38話 “大会最終日10・特大の衝撃を与える・・・“
「じゃ、まずは着替えますか、・・・ソル達はその隙に移動するように「「「「はい・・・」」」」、では、行くよ、“神器召喚・祭事服“からの、“神器解放・戦闘服モード“」
ソル達と軽く打ち合わせして、久しぶりの“神器召喚“と同時の“神器解放“で闘技場内は眩い光に包まれた。
その強い光に包まれた僕は自分の服が“神器の祭事服“に変わったのを認識したと同時に、その“祭事服“がまた別のものに変化して行くのを感じた・・・・
(万が一って思って、邪魔にならないように髪の毛をスッキリと編み込みで纏めてもらってて良かった、ん?あれ?いつもの戦闘服と違う?・・・)
普段、“神器“を扱うことのない僕がそんな異変を感じるようになったのは、去年、“神器の祭事服“を使う出来事が続いたことがあったので、その出来事の後に、この際だから、“神器の祭事服“の効果、と言うか、“神装“のコントロールを覚えようと言う事になって、それまでは“祭事服“が僕の“神力“に反応し状況に応じて形を変えていたのだが、流石に今までのように成り行きに任せて“神装“を展開させていると、いつか過激な服装に変化することがあるかもしれない、と言う懸念が出てきた為、自分の意思で“神装“を変えれるようにしようと言うことで、特訓に励んだ結果、これまでに変化させれた2つのモードを“神器解放“としてコントロールできるようになっていた・・・
だが、今回コントロールで変化できるようになっていたモードの1つである“戦闘服モード“、以前にゴブリンの巣で変化した軍服風の戦闘服になるはずだったのだが、今、それとは全く別の服に変化していっていた、軍服風のそれとは全く別のもっと動きやすい装いに・・・・
(何で、チャイナ風?・・・)
光が徐々に収まり、その変化がよく見えてきて、1番に思ったことはチャイナカンフー服と言えるような服だったことだ。僕は今までに見たことのない“神装“に首を傾げながらあちらこちらを見てみた。
上のインナーは肌にピタッとした白の七分袖で、その上から、さらさらとした光沢のあるサテン生地ぽい、紫の袖無しロング丈のカンフー服で、その上半身は体にフィットしているが、腰から脛の真ん中まである裾はスリットが入ってゆとりがある、その紫のカンフー服の前はカンフー服らしく細かい装飾のされた白いチャイナボタンが、立襟の首元から下腹らへんまで、間隔をあけて五つついており、その背中には“祭事服“の背中に入っていた刺繍が施されており、それがかろうじて“元祭事服“だったことを思い出させる。
そして、下のズボンがよく太極拳をする人が着ている、足首がキュッと絞られているが、全体的にダボッとゆとりがある、これまたサテン生地の白いズボン、足は履いていた革靴から柔らかい生地の布靴に変わっていて、これはどこをどう見ても“チャイナカンフー“だ、でも、とても動きやすいデザインだと1人無言で頷きながら納得していると、
全体「「「「「「「・・・はぁっ!!!???」」」」」」」
観客達「な、何で、服装が?」 「ひ、光ったよね!?」 「う、うん、光った後に服が変わってる・・・」 「い、今、何が起こったら、ああ、なったの!?」 ザワザワッ
襲撃者達「い、今、今の何が起きた!?」 「今の、魔法か?・・・」 「あの光はなんだ!?魔法攻撃か!?」 「今の一瞬で、服装が変わったぞっ!?」 ザワザワッ
とあるボックス席で「今のは魔力の光ではないな・・・・」 「では、やはり“神力“?・・・」 「では、神がまたあの“愛し子“に力を貸したと言うのか?」 「いや、あの“神力“はどの神の“神力“とも異なる感覚がした・・・」 「何?と言う事は、あそこにいるのは“現人神“だとでも言うのか?」ヒソヒソッ
「ならば、これはまた歴史の節目がやって来たと言うことか?」 「時代が動くのか?」 「それはあの“愛し子“、いや“現人神“次第であろうな・・・」ヒソヒソッ
(おっと、今ので気づいた人達がいるな・・・まぁ、良いか、“彼ら“なら他に言いふらすと言った事はしないだろうし・・・多分・・・お、ソル達は問題なく行けたね、次は僕の番っと!)
あちらこちらで今起こった事に動揺し理解が及ばない人達の囁きや、たったこれだけの事で僕の正体に気づいた人達の観察してくる視線に気づいた。
今回の衣装チェンジに使った“神力“は普通の人では感知できないほどの量しか使っていないので、一般の観客席にいる人達はやはり“魔力“と“神力“の差に気づく人は少なく、違和感に気づいたとしても、これが“神力“と言うものだとは分からないぐらいが一般的な反応ではあるが、今、この場所には各国の王侯貴族や要人達が集まっている場所なので、その中でも、参加選手はいないものの、国際的な交流を目的とした“国際武闘大会“の観戦者として来ていた、“オクトゴン竜王国“の人達には僕が“現人神“だと言うことに気づかれてしまった。(補足:リトス教を信仰してなくても、竜人族は長命だから今までの人生で、神々の放つ神力を直接みたことがある人が多いから違いがわかるらしいよ( ・∇・))
だが、彼らは多種族との貿易などはしているが、政治的闘争などには興味がないので、この事を他国に言いふらしたりはしないだろうと言う理由から、今はこれと言った対処はする気はなかった。
そして、僕があらゆる人達の注目を集めている間に、ソル達はこちらに近づいて来ていたデューキス家の騎士団と協力し、舞台上からグラウンドの出入り口までの間の退避ルートを確保しつつ魔物達を倒し、それで見事、元人質4人を安全地帯まで退避することに成功したようだった。
「さて、着替えが終わったから、先程の賭け通り、魔法無し、武器無しの素手で、魔物達をお相手させて貰うよ」 ザッ! くいくいっ
元人質4人の安全が確保されたのを確認した僕は、今のことで混乱する襲撃者達を無視し、拳法の構えをとり、魔物達に向かってブ○ース・リーばりに挑発的に手招きをした。
獅子獣人「なっ!?本当にやる気か!?そ、それに今のは何だ!!魔法で何かしたんじゃないのか!?」
「いや、魔法じゃないよ?これの効果だよ、登録している服に着替えれるものなんだ、ただ、衣装を変える時少し光ってしまうんだけどね・・・」
そう言って、左腕につけているブレスレット型の“神器“を見せると、それを聞いた観客達や襲撃者達は勝手にそう言う機能のある魔道具だと勘違いして納得していった。
天華『また巧妙に嘘か本当かも分からない誤魔化し方しましたねぇ・・・』
(ん?何のことかな?僕は嘘は言ってないけど、全て本当のことを言ってないだけだよ?てか、どうしたの?さっきまで静かだったのに急に話しかけるなんて(・・?))
天華『まぁ、今はそれが適切な対処法なのは確かなんで良いですけど、・・・それと、先程までお構いできなかったのは少々いろんな所から情報や連絡が入って来ていたので、ごたついていたのです』
(情報?連絡?ごたついていた?何かあったの?)
僕が光っていた事の説明をしていると、数分ぶりに僕にツッコミを入れてきた天華、人質奪還の時以降、僕が襲撃者達とやりとりしている間ずっと沈黙していた彼女達に何があったのかと聞いてみたところ、どうやら、僕の襲撃者達とのやりとりを見ていた神々、ティーナちゃんや天照ちゃん達が今回の獣人達の“聖獣“に対する信仰心が異常だと思ったらしく、この数分の間に彼らが信仰する“聖獣“達本人から話、もとい、事情聴取していたそうだ、すると、僕の感じていた違和感の通り、本人は殆ど獣人達との接触はなく、粛々と自分達のお役目に徹していたらしく、今回初めて自分が“神獣“だと崇められていることを知ったらしい・・・
(敬われているなぁとは感じていたが、神として崇められているとは知らなかったっかぁ・・・それは、驚いただろうねぇ・・・てか、ティーナちゃん達が動いて、何とかするって言ってたのはこう言うことだったんだねぇ、そう言えば、父様も獣人達がつっかかってくる件で似たようなこと言ってたなぁ~、あっちは外交的なものだろうけど、まだ何がどうなったかは聞いてないな(・・?)・・・)
天華『そこら辺は大人の領分でしょうから、お任せしとけば良いんですよ。あ、アトリー、それと、精霊達からの情報でお耳に入れておきたい事があります。今、こちらに魔物達が召喚された経緯の件で、やはり“移動可能な携帯型の中継機“があったよです。それを持って動いているのが、昨日の昼から動きがなかった“シニストラ“の教師陣だそうで、“ダンジョン“から“闘技場“までのルートを、その“携帯型の中継機“を担いで巧妙に人に紛れて移動しているそうです』
(うわぁ、それは捕まえるのは難しそうだ(*´Д`*)・・・もしかして、彼らが今まで作業場にこもっていたのって、その“携帯型中継機“を作っていたから?・・・まぁ何にせよ、この事を父様にも知らせてあげないと・・・)
天華『それは大丈夫です。もうすでに精霊達を介して情報を入れてあります』
(あ、そうなの?じゃあ大丈夫か・・・)
天華『・・・ただ、あちらからも伝言がありまして、“「事が全て終わったら、お話があります」“だそうです・・・』
(なっ・・・なんて事だ!!、これは確実にお説教コースじゃないか!!Σ('◉⌓◉’)と、父様か!?そ、それとも、か、母様か!?( ;´Д`))
天華『両方です・・・』
(っ・・・・お、終わった、みっちりお説教された上に、僕の夕方の食後のデザートは抜かれるんだ・・・・_| ̄|○)
天華『・・・お説教とデザート抜きはワンセットでアトリーに効きますからねぇ・・・』
(くそぉ、この悲しみを魔物にぶつけてやるぅっ!!( ゜д゜))
天華『・・・清々しいまでの八つ当たりですね・・・』
こうして、天華からの色んな情報や連絡事項で、両親からの“お説教“が確定した僕の気持ちは一気に急降下したが、今、目の前にちょうど良く憂さ晴らしができる魔物が来ていたので、変な気合を入れて、その魔物に向けて大きく一歩を踏み出し、渾身の正拳突きを繰り出した。
「すぅ、はぁっ!!!!」 ドゴッ!!!! ビュッ!! ダァーンッ!!!! ビシッ!パラパラパラッ・・・・シュワァ~・・・・
全体「「「「「「「・・・っ、・・・はぁ~~っ!!!???」」」」」」」
僕の渾身の一撃(手加減あり、渾身とは?)で目の前に迫っていた“豚トロオーク“は、避けることもできずに僕の攻撃を受けて真後ろに真っ直ぐ飛んでいった、グラウンドを囲ってある壁に大激突して壁を少し崩してその姿は霧のように消えていった。そして、その光景を見た人達は再び今日何度目かの驚きと混乱の声を上げて驚愕したのだった・・・
襲撃者達「「「「「なっ!!??」」」」」 「何が起こった!!!???」 「あ、あいつは魔法が得意なだけの非力な人族の子供だろ!?」 「あ、あんな力はないはずだ!!」 「げ、幻覚か!!??」 「そ、そうだ!そうに違いない!!」 「さっきの光にそんな仕掛けがあったんだ!!」 「いや、魔法だ!!魔法を使ったに違いない!!」 「身体強化を使ったんだろう!!」
観客達「い、今の、どう言うこと!?あんな小さくて綺麗な子が、あんな大きな“オーク“を殴り飛ばすなんて!?あ、あり得ない!!」 「そうだよな?あんな細っこい子が・・・」 ザワザワッ 「で、でも、あり得ないとは言い切れないぞ?“愛し子様“は隣国の王家の血を注いでるんだ、向こうの国は様々な異種族と婚姻をして来た影響でどんな能力が出てるか分からないぞ?」 「そ、それもそうか、向こうの平民でさえ異種族婚で生まれた子供は、外見が普通の人族でも変わった能力を持ってるって聞いてるしな」 ザワザワッ 「な、ならどの種族の能力であんな力が出たんだ?」 「力で言ったら“巨人族“か“竜人族“だろうが、どちらの特徴も出てないしなぁ」 ザワザワッ 「でもそれで行くなら“愛し子様“の特性ってこともあるかもだろ?」 「と言うか、素手が強いってのは事実だったんだな・・・」 ザワザワッ
僕の偏った噂しからず、それを強く信じていた襲撃者達は目の前の事実が信じられず、現実逃避気味に否定を続け、その反対に、幅広い噂をしていた観客達はこの事実を現実と受け止めて、たくさんの魔物のことなど忘れ、僕の能力の根源について様々な予想を立てて話し合い出した。
そんな、周囲の反応などお構いなしに僕は自分のやると言った事をサクサクっと実行することにした。
「さて、これからひ弱な人族のヒョロがきの坊ちゃんが、頑張って魔物を素手で倒してみせますね?だから、賭けの対価、忘れないでくださいね?」ビュッ!
天華『さては、根に持ってますね?』
そう言って僕は、賭けの勝利条件である“Cランク以上の魔物“をターゲットに素早く走り出し、獣人達は、
獣人達「「「「「なっ!!?」」」」」
(本物の“ダンジョン“に行く前の良い予行戦闘になりそうだ、ふふっ( ^∀^))
と、引き攣った表情の獣人達の焦る声を置き去りに、程よい運動気分で次々に魔物を殴り飛ばすのであった・・・