33話 “大会最終日5・準決勝の試合・ベイサンの場合“
“大会“の空気は先の試合で盛り上がり始めて、誰もが次の試合に期待を寄せる中、ベイサンと“ショウスデット“の選手は、すでに肌がピリつく程の気迫をぶつけ合っていた。
「・・・これは、長引きそう・・・」
僕がそう予想を漏らすのも仕方ない理由があった、何故なら、今回のベイサンの対戦相手は昨日の第四試合でイネオスと戦っていた、例の襲撃に加担しているであろう“ショウスデット獣王国“の選手で、昨日の試合ではイネオスに攻撃魔法を使わせる程の実力を持った人物だ、その今“大会“の学生選手達の中で、イネオスやベイサン達に次ぐ実力者と言って差し支えのない獅子獣人の彼が、これまでの試合で一切使ってなかった武器や防具を装備している事で、彼のこの試合での本気度が伺え、ベイサンを叩きのめしに来ているのが明白だったからだ。
(うわぁ~、ガッチリ装備して戦意高めじゃん、この選手・・・)
この“ショウスデット“の選手はどうやら、前回のイネオスとの戦いで負けたことで、イネオスとベイサンの実力を見誤っていた事を反省したのか、今度はしっかりした中華風の防具をつけ、さらにこれまで自分の自慢の爪を武器に戦って来ていたのに、今は前世で言う中華圏で発展した、槍や矛に似た“戟“と呼ばれる長柄武器を手に持ち、ベイサンに向かって殺気に似た、闘気を叩きつけていた。
その様子を見て、僕は、
「ベイサン、大丈夫かな・・・」
と、心配でつい口に出してしまった。
ダークエルフ王子「そうですよね、相手の気迫が昨日と全く違いますから心配にもなりますよね・・・」
「うん、ベイサンも、力加減を間違えて相手に大怪我をさせないかが心配・・・」
「「「・・・ん?・・・あぁ・・・」」」
ダークエルフ王子が僕がベイサンの怪我の心配をしていると思って声をかけてくれたのだが、僕の心配は全く別のところにあった。この“大会“中、終始、心配している事と言えば、イネオスとベイサン、“彼ら2人がやり過ぎないかどうか“だけ、僕達家族とイネオス達の家族は、今年の“大会“で勝敗を気にしているのは、彼ら2人のどちらが勝負に勝ち優勝するかと言うことだけで、今までの他の試合は全て、試合相手の怪我の心配が主だった。
一応、言っておくが今回の“大会“の出場選手達の実力のレベルが低いと言うわけではなく、前回の“大会“の出場者で優勝者だったヘリー姉様が言うには、むしろ実力のレベルはかなり高い方だと言っていた。
だが、その高いレベルの出場者達の中でも、イネオス達が異様に実力が高過ぎただけ、これまで一緒に冒険者活動や鍛錬をしてきた僕達の知り得る純然たる事実で、実力はあってもまだ学生で外の世界で戦うことが殆ど無い学生が彼らに敵わないのは仕方のないこと、何故なら彼らはすでに一人前されるCランクの冒険者で、そろそろ戦闘のプロと呼ばれるBランクへの昇格も夢じゃないほどの実力を持っている、そんな彼らが、学生であっても実力が高いとされている選手達にうまく手加減ができなかった時、大怪我をさせるかどうか、そう言う意味合いで僕は心配をしているのだと、言うと、これまで学園では本気で戦ってきていなかったイネオス達の真の実力の一端を、先程の試合の中で垣間見た王族3人は、一瞬考えた後、確かに、と言った納得をしたのだった。
(大体さ、第一試合で出場選手の実力がほとんど解っちゃったから、イネオス達の心配する事はなくなっちゃったんだけど、逆に相手選手の心配をしなくちゃならなくなったんだよねぇ(*´ー`*)・・・まぁ、その心配しなきゃならなくなった1番の原因は僕達との訓練だったってのがアレだけど・・・手加減って難しいよね( ・∇・)・・・)
そんな事を思っていると・・・
へティ「何か話しています・・・」
「!!?精霊さん、向こうの会話をここまで届けて!」
「「「えっ!?」」」
『いいよ~っ!それぇ~!』
と、舞台の上で向き合っているベイサンと対戦相手の選手との間で、何かやり取りをしていることに気づいたへティ、僕はすぐに目には映ってないが近くにいるであろう精霊達にそうお願いした。王族3人は僕の行動に驚きの声をあげていたが、僕は気にする事なく、突如現れた精霊に視線を合わせた。すると、すぐに何処からか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
ベイサン「・・・・っ、しつこいぞ、お前達になんと言われようとも、僕達はアトリー様を裏切ったりしない!それに、お前達が思っている以上にアトリー様はお強いぞ!それこそ僕達より遥か高みにおられる!」
獅子獣人「ふんっ!つまらぬっ!人族は我らの教義を馬鹿にする主にそこまでして、忠義を尽くさねばならぬとは、いっそ哀れよなっ!」
ベイサン「っ、・・・はぁ、ここまで人の話を聞かない奴は初めてだ、それに、僕達はアトリー様を主人として支えているわけではなく、友人として尊重しあっているだけだ、そして、アトリー様に関することに何も嘘偽りなどないっ!」
獅子獣人「はっ!世迷言をっ!お前の言うその友人とは、人族の崇め奉る主神の愛し子としての対面を保つために、お前をこの場に立たせているのであろう?本当に強き者であるならば、すでにこの場に立っているはずだ!だが見ろ!自分は前に出る事はぜずに、悠々と高みの見物を決め込んでいるではないか!
そんな卑怯者の言葉などどれも信用に値しない!故に!我らの信仰する神獣様方を貶める発煙をする奴は何人たりとも許す事はない!!」
ベイサン「はっ、アトリー様がどれだけ僕達に気を使っておられるか知りもせず、知ろうともしない、お前達に卑怯者と罵る権利はない!」
獅子獣人「いいんだな?その様な言い草で我の誘いを拒むと後で後悔するぞ?我に言われた通り、お前が降伏し代わりにあの卑怯者をこの舞台に誘い出すだけで、お前の安全を約束してやると言うのに・・・」
ベイサン「その話はすでに断った、お前とはもう何も話す事はない・・・」
獅子獣人「本当に哀れよな・・・」
(この後に及んで、まだベイサンを勧誘し、僕と敵対させようとしてくるとは・・・、しつこい上に浅はかだ・・・僕がこの世界の事実を告げただけでそこまでされるいわれはないはずだ、それに自分達が聖獣を神として崇めるなとは一言も言ってない、崇めたければ好きなだけ崇めればいい、だがそれを他人に強要するのは話が違ってくる、この世界は個人に信仰の自由があるのだから他者に自分の信仰している教えを押し付けるのは、それはもうただの邪教でしかない、そして、他者を傷つけてまで認めてもわなければその教義が揺らぐと言うなら、そんなものいっそなくなってしまえばいい!)
舞台上の2人のやり取りを聞いて、その自分本位なやり方で他人に迷惑をかけてまで、僕を貶めようとする彼らの行動に、僕は自分の感情が徐々に苛立ってきているのを感じた。
夜月『落ち着け、アトリー・・・あの者らへの対応はすでに神々が動いている、アトリーがそこまでして心を動かす必要はない、後は神々に任せればいい・・・』
「夜月・・・それはどう言うこと?・・・」
苛立ちで思考が危険な方向に行こうとした時、僕の膝の上で大人しくくつろいでいた夜月がいつもの様に、感情が昂った僕を静かに宥めてくる、それに続いて出てきた初めて聞いた話の言葉の意味が分からず、その言葉の意味の詳細を聞こうとしたら、
エルフ王女「こ、これはどう言う事です!?な、何故、精霊達は貴方の言うことを素直に聞いているのです!?そ、それに、あの会話の内容は!?今、何が起こっているんですか!?」
と、テンパリにテンパっているエルフ王女の怒涛の質問攻めにあってしまい、その詳細を聞きそびれてしまった。
結局、質問攻めにしてくるエルフ王女を宥め、王族3人組にこれまでの出来事と、今の状況を簡単に説明しようとしている内にベイサンの試合が始まった。
審判「試合、開始!」
「始まった・・・」
皆んな「「「「「あぁ・・・」」」」」
ガンッ!! ガガガッ! ガンッ!
一旦、ベイサンの試合に視線を戻した僕達と同時に、先に動いたのは獅子獣人の選手、彼は開始の合図と共に走り出し、手に持った“ゲキ“を素早く的確にベイサンを狙って突きを繰り出した。その突きをベイサンは慌てる様子もなく、最小限の動きで避けながら、装備していた盾でその攻撃をいなしていた、そのいなしに慌てる事なく獅子獣人の選手は続けて突きの連撃を繰り出す、その攻撃もベイサンは少し後退しながら受け止める、そんな攻防が続いた。
「うーん、なかなか素早い突きの連撃・・・・あ、簡単に説明すると、僕、今回の“大会“で帝国側のお家騒動に巻き込まれてまして、どうやら、自分の子供を皇帝にしたい母親が派閥を作り、今回の“大会“の賓客達の対応を任されている皇太子を貶めるために、最重要の賓客の僕に危害を加えてこようとした事ありまして・・・」
「「!!」」
ダークエルフ王子「えっ!?もしかして、開催パーティーでのあの騒動って!?」
獅子獣人の攻撃に関しつつも、今回の件の説明に入った僕の言葉に王族3人組は驚き、ダークエルフ王子はすぐにパーティーの時の件のことだと察した。
「そう、それが、最初ですね・・・まぁそれ自体は未遂に終わったので、僕はその場でそう言う事を指示したであろう人に言葉で釘を刺したんですが、前々から準備してきたことと、去年の“野外実習“で問題を起こした宗教関係者と、聖獣に関しての揉めたのですが、その件の宗教関係者が僕を逆恨みして僕に危害を加える事に加担していて、その関係者に、これまた聖獣関連で僕に思う所があった聖獣を神格化し崇めていた3ヶ国が、その宗教関係者の後ろ盾になって、協力までしていたことから、帝国のその派閥の関係者も後に引けなくなったみたいですね。
それで、今日まで色々と裏工作をして、“大会“の最中に襲撃を起こす計画をしていた情報を僕達は得ていたんですが、その計画がかなり大規模で、現状、その襲撃を未然に防げるかどうかの瀬戸際って所ですね・・・あ、ベイサンが動く・・・」
ガツッンッ!! ブンッ!
ソル「避けるのも上手いですね」
鬼族王子「あぁ、向こうはもう油断してない様だな・・・ん?それで、あれか?その宗教関係者に加担している国の一つが“ショウスデット“ってことだな?」
「あぁ、はい、そうですね」
説明の続きを話していると、これまで一方的な相手の攻撃に耐えていたベイサンの動きの変化に気づき、一旦話を中断、舞台上のベイサンに再び集中すると、ベイサンはタイミングをはかり軽く試すように相手の武器を盾で弾きそらした、そして、弾かれた反動の隙を狙い反撃の一振りを繰り出したが、獅子獣人はそれを予期していたのか、攻めの体制から素早く大きく後ろに飛び、ベイサンの攻撃を回避した。そこから一旦距離をとって、今度は互いに様子を伺うようにジリジリとした睨み合いが始まった。前回のイネオスの時のような油断を獅子獣人はしていないようで、慎重にベイサンの行動に警戒している。
そんな中で、鬼族王子が僕の話の話題に戻した。
ダークエルフ王子「では、それで、あの会話の内容ってことですよね・・・向こうはかなりデューキス様を恨んでいる様ですね・・・恨みの原因が“聖獣“に関して、ですか・・・」
と、獅子獣人の言葉から“聖獣“と言う単語が出たことで、僕のそばにいつも居るジュール達のことだと思った彼は、チラッと僕の膝の上や肩でくつろいでいるジュール達を見てくる。
「あ、ジュール達の事じゃないよ、彼らの国にいる“聖獣“達の事だよ、まぁ、ちょっと、僕がうっかり、言っちゃった言葉が彼らには気に食わなかったんだよ。それでちょっと、いや、かなり怒ってるって感じかな?彼らの国じゃ主神様を崇める事がなくて、地上に存在する“聖獣“を自分達の先祖として敬い、神として崇めているからね・・・まぁ、そのどちらも否定しまったのが僕なんだけど・・・」
そう言いながら気まずくなった僕は視線を逸らし頬をかく。
「「「えっ!?」」」
ダークエルフ王子「否定って!?“聖獣先祖説“のと“聖獣は本当は神獣だった説“の、両方をですか!?」
「あ、うん、その両方・・・あ、なんの根拠もなく否定したんじゃなくてね、ちゃんと主神様に確認を取ってから否定したんだよ?あの頃はあまりにも彼らがしつこくて面倒だったから・・・・」
(うん、今思うとかなり大人気なかった気がする、反省・・・)
天華『いや、あの時はアトリーは子供だったでしょう・・・今もですけど・・・』
(・・・)
以前の自分の迂闊さを恥じ、いくらしつこく面倒だったからと、感情的になって相手の大切に思っている事を頭から否定することは良くない、大人気なかったと反省していると、天華にツッコミをもらってしまった。その後も、王族3人にその当時の詳細を説明していると、ふと、鬼族王子がこう言い出した。
鬼族王子「・・・なぁ、なんかこの話、エルフ族やダークエルフ族の精霊信仰にも似てるよな?俺はあまり信仰心がない方だからよく分からんが、この世界を作ったのは主神様だろ?それが分かってて、なんで獣人達やエルフ達は“聖獣“や“精霊“達を崇めるんだ?みんな一緒に主神様を崇めればいいんじゃなか?」
と、・・・
「「「「「・・・・」」」」」
(確信をついた質問をしてくるなぁ、でもこれって答えはないんだよねぇ・・・・)
「うーん、これは誰を崇めるとかの問題?って言うか、何を心の拠り所にするか?って事だと思うんだよ・・・主神様は現に存在するのは誰もが知るところではあるけど、その土地土地の生活に寄り添ってくれている存在を大事に思った結果、その存在を信仰してるんだともう・・・多分・・・まぁ、その信仰する存在の神秘性を壊した僕も悪いんだけど、信仰はその人それぞれの大切なものを敬う想いであって、それを他人に押し付けたり、無理やり認めさせようと言うのは間違いではあるね・・・、僕は僕の心の拠り所はあって、君達には君達の心の拠り所があるように、個人の自由な心の想いであり、自分が想い敬っているからと他人に強要するのはよくない、・・・と言う事じゃないかな?多分ね?」
(まぁ、宗教とかよくわからんけど、信仰というものは僕の思う感覚で言ったら、好きな“推しキャラ“を誰にするって感じの話にしかならないんだけどな、僕としては今でも僕の“推し“は声優の“緒方○美さん“だからな!あの性別問わないお声が素敵だ!漫画とかアニメ、ゲームとかで同担拒否とかは前世でよく聞いた話だが、逆に同担を強要するのも同じくらいマジ頂けん!( ゜д゜))
天華『・・・実在の神々より、前世での憧れの声優って・・・それで良いんでしょうか?』
(ぬ、それは違うぞ!この世界の人達にはティーナちゃん達は手に届かない神聖な神様でも、僕にしてみたら近しい大切な友人だから、崇めたり、敬うのは違うんだぞ!(・Д・)声優さんはキャラを通して好きな人で、現実には存在しないキャラありきで、手に届かない存在と言う意味では憧れて敬うった感じだもん!)
天華『そう、ですか・・・』
偉そうに説明できる立場ではない僕だが、前世での感覚として、他人を巻き込まなければ自分の好きなものを好きなだけ愛でたり崇めたりすればいい、と言う“オタク“特有の感覚からきた言葉ではあったのだが、この話を聞いた彼らの様子を見るに、思いのほか、共感は得られたようだ・・・
エルフ王女「自分の心の拠り所・・・・」
ダークエルフ王子「自分が敬う想い・・・」
鬼族王子「個人の自由か・・・」
へティ「敬う存在・・・」
ソル「・・・大切なもの・・・」
大人達「「「「「・・・・・」」」」」
そうして、静かになったボックス席内に再び音が戻ってきたのは、これまでの状況の中で1番嬉しい知らせだった。
帝国兵「失礼します!“中継機“捜索の現状報告に参りました、現時点で地図上に記された“ダンジョン“方面の“中継機“を全て破壊!現在は闘技場付近に設置された“中継機“を順次破壊しております!このまま順調に行きますと本日中には地図上に記された“中継機“は全て破壊、もしくは回収が完了すると思われます!」
「「「「「!!」」」」」
父様「・・・分かりました。報告ご苦労、そのまま作業を続けてください」
帝国兵「はっ!!失礼いたしました!」
(ほっ、これで、少なくとも“闘技場“の結界を破壊するような魔物が出てくる事は無くなったな、あとは、どのタイミングで向こうが襲撃を仕掛けてくるかだが・・・)
作業分担で、“ダンジョン“方面の“中継機“の破壊を担当していた帝国軍の兵士達が早くも、作業の終了を知らせに来た、その報告を聞いた室内の全員がほっと胸を撫で下ろし、安心した。だがまだ、全ての“中継機“が撤去されたわけではないので、これからも警戒は怠らないようにと父様が釘を刺し、全員が気を引き締めなおした所で、舞台上で対戦相手と睨み合っていたベイサンが動いた。
ベイサン「はぁぁっ・・・はっ!!」
ダッ!! ガイィンッ!! ガガガガガッ!!
気合い一つ入れて走り出したベイサンはこれまでの守りから一転、今度は剣で相手に激しい連続攻撃を加え始めた。すると、
ガンッ!!バキッ!!
強い一撃の後に鳴り響いた破壊音、ベイサンのこれまでの攻撃は全てある狙いの為に行っていた事が今わかった。
獅子獣人「っ!???」
ザワッ!! 「武器を折った!!?」 「なんて的確な攻撃だ!!」
そう、彼の連撃の全ては相手の武器のある一点を狙って振り下ろされていた、最初の一撃でつけた傷を目印に相手が反撃できないほどのスピードで連撃を加え、徐々に相手の武器の耐久性を落としていき、最後の一撃で武器を叩き切ったのだ・・・
そして、最後に・・・
ドゴッ!!「ぐっ!」・・・フラッ、ドサッ・・・
「「「「「・・・わぁぁーーーっ!!」」」」」
審判「・・・っ、試合続行不可!勝者、ベイサン!!」
「「「「「うぉぉーーーっ!!」」」」」 「いいぞぉーーーっ!!」 「良くやったーーっ!!」 「「「「「キャァーーーッ!!」」」」」 「カッコイイーーーッ!!」 「最後の素敵ーーーっ!!」
武器を折られて相手が動揺した隙に、ベイサンは左拳で相手の顎を激しく殴打、相手は防御も間に合わずまともにその殴打で脳を揺らされ、そのまま脳震盪を起こし気絶、それを審判が慎重に確認して、勝利のコールが響き渡った。
「わぁ、武器破壊からの顎への一撃かぁ・・・相手の予想を打ち砕く、いい戦い方だったね」(さて、これで、向こうの目的の1つは潰れたわけだが、これから向こうはどう出てくる?)
へティ「えぇ、それに相手に大きな怪我を負わす事なく勝てて偉いですわ・・・」
エルフ王女「いつもながら、素晴らしい戦い方でしたわね・・・」
鬼族王子「決まった型にはまらない合理的な良い戦いだった・・・」
ダークエルフ王子「良かった、ちゃんと準決勝勝ち抜けたね・・・」
ソル「はい、あとは2人の一騎打ちですが・・・」
声援が飛び交う中、僕達もベイサンの戦い方に賞賛を送りつつも、室内全体が緊張感に包まれ、大人達の警戒心が徐々に上がってくるのを感じていると、
「っ、・・・やはり、ここで始めるか・・・」
試合の余韻で盛り上がる舞台の脇で何か小さな騒ぎが生じたのを感知した・・・・