなんだ、・・・ふふっ、ありがとう、美味しかったよ。でも、これはこのまま飲むより、ミルクを加えて、砂糖で甘くして“抹茶ミルク“にしてから提供した方が美味しいよ。それにこれだけだと、軽食には合わないからね、“抹茶ミルク“単体で美味しく飲める様にすれば売れるよ・・・」
女子クラスメイト「っ!!、は、はいっ!そ、それで、売ってみます!!あ、あ、ありがとうございましたっ!!」 ダッ!!
と、言って、すぐに走って自分の持ち場に戻って行った女子に皆んなはポカンッ顔・・・
「あっ、・・・名前を聞くの忘れた・・・それに、コップ・・・・」
ソル「・・・はぁ、・・・僕が後で、洗って返しておきますよ・・・」
「あ、うん、よろしくソル・・・」
いまだにクラスメイトの顔と名前が一致してない僕は、走り去っていく彼女をなんと言って呼び止めたら良いか分からず、呼び止めようとした手が宙を切った。それを見ていたソルは、彼女のマナーの悪さに呆れた様子で軽くため息を吐き、自分が後で洗って返却しておくと言って、空になった僕のコップを回収したのだった。
その後は、ソル達が用意してくれたお茶とお茶菓子で、十分に休憩をとってから“学園祭“の準備の続きを開始、僕は結局、その日、1日を食堂の厨房で過ごし、全ての下拵えを済ませて、帰宅した・・・・
「はぁ、・・・一日中料理の下拵えするのは疲れたなぁ・・・ふぅ・・・」チャポンッ・・・
ソル「今日は念入りにマッサージいたします」
帰宅して夕食を取り終わった僕は、今日の疲れを取るためにゆったり湯船に浸かっていると、今日も今日とて、ソル達専属に入念にマッサージされるようだ。
「・・・ソル、ソルも今日はかなり動いてたんだから、君もマッサージしてもらいなよ・・・」
いつもいつも、何かにつけて僕のお手入れに力を入れるソルと専属達に、言いなりになるのも癪だと思い、ダメもとでソルも巻き込もうとしたが、
ソル「僕は良いのです。それよりアトリー様、明日に備えてお早くお休みになった方がいいですよ。そろそろ湯船より上がってこられてください、のぼせますよ」
と、本人にあっさり拒否され、他の専属達の同意も得られず、さっさと湯船から上がってお手入れされたら寝ろと言われてしまった・・・
「・・・むぅ・・・はいはい・・・」ザバァーーッ・・・
お手入れをする準備万端で、こちらを見てくるソルや専属達の圧を感じ、渋々、湯船から上がり大人しくマッサージを受けることにした、
(あ、そうそう、僕ね、念願のシックスパックになったよっ!6つに割れたよ、お腹っ!14歳ごろまでは中々筋肉が付かなかったんだけど、身長がぐんぐん伸び始めてから徐々に筋肉がついてきて、今じゃ何処に出しても恥ずかしくない細マッチョになったんだよっ!!・:*+.\(( °ω° ))/.:+ドヤァ・・・)
と、言うことで、湯船を上がる時、自信を持って見せることができるようになった(大事なところ以外)。そして、ただこれが言いたかっただけです。はい・・・
「ふぅ・・・気持ちいい~、寝ちゃいそうだよぉ~・・・あ、そう言えばソル、今日、僕に“抹茶“を持ってきてくれたクラスメイトの彼女、どこで僕が“抹茶“好きって聞いたんだろう?僕、学園でそんな話した事あったっけ??」
ソル「・・・?どうでしょう?いつもの場所で昼食の際にその様な会話をした様な気がしますが、クラスメイトがいる教室でその様なことを言った覚えはないですね?」
「だよね?僕が学園で皆んなの前以外で飲食したのは今日が初めてだったような?あ、でも、野外実習で何度かあったか?でも、そんな話題になった事はないしなぁ・・・それにソルが言ったように、“抹茶“を初めて食べたのは夏休暇前の放課後に行ったあの店だったし、それ以降は何故か屋敷でも“抹茶“を使った飲み物や食べ物がたくさん出てきたからなぁ、それ以外ではやっぱり学園での昼食の時間でしか食べてないから、他の場所でそんな話題にはならなかったよね?僕が人前で、“抹茶“を気に入って好きになったって言ったのも、最初に“抹茶“を食べたあのお店の中だった・・・あの時に付き纏っていたご令嬢達の誰かに聞かれてたかな?」
ソル「・・・そうですね。そう考えるのが妥当かと・・・しかし、アトリー様の好物の一つを広く知られてしまったのは困りましたね・・・アトリー様、今まで以上に差し入れで渡されるものに十分お気をつけになってくださいね?」
「うん、分かってるよ・・・」(当然の好物も気軽に食べられなくなるとは、本当に面倒くさい・・・(*´Д`*))
今回の“学園祭“の件で、僕の判明した“加護の結界“仕様を聞いた父様達から、“王家の血“をひく高位貴族として、また、“神々の愛し子“として、他者から貰う食べ物に十分気をつけるようにと、ここ最近口酸っぱく言われているので、心底面倒だと思っているけど、“僕の好物についての情報は何処からきたものか?“、“その情報を何処かの誰かが悪用しようとしているか?“、そう言った調査も絶対するように、と言われているので、彼女の情報の元を推測してみたが、どれも確信に足る情報とは言えずに、モヤモヤした結果が出ただけで、面倒感が増した僕でした・・・
・・・・一方その頃、王都内の何処かにある家の一室・・・・
?「うふふっ、“あのお方“が、私が提案したものを美味しそうに飲んでくださったわ!!やっぱり、私が1番“あのお方“の事を考えてるって、皆んな思ったはず!次はもっと“あのお方“のためになるものをご用意して差し上げなきゃ!!うふふっ♪」
そうして、室内で楽しそうに女性はうっとりと空を見上げ、妄想に耽り出す・・・
・・・・またどこか別のお屋敷の一室でも・・・・
?「ついに、明日から“学園祭“!この機会を逃すわけにはいかないわっ!絶対にっ!!」
気合いを入れるご令嬢はどこか鬼気迫る迫力があった・・・
・・・・さらに、学園の特別寮の一室でも・・・・
?「“学園祭“の開催中に絶対、申し込みを受けて貰えるまで、粘ってみせますわ!!」
?「私達も協力いたします!!」
?「絶対、成功させてみせます!!」
と、複数の女性に囲まれて、これまた気合いを入れる一際身分が高そうな女性、彼女はキラキラと瞳を輝かせていた・・・
・・・・そして、最後に、王都内の誰も来ない路地裏にある寂れた酒場では、怪しい黒いローブ姿の者達が、ひっそりと集まっていた・・・・
?「計画は順調だ。あとは、手懐けた内通者に“例のもの“を渡すだけだが・・・」
?「抜かりない、明日、学園内で接触し、渡す・・・」
?「それならいい、今回は絶対に失敗できない、他の者達にも手順を守るように徹底しろ」
?「分かっている・・・」
?「「「“あの方“のお望み通りに・・・そして、我らの悲願のためにっ」」」
怪しいローブを見に纏った者達は自身の胸の前で手を組み、祈りを捧げて、寂れた酒場から闇夜に紛れるように消えて行った・・・・
こうして、人知れず、複数の思惑が明日から開催される“学園祭“で絡み合う・・・・




