25話 “大会5日目・第四試合“
はい!どうも、僕です!今、第四試合の1試合目、イネオスと因縁のあるショウスデット獣王国の代表である、獅子獣人の選手との戦いが白熱している所です!
「わぁ、彼の攻撃は勢いがあるねぇ・・・「ガキィン!!」あ、弾いた!」
ドンッ!ズザッ!! 「「「「「おおっ!!!」」」」」 「耐えろーーーっ!!」 「反撃しろ!!」
ソル「耐えましたね。でも今のは痛そうでしたね。これはちょっと本気でやってますね、イネオス・・・」
ガイィンッ!! ズザァーッ!! 「「「「「わぁーーっ!!」」」」」 「そこだぁーーっ!押し込めぇーーーっ!!」 「負けるなっ!!押し返せぇーーっ!!」
へティ「そう見たいですね。相手の実力が高いからでしょうね。手加減が難しくなっているみたいですわ」
ガンッ! ダンッ! ガンッ! 「「「「「おぉーーっ!!!!」」」」」 「やれぇーーっ!!」 「そのまま行けぇーーっ!!」
「あぁ、懸念が現実かしそうだ、このままうまく場外に出せたら良いんだけど」
今あっている試合は、ほぼ魔法を使わず、相手が自慢の爪で猛攻を繰り返し、イネオスがそれを剣で受け止めたり弾き返したりと、激しい攻防が繰り返されているのですが、徐々にイネオスの剣捌きが鋭く強力になって、相手に細かい傷が出来始めている所で、この攻防に観客は大盛り上がりし、選手2人に大きな声援が送られている。そんな、観客の盛り上がりとは対照的に、僕達は相手の心配をし始めているのだった・・・・
そして、そんな話をしているうちに・・・
ブォッ!!! ドガンッ!!! 「「「「「・・・わっぁーーーっ!!!」」」」」 「魔法一発!!?」 「凄い風魔法だっ!!」 「あの魔法発動早過ぎっ!!」
と、イネオスが強い風の竜巻を相手にぶつけて、相手選手を場外に弾き出したのだった・・・・
審判員「勝者!イネオス!」 「「「「「わぁーーーっ!!」」」」」 「良くやったぞーっ!」 「キャァーッ!!素敵ーーッ!!」 「次も頑張れーっ!!」 「私と付き合ってえーー!!」
「あー、風魔法で、場外に弾き飛ばしたね・・・あのまま剣でやり合ったら相手に怪我をさせちゃうって思ったんだろうなぁ・・・、でもまぁ、判断としては最善だったね」(それにしても、黄色い声援も多いな・・・イネオスがモテてるWWWW( ・∇・))
へティ「いいえ、アトリー様、イネオスは今回の“大会”の個人戦では準決勝まで攻撃魔法使わないと言ってましたのに、この時点で使ったと言うことは、多分、相手をするのが面倒になったんですわ」
「そうなの?まぁ、でも、これ以上、剣だけで戦い続けるのは無理があったし、観客も盛り上がってたから良いんじゃない?」
へティ「そうかも知れませんけど、強力な魔法が使えるのは手札として隠しておいた方が良かったはずですわ」
「まぁ、ね、バレたとしても、勝つ自信があったんじゃない?」
これまでの試合でイネオスとベイサンは基本的に武器と身体強化、または防御系の魔法だけだけを使って、得意属性の強力な攻撃魔法は、準決勝までか自分達の予想より強い相手が出てきた時の隠し球として使用していなかったのだが、今回の相手では手加減したままでは勝てないと判断して、魔法で決着をつけてしまった事にへティは大変お冠のようだ・・・(イネオス達とは生まれた時からの付き合いで、いろんな方面に容赦なくて厳しいなぁ、まぁ、でも、そんな気兼ねなく言い合える仲の友人は貴重だよねぇ( ̄▽ ̄))
とか、言ってる間に2試合目になる例の帝国の選手とスッド魔人民国の選手の試合が始まった。
「・・・これは、スッドの選手の方が勝つね、相性悪過ぎ・・・」
ソル「そうですね。素早さと魔法に長けた妖精族のフェアリー種の方のようですし、一応、魔法はそこそこ使えるぐらいの剣士の帝国の選手では敵わないでしょうね」
ライ兄様「今までの対戦相手が自分に有利な相手だったからココまで上がって来れたんだろうさ・・・」
ヘリー姉様「彼には苦手な相手にどう対抗できるかそれがこの“大会“での学びになるでしょうね」
へティ「それにしても、事前に対戦相手がわかっていたはずなのに、なんの対策も取ってなさそうですよね?」
「うーん、確かに・・・あぁ、もう決まっちゃった・・・」
この試合が始まって数秒観戦しただけで、両選手の実力の差に気づいた僕達は、こんな感じでこの試合の評価をすで話し合っていると、予想通り帝国の選手は、スッド魔人民国の選手からの魔法の連続攻撃に対処できなくなって、まともに攻撃を受けて気絶して負けてしまった。
そして、そんな会話をしていると、運営側はこの2試合が思った以上に早く決着がついてしまって、時間が余って困ったのか今から次の試合まで小休憩すると放送があったので、僕達は昨日の情報をもとに今日この時までにあった情報租整理する事になった・・・
「しかし、今日の朝、あの3ヶ国の引率教員達が、例の第二側妃派の雇った冒険者達だったなんて、今日1番の驚きだったよね・・・」
母様「そうねぇ、あの教師達が帝国入りしてからすぐに冒険者ギルドに登録して、“ダンジョン“へ入る許可のためにランク上げしていたなんて、思っても見なかったわ・・・」
父様「しかも、その教員達がかなりの実力者で完全に“人化“できる獣人達だったから、すぐにその教員達とは気づきもしなかったよ」
昨日、教師陣の存在に気づいた時点で精霊達に監視をお願いしていた僕らは、今日の朝早々に精霊達からもたらされた知らせに大いに驚かされたのだった。
この会話で分かる通り、今日の朝、朝食を食べ終わった頃に精霊達が少し慌てたようにやって来て、こう報告してきた・・・
“『獣人教師達が朝早くから“人化“で冒険者みたいな格好して、冒険者ギルドに行ってたよ!』“
“『それに愛し子の知り合いにあった!』“
“『その人、昨日は騎士?の格好してたのに、なんで冒険者の格好してあの獣人達を見てたの?』“
“『それと、周りの冒険者達があの獣人達の噂してたよ「もう、Eランクに上がってるのかよ」とか、「アイツらランク上がって早々にもう“ダンジョン“行ったらしいぞ」とか、言っていたよ!』“
と、これを要約すると、獣人の教師陣は朝早くから“人化“で獣人と分からないようにして、冒険者の格好で出かけて、冒険者ギルドで“ダンジョン“への入場許可を取りに行ったと、そこで昨日の第二側妃派の雇った冒険者達を監視任務をしているはずの騎士達が、その獣人教師達をつけていたのを見かけた、と、そして、噂によると、獣人教師達はあの姿のまま冒険者活動をしていて、かなり急足で冒険者ランクを上げて“ダンジョン“に行っていたらしい、と、
そう言う報告を聞いて、朝イチで驚いたのだった。
カミィ姉様「それとは別に1番不可解なのは“シニストラ“の教師陣ですわ。自国の代表選手達を宿に放置して何をしているかと思えば、帝都内の空き家を借りて何やら怪しい魔道具を生産して、売り捌いている事ですわ」
お祖父様「そう言えばそうだな、なんだったか?魔物から身を守るための“お守り“?とか言って安価で冒険者達に売り払っているのだったかな?」
ヘリー姉様「えぇ、それを襲ってくる魔物に投げ付ければ身を守れるとか、そのような不確かな効果を謳って今日から一つ小銀貨一枚、500リトスでEランクからCランクの冒険者達を中心に売り捌いているそうですわ。ですが、あれは精霊達が言うにはあれは“お守り“とかではなく、“間違いなく何かしらの魔道具“だそうですので、魔物を撃退できるような代物ではないそうです」
お祖父様「そうなると、ますます不可解だな、そんな効果のない“魔道具“を安価で売り飛ばすにしては採算が合っておらんように思える、商売として成り立たせるつもりが無いのもまた不可解だな・・・」
へティ「・・・あの“シニストラ“の教師達は何がしたいのでしょうか・・・」
「・・・本当に何がしたいんだろうね?」(うーん、こっちも全くもって何がしたいのか分からん!!(*´Д`*))
と、言った感じで今朝あったことを、その時その場にいなかったへティやイネオス達の家族に情報共有も兼ねて話していると、次の3試合目、ベイサンとマルゴー獣人国の豹獣人選手との戦いが始まると放送があり、意見の出し合いもそこそこにベイサンを応援する体制に入ると、すぐに試合が始まった。
「わぁ、あの豹獣人の人なかなか素早いね、さすが豹の獣人」
ガンッ! カンッ! キンッ! ガンッ! とショートソードの二刀流でどんどん攻めていくマルゴーの選手に対し、ベイサンは慌てず防御を固め相手の攻撃を受け流していた。
ソル「そうですね。でも、あちらよりいつもお相手いただいているヤヅキ様の方が早でしょうから、それについて行けいているベイサンでも軽く対処可能でしょう」
夜月『それは私も保証しよう』「がぅ」
ソル「ヤヅキ様?」
「ふふっ、夜月もベイサンが自分についていけているのを知っているから、ベイサンが相手に対処可能なことを保証するって、ふふっ」
へティ「まぁ!ベイサンはヤヅキ様から太鼓判を押していただけたのですね?ふふっ」
ベイサン母「まぁまぁ、これはベイサンは負けられませんわねぇ」
イネオス母「そうですわね、ふふっ」
と、和やかに会話していると、それまで相手の出方を見て防御に徹していたベイサンが攻撃に出た。
ガァイィンッ!!! ブワッ! ドサッ!! 「「「「「わーっ!!!!!」」」」」 「すげぇ!!端から端まで飛んだぞ!!?」 「惜しい!後ちょっとで場外だったのに!!」
「おお、ベイサンは仕切り直ししたみたいだね・・・」
カイ兄様「さて、どうするのかな?一気にかたを付けるつもりなのか、向こうの気が済むまで相手してから決着をつけるのか・・・」
「うーん、さっきイネオスが一気に魔法で決着をつけちゃったから、ベイサンは少し長引かせるんじゃ無いですか?」
カイ兄様「まぁ、その方がいいだろうね」
と、言っている間、一定の距離を保ったまま睨み合いが続き、静かになったと思ったら闘技場全体を包む突風が吹き、その風で舞い上がった葉っぱが2人の間にひらひらと舞い、舞台に落ちた、すると、それが引き金になり、2人は同時に互い目掛けで走り出し、構えていた武器を大きく振りかぶって、強くぶつかって行った。
ガンッッ!!! カンッッ!! ギィンッ!! ギャリギャリッ!! 「「「「「おぉぉっ!!!」」」」」 「いけっ!そこだっ!」 「もっと押し込めっ!」
互いの強い攻撃がぶつかり合う音が響く中、観客がヒートアップしてくる、どちらの応援かわからないけど、この試合も観客は楽しんでいるようだ。
ガッキッンッ!! ギィンッ!! ガンッッ!! ガガガガガッ!!! 「「「「「うぉおーーーっ!!!」」」」」 「連続攻撃だ!!」 「早いっ!!」 「うぉっ!!豹獣人の嬢ちゃんもスゲーが、坊主の方も全部防御してるぞ!!」
「あの連撃、凄いな、さっきより速さが増してる・・・」
へティ「そうですわね。でも、ベイサンもうまく受け止めてますね・・・あ、・・・」
ガァキィッ!!ドンッ!!! ヒューッ ドサッ! 審判員「場外!勝者!ベイサン!!」 ドッ!「「「「「うぉぉぉーーーー!!!」」」」」 「いいぞぉーーー!!」 「すげぇぞ坊主ぅーー!!」 「キャァー!カッコイイィーーー!!」 「お付き合いしてぇーー!」
へティ「・・・カッコイイのは認めますわ、でもお付き合いは認めませんわ!!」
「あはははっ、まぁまぁ、観客のおふざけだよ、イネオスの時だって似たような声掛けがあったし・・・」
ベイサンは相手がココだっと思いっきり力を込めて攻撃するため、大きく振り被った時に瞬時に身体強化のスキルを最大にして、魔力で強化した盾を構えて、相手の振り下ろされる攻撃に向かって突進していき、そのまま相手にもぶつかって、相手を盾の上に持ち上げる形にした後、すぐに相手を斜め上に力の限り弾き飛ばし、場外へと落としたのだった。決着がついて、審判員のコールが終わると同時に観客が湧き立ち、興奮の中、様々な声援や声掛けがあったのだが、その中の何人か、特に女性からの声掛けにへティが反応し、頬を膨らませてちょっと嫉妬していたのが可愛かった・・・
そんな、嫉妬したへティを宥めていると、今回の試合の中で誰を敗者復活で次の準決勝に進めるかといった放送があり、第四試合で負けた選手達3人が舞台に上がってきていた。説明によると、司会者が一人一人選手の名前を呼び、声援が多かった選手が敗者復活として決められるらしく、その為に今は闘技場内は静まり返っている。
司会者「では!、1人目!・・・・・・・」
「へぇ、こんな形で決めるんだ、ん?これで選ばれた人はどこの枠になるんだろう?」
ヘリー姉様「あぁ、それはね、多分、ベイサンくんの所よ、ほら、勝ち抜き戦の対戦相手がいない場所、あそこに入る形になるわね」
と、僕の小さな疑問にヘリー姉様がトーナメントの表が大きく這い出されている闘技場の壁を指差し、優しく教えてくれている間に、敗者復活できる選手が選び終えたのか、姉様が教えてくれた表に大きく、ベイサンの対戦相手の名前が書き足されていく、それは1試合目でイネオスと戦った“ショウスデット獣王国“の選手だった。
「うーん、確かに今までの対戦相手の中では実力があった方だもんね、順当かな・・・」
そんなことを言っていると、“大会“の昼休憩に入ったので、観客達は昼食を取るために闘技場から出て行っていた。
そして、僕達もお昼にしようと父様の一言で、うちの使用人達がお昼ご飯の準備が始まりだし、何も手伝わせてもらえない僕はその間、誰もいない闘技場の中の舞台をジーッと眺めていると・・・
『『おーい!!』』 『『報告に来たよぉ~~!』』
空から精霊達の声が聞こえてきたのだった・・・・
「あ、今日は早かったな・・・さて、どんな報告があるかな?・・・」