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22話 飛んで火に入る夏の虫 王弟:ブルージル視点


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    王弟:ブルージル 視点


 俺は今、従兄弟のアイオラトに頼まれて アイオラトの息子 アメトリンの友人達の両親達と一緒に行動していた、彼らの王都での滞在先であるヴィカウタ子爵邸について応接室で彼らの荷造りが終わるまでのんびり待っている。


(しかし、屋敷の門前で見たあの馬車 見張りだとすると“当たり“か?そうだと順調に事が進むんだが……)


 その後も気を抜かずに“魔力感知“のスキルを使い屋敷周辺の魔力を探っていると。


(ん!、複数の魔力がこちらに向かっているなこの速度からして馬車か?このまま行き過ぎると関係無いだろうが・・・おっと、屋敷前で止まったか・・・・

入って来たな、・・・この感じ冒険者か?闘い慣れている感じがするな、だがそこまで手強い者はいなさそうだ 少し様子を見るか…)


 しばらくすると部屋の外が騒がしくなって来た。


(さてと、相手を確認するか…)


 入り口側にいたメイドに断りを入れ1人で部屋を出て、案内された時に通った道をたどり玄関ホールが見渡せる位置の角から隠れながら少し顔を出し騒いでいる人物を確認する。


(あれは、間違いない “アロガイン侯爵当主“だな後ろの2人は確か“トント伯爵“と“アビドス伯爵“だったな、ラトの予想が“当たったな“)


 何故かと言うとお茶会の帰り際にラトがヴィカウタ邸で不審な馬車が確認されてるから彼らと一緒に帰ってくれないかと頼まれ、場合によっては現行犯として捕まえる事ができるはずだと言われ、それならばと思い来てみたら“大当たり“だったようだ。


 使用人に怒鳴り散らす“アロガイン侯爵“を見ていると階段からヴィカウタ子爵が降りてきて対応し出した。


ヴィカウタ子爵「騒がしいですね、どちら様ですか あなた方は 私に何か御用ですか?本日は用事があり面会の予定は入れておりませんが…」


トント伯爵「やっと出てきたと思えば、なんと失礼な言い草だな、これだから下位貴族は平民どもと変わらんな!」


アロガイン侯爵「ふんっ、まぁいい今はその無礼には目を瞑ってやる、私はアロガイン侯爵家当主ガビード・ノブル・アロガインだ、今日はお前達に話があって来たのだ、後 お前の息子と一緒にいた他2人の子供の親もここにいるのだろう、呼んでまいれ」


 急に他の2家族も連れてこいと傲慢な態度で言ってきた アロガイン侯爵 俺は思わず眉根を寄せて、「何言ってんだコイツ」と呟いてしまった。


ヴィカウタ子爵「ぐっ、・・・・何故、…突然 面会の約束の無しに怒鳴り込んできた貴方がたに当家の客人を合わせなければならないのですか?」


(お、中々言うねブラーブ殿、確かに非常識極まりないな)


トント伯爵「なんだと、貴様!たかが子爵位のくせに我ら高位貴族の当主の命令が聞けないのか‼︎」


ヴィカウタ子爵「なんと言われようと、ここは私の屋敷であり、ここに滞在している方達は私の客人ですから、貴方がたに指図される覚えはありません、それに私達は先日の招待状の返信の通り 寄親のマルキース侯爵家ご当主を通していただいて マルキース侯爵のご許可がありましたらお会いしますと、そう返信のお手紙に書いたはずです」


アビドス伯爵「なんだと、貴様如きにわざわざ、面会の許可を取れと⁉︎ふざけるのも度が過ぎると不愉快だな」


 先程まで黙っていたアビドス伯爵が顔を顰めながら苛立たしそうに言った。


ヴィカウタ子爵「何一つふざけてはいませんよ、なので マルキース侯爵様のご許可をいただいてからまたお越しになってください」


トント伯爵「き、貴様!痛い目に会いたい様だな‼︎」


(はぁ…、元々面会の申し込みも無しに乗り込んで来といて 断られると今度は脅迫か、コイツらどうしようもないな…)


アロガイン侯爵「・・・・その様だな、今のは見逃せんな 調子に乗り過ぎてるようだ、多少痛い思いをしたら すぐ素直になるだろう、お前達やれ!」


 その合図でアロガイン侯爵達の後ろにいた 数人のガラの悪い冒険者の装備をつけたガタイのいい男達が周りの物を壊しながらヴィカウタ子爵に迫って行く。


ブゥンッ、ガシャーンッ、棍棒のような物を振り回して花瓶や家具を壊している。


ヴィカウタ子爵「‼︎、くっ!、貴様らやめろ!お前達は自分のやってる事が分かっているのか⁉︎これは確実に貴族に対しての器物損壊罪だぞ!」


チンピラ1「俺はそんなこと知らねえなぁ、棒を振ったら勝手に倒れて割れちまっただけだからなぁ、ガハハハハッそうですよねぇ侯爵様!」


アロガイン侯爵「そうだな、勝手に倒れて割れただけだ」ニヤニヤッ


 侯爵はニヤけながら男の言葉を肯定した。


(これは、器物破損罪 確定だな、後 脅迫供与罪も)


 この状況を見ていた屋敷の使用人が貴族街の衛兵に通報しようと動こうとした時に 後ろから他の男が棘のついた棍棒で使用人に殴りかかろうとした。


チンピラ2「勝手に 動くんじゃねぇ‼︎」


ブゥンッ! チンピラが武器を勢いよく振り上げた。


(おっと、そろそろ良いかな)


ヴィカウタ子爵「危ない‼︎逃げろ!」


 私はすぐさま懐にいつもしまっている麻痺毒が仕込んである針を取り出し 殴りかかろうとした男に向けて“投擲“した。


ヒュッ、トン・・・ドサッ 男が倒れたのを確認して 俺は玄関ホールに足を踏み入れた。


コツンッ、コツンッ、コツンッ


「何やら、うるさいと思って見に来てみれば……、ここで何をしてるんだい アロガイン侯爵?」


「「「「「⁉︎」」」」」


アロガイン侯爵「誰だ!今のは“貴様“がやったのか!」


「“貴様“とは中々な言い草だな、私の事を知らないなんて“貴様“は本当に我が国の貴族なのか?」


(呆れたな、俺を知らないのか いや、流石に知らない事は無い筈なんだがな、王城で会った事はあるからな、それとも顔を忘れたのか?)


ヴィカウタ子爵「お手を煩わせて申し訳ございません“ドゥーカ公爵様“」


 と、ヴィカウタ子爵がわざと俺の家名を口にした。


アビドス伯爵「っ⁉︎、ドゥーカ公爵⁉︎何故!王弟殿下がここに⁉︎」


アロガイン侯爵「な!、何故こんな下位貴族の屋敷に王弟殿下がいらっしゃるんですか⁉︎」


「ほぅ、流石に名前は覚えていたか、私はヴィカウタ子爵のご好意で屋敷に送ってもらう道すがらに子爵家の屋敷に寄ってお邪魔させて頂いてるだけだ、で、“貴様達“はここで何をしている?」


アロガイン侯爵「い、いえ、ただ私は こ、こちらの者に緊急で用事がありまして……」


「へぇ 緊急の用事ねぇ・・・、ブラーブ殿 貴殿とこちらの者達は急な用事で面会予約も先触れも無く訪れるほどの間柄なのかな?」


ヴィカウタ子爵「いいえ、こちらの方々とは初めてお会いますし、むしろ直接のお手紙も昨日1回だけ交わしたぐらいです」


 ヴィカウタ子爵が事実を簡潔に説明している間にも侯爵らは忌々しそうに子爵を睨みつけている。


「ふぅん、そうか、なのにこの者達は初めて来た 親交の無い 他人の屋敷でそこの使用人を怒鳴り散らし、連れてきたガラの悪い連中に屋敷の調度品を破壊させたりと、横暴な態度をとっていると言う事かな?」


ヴィカウタ子爵「はい、そう言う事になります 公爵様」


トント伯爵「き、貴様!」


アビドス伯爵「黙れ!ポルコ‼︎王族の前で恥を晒すな!」


トント伯爵「ぐっ、だが、デルガード!あいつは!」


 まだ何か言いたそうにヴィカウタ子爵を睨みつけていたが意味はない。


アロガイン侯爵「はて、調度品の破壊とは何の事ですかな?私は何も指示はしておりませんが?」


 と、とぼけた事を言い出した。


「は?・・・・・、ブッ・ククククッ・ブフッ・アッハハハハッ・ハァッアハハハッ、ック、ク、よ、よしてくれよ、ブッフッ、腹がよじれそうだっ」


(コイツら俺が途中からしかこの状況を見ていないと本気で思っているのか?)


 急に笑い出した私を意味が分からない、と言った顔で見ている奴らの顔が一層可笑しくて、しばらく笑いが止まらなかった。


「・・・フッ・・・クッ・・、ふぅ、すぅ・・・はぁっ、いや、すまない、あまりにも可笑しくて 笑いが止まらなかった…」


アロガイン侯爵「何がそんなに可笑しかったのですかな?王弟殿下」


 訝しげに聞いてきた。


「何がってそれはアロガイン侯爵お前達の事だよ、お前達は私がいつからこの状況を見ていたのか考えなかったのか?それなのに自分は指示していない、などととぼけた事を言うから可笑しくて笑ってしまったんだよ」


「「「「「ッ!」」」」」


アロガイン侯爵「で、では、殿下はいつから見ていらっしゃったのですか、それに私が指示したと言う証拠はお有りですかな?」


(証拠ねぇ、大体、王族や準王族がこの目で確認したことに意義を立てるなんて非常識にも程があるだろう、それに俺は監査官としての役職の権利があるしな)


「はっ、まだ言い逃れようとするとはね、良いだろう教えてやるよ、最初からだよ…お前達が入って来てから怒鳴り散らしていた時から今までずっと見ていた

それと証拠があるかと聞いたな?」


アロガイン侯爵「は、はい、お聞きしましたが?証拠も無しに処罰されては敵いませんから」


「あぁ、心配するな、ちゃんと証拠はあるぞ」


アロガイン侯爵「!、ど、どこにそんな物があると?」


「ここだ」


 私は今日の装いの装飾で右耳につけていた耳飾りを指差した。


トント伯爵「耳飾り?、それが証拠とは どう言う事ですか?」


アビドス伯爵「!、そ、それは!もしや魔道具⁉︎」


アロガイン侯爵「魔道具だと⁉︎」


「正解だ、コレは魔力を通すと周りで起きている状況を音と風景を記録する事ができる貴重な魔道具なんだよ、だからコレが今もこの場の全てを記録している、

そう言う意味でコレに記録されている風景と音が全て証拠だと言うことだ、分かったかな?」


 ニッコリと笑って教えてやったら、奴らはその場でへたり込んでしまった。


(証拠が無ければ言い逃れできると思っている奴らにはこれが1番効くよな、だがこの耳飾り型の魔道具、難易度が高いダンジョンの宝箱からしか出ない かなり貴重な物だから国でも数個しか保有してないからな、まぁ俺は自分で手に入れたんだが…)


 この状況に焦ったチンピラ達が麻痺した仲間を置いて逃げようと玄関扉を開いたら 、そこには先程殴られそうになっていた使用人が連れて来た衛兵達が立っていた。


 俺はその事を“魔力感知“で知っていたので驚きはしないが衛兵達は急に扉が開いたと思ったら 貴族の屋敷にはふさわしく無い風貌の男達が出て来たことですぐさま怪しんであっと言う間に捕縛していった。


衛兵隊長「すみません、こちらのお屋敷の御当主はどなたでしょうか?」


ヴィカウタ子爵「!、あ、はい、私です」


 状況が急激に解決したことで理解が追いついていなかった子爵はやっと理解が追いついて チンピラの捕縛した衛兵達の対応をし出した。


 それと上の階から状況を伺っていた男爵や准男爵も降りてきてこの屋敷の者達を労わっていた、衛兵達はチンピラ達と侯爵達をまとめて王城に送る手筈を整え、俺に後日 魔道具の提出を頼んで来た。


衛兵隊長「では、私共はこの事を上司に早めに報告せねばならないのでお先に失礼致します」


 と、言い急いで屋敷を後にした。


 全ての対応を終わらせた子爵達は俺の前に来て礼をのべ頭を下げてきた。


ヴィカウタ子爵「ジル様、当家の揉め事の解決に貴重な魔道具まで使用して頂き本当に有り難う御座いました」


「頭を上げてくれ皆んな、今回のことは気にするな 元々私の仕事のようなものだから、それにこの魔道具は使い捨てでは無いから安心してくれ、それより荷造りは済んでいるのか?そろそろ出ないと子供達が腹を空かせて待っているのではないか?」


「「「‼︎」」」


ヴィカウタ子爵「私の方は終わってますが…」


 と、言いながら隣を見た。


ダンロン男爵「私も終わってます」


バロネッカ准男爵「私の方も妻が終わらせてあるはずです…多分」


 少し自信がなさそうに言った、どうやらバロネッカ准男爵の用意は終わっているか怪しいな。


バロネッカ准男爵「すぐ確認してきます!」


 そう言った後すぐに二階へと上がって行った、それを苦笑いで見送った子爵と男爵は申し訳なさそうに俺に謝罪した、2人に聞く所によるとバロネッカ准男爵夫人は衣服にこだわりがあるようだ。


 少しすると2階から子爵達の奥方達と一緒にバロネッカ准男爵夫婦が荷物を持って降りてきた、ご婦人方はまだ少し散らばっている花瓶や壊れた家具などを見て不安そうに自分の夫の怪我の有無を心配していた、簡潔に説明されて 全ての事が解決していると分かってやっと安心したようだ。


ヴィカウタ子爵夫人「ジル様、この度は夫達を守って頂き本当に有り難う御座います」


 と、ヴィカウタ子爵夫人が深々とお礼をしてそれに合わせるように他の夫人達も頭を下げて来た。


「先程も旦那方に言ったが気にしないでくれ、ある意味 私の王族としての仕事みたいなことだからな、それより ほらっ時間が押してるぞ、私を屋敷まで送ってくれとは言ったが行き先を変更して王城に連れて行って貰えるかな?」


ヴィカウタ子爵「あ、はい、それは構いませんが先程の件で王城に行かれるのですか?」


「あぁ、そうだ これを兄上、いや、陛下に提出してくるだけだよ 帰りは陛下に馬車を出してもらうさ、だから早く出よう、さっさと魔道具を提出して 屋敷に帰ってのんびりしたいからな」


 ニカッと笑い 出発を促す。


ヴィカウタ子爵「そうですね、早く行きましょうお時間を無駄にしてはジル様のお帰りが遅くなりますからね」


「そう言うことだ、よろしく頼むよ」


 ヴィカウタ子爵は頷くと手早く使用人に指示を出しすぐ出る準備を男爵と准男爵の夫人方にさせ 玄関前で待機していた馬車に全員乗せた、俺も子爵の馬車に乗り込み、子爵が最後の確認をした後 屋敷を使用人に任せると言い馬車に乗り込んで素早く出発させた。


 デューキス公爵家に戻るには少し遠回りになるが急いで王城に送って貰い彼らと別れた。


「はぁ、報告するの面倒くさいなぁ・・・」


 遠くなって行く子爵達を乗せた馬車を眺めながら1人呟いた。


「ま、報告したら後は兄上達の仕事だから俺には関係ないから良いか!」


 報告をさっさと終わらせてしまおうと考え直し 王城に入って行った。











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