31話 “大会最終日3“
僕が拗ねている間に、今日の“大会“の準決勝の試合に関する説明が始まろうとしていた、その時、予想外の来客が来たとオーリーが知らせてきた。
「えっ、彼らが!?先ぶれも無しに!?急用かな?・・・父様、どうしたら良いですか?」
父様「うーん、そうだね、彼らの要件次第かな?」
「はい、では、軽く話を聞いてきます・・・」
突然の来客は今日この日まで彼らがこの帝国にいた事を忘れていた、と言うか、来ていたのか、と言う感じで、ここ最近の忙しさでその存在を忘れていたのだが、今、このタイミングで来た事で、疑いたくは無いがそう易々と中に招き入れても良いものか?と思い、父様に対応して良いものか?と、聞いてみたら、“要件次第”と返事が来たので、今の今まで接触が無かった人達が、こちらの予定を伺いもせずに僕を訪ねてきたのは何故だろう?と、思い、僕は首を傾げながら、ボックス席の入り口で待たされている来客達のもとに向かった。
「お待たせしました。今日は急にどうなさったんですか?皆さん・・・」
と、扉を開いた先にいた来客、”エルフ女王国セリニデュシス“の第2王女殿下、”フィエルテ・ファム・ロア・セリニデュシス“と、”エッケダークエルフ王国“の第3王子殿下、“アンテレ・レクス・エッケ“、そして、“ノルテ魔王国“の第2王子殿下、“オルコ・マリク・ノルテ“の3人にそう話しかけた。
すると、
エルフ王女「お伺いも立てずに急に押し掛けてしまって申し訳ありません、デューキス様。ですが、少々気になることがあって、私達3人だけで来ましたの」
「気になること?」
エルフ王女「それが、その、“精霊“達の動きが・・・・」
「ちょっと待ってください、ここでは何ですし、中の応接室に行きましょう・・・」
先ぶれも無しに、来た事を侘びながら気になったことがあるから訪ねて来たと言うエルフの王女、その気になる事と言うものが何なのか聞いてみると、少し周りを気にしながら、“精霊“、そう言った彼女の言葉に、僕はすぐに彼女の要件を察し、ボックス席に備え付けられている入り口近くの応接室に通すことにした。
オーリー「アトリー様・・・」
「父様を呼んできて」
オーリー「畏まりました・・・」
僕が彼らを室内に通すことに決めると、それをすぐに察して、オーリーが指示を求めてきたのですぐに父様を呼ぶよう言うと、すぐに、行動に移した。(察しが良くて行動が早い優秀な専属使用人だよね!)
そんな事を思っている内にソルが彼らを応接室に通し、他の専属達にもてなしの指示を出していた、僕は他に何か言うこともなく、応接室に入った彼らに席を進め、自分も対面の席に腰を下ろした。そのすぐ後に父様が応接室に来た、互いに紹介をし終えたところでお茶が来たので、そのお茶で一息つくと、僕は彼らの要件を聞いた。
「それで、精霊達の動きがどうなさったんですか?」
エルフ王女「あ、はい、ここ数日ずっと精霊達の動きがおかしいことに気づき、その動きの中心にデューキス様の滞在されているこちらの席があったので、デューキス様に何かあったのかと思っておりましたの、でも、何か起こったと話を聞いたわけでもなく、デューキス様がご健勝なのを契約精霊達から聞きましたから、その時は安心していたんですが、今日の朝から精霊達の動きが何処か警戒しているように感じたので、今日、何かあるのかと思い、こちらに様子を伺いに参りました」
「・・・そう、あなた達にはそう見えたているんだね。・・・確かに、今日はちょっと面倒なことがありそうではある・・・」
(精霊が見える彼女達からすれば、ここ数日の動きが怪しいのはすぐにわかるんだったね。でも、なんで彼女達の精霊達はここ数日の僕達の調べていることを彼らに話さなかったのだろうか?(・・?))
雪花『アトリー様、私達には“情報の優先順位“と守秘義務というものがありますから、優先順位が1番高いアトリー様からの“お願い“の内容を、優先順位が低い彼らに話すことはないです』
(そうなんだ、いつも“ルスじぃじ“を通して箝口令を敷いてもらってたから、契約済みの精霊達は自分の契約者達には何でも話しちゃうのかと思ってた・・・)
春雷『確かに、同じ位の精霊同士ならば口止めされていないなら互いの契約者の話はすることはありますが、精霊王様達から箝口令が出た場合は関係者以外がいる場所以外では本当に噂話として口にもできない強制力があります。
そして、基本は互いの力の強さで精霊としての存在の位が決まり、その位に応じて契約者に与えていい情報を制限してます。まぁ、先ほど言ったように自分より位が高い者の契約者の話はしないなど、ですね。それと、契約者の所有する加護などで情報の秘匿性も変わってきます。それが“情報の優先順位“ですね、今この世界で1番高い精霊の加護を持っているアトリー様の情報を安易に漏らす精霊はいませんわ』
(そ、そうなんだ、結構厳格に取り決めがある感じなんだね、・・・じゃあ、彼女達は精霊達の行動だけで異変を感じただけか、と言うことは、今回の件は全く関わりもなければ、今、何があってるか知らないって事ね、そうすると、彼らにどこまでどう話して良いもんか・・・)
と、考えていると、父様が彼らに僕も少し気になっていた事を聞いていた。
父様「少し話は変わるのですが、御三方は“大会“前日の開催記念パーティーから、“最終日“の今日まで我々と顔を合わせることはなかったと思いますが、何故、本日、わざわざこちらにおいでになられたんでしょうか」
「「「!・・・」」」
「・・・そう言えば、パーティーでも合わなかったね?もしかして、3人は開催記念パーティーには参加してなかったの?」
(パーティーに来てたんなら声かけてくれたらよかったのに・・・)
とか思っていると、ダークエルフ王子が理由を話してくれた。
ダークエルフ王子「いや、パーティーには参加していました。ですが・・・我が国の外交官が、少々“精霊信仰“に熱心な者でして、その者からデューキス様へのご挨拶は控えるようにと言われてしまい・・・同級生としてなら良いかと思いまして、挨拶の列が途切れてたのを見計らって、挨拶に向かう前に例の騒ぎが起こってしまったので、出遅れてしまったのです」
エルフ王女「それは私も似たような理由で、同行者の監視が厳しかったため、ご挨拶に赴けなかったのです」
父様「そうでしたか。・・・」
(王女達を留学させるぐらいの国交は結んでいるが、向こうの国ではまだ精霊を重要視し、主神であるティーナちゃんを軽視する人が多いのか。王女達はここ数年うちの国で暮らして、自国の頑なな宗教観念がどれだけ自分の視野を狭めていたのか気づき始めているから、もう他種族を蔑むことは殆ど無くなった。でも、国交のためと言って自国から来たばかりの大人の外交官達にそう言われてしまっては強く言えなかったんだろうなぁ。(*´ー`*))
ここ最近は獣人達との問題で忘れていたけど、エルフ種との宗教観念も結構、差があり、特に“セリニデュシス“のエルフ達は自分達が種族的に他の種族より優れているといった思想が強い事から、エルフ種以外の他種族を下に見ている節がある。
(世界の調和を担っている精霊が見える自分達は、精霊と契約できて世界に必要とされている、だから種族としてもっとも優れている、精霊が見えない他の種族は世界から必要とされてない、寄生虫だとか思ってるらしいよ!)
そんな思想が強い人達に付き合わされている王女達が少し可哀想だと思ってしまった。
「ん?じゃあ、オルコ王子も似たような感じだったの?」
鬼族王子「ん?いや?俺の所は勝負の時は不必要に馴れ合わないと言う風習があるから、元々そちらに挨拶に行くことはなかったんだ。それに勝負が終われば、勝ち負けに拘らず、互いに健闘を讃えあうのが美徳とされているので、“大会“終了の閉会式である夜会では挨拶に行くつもりだった。まぁ、その前にうちの国の選手達が勝ち残れなかったから、挨拶をしにこちらに来ようとしたのだが、デューキス殿の席の前にある帝国の警備が通してくれなくてな、今日まで挨拶に来れなかったんだ・・・」
エルフ種の王女達の話を聞いて、ふともう1人の同行者の事を思い出し、そちらにも何か事情があったのか?と思って聞いてみると、意外と素敵な返答が返ってきた。(昨日の敵は今日の友ってか?めざせポケ○ンマスターかよっ!?)とか思っていると、聞き逃せない情報が耳に入ってきた。
「え、そうなの?確かにここに来るまでの間に帝国の警備兵がいるけど、来客の知らせは一度も来たことないよ?・・・」
今日までそんな警備態勢だった事を知らなかった僕は完全に寝耳に水だった。帝国側が僕への面会の相手を勝手に拒否していたことに驚きを隠せなかったのだが、その事を父様も知らなかったのか?と思って父様の顔を見てみると、そんなに驚いた様子がない事から、帝国側の行動は知っていたけど、僕の同級生である彼らも面会拒否の対象になっていたことは知らなかったようで、少し意外そうな表情をしていた・・・
(あれ?そうなると僕はずっと面会拒絶状態だったってことか!?Σ('◉⌓◉’)僕の同級生にまで勝手に面会拒否とかやりすぎじゃ無い!?)
と、思って、帝国の警備体制に文句をつけた方がいいのでは?と考え始めていたら、
鬼族王子「あぁ、そのようだね。どうも、帝国側の警備兵はパーティーの一件から、デューキス殿に接触しようとする者を全て排除しているようだった。なので、面会のお伺いも全てそちらに知らせていなかったようだ。今回は俺達が学園で同級生である事を説明して、他の側近や護衛を連れて行かぬことでやっとこちらに通して貰えたんだ」
(あぁ、通りでなんの知らせもなかった訳か、帝国貴族の面会希望とか数件きていてもおかしく無いと思ってたけど、実際は面会の申し込みの知らせは一回もなかったもんね。ってことは、帝国は自国の貴族が何かやらかすか予想ができず、もし何かやらかした場合、国全体の問題に発展するから全てお断りしていたって事か、自国の貴族達を信用しなさすぎかよ・・・でもなんで、他国の王族である彼にもこんな厳しい条件出したんだ)と、帝国の自国の貴族に対しての対応に納得半分、呆れが半分といった感じだったが、他国の王族に対しての対応の厳しさには疑問が残った。
「あ、確かに今日は3人とも誰も連れてきてない・・・帝国の警備兵さん良くそんな条件出したね。そして、良くその条件を君達も飲んだね・・・」
エルフ王女「いいえ、これは仕方ないのです。私達の側近や護衛達が原因ですから・・・」
「?原因が?・・・」
「えぇ、それが・・・」
と、理由を話した王女様の話に僕は、
(あー、確かに、最重要警備対象である賓客への暴言を堂々とする人達を簡単に通す警備兵はいないわ~、しかも、面会の申し込みを通してもらうのも上から目線で命令て・・・てか、そもそも警備兵、他人の前で堂々と他者を貶める発言する奴は人としてどうかと思うわ~(*´Д`*))
天華『ないですね』 夜月『ないな』 ジュール『バカなんだよ』 精霊達『『ありえませんね』』
要は、外交官と言っても、今回は“大会“に“セリニデュシス“の選手は参加はしておらず、エルフ王女がうちの国“ウェルセメンテ王国“に留学していて、地理的に近い事から、これからの他国とのことを考えて見るための様子見といった面が強く、もともと他国との交渉ごとなどの経験がほとんどない、“セリニデュシス“のから来たエルフ外国官は、特に“この世界は精霊がいることで回っているから、精霊が1番敬われるべき存在“と疑わず、“他種族はその精霊を敬わず、精霊より人族が作り出したリトス教の主神を敬うことが信じられない“と言う、強い思想に偏った人だったため、国外である帝国の公共の場で平気で自国にいる時と同じような言動で、エルフ種以外の種族を蔑み、バカにしていたそうだ。(僕の事は“人族が敬うような神の愛し子など敬うに値しない“と言っていたそうだよ・・・(*´ー`*)後、その外交官に任命された人は向こうの国ではかなり地位が高い人らしいけど、外交のことはさっぱり分かってない人らしい・・・)
そして、その言動に釣られた同じ精霊至上主義の思想を持っていた“エッケ“の外交官も、同じような言動をしていたことから、帝国側の警備兵や騎士団達から危険人物認定されてしまっていたそうだ。そのせいで、僕への面会希望の申し仕込みも、お伺いさえ全て却下されたらしい・・・
で、結果、今回の僕への面会の同行も拒否されたため、帝国側が警備している外の廊下で待たされているらしい。
と、この話を聞いていたジュール達や春雷達も、父様までも表情を隠さず、僕と同じで呆れ果てていた。あ、“ノルテ“の人達はそんな事してないそうだからそこは救いだよね!
父様「・・・その者達は外交をする気があるのか?・・・あ、いや、失礼・・・」
うっかり、呆れが口に出てしまった父様はサッと口を押さえ謝罪したが、王女達は苦笑い気味に気にしてないと手を横に振った。
エルフ王女「そう思われても仕方ないほど私も彼らの行動にほとほと呆れておりますから、お気になさらないでください。ですから、反対する者達を振り切ってこちらに参ったんです。あの者達は少しは反省した方がいいと思ったので・・・」ニッコリ
「・・・あぁ、そう言うことか、まぁ、ここに来れなかったのはちゃんと外交できなかった彼らの自業自得といった事だね?でも、“ノルテ“の外交官は巻き添えになった形だけどよかったの?」
エルフ種の外交官や側近、護衛達は同種の王族はちゃんと敬う対象で、自国から任命された自分のお役目をまっとうできない事だけは、不名誉と思っているようなので、(要は身内贔屓)それをあえてまっとうできないようにしてやったと、言外に笑顔で言うエルフ王女と笑顔で同意する、ダークエルフ王子のやり切った感が半端なかった。(この事で相当ストレス溜まってたんだろうなぁ)とか思いつつも、“ノルテ“の外交官達も巻き添えにしたのは流石に可哀想だと思ったのだが、
鬼族王子「あぁ、彼らは俺のお付きって面のが強いから、気にしてないさ、外交は別の機会にっとでも思ってるよ。護衛の方も俺達魔族は基本的に個人の実力が重視されるから、自国じゃ護衛なんてつけないのが普通だ、ただ、国外では対外的にいた方がいいだろうぐらいの気持ちで付けられているだけだから、外交官より気にしてないよ」
と、何ともあっさりした回答が返ってきた。
「へぇ、そうなんだ。・・・ん?じゃあ、皆んな今は急いで自分達の席に戻る必要はない?感じ?かな?」
と、聞くと、“「むしろ、長居させてほしい」“と、返事が返ってきた。
(ふむ、彼は本当に僕達のことを心配してやってきただけなら、これから起こる事を考えると、ここが1番安全だし、このままここで一緒にいた方がいいよね?( ^∀^))と、言う考えから、僕は父様に彼らも一緒に試合の観戦をしていいか聞くと、父様もその事を察してくれたのか、快く承諾してくれたので、僕達は応接室から、観戦席の方に移動することに・・・
へティ「あ、アトリー様、それに王女殿下方も!」
エルフ王女「まぁ、へティ嬢!貴女もコチラにいらしたのね?」
観戦席で今日の試合の説明を聞いていたへティと軽く挨拶を交わし、それぞれ空いた席に座って少し話をしていると、学生部門の最初の試合である“イネオス対スッド魔人民国“の対決が始まろうとしていた。この時、エルフ王女達は自分達が何の要件できたかをすっかり忘れて、試合の観戦に意識が移っていた。僕はそれに気づいたいたがそこは指摘せずに舞台に出てきたイネオスに視線を向けた。
「あ、もう始まる、・・・うん、イネオスは油断してないね。さて、スッドの選手はどこまで本気で来るかな?」