24話 “大会4日目・第三試合2“
すでに始まった第三試合の一回戦目を観ながら、精霊達からの情報をまった・・・・
そして、数十分後、選手に付けていた監視の精霊達が戻ってきて、報告を聞いたら・・・・
「ッ!!!???」(はぁ!!?“ダンジョン“!!??)
僕はもう少しで人目を憚らず大声を出しそうになった・・・
それは精霊達が監視の報告に来たのはちょうどイネオスとベイサンの試合が問題なく終わって少しした時のこと、その報告内容はとても驚く物だった。
「ふぅ、今のイネオスとベイサンの試合はちょっと見応えあったよね、イネオスは良くあの吸血鬼族の攻撃を捌けてたし、ベイサンは虎獣人の攻撃を耐えてた、その後の2人の反撃の切り返しも本当に良かった。最初は対戦相手を見てどうなることかと思ったけど、結構余裕そうだったね」
ソル「そうですね。イネオスの対戦相手は“スッド魔人民国“でも珍しい種族の吸血鬼族でしたから、向こうの手の内を見極めるためにかなり長い時間、攻撃を捌いてましたけど、相手の体力が意外と持たなかったのが良かったですね。反撃に転じてすぐに場外に押し出してましたし」
「そうだね。イネオスはああ見えて、かなり体力を持ってるもんね」
へティ「そうですね。イネオスはアトリー様と鍛錬するようになって、アトリー様に追いつきたくて自分から体力をつける鍛錬を増やしてましたから、それが功を奏したでしょうね。それにベイサンは元々体力がある方でしたけど、それだけではなく自分の弱点である守りに関しての技術を熱心に学んでましたから、今回の対戦相手にも冷静に対処できていたようですよ」
「確かに、ベイサンの盾の使い方はもう玄人だよね?あの、えーっと、“デクシア連邦のドリット古虎国“だっけ?あそこの国の虎獣人は他国の虎獣人より体格が良くて力が強いって聞いてたのに、ベイサンは難なく、その攻撃を受け流してたのは凄いよ。・・・しかし、今回の“大会“の出場者の約半分が獣人族だったのに、第三試合まで残った種族は程よくバラけてるよね、種族の特徴で体格や力、魔力とかもかなり差があるのに、それでもこうして、種族の身体能力としては低いと言われている人族のイネオス達が残ったのは、やっぱり個人の日々の鍛錬や勉学の努力の成果って事かな?」
母様「ふふっ、そうね。イネオスくん達の努力が身に付いているからこの結果になったんでしょうね」
と、少々興奮気味にイネオスとベイサンの試合の話をしていると・・・
『『『『『ただいま~!!』』』』』
「あ、お帰りなさい」
『『聞いて、聞いて~!!』』 『『あのね、あのねぇ~』』
「はいはい、聞くから、1人ずつお願い」
テンション高めで選手達の監視を頼んでいた精霊達が帰ってきた。
『じゃあ、僕からぁ~!!』
「うん、君は誰の監視をしていた子かな?」
『僕はねぇ、豹の獣人の女の子についてたよぉ~』
「あ、僕達の先輩に勝った人だね、それで?その人は何かしてたの?」
『それがねぇ~・・・・・』
と、話し始めたのんびり屋の土の精霊が言うには、どうやらイネオスが試合に勝った後ぐらいに、例の4カ国の選手達が密かに人目を避けて集まって、簡易的な防音結界の魔道具で周囲に結界を張り会話をし始めたそうだ。精霊達はなんとか自分達の属性特性を使って、中の会話を聞き取ったらしいのだが、所々途切れたようにしか聞こえなかったそうだ。そして、会話の内容的には最初はイネオスの試合を見て、“偶然だ“、“まぐれだ“、はたまた“相手が弱すぎたんだ“、などとのたまっていたらしいが、ベイサンの試合を見て焦り始めたらしい、また同じように集まりその際に“あの古虎国の選手の攻撃を受け切るなんて…“、とか、“予定と違う“、とか、“計画に支障が“、とか、“あれは出まかせじゃなかったのか“など言い合っていたとか・・・
「・・・イネオスの時は実力を認めてないかのような発言をしていたのに、ベイサンの時はやたら素直に実力を認めているような発言をしている?それに、“予定と違う“がとか“計画に支障が“って興味深い発言も見受けられている、何か仕掛けているのは確かのようだ、他に何か言ってた?」
土の精霊の話を聞いて、考察した後、他にも何か仕掛けに関する詳しい情報はないかと思って、精霊に聞いてみると、
『えっとねぇ~“ダンジョン“に行った「「「「「っ!!!???」」」」」誰かに伝えなきゃ?ってぇ?、あれ?“ダンジョン“に行く人にぃ?だったかなぁ?とにかく、誰かが“ダンジョン“に用があったみたいで、その人?に何か伝えなきゃってぇ、言ってたぁ?見たい?」
「「「「「・・・・っ、はぁ~“ダンジョン“か・・・」」」」」
と、もう少しで大声で叫びそうな単語が急に出てきて、この話を聞いていた全員が叫ぶのを堪えて、長く止めていた息を深く吐き出し、思わずその単語を絞り出すように呟いた。大きな息を吐き出して落ち着いた後、他の精霊達にも情報の確認をしたら、誰もが土の精霊と同じぐらいの情報しかなかったので、引き続き監視のお願いをして、精霊達は再びこの場から消えていった。
「・・・これはもはや偶然とは言えないですよね。母様・・・」
母様「えぇ、そうね。これは向こうにも情報を共有した方がいいわね・・・それにしても、他国の出場選手達と第2側妃派とどこで繋がったのかしら?・・・」
(確かに、まだ14、6歳ぐらいのただの学生が他国の側妃とどうやったら知り合うことができるんだ?もしかしたら、別々に“ダンジョン“に用があるだけなのか?(・・?)でも、そうなると二つの勢力が行こうとしている、その“ダンジョン“に何が有ると言うのだろうか?特定の特殊な素材?それとも、あそこの“ダンジョン“にドロップ品で出てくる特有の魔道具?・・・・いや流石にこの短期間で出てくるようなやつなら、前もって用意できる、用意するものだろう、そうなると“ダンジョン“そのものに用があって入っていくって方が違和感は無い、・・・!!もしかして“氾濫“っ!?意図的に“氾濫“を起こそうとしてるなら、なんとしても止めないと、帝都全体が危ないのでは!?!Σ('◉⌓◉’)こ、これは早く父様に知らせなきゃ!!)
と、精霊達の報告を聞き終えて、その情報から最悪のシナリオを予想して、僕は立ちあがろうとした、すると、後ろに座っていた母様も僕と同じ、もしくは同等の結論に至ったのだろう、顔色を悪くして険しい表情をしていた。
「母様、僕が父様達に話してきますね」
と、顔色の悪い母様を気遣いそう言うと、
母様「!、いいえ、母様が父様達に話してくるから、アトリーは試合を観戦して楽しんで、心配ないわ、父様達がどうにかしてくださいますわ」
母様はそうい言いながら立ち上がり、僕の頭を撫でて父様達がこもっている会議室に向かっていった。
「母様・・・」
(行っちゃった・・・、しかし、“ダンジョン“と舞台の仕掛けとどう関係しているんだろう?・・・もしかして、舞台にまた魔力を吸収する仕掛けがあるとか?(*´ー`*))
今聞いた情報の共有の為、母様がサクサクっと行ってしまったので、手持ちぶたさになった僕は仕方なしに下の席について、母様に言われた通り、今あっている一般部門の試合を眺めながら、“アナトリ王国“の選手が言っていた“舞台の仕掛け“について考えていると、以前に学園で起きた時の事件でのことを思い出し、今試合している選手達の魔力に異変がないかと観察してみたが、
天華『どうでしょう、今の所そんな仕掛けが動いている様子はないですよ?』
(だよねぇ、魔力が動いているなら僕達が気づかないはずないし・・・魔力関係の仕掛けじゃないのか?( ̄▽ ̄))
同じように魔力の不審な流れを観察していた天華に異変はないと言われ、自分も見た限りではそんな様子はなかったことから、その線は消えたと確信したのだが、他にどんな仕掛けをできるのか?と考えていると、
夜月『物理的罠と言うことか?いやでもな、あの舞台自体ににはそんな怪しい場所はないな・・・』
と、夜月のよく見える目でも、物理的に不審な箇所はないと断言されてしまった。
(うーん、僕の目にもそんな仕掛けは・・・ん?よく見てみると何かの魔法が付与されてる?(・・?))
ジュール『えっ、じゃあそれが彼らが言っていた仕掛け?』
他に怪しい物はないかとよく目を凝らしていると、微かな魔法の反応があったので、今度は魔法自体の解析のため“真眼スキル“を発動させると、
(どうだろう?・・・あ!、あれだ、第一試合で作動してた転移魔法だ!( ・∇・))
ジュール『?・・・あぁ!あれだね!気絶した人を外に出す魔法だよね?』
(そう、それ!(*´Д`*))
天華『じゃあ、それは関係ないですね・・・』
(だねぇ・・・(*´-`))
すぐにテロとは関係ない、“大会“側が付与した魔法の痕跡だったことが判明して、皆んなしてがったりしてしまった。
「はぁ、他に何か手掛かりがないものか・・・」
へティ「そうですわねぇ、あの方々の交友関係を調べてみたら、第2側妃派との繋がりが見えてくるかもしれませんね・・・」
「あ、それはいいかもね、しかし、子供同士の繋がりから、よく、大人の貴族と、繋がった?・・・いや、そんな訳ないよね?どこかしらの時点で大人が関わってるはずだ、・・・」
ソル「大人と言えば、あの4ヶ国の引率の教師陣は今どこで何をしているんでしょうか?」
「「「「「!!」」」」」
舞台の仕掛けについて手掛かりが途絶えてしまってがっかりしていたら、へティはそれとは別の方向からのアプローチを提案してくれた。それは母様が最初に気にしていた選手達と第二側妃派の繋がりについての事で、その繋がった経緯が分かれば、もしかしたら舞台の仕掛けについても情報が出るのでないのないかと言ってくれた。僕もそれはとても合理的でやる価値はあると思ったのだが、その繋がりについて、一つ、見過ごしていた疑問がぼんやりと湧いた。僕が何かがおかしいとモヤモヤして明確に形がない疑問を、ちゃんと形にして口に出す前に、ソルが先のその疑問を形ずくり言葉にした。まさに盲点だったその言葉に誰もが驚きを現したが、納得の感情の方が強かった。
「た、確かに、この“大会“が始まってから、あまり見かけないような・・・他の国の教師陣は自国の生徒の勇姿を見守っているのに、あの4ヶ国の教師陣の中で1人だけ、しかも毎回、同じ人、“女性の蛇の獣人“1人多分、蛇王国の先生だと思うんだけど・・・他の人はどこにいるんだ?あ、でも、帝国の先生達はあそこにいるね、ってことは、よく突っかかってくる帝国の選手は彼個人の思惑で他の人たちに手を貸しているってことかな?・・・よし、なら、監視対象は“ショウスデット獣王国“、“マルゴー獣人国“、“エクスト蛇王国“の3ヶ国の引率教師陣と言うことで、誰か精霊さーん、お願いできますかー?っと」
と、いつものように呼びかけ、呼びかけに応じてくれた精霊達にいつものように交渉し、いつものように見送っていると、第三試合は全て終了していた・・・・
「さて、これでまた、詳しい情報が入って来るのを待つだけだね」
ソル「ですね。周囲の警戒もさらに強めておきましょう」
へティ「イネオス達にも後で情報を共有しておきますわ」
「うん、じゃあそっちの方はお願いするね」
そう言って、大人達もより一層の警戒心を持って闘技場を後にしたのだった・・・・




