23話 “大会4日目・第三試合“
はいどうも、僕です。今日は午前中に学生部門の第三試合が6試合行われ、午後には一般部門の第三試合も6試合行われる予定です。
そして、現在、僕は、第三試合に出場するイネオス達を激励するために、選手控え室前に来ています。
何故そんな事をしているかと言うと、昨日の捜査会議で・・・
ベイサン母「うーん、まず、向こうが行なっている舞台への細工の詳細を突き止めなければならないですよね?そうなると、密談の内容を掴む事が1番手っ取り早いのでしょうけど、結界の魔道具があるとそれは無理ですし・・・結界の魔道具がないところでの会話から、その細工の糸口になる会話を拾って予想するしかないですわよねぇ・・・」ボソッ
と、ベイサンのお母さんのプルスワさんの呟きからこれからの行動の方針が決まったのだ。そう、“魔道具が使えない場所で計画に関する話をさせればいいじゃないか!“と・・・・
その、これからの方針が立ったことで、一気にこちら側としてできる事を挙げていった結果、“魔道具の使用、所有すら禁止されている、試合前の選手控え室に僕が出向いて、相手の敵意を刺激すれば、苛立ちから何かうっかり口を滑らせるかもしれない“のでは?と言う予想から、今回の相手の動揺を誘う、“揺さ振り作戦“を実行する事に相、成りました・・・
(えっ?作戦の立案が安直すぎるって?・・・・しょうがないんだよ!他に手がなかったんだから!本当は向こうが密談する時に使用している結界の魔道具内に精霊達を送り込もうとしたら、魔道具の使用であらかじめ登録している人以外は結界から省かれてしまう設定になってて、誰も密談の場に潜り込めないんだもん!
それに、密談の現場を強制的に抑えようとしても、向こうが密談をしている家が元ダンシャンスー公爵家の別邸で、元々、密談などを行う時に使用していたのか、別邸の建物内に様々な仕掛けがあって、強行突入するのは危険で、他国で勝手に家宅捜索は流石に国際問題になりかねないから却下されたし、彼らは他の場所では互いの協力関係を徹底的に隠蔽するためなのか、全く接触しようともしないぐらいかなり慎重で、ただ監視するだけじゃ何の情報もつかめそうになかった、だからこちらから出向いて、動揺させ、尻尾を出させて有益な情報を吐き出させたいと言うことで、この作戦が可決されました!(・Д・))
で、現在、選手控え室前で警備をしている衛兵達に軽く挨拶をして、控え室のドアを叩いた。
コンコンッ
「失礼・・・」 ガチャッ
衛兵「!っ、こ、これは“愛し子様“!」
「「「「「ッ!!?」」」」」ザワッ!!
「こんにちは、急にすみません、友人の激励に来たのですが、中に入っていいでしょうか?」
衛兵「あ、は、はい!!通達が来ております!どうぞ、ですがもう少しで試合が始まりますので手短にお願いいたします!」
「はい、ありがとうございます。顔を見て少し話したらすぐ出ていきますね」ニコッ
「「うっ!!」」
「だ、大丈夫ですか?」
扉を開けると中で警備をしていた衛兵さんが僕の登場に凄く驚いて、僕が来たことを叫んだ、すると、室内でざわめきが起き、うっすらと僕に対しての敵意を感じた。僕はそんな事に慌てずに要件を告げると快く中に入れてくれたので、にっこり笑顔でお礼を言うと、対応してくれた衛兵さんと、その後ろにいた衛兵さんが胸を押さえてしまった・・・
(大丈夫?不整脈か?(・・?))
天華『アトリー、それは放置していても大丈夫なので、今は作戦の事を考えてください、ほら、イネオスくん達が待ってますよ?』
(あ、うん、衛兵さん、強く生きろ!よし、いくよ!٩( 'ω' )و)
気分が悪くなった衛兵さんが気がかりだったが、天華が問題ないと言って作戦の開始を促してきたので、今すぐに死ぬ的な様子でもなかった衛兵さんの健康を祈りつつ、室内の人達の視線を感じながらもこちらに来ているイネオス達に向かって声をかけ、作戦を開始。
「あ、イネオス、ベイサン、どう?緊張してる?」
イネオス「アトリー様、わざわざお越しいただきありがとうございます。僕もベイサンもそんなに緊張してませんよ」
「そう?それは良かった。いいなぁ、楽しそうで、僕も君達のどちらかと決勝で戦ってみたかったよ」
ベイサン「それは無理ですよ。アトリー様が出場なさると、ソルも出る事になるでしょうから、その時の代表選手は僕達じゃなくて、アトリー様とソルになってたでしょうし、決勝もアトリー様とソルの決勝戦になってますよ。W W W W」
「ん?あ、そうか、選手の制限があったんだった、そう言えば今回の代表選手を決める時に先生から事前に、僕と他の出場者とでは流石に実力差があり過ぎて試合にならないので、僕の参加は許可されませんでしたって言われたんだよね。それで“大会“に出たいなら一般部門で出てくださいって、でも、それも遠慮してくれた方が“大会“が盛り上がるから、僕は観戦してるぐらいがちょうど良いって言うんだよ?酷いと思わない?」
「「「「「!!?」」」」」 「実力差がありすぎるってどう言う?・・・」 「元から出場できなかったってこと??」 「いや、“大会“側から怪我させる前に禁止にしたんじゃ・・・」
作戦はまず、僕が今回の“大会”に出場しなかった経緯をさりげなく周囲に聞かせた。すると、僕達の会話に聞き耳を立てていた他の選手達は、僕の参加しなかった、いや、参加できなかった理由を知り、予想外だったのだろう、物凄く驚いている様子が窺えた。でも、中にはこの話に裏があるんじゃないかと疑う声も聞こえてきたが、聞こえないふりをして好きに言わせておいた。
そして、僕は彼らがちゃんと僕達の会話を聞いていることが確認できたので、次はその驚きを利用して、僕への関心を強める会話を続けた。
イネオス&ベイサン「「あはははっ、それは仕方ないですよWWW」」
へティ「ふふふっアトリー様に敵うお方なんて誰もおりませんもの」
「そうかも知れないけど、僕は学生としての楽しみが欲しかったんだよ?ねぇ、ソル?ソルもそう思うよね?」
ソル「まぁ、確かに、在学中の思い出として出場はしてみたかったですよ。でも、アトリー様に関してはそう言われて参加禁止になっても仕方ないですが、そこについでの様に僕も参加禁止になる方が酷いと思いませんか?」
ベイサン「いやいや、アトリー様の次に実力があるソルも大概だからな?」
イネオス「そうだぞソル、君こそ一般部門に入ったら楽しめたんじゃないか?」
へティ「そうですよ。ソル様はアトリー様とお家の騎士様達といつも鍛錬なさっているんですから、大人相手でも優勝できますわ」
「そうだね。一般の部の出場者を見てみたけど、ソルだったら問題なく相手できるよ、僕と違って手加減できるし・・・」
「えっ、どう言うこと?あの子も・・・」 「はぁ?俺たち舐められてる?・・・」 「流石に大きく言い過ぎ・・・」 「神の愛し子だかなんだか知らないが胡散臭い・・・」ザワザワッ
僕達の他国の学生選手達は眼中に無いと、言った感じの発言に、室内にいた選手達が一様に眉を顰めた。
今僕らがこのような会話をしているのは、今回の作戦を実行するにあたり、どのように騒動を起こそうとする相手を煽るか、と言う点で問題が生じたのだ。それは相手の反応を見て、情報を得るためとは言え、関係の無い人達がいる前で特定の国を貶すような発言は避けたかった。
では、どうやって相手の敵意を煽れば良いのか?と、なった時に、イネオスが、「そう言えば、彼らはアトリー様が大会に出場していない事に不満そうにしてました」と、かなり有益な情報を出してきたので、このように普通なら絶対しない自分を誇示し自慢するような話し方で、戦いに置いて強さに重きをおく相手の獣人の神経を逆撫でして、冷静さを失わせようと言う作戦になったのだ。(まぁ、そのせいで他の選手達も一緒に煽ってしまうのがちょい難点だけどね・・・)
そして、今、この会話を聞いた彼らは肉肉しげに僕達を睨みつけているのを感じ、敵意が濃くなったのが分かった、どうやらその作戦は十分な効果を発揮していることが伺える。
(さて、あとは少し牽制している風に・・・)
「あ、そうだ、今日この試合に勝ったら明日の準決勝に進出だよね?そして、その次の決勝で君達が対戦するの見れるのを楽しみにしてるよ。それに、何か難癖をつけてくる人達がいる様だけど、何かあったらすぐに僕に教えてね・・・まぁ、イネオス達は強いから心配はないだろうけど・・・」(君達がちょっかいかけてるのは分かってるんだぞっと) チラッ
「「「「「っ!!」」」」」
そう言って、向こうの様子を少し伺うと僕の発言の意味に覚えがある人達は、“ぐぬぬぬっ“と言いそうな程に苛立ちを押さえて顔を顰めているのが目に入った。その表情からして、“嘘つきのくせに自分達を貶すなんて“、と言いたそうな表情をしていた、その表情から十分敵意を煽ることができたと判断した僕はイネオス達への激励もそこそこに、選手控え室を後にした・・・
*ちなみに選手控え室は基本的に訪問禁止なのだが、僕は帝国のお偉いさん(皇帝)に許可をとって入室したよ♪こうやって権力って使うんだぁってしみじみ実感したよ!良いよね、権力!使えるものはなんでも使っとかないとね!!
「さて、結構反応があったけど、向こうはこれからどう出るかな?」 にやっ
ソル「アトリー様、悪いお顔が出てますよ・・・」
「おっと、今は大人しく席に戻らないとね、じゃあ、精霊さん達後はよろしくね」
『『はーい!!』』 『『まかせてぇ~』』 『『ちゃんと見張ってくるよ!』』
こうして、選手控え室を出た後、精霊達に監視を頼み、ボックス席に戻った。すると・・・
わざわざっ がやがやっ
「ただいま戻りました・・・?母様、何かありましたか?」
母様「あぁ、アトリー、お帰りなさい、今ね・・・・・」
ボックス席に戻ると、何やら室内で父様達とうちの騎士団の数人が慌ただしく何かを準備している所に出くわし、何があったのかと僕を出迎えてくれた母様に聞いたら、どうやら、向こうの捜査の最中に新しい動きが会ったとの事で、父様達がうちから連れてきていた騎士団に偵察などの指示を題している所だったそうだ。
「第二側妃派の人間が人を雇って“ダンジョン“に潜らせてるって・・・何がしたいんだ??」
ソル「そのダンジョンに特殊な何かがあると言うことでしょうか?もしかして、“あの時の毒薬“の出所とかですか?」
母様「・・・それが分からないから、今、騎士団の中で冒険者登録している団員達を中心に、偵察隊を組んで向かわせる指示をだしているのよ・・・」
新しい動きというのが、先日のパーティー以降、動きがなかった第二側妃派の中心人物が今日の朝になって、事前に約束していたのか分からないが、明らかに貴族とは言い難い風貌の男達を家に招き、帝都のすぐ外にある“ダンジョン“について話し始め、そこに入るために必要な武器や食料、魔道具などの入念に準備した物の受け渡しをしていたそうだ。
(僕達が“大会“後に行こうとしてた所だけど、もしかして、僕が行くのを知られてしまったのか?・・・待ち伏せ?いやでも、今から入って行っても、僕達がどこの経路で進んでいくとか分からないよな?潜る階数だってその時次第だし、“大会“が終わった後の人目につかない所で僕を襲っても意味はないだろうし・・・(・・?)何がしたいんだ??)
夜月『それに、見た目だけは冒険者ぽいが、明らかにどこかで訓練された軍人のような奴らだったそうだな?』
(そうらしいね。それも引っかかるんだよね?なんで“ダンジョン“を知り尽くしているプロの冒険者じゃなくて、場末のようなにわか冒険者みたいな人を選んだんだろう?まぁ、一応、その人達は冒険者登録はしているらしいけどね?)
夜月『それが無いと“ダンジョン“に入れないから登録だけしたんだろうな、そうなると、あそこの“ダンジョン“に用があるなら慣れている帝都の冒険者達を雇えば済む話だしな?わざわざ、そんな冒険者なりたての怪しい奴らを雇う意味がわからんな』
(『『だよね?』』)くいっ?
と、夜月達と一緒に首を傾げた。会話の内容通り、貴族の屋敷を訪れたのは生粋の冒険者とは言えない人達のようだが、向こうも何か得るものがあるのか、その貴族の依頼を真剣に取り組んでいるようだったと報告があったらしい。そして、“ダンジョン“でなにをするかという点においては、屋敷のその部屋に仕掛けられていた魔道具の効果で内容を良く聞き取ることができなかったらしく、監視をしていた影は尋ねてきた男達とその貴族の身振りと遠目で見た口の動きや、受け渡していた物を見て、“ダンジョン“に潜ることが分かったそうだ。
その報告を受けて父様達もその“ダンジョン“に人員を送る手続きを急ピッチで進めて、明日の朝一番で“ダンジョン“に潜ると言っていたその冒険者達に間に合わせた。
(うーん、何か素材を採取するのを依頼したのか?でも、今からわざわざ頼むものってなんだ?しかも“ダンジョン“で?・・・・うーん、分からない、何がしたいんだろう?・・・・うん、分からない事をいつまでも考えるのは意味がないから、何か情報が来るまで放置だ!放置!( ・∇・))
ジュール『出た、アトリーの考えるの放置・・・』
ジュールに何やら言われたが、そんな事は気にせず、すでに始まった第三試合の一回戦目を観ながら、精霊達からの情報をまった・・・・
そして、数十分後、選手に付けていた監視の精霊達が戻ってきて、報告を聞いたら・・・・
「ッ!!!???」(はぁ!!?“ダンジョン“!!??)
僕はもう少しで人目を憚らず大声を出しそうになった・・・