14話 権力闘争=面倒臭い
(皆んな、体も心も順調に成長しているねぇ(*´Д`*))
ジュール『アトリー、お婆ちゃんみたい・・・』
しみじみ、皆んなの成長を実感していると、ジュールにそんなツッコミを入れられてしまった僕でした・・・・
「ふふっ、あ、ソルもイネオスも、婚約者ができたら役に立つよ。まぁ、その前に良い人を探さないといけないけどね。あ、でも、イネオスは確か意中の人がいるんだっけ?後はソルだけだね♪ふふっ」
「っ・・・」 「・・・」
先程の話の流れで、僕がそう言って揶揄うとイネオスは顔をかぁっと赤らめて俯き、ソルはジト目で僕を見てきた。
ソル「アトリー様、人を揶揄うのはそこまでにしてください。僕の場合は母上が条件に合う方がいたら紹介してくださるそうなんで心配いりません。むしろ、アトリー様のお相手を探すのに奥様がご苦労なさってましたよ?」
イネオス「そ、そうですよ!アトリー様はどなたか気になるお方は居られないんですか?」
(おっと、これは藪蛇だったか・・・)
と、未来のお相手に関して揶揄った僕に、反撃とばかりにこう言ってくるソルとイネオス。
「うーーん、前にも言ったと思うけど、僕は今のところ、これといって気になる人はいないよ?それと僕と釣り合う人を見つけるのは難しいんじゃないかな?身分的に・・・それに、僕が気になる人がいたとしても、相手が僕を思ってくれるとは限らないじゃない?僕の立場は色々と特殊だからね・・」
と、少々他人事のように返した。
「「「「それは・・・」」」」
(だって、相手にも僕を選ぶか選ばないかの権利はあるんだ、特に僕と一緒になることで、メリットよりデメリットの方が多いだろうし、もし、僕に特定の人ができたとしたら、その人には様々な事が起こるんだ、周りから妬み嫉みを向けられて、僕に近づこうとする人達が擦り寄ってきたり、そんな煩わしい事がたくさん待ち受けているかもしれないって分かったら、僕を好きになることなんてないだろうし・・・
僕からの求婚を受け入れたとしても、本当に僕の事が好きだとも限らない、もしかしたら本当は別に好きな人がいるけど、周囲のしがらみから僕からの求婚を断ることができなかったりしているだけかも知れないでしょ?だって、人間は嘘がつける動物だからね・・・
そもそも、僕は人を愛していいんだろうか?僕はもう、人間じゃないんだから人を愛したとして、子孫は残せるのか?この体は一刻一刻と変化していって、もうすでに普通の人間とは言い難いし、前世でも人を愛したこのとないこの僕が、本当に人を愛せるのかも分からない・・・、それに、今も僕の魂を虎視眈々と狙っている邪神がいるのに、僕に好きな人ができたら絶対にその人を狙うだろう、迷惑がかかるって分かっているのに僕が特定の誰かを愛す事はできないよ・・・)
『『『アトリー』』』 『『アトリー様』』
異性を性的な意味で見たことのない僕には、恋愛という感情が理解できないでいた、それは前世でもそうだったのだが、今世では“現人神“となってからは特に、性欲的なものもだんだんと薄れてきている気がして、そんな僕には人を愛す資格はないんじゃなかと最近は思っていたりする。
僕の含みのある答えに皆んなは色々察してしまい、何も言えずに気遣わしげに見てくる。
「さて、水分補給も済んだし、そろそろ帝都観光しに行こうか♪」
ちょっと沈んだ空気を切り替えるために内緒話の為に張っていた遮音結界を外し、席を立ち上がり皆んなに笑いかけた。すると皆んなも気分を切り替えて、笑顔で席を立ち、僕は皆んなのお会計を終わらせてカフェを出た。
その後はブラブラと帝都の街並みを見ながら歩き、時には気になるお店に入ってお土産を物色したりと、その日は宿泊先のホテルの近場で楽しく過ごし、夕ご飯前にホテルへと戻ってきて、その入り口で明日も一緒に遊ぶ約束をしてその場で解散したのだった・・・
そして、ホテルに入る前に色を元に戻して中に入った、するとすぐにオーリーが僕を出迎えてくれて、家族が集まっている部屋に案内され客室に入ってみると、そこには別行動していた父様が到着していて、皆んなとまったり雑談中だった。
ガチャッ
「ただいま帰りました」
母様「お帰りなさい、アトリー」
父様「アトリー、お帰りなさい」
「あ、父様!もう、お付きになられたんですね!」
本来なら父様達も僕達と同じ時間帯に着くはずが、僕達は予定より早く着き過ぎていて、逆に父様は少し遅くなっていたため、今日中に全員が集結できるかどうか分からな状況だったのだが、多少遅れはしたものの例の王弟を巻く計画はうまくいったと、父様は笑顔で教えてくれた。
「ほっ、良かったです。あの王弟が逆上して父様達を攻撃してないかちょっと心配してたんです・・・」
父様「はははっ、流石に向こうも自国ではない帝国でそんな横暴はできないよ。・・・それより、アトリーがここに来た時に、帝国の第3王子が出迎えと称して乗り込んできた件だけど・・・」
と、少し心配していた僕に、先程までの穏やかな表情とは打って変わって、少し深刻そうな表情で僕が出かける前にあった件の事を話してくれた。
父様が言うには、今回の件で帝城に探りを入れてみたら、やはり帝城で働く宮廷貴族達の中、しかも皇帝の側近の中に情報漏洩をしている裏切り者がいる事が発覚したらしく、帝国側がその人物やその他の協力者達を排除しない限り、僕の動向を帝国には報告しないことにしたらしい。
そして、帝城を探っている時に、以前から警戒していたテロを企んでいる勢力の首謀者達の正体も大体割れたそうだ。最初は以前もめたダンシャンスー元公爵家の身内や寄子などが、復讐の為に企んだものかと思っていたのが、今回はあの第3皇子の母親である第2側妃と、その実家が皇太子の座を狙ってテロを企てていると報告があってそこにダンシャンスー元公爵家の一派も復讐目的で僕を狙っているとのこと・・・
*ついでに言うと現皇帝の家族構成は、正妃との間には第1皇子、第2皇子、第4皇女、第5皇子がいて、第1側妃とは第1皇女と第3皇女、第4皇子を儲けている、最後に第2側妃とは第2皇女と第3皇子、合計9名の皇子や皇女がいる。そのうちの正妃の産んだ第4皇女と、第2側妃が産んだ第3皇子が僕と同い年だったので、僕が学園に入学した年に彼らも入学してきて同じクラスになったことがあるのだ・・・(まぁ、今は第4皇女しか学園に通ってないけど、僕と話をしたりすることはほとんど皆無だけどね・・・)
どうやら、基本的に帝国内では帝位を巡った、後継者争いが一般的で、今の皇族内では第1皇子の皇太子を皇帝にとおす、皇太子派と、第3王子をお飾りの皇帝にするために皇太子にと言っておす、第2側妃派が出来ていて、日頃から相手の足を引っ張り合う派閥争いが繰り広げられているそうだ。
そして、元々は第2側妃派はとても小さな派閥だったらしいが、去年お取り潰しになってしまったダンシャンスー元公爵家の遠縁や寄子、贔屓にしていた商家など、行き場がなくなった人達を引き入れ、周りから見向きもされていなかった派閥が力をつけ、それまで現皇太子の派閥一強だったのが、対抗馬として第2側妃派が勢力を伸ばしているので、最近の帝国の内情が騒がしくなっているということらしい。
要は第3皇子を皇太子に据えるため、現皇太子である第1皇子を失脚する理由づくりのために、今回の“大会“で、各国の賓客の歓待を任せられている皇太子が1番気を遣わなければならない相手である僕をどうにかして恥をかかすなり、害するなりして評価を落とし、皇太子の座から蹴落とそうと言うのが目的らしい、そこにダンシャンスー元公爵家の残党が協力していると言った感じなんだとか・・・
と言う感じで、父様からの話を全て聞いて簡単にまとめてみると
「うーん、と、言う事は今回は帝国のお家騒動に巻き込まれた感じなんですね?」
父様「まぁ、すごく簡単に言えばそう言うことかな」
「その上に僕に恨みを持つ、ダンシャンスー元公爵家の一派が乗っかってきたと・・・」
父様「そうだね・・・」
「・・・めんどくさっ・・・」ボソッ
話をまとめてみると実にくだらない理由で、心底面倒臭い状況に、表情を取り繕うこともなく本心がポロッと漏れてしまった。
ソル「アトリー様、本音がダダ漏れてますよ」
「あ、おっと、(お口にチャック(^_^*))・・・ん?ちょっと思ったんですけど、今の話からすると、第3皇子の母親は自分の息子を皇帝にしたくて、今の皇太子を引き摺り落とそうとしてるですよね?それなのに今日、第3皇子は自分の評価を自分で落とすような事しに来たんですか?何か深い意図があったんでしょうか?」
と、僕が今フッと思った疑問を口に出して聞いてみると、父様達の表情は呆れているような、言いずらそうな、なんとも複雑そうな表情で深いため息をした。
「「「「「っ・・・はぁ~~~っ・・・」」」」」
「・・・もっと大変な事情があったんですか??」
父様「それがね、うちの陰からの報告によると、今日いきなり第3皇子が乗り込んできたのは完全に皇子の独断専行で、その母親や元公爵家は全く関わってなかったようなんだ」
「えっ!?母親からの指示とかではなく???自分の意思で??」
父様達の深いため息の理由が、第3皇子の愚行に心底呆れている感じで出てきたため息だったようだ、僕は第3王子の行動には親の指示ではないと言われても、もしかしたら第3王子には他に意図があったのでは?とちょっと疑って、詳細を聞きたくてこう聞いたのだが・・・
父様「あぁ、どうやらアトリーの帝都入りの情報を掴んだ裏切り者が、第2側妃へ報告をあげているのを偶然聞いたらしく、皇太子である兄より先に自分がアトリーを盛大に出向かれば、周囲に良い印象を持たれるだろうと抜け駆けした結果が今日のアレということのようだ・・・」
「・・・やっぱり、ただのお馬鹿さんだったのか・・・」
詳細を聞いて、どう考えても、ただの考えなしの愚行だったため、僕も呆れてその言葉しか出なかった・・・
(親の心、子知らず、てか?・・・あ、でも、それで・・・)
「・・・そうか、皇太子は第2側妃やその派閥の監視はしていたけど、対抗馬である第3皇子本人には監視を付けてなかったから、今回の件を未然に止めることができなかった訳か・・・まぁ、なんにせよ皇太子も第2側妃も第3皇子がこんな事やらかすとは思ってなかったんだろうなぁ・・・」
(いくらお飾りとして皇帝にしたとても、制御できないおバカを皇帝にしたらダメだと思うなぁ(*´Д`*)まぁ、そこは僕には関係ないし、疑問が解決できたからいいか・・・)
今日僕がホテルを出て行く時に不思議に思っていた疑問が、この聞いた話の内容でやっと解けてちょっとスッキリした。そして、僕の言葉を聞いた父様は帝国の皇太子に対して、
父様「皇太子の対応が後手にまった理由が第3皇子の監視不足と暴走か・・・爪が甘いな・・・自分の地位を確固たるものにしたいのなら、全てを把握できるようにしなければ意味はない・・・」
と、手厳しい評価をしたのだった・・・
(父様辛辣ぅ~!(・Д・))
「あ、そう言えば、よくこの短時間でここまでの情報を仕入れてきましたね?もしかして、帝城って侵入し放題?」(セキュリティ甘すぎじゃない?(・・?))
帝城の情報が我が家に筒抜けなのは、国としてどうなんだろうか?と思っていると、
父様「ん?いいや、流石に大陸一の国力を持つ帝国なだけあって帝城の警備はとても厳しいよ?武力でも隠密でも侵入するのはかなり難しいだろうね。ただ今回、私達との連絡を密にするためにこちらの使者として送った者達が、我が家の諜報部門の達人達だからね。中に入れたのなら諜報活動は簡単な事だったよ」
(それって内部に侵入できたらあとは簡単だった?ってこと?(・・?))
母様「うちの諜報員達は情報収集のための特殊なスキルを獲得している人達で固めてあるから、こそこそ隠れながら情報を集めなくてもいいのよ」
(何そのスキル!どんなスキルなのか知りたい!!( ゜д゜))
お祖父様「まぁ、秘密裏に情報を集めれるならその方がいい時もあるからな、ちゃんと隠密としての能力も高いぞ?」
(基本も忘れてませんよって事?要は帝国より、うちの諜報員の方がレベルが高いってだけのことだね?いや、そう言えばうちの影達の隠密の能力が高いのは知ってたわWWW( ・∇・))
と、自慢げに言ってにっこり笑う父様や母様達に、それを当然だというように頷く兄弟達に、僕はへぇ~としか返事を返せなかったが、うちの諜報員の実力の高さを再認識したのは言うまでもない・・・