35話 “大会最終日7・襲撃者との対面“
はい、どうも、僕です。現在、僕に恨みを持った襲撃者達と対面しています。
・・・数分前・・・・
ソル達がボックス席から出て行った後、僕はボックス席の観覧席から、静かに下を見下ろし、出ていくタイミングを測っていた。
(さて、ソル達がイネオス達の側まで行ったら出るか・・・・)
「あ、着いたかな?では、行ってきます!」
「「「「「えっ!?」」」」」
「よっとっ!」 ピョンッ!
ソルとへティが“闘技場“のグラウンドにいるイネオス達の後ろまで到達したのを見た僕は、そう言ってボックス席の観覧席の手すりに足を掛けて、トウッ!!と言う感じで勢いよく飛び出した。
「「「「「えぇっ!!!?」」」」」 「ちょっ!!!」 「危ないっ!!」 ダッ!!
(“浮遊“後、人質達に“保護結界“っと) ふわぁ・・・
王族3人「「「!???」」」 その他「「「「「あぁ・・・」」」」」ほっ・・・
突然、こんな高い場所から飛び出した僕の行動に誰もが驚き焦った様子だったが、僕がすぐに魔法を発動した事で落下速度が落ちたのを見て、この魔法のことを知っていた身内は安堵の息をはいていた、だが、僕が空を飛べることを知らなかった同級生の王族3人は、驚きで目を見開き固まっていた。
(あ、飛び降りるって言うの忘れてた・・・まぁ、良いか・・・!、や、やべっ!か、母様の顔が( ゜д゜)あ、あれはすんごい怒ってる!!あ、謝りたいけど、もう、結構降りてきてるし、ど、どうしよう・・・いや、向こうが僕にもう気づいてるから今から戻るのもあれだし、無理だな、後で、ちゃんとお説教を受けよう・・・(*´-`))
飛び降りて行くと言うのを忘れていたが“まぁ、良いか“と軽い感じで思っていたら、僕が飛び降りた事に驚いた人達が手すりから乗り出すように手を出していたのが見えた、だが、その中の1人である母の顔が迫力のある笑顔で僕を見つめている事に気づき、僕は内心焦り、謝らなければと思ったが、僕はもうその時にはゆっくり地上に向けて降下していっていたから、僕が降りてきている事に襲撃者達だけではなくたくさんの人達も気づいていたので、今更戻って行くのは作戦的に無理だなと判断し、心の中で後で怒られる覚悟をするのだった・・・
そして、後のお説教が確定して、ちょっと哀愁漂う僕は真夏の太陽を背中に浴びながら、ゆっくり、指定された“闘技場“の真ん中にある“舞台“の上に降下していった。
「あれ、誰?天使様?」 「いや、神だ!」 ザワザワッ 「神の御使様だ!」 「違うよ!人間だよ!だって、上の観覧席から飛び降りてきたのを見えたから、あの人が例の神々の愛し子様だよ!!」 「そ、そうなのか!?」 ザワザワッ 「き、綺麗・・・」 「と、飛んでる??」 ザワザワッ 「本当に人間か!?」 「あれが、神の愛し子だと?・・・」
(うん、良い感じ、今なら彼らも、人質を気にしてないな、よし!みんな!今だよ!!)
ジュール達『『『『『了解!!、今だ!!』』』』』
わざとゆっくり降りることで良い具合に周囲の注目を集め、真下にいる襲撃者達の視線も降りてくる僕に向いている、これがチャンスだと思った僕は、念話でジュール達に呼びかけると、ジュール達は“了解“と返事をしてすぐに、そのままイネオス達に念話で作戦の実行を指示した。
すると、・・・
ドカッ!!「うっ!?」 バキッ!!「がぁっ!?」 ドシュッ!!「ぁがっ!?」 ダンッ!!「ごほっ!?」
「「「「「なっ!!?」」」」」
待機していたソル達がほぼ打ち合わせもないまま一斉に動き、人質を拘束している人族の襲撃者達4人にそれぞれ一撃を入れた。この時、襲撃者達全員があまりの速さと衝撃で、一瞬何が起こったのか理解できてはいなかっただろう・・・
そして、イネオスとベイサンの高速での攻撃や、ソルやへティの視界外からの攻撃に人質を拘束していた襲撃者達は、殴打された事に驚き、痛みで目眩を起こしたり、腕を切られて痛みでうずくまったり、または、足の骨が折れて悶絶したりとして、拘束していた人質達を手放した。そのタイミングを逃さず、ソル達はすぐに人質達を保護、それは僕の着地とほぼ同時、僕はその素晴らしい手際に笑みで地上に降り立った。
「人質の奪還ご苦労様、みんな、・・・それで?あなた達の僕への要件とは何かな?」ニッコリッ
「「「「「・・・えぇぇっ!!!?」」」」」 ドッ!
僕が着地した横に気配や姿を消してソル達のサポートをしていたジュール達が姿を現した、それに続くように奪還した人質達を連れたソル達が僕達の後ろに並んだ、僕はそんな彼らを労った後、続いて、まだ今起きたことに驚いたままの襲撃者達に視線を向け笑みを深めながらそう聞くと、それまで僕に注目していた観客達が一斉に驚きの声を上げたのだった・・・
(あらあら、観客達は良いリアクション、タイミングもバッチリだね♪・・・そして、向こうは凄い悔しそう♪ふふっ、こっちもナイスリアクション!でもしょうがないよね?人質とったままで僕と交渉しようとするのは駄目もの、平等な交渉のためにはまず、その人質を返してもらうのは当然だよね?ふふふっ)
と、考えていると、
鳥獣人「・・・っ、お前が“神の愛し子“か・・・」
「そうだね、そう呼ばれることは多いかな?でも、一応、名乗っておこうか、僕は“ウェルセメンテ王国“の“オヌールユウェル王立学園“、第4学年に所属する“アメトリン・ノブル・デューキス“、生家は公爵の位を賜っている。そして、一応訂正しておくけど、君達が言う“神の愛し子“は正確な表現ではないよ、僕は現在“9柱の神々“から加護を授かっているからね、「「「「「ざわっ!!」」」」」正確に表現するなら“神々の愛し子“、複数形だね」
やっと現状を理解できた襲撃者達、1番先に忌々しげに言葉を発した鳥獣人の彼は、どうやらこの襲撃のリーダーのようで、他の襲撃者達は彼の言葉に同調するように僕の事を物凄い形相で睨みつけてくる。そんな彼らを見て僕は笑顔を深め、わざわざ神経を逆撫でするか如く朗らかに自己紹介し、ついでに爆弾も投下してみた・・・
「ど、どう言うこと?リトス教の定める神々は“7柱“だったはず。その全員から加護を頂いたとしても、後“2柱“の神はどこからきたの!?」
「どこからって言うか、新たに生まれたってことじゃないか?」
「そんな事あるか!!神がそう簡単に生まれるわけねぇだろ!?」
ザワザワッ
(お、驚いているねぇ、うちの国ではすでに公にしてるんだけど、僕、去年の精霊達の儀式した後にこっちの神々全員にいつの間にか加護が与えられていたんだよねぇ(*´ー`*)・・・、神々の加護って同じ加護を持ってる人には結構勘付かれてしまうらしく、その加護を隠すことができなかったから、しょうがなしに“天照ちゃん“と“月詠様“の加護の事をバラしたんだよねぇ・・・あの時の大人達の驚きも凄かったなぁ・・・あ、“天華と夜月“との関係は隠しといたけど(*´Д`*)・・・)
ことの経緯は、以前、神殿に用事、と言うか、ティーナちゃん達に会いに行った時に、たまたま“智と魔法の神、エンキネルウェの加護“を持った神官に僕の加護がバレたのだ、そのバレた神官と言うのが大司教様だったことで隠し通すことができなかった。
そして、これはもう、しょうがないと、諦め、覚悟を決めて、“天照ちゃん“達の加護があることを家族や大司教などに打ち明けた。
そこで、加護をもらった経緯は少し誤魔化し、以前に勇者召喚できた“仁達“がお世話になったお礼で頂いたと言うことにして、今まで読み取ることができなかった加護は他の神々から頂いていたと説明した、こうして加護の取得の順番は前後したものの、“天照ちゃん“達の加護を隠すことは無くなり、ちょっとモヤモヤしていた後ろめたさがなくなった。
そうして、リトス教本部として僕が更なる加護を得たという歴史的偉業を達成したと言う事を記念し、僕の事を侮る教会内部の勢力に向けて牽制する意味も含め、今ある加護を全て公開する事になったのだ。それが行われたのは去年の冬だったのだが・・・
(さて、今回の件で言うと、この世界の“聖獣“は“神獣“にならないと行った僕が、聖獣達を神と拝める獣人達の前で、わざとこの世界にリトス教が定める神々以外にも神が存在すると匂わせたんだけど、向こうはどう反応するかな?)
と、以前から気になっていた彼らの情報収集の甘さの原因はどこから来るのか?と、元々この話を知っているならこれほどまでの反応はしないだろう事から、やはり、彼らの他国や、他宗教への関心の薄さが原因だと考えられる、と言うことは、盲目的に“聖獣“を“神獣“として崇めまつる彼らからすると、今の話でこの世界に新たに神が生まれたと判断することができるのか、それとも、自分達が崇めている“神獣“が人族である僕に加護を与えたと考えるのか、また、それを良い事だと言って受け入れることができるのか、その判断次第ではこの後の対応が変わってくる事になる。
そう思い、彼らの反応を僕はじっと観察した・・・・
豹獣人「どう言うこと?人族が信仰している神々は“7柱“だけでしょ?なんで、他に“2柱“も神の加護を持ってるの?」
狼獣人「いや、元々“9柱“だったんじゃないか?」
熊獣人「いやいや、それはないだろう、俺も“7柱“って聞いてるぜ?」
豹獣人「だから、後の“2柱“はどこから来たのよ!」
ザワザワッ
獅子獣人「おい、もしかして、どこかの“神獣“様が加護を与えたってことはないよな!?」
蛇獣人「“神獣様“が!?」
狼獣人「えっ!?“神獣様“が人族に加護を与えたってのか!?」
熊獣人「そんなことあるのか!?」
獅子獣人「いや、それしか考えられないだろう?この世界に人族が崇める神以外に存在する神は他にいないではないか・・・」
ザワザワッ
蛇獣人「なっ!?いえ、そんな事あるわけないです!!少なくとも我が国の“神“ではないですよ!そ、そちらの国の“神“ではないのですか!?」
獅子獣人「!!なっ、何を言うか!!そんな事、絶対にあり得ない!!」
豹獣人「そうだよ!人族にうちの国の“神獣様“が加護など与えるはずない!そっちの国じゃないの!?」
鳥獣人「むっ、我が国でもないぞ!!」
狼獣人「じゃあ!どこだってんだ!!?」
ザワザワッ
蛇獣人「・・・いや、待ってください。この話は、あの“愛し子“が言っているだけで、確かなものではないですよね?」
獣人達「「「「「!!」」」」」 「た、確かに、その加護が本当にあるかは誰も確認できてない・・・」 「じゃあ、あいつのハッタリか?」 「我らを謀ったのか?」
「そうだ、そうに違いない!」 「あいつは嘘つきだ!」 「卑怯者だ!」
ザワザワッ
(そう来るかぁ・・・これは和解?は無理っぱい?何がなんでも相容れないって感じ?でも、なんだ、この違和感・・・)
僕の話で、どんな反応をするのか見ていると、最初は聞いたことのない“2柱“の神々について議論を交わしていたのだが、途中で自分達の崇める“神獣(正しくは聖獣)“が加護を与えた可能性を考え始めたのだ、そして、次第にそれぞれの国の間で、どこの国の“神獣(聖獣)“が僕に加護を与えたかで言い争い始めた。だが、それも長引くことなく、言い争いは別の方向に向かっていく、そう、僕の話が作り話ではないかと、蛇の獣人の一言で疑惑を持たれ、徐々にそれが事実かのように憎々しげな表情で僕を罵り始めた。
急な方向転換に驚きつつも、この展開の速さに微かな違和感を覚えた僕はこう問いかけた・・・
「何故、嘘だと思う?確認ができないだけで僕の加護が嘘だと決めつけるのはおかしだろ?確認できないんだからその嘘でさえ確かな証拠はないだろう?本当に僕が君達が言う“神獣様“に加護を頂いてたならどうする?それでも認められないのかな?それは僕が人族だから?」
獣人達「「「「「うっ・・・」」」」」
彼らが色々議論していて出した結果が、何故か“僕が嘘をついた“と言う、僕に対しての悪意ある結論になったのか不思議で仕方なくなった僕は、彼らにこう問いかけた、“僕の話の確かな証拠は無いし人族だから嘘をついたと全て決めつけるのはおかしくないか?“と、そうすると、彼らは意外にも僕の質問に言葉を詰まらせ黙ってしまった。すると、その後ろから彼らについて来て頂いた人族の襲撃者達が口を挟んできた・・・
人族襲撃者1「おい!!お前ら!何呑気に話し合ってるんだ!今はそんな事よりやる事があるだろうがっ!!」
と、言って、獣人達を一喝してきたのだった・・・・