15話 開催記念パーティー
はい!どうも、こんにちわ!僕です!今僕は見せ物小屋のパンダ気分です!
今は帝城での“国際武道大会“の開催を祝ったオープニングパーティーに参加している最中なのですが、いい加減この場から逃走したくてたまりません・・・
(次から次へと、どれだけ人が来るんだよ・・・)
前回、帝都入りした日以降、このパーティーが行われるまでの数日を自由気ままに過ごした反動か、パーティー開始早々にこの挨拶祭りから逃げ出したくなっていた。
(僕を生で見たいって言う人達が多かったから、わざわざ僕を賓客として招待する帝国も帝国だけど、この間まで僕が帝都に長居するのを怖がっている貴族達がいたって聞いたけど、その怖いもの見たさで皇帝に要望を出してまで僕を招待させるこの人達も大概アレだよなぁ・・・(*´ー`*))
今回も念入りにお手入れされて、ピシッとキリッとしっつつも華やかさを忘れない装いに仕上げられた僕は、現在、賓客として招かれて、色々と優遇してもらった手前、一応、僕に挨拶をしてくる人達の対応はしているが、あからさまに僕を引き入れようとしてくる人とか、後ろ黒い人達にはガン無視を決めている、ほらまた、来た・・・
?「お初にお目にかかります。わたくし、ライヒスル帝国で商いをさせていただいております。バリス・ズローと申します。何かご入用になられましたら、いつでもお申し付けください・・・」ニタァ・・・
(うわぁ、気持ち悪っ!ジュール~(*´Д`*))
ジュール『この人、駄目ぇ・・・、確実にアウト~』
(りょうかーい(・Д・))
「・・・」くいっ・・・
ソル「はい、次の方がお越しになられますので、横に避けてください」
ズロー「へっ!?、ちょっ、ちょっと待って下さい!!まだ、自己紹介しかしていませんが!?」
ソル「はい、あなたのお名前は告げられたでしょう?それで終わりです。次の方の邪魔になりますので、お引き取り下さい」
今僕は何をしているかと言うと、パーティー会場の片隅でパーティー参加者達からの挨拶と自己紹介を受けて、ジュール達に“魂神眼“で来た人が関わって良い人と行けない人を見てもらって、返事をするか無視して次の人に変えるかと言う作業をしているところです。
最初は1番身分が高い僕を帝国の皇族達より高い場所、本来なら皇帝が座る玉座に座らせて、そこで皇帝達からの挨拶を受けてから、同じように参加者達の地位の高い順に、挨拶を受けるということをさせられそうになったのだが、流石に皇帝の玉座に偉そうに座りながら挨拶を受けるなんて、申し訳なさすぎて胃に穴が開きそうな事を断固拒否したら、今度はパーティー会場の一角にちょっと豪華な椅子を用意されてそこで、僕は座らされて、他の家族は近くで立って挨拶を受ける羽目になってしまった・・・
結局やることはほとんど変わってないが、皇帝の玉座でたった1人で挨拶を受けるという無理ゲーだけは回避できた。
(あ、そうそう、そう言えば、例の第3皇子、彼はあの後、皇帝からこっぴどく叱られ帝位継承権を剥奪されて、今は皇族専用の懲罰房に隔離されて、再教育されてるらしい、その事で第2側妃派が皇帝に毎日、第3皇子はまだ子供だから多少の失敗はあると言って、彼の解放と継承権復活の嘆願に来ているとか、( ・∇・)それでも、流石に今回のことは皇帝も目に余ったようで、その嘆願をがんとして聞き入れなかったそうだ。むしろ、嘆願に来た貴族達を片っ端からお説教して追い返していると噂になっていた。そのおかげで、その日以降はのびのび帝都観光ができたよ!( ^∀^))
本当なら僕が自分で“魂神眼“を発動させて見た方が早いのだが、僕が“現人神“である事を知っているのは、ウェルセメンテ王国の神殿に所属している神官達と、王族、後は身内だけで、僕的にも両親的にもその他大勢にバレるのは避けたいと言ったら。天華が、そうなると、今日みたいな正面から一人一人挨拶する形で“魂神眼“を使うと、“神力“に敏感な人はすぐに気づくそうなので、僕自身が“魂神眼“を使うのはダメだろうと言うことで、禁止されてしまった。
なので、代わりに僕の右横でお座りしているジュールに相手の魂を見てもらうことになったのだ。(ついでに言うと、夜月はジュールの反対側でお座りして、自己紹介に来る人が必要以上近づかないように睨みを聞かせていて、天華は小さい姿で僕の肩の上に乗って、自己紹介した人の顔と名前を一人一人覚えているよ・・・)
手順的には、まず、目の前に来た人に自己紹介してもらったら、ジュールに“魂神眼“で良い人か悪い人かを見てもらって、すぐに念話でどちらか教えてもらう、良い人だった場合、僕も自己紹介をして、一言二言話して、次の人に行く、そして、悪い人だった場合、無言でソルに合図して、その人を退けてもらって、次の人を呼んで貰う、と言った感じで対応している。
(えっ?対応に落差がありすぎるって?それはしょうがないんだよ、良い人なら良い関係を築きたいから返事を返す時間はとるけど、悪い人の場合は返事を返す時間がもったいないほど、大勢の人達が僕との挨拶のために並んでるからね!良い人との会話だって本当に短いよ?会話とは何?って感じで、ほぼ全て流れ作業のようなやり取りだからね!!( ゜д゜)それに、父様達もそれで良いって許してもらったからね!むしろ、変な人に絡まれないようにそうしなさいって言われた!!(・Д・))
それに、この僕の対応を見て父様達家族やイネオス達の家族が、相手への付き合い方を見極める良い情報になってるみたいだった・・・まぁ、僕的にはさっさと挨拶を終わらせて、壁際に並んでいる美味しそうな料理を堪能したいので、こんな速さ重視の挨拶祭りになっているだけだけど・・・
そして、パーティー開始から1時間後・・・
やっと全ての参加者との自己紹介ラッシュ?面通し?が終わって、お目当ての帝国宮廷料理をイネオス達も誘って一緒に食べようと思って、彼らのいる所に向かっていると、イネオス達がいると思われる所に人だかりが出来ていた。それに、やたら中心部が騒がしい・・・
「?、揉め事?」
ソル「そのようですね・・・」
「前にこんなふうになってた時は、言いがかりを付けられてるか、僕に自分を紹介しろって無理強いされてるかって感じだったけど、今回はどちらだろうね?僕は自分を紹介しろって言ってると思うけど、ソルはどっちだと思う?」
ソル「・・・言いがかりの方じゃないですか?先程、会場にいる招待客全員は一応自己紹介を済ませてますし、誰もアトリー様に相手にされてない事はわかったはずでしょうから・・・」
「そう言えばそうだね・・・」(まぁ、相手がそれで納得したかどうかは別だと思うけどな・・・(*´ー`*))
少し離れたところから、その騒ぎの原因を予想しあっていると、不意にその騒ぎの中心から大きな声の会話が聞こえてきた。
?「おい!聞いてるのか!?何故お前達のような下級貴族が国の代表として来てるんだ!!俺達はあのお方と対戦できると思って、厳しい予選を勝ち抜いて来たと言うのに!ウェルセメンテ王国にはお前達のような程度の低い者達をお情けで出場させる習慣でもあるのか!?」
?「ちょっと、貴方、先程からそんな事ばかり言って、国の代表として恥ずかしくないの?「何っ!?」彼らは実力があるからここに来てるのでしょう?「そ、それは・・・」それに、あのお方が私達のような実力の低い物達を相手になさる訳ないじゃない、「っ!?」そんな少し考えればわかる事を大きな声で叫ぶなんて、恥ずかしいわ。「くっ…」それより、ウェルセメンテ王国の代表の方々、あなた方は噂によると、あのお方のご友人だとか?宜しければ、あのお方がどんなお方とかお話しいたしませんか?私、あのお方のことに興味津々ですの、私をあのお方にご紹介していただければさらに嬉しいのですけど・・・」
「・・・両方だった・・・」
ソル「・・・ですね・・・」
漏れ聞こえてくる会話を聞いてみると、僕達の予想は外れてしまったのか、むしろ両方とも当たったと言って良いのか?と2人の間でなんとも微妙な残念感が漂った・・・
「そ、それにしても、今の人は“大会“の出場選手だったみたいだったね?やっぱり、今回僕が“大会“に出るって思っている人達は結構いるのかな?」
ソル「そうですね。同じ年代で、神々の加護を持っている人は多くないでしょうし、神の加護を受けている方達は総じて強いと言うのが定説ですから、そうなると武術に自信がある人は、実力のある人と戦って見たいって思う人が多いでしょうからね。そんな願望からアトリー様は確実に“大会“に出場するって、思い込んでいるんじゃないですか?」
「うーん、それは申し訳ない事をしたかな?でも、僕って出場しないんじゃなくて、出来なかったんだけどね。その事に関してはイネオス達は何も悪くないから早く解放してもらおうか。・・・しかし、ここは女性が多いな、ソル、お願いできる?・・・」
ソル「畏まりました・・・」
今回の“大会“でどうやら僕の出場を期待していた人達は多かったようだが、僕の出場権利は元からなかったので、どうしようもない事だった、そんなどうしようもなかった事でイネオス達を責めるのはお門違いも甚だしいと思った僕は、早急にイネオス達をこの囲いから解放してもらうために、ソルにあの人だかりを退けてもらうようにお願いした。(今回みたいに騒動の周りを囲んでいる人が女性が多い時は、僕自身が行って声をかけると、女性達が勘違いするかもしれないから、ソルにお願いしなさいって父様から言われたんだよね・・・(*´ー`*))
そして、ソルがイネオス達の周囲を取り囲むご令嬢や令息達に声をかけると、少しずつ人が僕の存在に気づき避けていき道が出来上がっていく、その出来た道をジュール達を伴って慌てずゆっくり進んでいくと、徐々に騒ぎの中心になっている場所の様子が見えてきた。
?「!!?、あ、貴方様はっ!!」
?「!、まぁ、デューキス子息♪、何故こちらに?」
僕が近づいて来た事に気がついて騒ぎの中心人物達はそれぞれ反応を示した。そんな様子を僕はジッと見て、少し考えた・・・
(イネオス達を批判していたのはこっちの男の子か、しかし、よく見れば、魔族、しかも鬼族の子供か、確か、さっきの挨拶の時にもいたな・・・確か“ノルテ魔王国“の出場選手だったはず・・・)
天華『その時、アトリーが“大会“に出場しないって聞いて、すごく残念そうにしていたのを覚えてますね・・・』
(あぁ、そう言えばそんな感じだったね?それで、うちの国の出場者を探し出していちゃもんつけ出したって所か、この感じは僕には悪意はなさそうだね(*´ー`*)・・・そして、こっちのご令嬢は・・・誰だ?(・・?))
男の子の方は見覚えがあって、彼の内心の憤りが今だけイネオスに向いてるだけだと言うことが分かったので、もとは悪い子ではないとすぐに判断できたが、女の子の方は何処の誰かすぐに思い出せなくて頭を捻っていると、
天華『また覚えてないんですか?あのご令嬢は“シニストラ共和国“の現首長のお孫さんですよ。アトリーの前に来た時に一目惚れしたのか、自己紹介の後も凄く色目を使ってきてたじゃないですか』
天華がこのご令嬢の素性を知っていた、でも、
(ごめん、今回そんな人が多過ぎて、誰がどこの令嬢かなんて覚えてないよ・・・(*´Д`*))
天華『・・・そう言えばそうでしたね・・・まぁ、彼女とはほとんど話してないですけど、彼女のご両親とは軽く会話はしましたよ?』
先程までの自己紹介ラッシュの最中には、こんな感じのご令嬢がたくさん来ていたから、どれも皆んな同じに見えていて、判別がつかないと言い訳するも、この子のご両親は良い人だったようで、僕とは軽く会話もしたと天華から指摘されてしまった・・・
(あー、そんな事もあったかな?大体が社交辞令の会話だから印象なさすぎる・・・まぁ、何はともあれ、どちらも僕には悪意はないみたいだけど、他の人の迷惑になってるのはいけない事だから、さっさとイネオス達を回収してこの場を離れるのが最善かな?(・・?))
天華からの指摘も、同じような事を繰り返していたせいで、どれも印象に残ってなかったのだが、今はこの2人は僕達を害する類の性格ではなかったのが分かったので、“神罰“は降りないだろうと判断した僕は、彼らに近づきイネオス達に声をかけて、早めにその場を去ることを提案すると、
夜月『そうだな。“神罰“に値するほどのことでもないからな、少し注意してここを離れれば追っては来ないだろう・・・』
(分かった。その方向で行こうか・・・)
夜月からは追加で注意をするようにと言われたので、僕はその案を了承し、その方向で話を進めることにした・・・
「へティ、ベイサン、イネオス、大丈夫?・・・」
彼らに近づきながらそう話しかけると、イネオス達はいつもと同じように笑顔を僕に向けた・・・・、その時、突然、僕の横からトレイに飲み物を乗せた給仕がやってきて、
給仕「お飲み物はいかがですか?」
と、琥珀色の液体が入ったグラスを僕に差し出してきた、すると・・・
ガツンッ!!バシャッ! ガシャーンッ!!
何もない所で何かの壁に阻まれたかのようにグラスがぶつかり、その衝撃で飲み物が入ったグラスがひっくり返って、中身を撒き散らしながら床に落ち、グラスは割れてしまった・・・・
ジュール『この匂いは“毒“!!』「ガァゥッ!!」
「「「「「ッ!?」」」」」