28話 “大会5日目・夕方2“
「こ、コレは・・・」
視界いっぱいに現れた複数のウィンドウ、その一つ一つをよく見て行くとあり得ない事が分かった。
(情報がバグってる?・・・)
天華『どう言う事です?』
(・・・・・・情報ウィンドウが所々ダブってたり、文字が文字化けしてたり、項目の内容が白紙になってたりしてるから、・・・多分だけど、コレと同じ“魔道具“全てを一つずつ隠蔽するのは無理だろうから、この“世界のシステム“に干渉して、この“魔道具“の情報の読み取りを正確に読め取れないように、隠蔽細工されたんだと思う。それで隠蔽工作された影響でバグを起こしてるかもね・・・)
夜月『“世界のシステム“に干渉するなんて・・・そんな事ができるのは・・・・』
(まぁ、そう言う事だろうね・・・)
天華『・・・例の邪神教“マルモーヴェ教“ですか・・・確かに、あの異界から来た邪神ならばできなくは無いでしょうね。それに、コレはどう見てもこの世界ではオーバーテクノロジーです』
(うん、そうだね。ソルには見せなかったけど、コレ、機械の基盤みたいな物が埋め込まれてる、コレはどう見ても電子製品のそれだもん、この世界では魔法の方が発達してるから、電子製品なんて作られて無いもの・・・)
そう言って、二つに別れている“お守り魔道具“のうち、“魔法陣“が描かれている薄い蓋のような物ではなく、少し厚みがある方に組み込まれている電子基盤のような物をじっと見つめた。
よく見ると基盤の下にボタン電池のような形をした魔石が置かれているのに気づき、コレが前世でよく見てた“車の電子キー“に似た構造に似ていることから、コレがもしかしたら本体に何らかのシグナル、もしくは“魔道具“として登録した“魔力“データの送信をしている可能性があるなと僕は考えた。
(鑑定の情報ウィンドウのバグも、僕達が解析した“魔法陣“に関しての情報は解析通りの情報が出てるけど、“電子基盤“のこの部分に関してだけバグっているみたいだし、もしかしたら、この電子基盤自体がこの世界では未知の技術だから、世界のシステムがそれをちゃんと理解できていなくてバグを起こしている原因になってるかも、もしくはこの部分だけ何らかの方法で、この世界のシステムからの干渉を受けにくくしているか・・・)
天華『その可能性は大いにありそうですね。アトリー、神々が今このバグに対しての対応をしているそうなので、一応、この“電子基盤“の情報は伏せるか、よく分からないと、大人達には説明していて欲しいとのことです』
(あぁ、そうだね。僕もこれの事を聞かれても答えに困るし、そう言っとくよ・・・しかし、電子製品と魔法の融合か、めんどくさい事をしてくれたね。・・・あ、でも、コレはこれで、ちょっと手掛かりになるな、この世界じゃ、電波って言うものがほとんど無いから、コレがシグナルなどを電波として発しているなら、その唯一の電波を捉える事ができるなら、それを受け取る方の本体の位置がなんとなく特定できるかも!( ・∇・))
と、前世での知識で電波の仕組みを覚えていた僕は、この“お守り魔道具?“の本体の特定できる方法があるのではと思い至った。
天華『えっ!?それって可能なんですか!?電波って人間が感知できる物では無いと思うんですけど?』
(多分、できない事はないはず、もし、この“魔道具“がいろんな情報を送っているだけの送信機とするなら、周波数が高いとたくさんの情報を送る事はできるけど、障害物とか距離があると届きにくかったりするから、その電波を受信できる本体を置く場所は限られてくるんだよね。ましてやこの世界では電波を送受信できる電波塔や通信衛星的な物など無いから、電波をたくさん受信するだけでもそれなりの装置がいる、そうなると・・・正確に情報を受け取るとするなら、電波を受信しやすい周囲より高い位置にある構造物に本体を隠しているはず、でも、その構造物の素材次第では電波を阻害してしまう事があるから、本体を露出している可能性もあるな、それに受信できる電波の有効範囲を考えると帝都の外にある“ダンジョン“から、事を起こそうとしている“闘技場“までの間に距離もあるけど城壁などの高い構造物もあるし、電波の届きが悪くなると考えると、念には念を入れて、その中間に複数の中継地点になる“基地局的な物“も必要か、そこを経由して電波を本体に届けるとすると最短距離で設置するだろう、そうすると必然的に“ダンジョン“と“闘技場“を直線上にある背の高い構造物を虱潰しに当たれば何処かで本体が見つかるはず、でも、“魔道具“としてこれを起動するなら、その起動の信号を送れる有効範囲はどうなるんだろうか?“電子基盤“のエネルギーも魔石から出ているみたいだから、“魔道具“の起動も電波を介しているのか?いや、そもそも電波に魔力を載せれるのか?でも、このタイプの“魔道具“を起動するには、本体に使用されている魔石の大きさや魔力の含有量によって、起動の有効範囲が決まる物だし、そうなると、その有効範囲次第でも本体の位置が・・・・)ぶつぶつぶつ・・・・
前世で一度電波についてインターネットで検索した時の知識を元に、この帝都の立地を考えた“魔道具本体“の設置場所の割り出し方を考え始め、その他に魔力を介することで起きる不確定要素に関しての考察までし出した。
ジュール『あぁ、コレはもう、声を掛けても聞こえないね・・・』
夜月『だな・・・』 天華&精霊達『『『ですね・・・』』』
この後、父様達に報告に行ったソルがその父様達を連れて部屋に戻ってきても、僕は肩をソルに強く揺さぶられるまでその事に気づかず、ずっと深く考察してしまっていた。
それは何故かと言うとこの“お守り魔道具?“の構造を深く理解しようとすればするほど、“電子機械“と“魔道具“が互いにどのように作用するのか気になっていたのが原因だったのだが、そこで大きな問題が生じた、それは自分が“電波“の仕組みはわかっていても、それを発するための“電子基盤“の構造についてよく知らないので、この小さな部品一つ一つの役割が理解できなくて、この“電子基盤“の正確な機能が判明しなかったため、あらゆる事象を想定し出すといくら考えても、この“お守り魔道具?“に対しての正しい対策方法が思い浮かばなかった。
そして、結局、“魔法陣“の解析は済んだが未知の部分が多いこの“お守り魔道具?“の効果の起動を止めるには、とにかく本体を探し出して、その起動を阻止する、惜しくは壊すしかないと言った結論に至った・・・・
父様「そうか、コレを使って騒動を起こそうとしているのか・・・そして、この“魔道具“の本体を止める事ができれば、向こうの計画は阻止できる可能性が高いと・・・」
「はい、コレはまだ未知の部分が多いので正確な機能は分かりませんが、従来の“簡易転移魔道具“より、かなり遠くの場所から“魔力を帯びた生命体“を特定の場所に転移させる事ができる事は確かです・・・」
父様「コレはもう、主犯の者達を捕らえれば済む話ではなくなったね。本当は今日中に“闘技場の襲撃計画“の情報が集まり次第、すぐに帝国の騎士団と協力して、第二側妃とその派閥、その他関係者の一斉摘発を行う予定だったが、それと並行してこの“魔道具“の本体の捜索をしなければならないね、カイル、すぐに帝城に知らせを送り事の経緯を説明したのち、人員の派遣を要請してくれ」
カイルさん「はっ、畏まりました」
そうして、僕の部屋に来た大人達にコレまでの解析結果を報告した後、大人達は難しく渋い表情で静かに考え込んで、父様はすぐに行動に移すことにし、それを見た他の大人達もそれしか無いだろうという意見で一致したのか、各々自分にできる事を見つけて、使用人や従者達に指示を出し始めた。
そして、僕にも何かできる事はないかと考えた結果、ちょっと国防の問題になりかねないけど、この帝都の地図の製作をスキルですることにした。
「父様、僕のスキルを使用し、帝都内とその周辺の簡易的な地図を製作しますので、それを使って“魔道具の本体“の捜索の指揮をおとりになってください」
と、そう言いながら、“無限収納“の中にしまい込んでいた大判の厚紙を取り出し、テーブルの上に置いた。
父様「助かるよ、アトリー、地図の作成ができたら、夕食を食べていい子で寝なさいね」
「えっ!僕も他にできる事をさせてください!」
父様「ううん、アトリー、コレから先は大人の、と言うか、国の代表としてのお仕事になるからね、アトリーは両国の大人達に任せて、明日の友人達の応援のために早くなさい。それに、アトリーは“夜は起きていられない“だろう?」
「あっ・・・・むぅ・・・」
父様に地図の制作は喜ばれたが、それ以上は大人達の仕事だからといって、他のお仕事を貰えなくて食い下がっていると、父様に自分のいちばんの弱点?を指摘されてしまい、頬を膨らますしかなかった・・・・
(確かに、僕は“加護“の影響で夜更かしができなかったんだったーーー!!くそおぅ!!_| ̄|○)
と、内心で悔しがっていると・・・・
ソル「アトリー様、書く準備が整いました、どうぞ・・・」ニコッ
そう言って、ソルが先程まで作業台として使っていたテーブルの上を綺麗にして、地図を描きやすいように準備して、いい笑顔でペンを差し出してくれていた。
「・・・むぅ、ありがとう、ソル・・・」(地団駄踏んでないでさっさと描きなさいって副音声が聞こえる・・・)
そう思いながらも、差し出されたペンを受け取り、慣れた感じで“探索スキル“と“分析スキル“を発動し、さらにその上に“真眼スキル“をを発動させて、帝都の街並みとその外にある“ダンション“までの道のりを全て探知して、帝城を中心に厚紙の真ん中から地図を書き出した。
「うーん、ここの建物が怪しいなぁ」
と、出来上がったばかりの地図を指差しそう呟いた。それは地図を制作している最中に、例の“ダンジョン“と“闘技場“の直線上に、“分析スキル“で違和感を持った4階建ての大きな借家か、宿と思われる建物があり、その一室を詳しく“真眼スキル“で探ってみると、
「ここに変な魔力の流れがあって、その近くにずーっと動かない人の気配が複数ある・・・変な感じがするな・・・」
そんな感覚を持った。周辺の建物にはない、わずかな違和感だが、この状況で放って置く事はできないそんな感覚になった場所だ。それを聞いた父様が・・・
父様「ふむ、アトリーがそんなに気になるのなら、先にこの場所を捜査してみよう」
「本当ですか?ありがとうございます。父様」
父様「いいや、この建物も捜査対象の一つになっているんだ、後で捜査するか先にするかの差だよ。何よりアトリーが描いてくれたこの地図が1番助かるよ、ありがとう、アトリー」ナデナデッ
「ふふっ、お役に立てて嬉しいです♪」
父様「あぁ、アトリーのおかげで、指示を出しやすくなるよ・・・さて、アトリー達はそろそろ、夕ご飯の時間だよ。私は一緒に食べれないけど、母様とカミィとリアン、パティが一緒に御ないのんを食べてくれるそうだ。2人はゆっくりご飯を食べてちゃんとお風呂にも入って、早く寝るんだよ?後は父様達に任せなさい」
と、僕の頭を優しく撫でながらそう言うので、僕は操作のお手伝いが出来ないのをちょっと残念に思いながら頷くと、父様はちょっと困った顔をしながら部屋を出て言った。
母様「さぁ、アトリー、ソル君、一緒に夕食を食べましょう」
「はい、母様」
部屋に残っていた母様に誘われて、捜査に参加しない人達と一緒に夕食をとり、お風呂に入って、いつものように入念にお手入れされたら、あっという間に寝る準備まで完了してしまった・・・
「うーん、捜査の方はどうなったかな?中継地点になってる場所、見つけられたかな?そう言えば、僕が感じたあの部屋は何かあったかな?」
天華『アトリー、それは大人達に任せたんでしょう?あなたは早く寝て、また明日役にたつ事をしたらいいじゃないですか』
「むぅー、わかったぁ、今日はもう寝るよぉ・・・・、おやすみ、皆んな・・・」
ソル&ジュール達「『『『『『おやすみなさい、アトリー』』』」様』』
夕食を食べていてもお風呂の間もずっと気になっていた捜査の進展、でもこの時間になってもなんの一報も届かなかったので、さらに気になっていたのだが、心が落ち着かないまま、もうすでに、寝る時間が来ていて、眠気が限界だった僕はすぐに夢の中へ・・・・
(また明日、朝から精霊達からの報告も来るだろうし、それからまた何かお手伝いできる事をしよう・・・・)
と、そう思いながら寝たのだった・・・・