17話 ブレないねぇ
はい、どうも、僕です。現在、帝城内の応接室で皇帝からの謝罪を受けている所です。そして、僕は今、猛烈にお腹が空いて、ご機嫌な斜めです・・・
(お腹すいた・・・(*´-`))
天華『あらあら・・・結局、パーティー会場では何も食べれませんでしたからねぇ・・・』
あの“毒殺未遂事件“の後、僕がした独り言を聞いて、具合を悪くして、パーティー会場から退場する人達が相次いで出て、その中の1人に例の皇族の第2側妃もいて、パーティー会場には犯人の亡骸もあった為、流石にパーティーはこれ以上続けるのが難しいだろうとの判断から、開催記念パーティーは少し早めに終了した。
そして、僕達は帝城から出る前に話を聞かせてくれと皇帝に言われて、流石に何も説明せずに帝城を後にするのはまずいだろうと言うことで、その要求に答える事にしたら帝城内のこの応接室に通された。その間、僕は何も食べる事ができず、応接室に入ってからも出されたお茶やお菓子にも口をつける事もできなかった。
(だって、父様が今の帝城での飲食は控えなさいって言うから・・・まぁ、そりゃ、自分の息子が帝城内で毒殺されかけたんだから、警戒するのは当たり前だろうけど、僕は朝から殆ど食べ物を口にしていないんだよ。だからお腹が空いてしょうがない!こちらとら、成長期真っ只中の健康優良児なんだから!何か食べないと死んじゃうよぉぉぉ~~~っ!!誰か僕にっ!僕にっ!食べ物をプリーーズッ!!_:(´ཀ`」 ∠):)
と、言った感じで、皇帝がこの応接室に来るまでの間も空腹を我慢して、我慢して、やっと皇帝と皇太子が来たと思ったら。大体の話は現場にいた第2皇子から聞いたのだろう、真っ先に謝罪してきて、迷惑を掛けた謝礼として何か欲しいものはないかと聞かれたが、僕はこれと言って欲しいものが無かったので、丁寧に辞退した。
その後は父様に皇帝の対応をバトンタッチすると、今回の件でデューキス公爵家として迷惑を被った謝礼の交渉を父様がし始めて、その様子を僕はずーっと膝に乗っている夜月を撫でながら黙って見ていた。でも、その交渉は長引き、時間はすでに昼時を遥かに過ぎて、おやつの時間に入ろうとしている、おかげで空腹の限界がきた僕はテンションとご機嫌はドンドン下がって行っていく一方だ・・・
夜月『アトリー、もうココはお父君に任せて、先に帰らせて貰えば良いんじゃないか?』
(うーん、そうした方がいいかぁ、いい加減、聞き飽きてきたし、お腹も空いてきたから・・・(*´ー`*))
ジュール『私もそうした方がいいと思う』
夜月達もこの状況に飽きて来たのか、僕に先に帰らせて貰えば?と提案して来たので、僕もその方が良いだろうと思い、その提案に乗った。すると、
皇帝「デューキス子息、この度は本当にすまなかった!!」
と、何回目かの謝罪の言葉にも僕はもう返答すら億劫になって来て・・・
「・・・父様、僕、お腹が空きました。先に宿に戻って、食事をして良いですか?」
父様「!、あ、あぁ、気づかなくてすまない、アトリー・・・、そうだね、ここは私1人がいれば良いだろうから、母様達と一緒に先に宿に戻りなさい、皇帝陛下もそれでよろしいですか?」
皇帝「む、ああ、もう、そんな時間になっていたか、長々引き留めてしまった申し訳ない。本当ならここで昼餐の用意を申し出る所だが、流石に今はな・・・今回は本当に我が帝国の貴族が迷惑を掛けてしまった。今日は帰ってゆっくり休んでもらって構わない。だが、また改めて謝罪の場を設けさせてほしい・・・」
とうとう僕は、我慢の限界がきて、早急に帰りたくなってきた。原因は簡単、空腹でテンションが沈みきって、切なくなってきた事と、繰り返される謝罪に辟易したのだ・・・だから・・・
「・・・僕にそれ以上の謝罪は不要です・・・」
皇帝「!そ、それは謝罪を受け入れてくれると言う事か?」
皇帝がきてから今まで繰り返される謝罪に、僕はもう謝罪は不要と告げると、皇帝は僕の機嫌を伺うように謝罪を受け入れられたのかと聞いてきた。皇帝がそんなふうに聞いてくるのは、僕が今までの謝罪の言葉で一回もその謝罪を受け入れていなかったことにある、だから、皇帝は僕が謝罪不要と言ったことで自分が許されたのかと思ったようだが・・・
「・・・いえ、謝罪を受け入れる気がないので意味が無い、と言う意味です」
「「「「「なっ!!?」」」」」
そう、僕は元から皇帝からの謝罪を受ける気がなかったのだ・・・
帝国宰相「な、どう言うことですかな!?我が国の皇帝の謝罪を受ける気がないと言うのは!?愛し子殿は我が国との国際的な友好関係を崩したいのですかな!?それとも、我が国に恥をかかせて、優位に立ちたいと思っておられるのか!!」
僕の発言に同席していた帝国の宰相が、流石に不敬が過ぎると言いたげな口調で僕に抗議をして来た、僕もこれ以上何もできずにココにいるのは無理になって来たので、今まで思っていても言わなかった事を言う事にした。
「はぁ、・・・帝国に恥をかかせると貴方は仰いますが、今回の件、あなた方が内輪揉めで勝手に恥をかいているのですよ?それをただ巻き込まれた僕のせいにして欲しくないです。「っ!?」それに僕は、国同士の国際的な間柄などに関わりを持つ事もないし、心底どうでも良いのです。僕があなた方の謝罪を受け入れないのは、神々がそれをお許しになられてないからです」
「「「「「はっ!?」」」」」
帝国宰相「な、何故ですか!?何故、神々は我らをお許しになられないのですか!?」
(これは1から説明しないといけないパターンだよなぁ、面倒くせぇ・・・( ´ ▽ ` )早く帰ってご飯食べたい・・・)
僕の投げやりに言った言葉に誰もが驚きの表情をする中、僕はこのことを説明するのが面倒だなぁと思いつつも、口を開こうとしたら・・・
夜月『アトリー、説明が面倒なら私が代わりに説明しよう』
(え、いいの?(・Д・))
夜月『あぁ、構わない、アトリーは少し休んでいてくれ、体を借りるぞ?』
(うん、ありがとう夜月・・・・)
空腹のあまり全てが面倒になって来ていた僕に、夜月が僕の代わりに今回の件で、何故、神々が謝罪を受け入れないのかを説明することを申し出てくれた、僕は夜月の申し出に少し安心感を覚え、そのまま身体を貸した。
夜月「『・・・その説明は私がしよう』」
「「「「「!!」」」」」 「「「「「!?」」」」」
父様「ヤヅキ様・・・」
夜月「『神々がアトリーに其方達の謝罪に答えぬように言ったのは、其方達が謝ればそれで済むと思っているからだ。そもそも、今回の件は其方達が自分の身内の動向をしっかり把握していなかったから起きた出来事であろう?特に皇帝よ。其方は己が娶った側妃を制御できていないのを誤魔化そうとするな、そんな誤魔化しの謝罪など神々は受け取らぬ。「っ・・・」
皇帝なら自身の妃と子の行動をしっかり把握せよ、間違った事をしそうになったのなら止めよ、それでもなお実行したならスッパリと切り捨てる覚悟を持て。
後継者を選んだのなら、その他の子らに最適な役割を与えよ、暇を持て余せた者の気持ちを汲み取れ、役目を持ったとしても不満が残っているのなら、もっと、公平な方法で己が力を示せる場を設けよ、それでもなお野心が消えないのなら今後の憂いになる前に、適切な処分を下せ。
そして、真に我が友に迷惑を掛けたと思うなら、行動で示せ。その中身のない謝罪よりはよほど良い、私の言葉を聞いて改善するようだったら、その謝罪を受け入れてやろう。・・・だが、改善の兆しがないようなら、分かっているな?』」
と、高圧的だが的確に改善すべきところを指摘する夜月に、グゥのねも出ない様子の皇帝と皇太子達。最後には脅され顔色を悪くしていたが、夜月はそのまま話を進めた。
今まで、帝国では後継者を選ぶ基準が他国と少し変わっていて、基本的には皇妃、他国では正妃と呼ばれる妃から生まれた皇子を継承権第1位としているが、その皇子が皇帝にふさわしい資質を持っているかという判断を他の妃、側妃達が産んだ子供を対抗馬として使って、競い合わせ適性を見たりしていた、そこで皇妃の産んだ皇子が皇帝の器に適さないと判断された場合、対抗馬である他の皇子達の中で最も優秀なものを継承権第1位として、また他の王子達と競い合わせると言った、明確なルールのない互いの足を引っ張り合う競い合いで後継者たる皇太子を選んできたのだ。
だが、その方法が周囲をよく巻き込み問題となっている、今回のような騒動もしばしば起こり、国政にも支障をきたす事もあるため、神々は改善すべきところを改善できれば神々は皇帝達の謝罪を受け入れると、話していた。
(アレだよね、ティーナちゃん達は帝国に期待してるからこう言う事を言うんだよね、今言ったことが改善できれば良い国になると分かっているから・・・)
内輪揉めがなければ良い国なんだと、後継者争いも、もっと国のためになる健全な方法で競い合うことができれば、後継者候補達も納得して大人しくなるだろうと、後継者が決まったからと、他の候補者達を放置するから強欲な貴族達に付け入る隙を与えたのだと、要は帝国としての後継者争いのやり方を決めて、貴族達が口を挟めない制度を作って、円滑に国を統治しろって話なんだろうと僕は解釈したのだが・・・
天華『いや、アトリーに迷惑がかからないように制度を改めよと言ってるみたいですね・・・』
(あ、・・・・(・Д・))
どうやら神々の考えは違っていたらしい・・・
(あ、うん、そうだよね。神々が地上の国の、国々の後継者争いにそこまで関心は持たないか・・・しかし、相変わらず僕に過保護だなぁ( ̄▽ ̄)・・・)
春雷『まぁ、神々がアトリー様の事を1番に考えるのはいつものことですから・・・』
ジュール『ティーナ様はアトリーが将来この世界を冒険する時に、揉め事に巻き込まれないようにしたいだけなんだよねぇ・・・』
ティーナちゃん達のブレない優先順位に安心して良いのか喜んで良いものか、少々判断に困る今回の帝国への指摘の理由に、僕は少し皇帝に申し訳ない気持ちになってしまった。
(さよか・・・( ・∇・)まぁ、確かに冒険の旅でこんな揉め事に巻き込まれるのは嫌だな・・・うん、よし、帰って何食べようかなぁ~、昨日ホテルで出たキッシュみたいなの美味しかったから、またそれを頼んで作ってもらおうかな?それとも作り置きしてる料理を出して食べるか?)
雪花『現実逃避してますね・・・』
天華『空腹で考えるのが面倒になって来たんでしょうね・・・』
ジュール『と。言うかさぁ、その作り置きの料理ここで出して食べたら良かったんじゃない?』
(あー、それをしたかったんだけど、流石にね、“毒殺“されそうになった場所でご飯食べるのはちょっと・・・気分的に嫌だったから、我慢してみたんだけど、こんなに長い時間、ホテルに帰れなくなるとは思ってなかったんだよねぇ(*´Д`*))
その後は深く考えず、話が終わってホテルに帰ってからのご飯を何しようかと考え始める、雪花から何か言われたが、それも聞かなかったふりをして、夜月の説明が終わるまでジュール達と世間話をしたのだった・・・・
・・・・数分後、話をし終えた夜月は僕に体を返却してくれたので、僕は顔色の悪い皇帝や皇太子達に軽く挨拶をして、父様とカイルさん以外の家族を連れて帝城を後にした・・・・
(はぁ~っ!やっとご飯が食べれる!!( ^∀^))
「母様、宿に戻ったら昨日の夕食に出た料理を頼んで良いですか?」
母様「えぇ、良いわよ、ふふっ、アトリーったら、よっぽどお腹がすいてたのね?」
「そうなんですよ。目の前にあるお茶菓子に手が出せない状況なんてこれまでなかったんで、すごく辛かったです」
母様「あら、まぁまぁ、確かにそうね?宿に戻ったら好きなものたくさん食べなさい」
「はい!ソルも一緒にたくさん食べようね!あ、そう言えばイネオス達はもう自分達の宿に戻ってるよね?」
ソル「そうですね。あの後すぐに別れてしまいましたから、心配しているかもしれません」
「そうだね。後で手紙書こう!」
ソル「はい、そうしましょう。それに明日は・・・・・・・・
和気藹々と話をしならが定城内を歩く僕達はかなり注目されたけど、何の邪魔も入らずにすんなり宿に戻ることができたのだった・・・・
数時間後、父様は少しお疲れの様子で帰って来たけど、どこかやり切った表情で満足そうにしていた、何かしらの良いことがあったのは間違いないが、僕はお疲れで母様に甘える父様をそっと見守るだけにした・・・・