30話 “大会最終日2“
「ふぅ・・・コレで最後?かな・・・」
帝都上空で“中継機“を探索すること30分、コレまでに見つかった数は“ダンジョン“周辺を含む、帝都内全体で合計100個を超えていた、コレをみて、今から帝国の騎士や兵達が虱潰しに壊しに行かないといけないと考えると、自分のせいでは無いけど申し訳なくなって頭痛がしてきた・・・
「さて、早く下に戻って、この情報を父様達に渡さないとね」
そう言ってゆっくり天華に降下して貰い、飛びだったホテルの屋上に再び着地した。着地と同時に僕達はすぐに特定した“中継機“の場所が書かれた紙を、下でずっと待ってくれていた父様に渡していると・・・
『『あ、愛し子~、おはよう~、報告にきたよ~♪』』
と、ここ数日でお馴染みになっている精霊達の報告がやってきた。
「あ、おはよう、皆んな、今日も朝早くからありがとう、中で報告を聞こうか」
『『は~い♪』』
そして、屋内に戻ると、父様達男性陣はすぐに僕達が渡した紙を持って、連携している帝国の騎士?軍人?の偉い人らしき人達を集め、会議室に入っていき、僕達は母様達女性陣と別の部屋に入って精霊達の報告を聞く事にした。
「それで、彼らに何か動きがあったのかな?」
『あのね、子供の獣人達は今日の試合に出場?する人以外は朝からどこか行っちゃったから、他の精霊達に追いかけて貰ってるよ』
「えっ、出場する人を応援しに一緒に“闘技場“に行ってるんじゃなくて、朝からどこかに出かけて行ったの?・・・出場者を置いて、逃げた?のかな?・・・まぁ、いいや、じゃあ、残された出場者は今何してる?怒ったりしてなかった?」
『ううん、怒ってなかった。出ていく人達を笑って見送ってたよ』
「そう・・・笑顔で、・・・逃したってこと?それとも別に何かするのか?・・・・・うーん、分かんない!何かあったらその人達を追って言った精霊達が知らせに来るよね?それまで放置で!で、他に何かあった?あ、大人の獣人達はまだ“ダンジョン“にいるの?」
『あ、それは、僕担当!大人の獣人達は今、“ダンジョンボス“?って言うのを目指して行ってるらしいよ!』
「「「「「えっ!?“ダンジョンボス“!!?」」」」」
(マジか、あの“闘技場“に“ダンジョンボス“を出現させようなんて・・・・ん?待てよ?“ダンジョン“の中の魔物達を連れ出したいってのはわかるけど、“ダンジョン“の最下層から送られてくる電波って、“ダンジョン“の外にある“中継機“まで届くものか?(・・?))
天華『普通は無理なんじゃ・・・』
(だよね?何か見落としてるって思ってたけど、そもそも“ダンジョン“の中って“電波“通じるのか?)
夜月『どうだろうな?あの“お守り魔道具?“もそうだが、電子機器と魔道具を融合することで、電波にも魔力が伴う仕掛けになっているなら、“ダンジョン“内に“中継機“を複数設けることで、通用するようになっている可能性は無いくは無い・・・』
(そっか、魔力、魔法と組み合わせると現代科学できないこともできる可能性があるわけだね・・・って事は今1番最初に潰すべき“中継機“は地上の“ダンジョン“方面にある“中継機“って事だよね!?Σ('◉⌓◉’))
精霊達の報告を聞いて、獣人の子供達の行動の目的ははっきりしない物だったが、昨日から“ダンジョン”に潜っている大人の獣人達の目的が判明して、少々厄介な事になっている事も判明、僕はその事を急いで母様の専属であるリアさんに知らせて貰って、父様達に最悪の事態を回避してもらう事にした。
「ふぅ、よかった、間に合った。ありがとう、教えてくれて、あとは、“シニストラ“の教師達だけど、昨日から宿に戻ってないのは聞いてるけど、彼らは“お守り魔道具?“をずっと売っていたの?」
『それがねぇ、あの人達、昨日のお昼過ぎぐらいから、その“お守り魔道具?“を売るのはそこら辺にいた冒険者に任せて、自分達は前に言った“魔道具“を作るために借りてる家に戻ってからまだ、出てきてないんだよ。それに中で何してるかは“結界の魔道具“で見れてないんだ。ごめんね?』
「「「「「??」」」」」 「何故また作業場に?」 「騒動を起こすに当たって何かの手伝いをしにいくわけでもなく?」 「“お守り魔道具?“の件で衛兵隊に捕まる前に逃げ出したのかしら?」
「そうなんだ、気にしないで・・・でも、作業部屋に篭ってまた何か作ってるってこと?それとも逃亡の準備でも進めているのか?」ブツブツッ
“シニストラ“の教師陣の動向の報告を聞いて、話を聞いていた全員がその動向に不信感を覚え、それぞれ、自分達でその行動の意味を推測し始めていると、
「「「「「皆様、お出かけの準備の時間でございます」」」」」
ソル「アトリー様も、お着替えしませんと」
と、それぞれの専属達に促され、僕は報告にきてくれた精霊達に魔力をあげた後、ソルに宿泊部屋まで連れて行かれて、いつものように着替えさせられそうになった・・・
「ちょっと、待って!今日はもしかしたら魔物達と対峙する事になるかもしれないから、動きやすい服装がいいと思うんだけど!」
と、言い、いつもの様に煌びやかな服を持って着替えを迫って来るソルやオーリー、専属達にストップをかけた僕、すると・・・・
ソル「アトリー様、そんな事態になった時は、先に帝国の警備達やこちらの護衛騎士達が対処なさいますから、アトリー様達、公爵家の方々が魔物達と対峙する事などありませんよ。それに僕達もいますから、アトリー様の所まで魔物は来ることは絶対にありません。ですから安心してコチラにお着替えなさってください」
そう言って、ズイッと手に持っている白地のジャケットを差し出してくる。
「いや、そうかも知れないけどさぁ、万一って事も・・・」
オーリー「無いです。と言うか、させません」ニッコリッ
「あ、はい・・・」(圧強っ・・・)
万一、大量の魔物達がきて、対処できなくなったら、自分も出る事になると言いたかったのだが、オーリーが僕にそんなことさせねぇよって言う、決定事項と言わんが如く圧強めにニッコリ笑顔で言い切った。他の専属達も同じ笑顔で僕を見てきて、その笑顔の圧に負け、大人しく用意された服を着るのであった・・・
(この服、高そうってか、高いだろうから、汚れたり破けたりするの嫌なんだけどなぁ(-_-))
ジュール『いいんじゃない?何着てても、アトリーには“祭事服の神器“があるから、もしもの時はそれに着替えればいいじゃん』
(あ、それがあったね!そうだね、もしもの時はそれ着て戦闘モードにすれば動きやすい服になるから、この今着てる服は汚れないよね!( ・∇・))
用意された服に着替えながら、貧乏性な心配事をしている僕に、ジュールがいつも忘れがちな物を思い出させてくれたので、少し心が軽くなった僕はそのあとはるんるん気分で着替え終えて、着替え終わった他の家族の元に合流したのだった。
この時、天華や夜月は指摘しなかったが、この案が後に少々困った事になるのだった・・・
(あ、そうそう、僕達が騒動が起こると分かっている“闘技場“にわざわざ着飾っていくのは、相手の目的である僕がちゃんと“大会“に参加することで、コチラの動きを察知させないようにして、予定通り、騒動を起こして貰う事で、被害を少なくさせる対応を取るためと、最重要の賓客である僕と皇族が同じ場所にいる事で、帝国側の騎士団と連携し警備をしやすくするため、と言う理由からだ。もちろん僕はイネオスやベイサンの勇姿を見るためと、もしもの時の安全確保のため行くんだけどね!٩( 'ω' )و)
そして、“闘技場“へ向かう道すがら・・・
「わぁ、人が凄い・・・」
父様「そうだね。今日が“大会の最終日“だからね、帝国中の人達が“闘技場“に集まって来るんだろう」
「でも、大丈夫でしょうか、これだけの人が集まると襲撃が起こった時大変なんじゃ・・・」
“大会の最終日“と言うだけあって、連日の“大会“のどの日より“闘技場“を訪れる人が多く、それを想定して、帝国の衛兵隊が確保している馬車道がなければ、確実に開始時間に“闘技場“には入る事ができなかったであろうと言うぐらいに、道は観戦目的の人達で溢れかえっていた。
それを見て僕はこれから起こるであろう騒動の事を考えて、ここにいる人達が被害に遭うのでは?と心配になってきたのだが・・・
父様「大丈夫だよ、アトリー、この帝国の“闘技場“は、観客席に試合している人達が放った魔法や、飛んでいく武器などが当たらないように強固な結界が施されているんだよ。有事の際にも帝都に住む市民達の避難所にもなっているぐらいだから、舞台に大量の魔物達が出現しても結界が魔物達を街に出す事はないだろうし、もし結界が壊れそうになっても、それまでに観客達は避難する事もできる、だから、むしろ“闘技場“の観客席が1番安全なんじゃなかな?」
「そう言えば、そんな結界がありましたね・・・避難所になるほどの結界なら大丈夫ですね!よかった!」
と、父様の説明を聞いて、一安心すると、僕達の乗った馬車は問題なく“闘技場“に到着し、馬車から降りると・・・・
「なんか、嫌な感じ・・・」
天華『確かに、嫌な気配を感じますね・・・』
夜月『アトリーに悪意を持っている奴の視線を感じる・・・』
ジュール『そいつら、捕まえてくる?』「ガルルルッ」
春雷&雪花『『私達もご命令とあらば、すぐに捕まえてきます!!』』
(いや、今はダメだよ、今捕まえると、向こうが何をしでかすか分からないから、“闘技場“の外にいるたくさんの人達を巻き込まない様にしないとね・・・)
母様「アトリー?何かあったのかしら?」
「!、いいえ、ちょっと見られている感覚がして・・・」
母様「そう・・・、向こうから今のところ何かする様子がないとしても気を付けましょうね、アトリー・・・」
「はい、母様・・・」
到着早々に周囲から、自分に対して負の感情を持った視線や気配を感じて、不快感を感じた僕に、同じようにその視線や気配に気づいたジュール達も険しい表情で周囲を睨みつけた。ジュールと精霊達に至ってはこの不快感の元を排除しようとするほどで、僕は急いでそれを止めた、その様子を母様が気にして声をかけてくれたのだが、詳しく説明をしなくとも、母様にも今の状況が分かったのか、心配そうに僕の肩をそっと抱き寄せ、そのまま“闘技場“内に連れて行ってくれた。
そうして、お馴染みとなったボックス席についた時には、“闘技場“内の一般客の観客席にはこれでもかっ、と言うほどの人で溢れかえっていた。通常、観客席の長椅子には人が5人座ればいいところに、7人がぎゅうぎゅうになって座っていたり、他にも、本来なら立ち見席というのは特定の場所に設けられているのだが、今は観客席の間にある通路や階段部分にも人が入って、立ち見している人がいる始末。
どうも、襲撃に備えるために、今回は“闘技場に人を入るだけ入れて、“闘技場“の外にいる人を少なくする戦法のようだ・・・
「うわぁ、これ、子供とか一緒にいる人は危ないんじゃ・・・」
へティ「それは大丈夫なようですよ。コチラに来るまでの間に案内人が言ってましたが、ある一定の年齢以下のお子様連れは、それ専用に区画を設けているとのことです。少々見づらいでしょうが、安全に配慮さえているようでしたわ」
ひしめき合う一般の観客席を見て僕が子供達の安全性を心配していると、少し遅れてボックス席に到着したへティがその心配を払拭する情報を教えてくれた。
「へティ♪おはよう、それにしても、そんな対策がされてたんだ、それなら子供達に怪我人が出なさそうでよかった、教えてくれてありがとう」
へティ「ふふっ、いいえ、どういたしまして、それと、おはようございます、アトリー様」
「・・・それにしてもへティ、その格好はやっぱり、例の事を予想して、のことだよね?」
へティ「!、えぇ、よくお分かりになられましたね。アトリー様」
「まぁね、ドレスの裾から見えて靴とズボンからして、そう予想しただけだよ」
へティ「あら、見えてしまってましたか?私、偽装はまだまだですわね」
と、少しおちゃらけた感じで返すヘティの声とは反対に、表情には少しも浮かれた様子はなかった。
それは今、へティは通常の服装の下にズボンを履き、動きやすい革製の頑丈な靴を履いていて、およそ、普通の貴族令嬢がするようなコーディネートではなく、それはもしもの場合、下のスカート部分を取り外し、防具と武器を装備すればいつでもいつもの冒険者スタイルで、戦闘に参加可能なようにしていると言うことであり、そのような準備をしていると言うことは、もうすでに今日の朝あった僕の話の内容と現状をよく理解し、今日、これから起こることに対して備えていると言うことに他ならなかった・・・
(そっかぁ、へティはやる気満々だな、僕的にはへティは参加してほしくなかったんだけどねぇ(*´ー`*)・・・てか、へティでさえあんな準備してるんだから、やっぱり僕もそれなりの準備はしても良かったんじゃ!?Σ('◉⌓◉’))バッ!
そう思って、ソルやオーリー達のいる方向を見ると、全力で首を横に振られてしまった。
(なんだよぉ~、備えておくだけでもさぁ~、いいじゃないかよぉ~、・・・くそ、てか、よく僕が思ってることが分かったな、それに息ぴったりじゃないか、ムカつくなっ( *`ω´))
とか思った僕を置き去りに、今、“国際武闘大会“最終日の準決勝を決める試合が始まろうとしていた・・・・