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間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜  作者: 舞桜
第5章 少年期〜青年期 学園4学年編
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10話 一枚上手


 そして、2日後・・・・


 帝国のとある大都市にある“飛竜便“の発着場にて、デューキス公爵家とボルテ王国の王弟の一団が睨み合っていた・・・・



 父:アイオラト 視点


「これはこれは、王弟殿下、またお会いしましたね。そんな険しいお顔をなされて、今日はいったい“何のご用“でございましょうか?」


ボルテの王弟「っ、“何のご用“、とは、言わずとも分かっているのではないか?デューキス卿?」ピクピクッ・・・


「はて?見当がつきませんね?」


ボルテの王弟「わざとらしく惚けるのはやめて貰おうかっ!!私が見そめた、彼女の事だっ!!そこの馬車の中にいるんだろう!?早く彼女を出すんだ!!」


 この王弟から逃れる為に急いでこの街の“飛竜便“の発着場に来たにも関わらず、私達が事前に手配していた飛竜が待機しているこの場所で、自分の要求を飲まないと飛竜には近づかせないと言いたげに、発着場の入り口を塞ぐように既に王弟が待ち構えていた。

 そんな王弟に塞がれてしまった入り口の前で最初に馬車から降りて、1番に少々嫌味を含みつつ要件を聞いたのだが、向こうは苛立ちからなのか、口元をひくつかせ“「言わずとも分かっているだろう?」“と脅すように言ってくる。だが、私はわざとらしく皆目見当もつきませんと言った身振りで王弟に返事を返したら、その返答にとうとう王弟も痺れを切らしたのだろう、私の後ろに並んでいるまだ誰も降りてきてない馬車を見ながら、大きな声で自分の要件を叫んだ。


「・・・何故そのような事をしなければならないのでしょう?いくら貴方様がボルテ王国の王弟殿下だとしても、ここは帝国、貴方様のお国ではありません。それに私はウェルセメンテ王国の者です。なので元から貴方様の指示に従う理由がないのですよ?それに、あの子は貴方にその気が無いのですから、いい加減諦めていただけませんかね?私は友人の愛娘には自分の好きになった相手と一緒になって欲しいのですよ」


「「「「「っ!?」」」」」 ザワッ!! 「なんたる不敬か!!」 「いくら大国の公爵家でも言って良い事と悪いことがあるぞ!!」 「だが、ここが他国というのは事実だしなぁ・・・」 「確かに、分が悪い・・・」 「それに相手にその気が無いとなれば尚更・・・」 「そう言えば、あちらの国も恋愛結婚推奨だったよな・・・」


 私の発言にボルテ王国の者達は騒めき、不敬だと非難する者達もいれば、現状を冷静に分析する者達まで様々だが、王弟は私に言われた言葉に衝撃を受けたのか、目を見開いたまま動かなくなった。


(最初に貴族的な遠回しな断り方をしたせいか、少し勘違いして私を王弟は自分の恋路を邪魔する“悪役“のような扱いをしてくるが、流石にここまでハッキリ言えば諦めるだろう。向こうは自由恋愛を掲げるの国なのだから、我が国でも貴族子女の恋愛の自由(自由であって推奨はしてないが…)がある事は知ってはいるようだし、最近の彼方の国での風潮でも相手の気持ちを優先すると言う考えが広まっているから無理強いもして来ないだろう・・・)


 先日、王弟がどうしてここまで女装したアトリーに執着しているのかよく考えたとき、アトリーが向こうと会話をしておらず、私達も互いの会話を許さなかった、それが王弟には私達がアトリーの意思を無視して自分を遠ざけているのなら、アトリー自身の考えがもしかして違っていて、ちゃんと話をして自分のことを知ってもらえれば、まだ自分に振り向いてもらえる余地があると期待させてしまったのが原因ではないかと、そう、思い至った。

 それこそ、ありふれた恋愛小説のように恋路を邪魔する“悪役“の存在で、恋心が燃え上がるかのように、私が間に入ったことでアトリーへの想いが強くなったとしたのなら、そんなものが幻想だったとハッキリさせてやった方が1番いいのではないかと言うことなった・・・

 なので、ボルテ王国での最近の風潮で、相手の気持ちを鑑みない“求婚行為“はいかがなものか、と言う感じになってきていることを利用し、その風潮に王族が率先して逆らうのはバツが悪かろうと言う思惑から、先程の言葉を選び、王弟が空気を読んで引き下がれるように、あえて貴族らしい遠回しな言い回しを使わず、明確で辛辣にこちらにその気はなく、王弟に忖度する気もないと言う気持ちを込めて言ってみた。


(それに今後の国交のことを考えれば、ここで諦めないといけないのも分かっているはず。まぁ、それで王弟の恋心が止まるかどうかは別として・・・)


 私がここまで強気に出ることができるのは、ボルテ王国では交際期間中や結婚生活中の記念日ごとに互いに贈り物をする習慣があり、その贈り物は宝石類が多く、自国で取れる宝石類より、ウェルセメンテ王国で取れる宝石類の方が質が良いことから、幅広い客層から高い任意を得ており、王家からも長年重宝されていることから、その宝石類の産出地の領主である私の言葉は無碍にできないだろうと言った算段もあった・・・


(さぁ、どうする?)


 この時私は、相手は古くから宝石類を取引する間柄の国の王弟だ、向こうもそれが分かっているのだから、互いの関係を悪くする前に引き下がってほしいと願いながら相手の出方を静かにまった・・・


 そして、王弟が動いた・・・・


ボルテの王弟「っ、・・・・・せ、せめて、一目会いたい!合わせてくれっ!!」


 と、言って深く頭を下げてきた。


(やはりそう来たか・・・)


 予想通り、諦め悪く食い下がってきた王弟を見下ろしながら冷静にこう告げた・・・


「・・・申し訳ありませんがそれは無理です・・・」


ボルテの王弟「なっ!何故だ!!何故それほどまでに私を拒むのかっ!!」


「いえ、拒む、拒まないと言う前に、この場に本人がおりませんので、合わせることが不可能なのです」


 そう言って、後ろにある馬車の扉を開いて誰も乗っていない事が分かるように見せた。


ボルテの王弟「っ!?な、何故?彼女はどこに!?それに公爵夫人方はどこに!?何故、誰も馬車に乗っていないのだ!?」


 予想外の展開に混乱する王弟、それもそのはず、王弟も馬鹿ではないのでアトリーとあい見えるために考えを巡らせ、情報を収集し、予測して、今日この場に私達が来ると確信して待ち構えていたのだ、なのにその予想が外れて会いたかった人物に会えなかったのだから混乱もすると言うもの・・・


 何故、今日、この場にアトリーが居なかったかと言うと、こちらも王弟のとりそうな行動を予測し、先回りしてくることも見抜いていたし、精霊達からの情報でその予想が的中していることも分かったのだから、確実に王弟とアトリーが出会わないように対処するのは当たり前とってもいいだろう。


「そうですね・・・簡単に言いますと・・・・」


 王弟が待ち構えていたこの発着場には、確かに私達が事前に手配した“飛竜便“がいるのだが、その予約した“飛竜便“とは別の街で、新たに“飛竜便“を手配し、私以外の家族全員を数名の護衛騎士をつけて、そちらに向かわせた。今、この場には私とカイル、それと自分達が乗っていた馬車と空の馬車2台、最後に護衛騎士達がいるだけ。ただ、馬車を率いている馬は全て現地調達している馬達だ・・・


 と、そう丁寧に説明すると、


ボルテの王弟「なっ!?なんて危ないことを!!数名の護衛だけで、しかも馬車も変えてまで!?いくら優秀な馬を向こうにつけたからと言って、無茶がある!!・・・はっ!で、ではまだその街に彼女達はついてないのでは!?こ、公爵!急ぎ彼女達の方を追った方がいいのではないか!?何なら私が!」


(誰のせいでこうなったと思ってるんだ?)


 と言って、心配してくる王弟に、若干の白々しさを感じつつ私はこう言った・・・


「ご心配いただきありがたく存じますが、彼女達の心配は入りませんよ。もうすでに帝都の方についているでしょうから・・・」


「「「「「はぁ!?」」」」」 「いやそれは流石に・・・」 「無理じゃないか?」 「そうですね。あの街からここが1番近い発着場ですし・・・」


ボルテの王弟「どう言うことだ?そんな早く着けるはずが・・・」


 私が言った言葉にボルテ側も、その周辺で野次馬していた他の“飛竜便“利用者たちも、この街以外の“飛竜便“の発着場がある場所を知っているからなのか、流石にそれには無理があるとヒソヒソと話している、確かにあの時のあの位置から、この街の発着場とは別の街にある場所の発着場となるとかなり離れているのは確かだが、こちらの移動手段が何も馬車だけとは限らない、元々私達が乗ってきた馬車を引いていた馬はだたの馬ではないからだ・・・


ボルテの王弟「・・・まさか、あの馬達っ!?」


「おや、よくお気づきになりましたね。さすが騎獣を操る王弟殿下ですね」


 そう、デューキス家が乗る馬車を引く馬は全て“天馬“が引いている、基本的に何かあった時のための備えとして“天馬“が馬車を引くことになっているのだが、今回は急遽遠方への移動手段として“天馬“に乗って空から別の街に向かわせたのだ。


ボルテの王弟「そんな世辞はいい、あれがただの馬ではなく“天馬“だと言うなら、何故、貴公らは普通の馬車などで移動しているのだ?それこそ我々のように許可を得て“天馬“で移動すればいいものを・・・」


 王弟は移動の早さのカラクリにすぐに気がつき、それなら何故今まで移動に時間がかかる馬車を利用しているのかと不思議そうに聞いてきたので、


「それは、馬車の旅と言う風情を味わうためでもありますし、女性陣には“天馬“での移動は何かと不便ですので…それに一応、帝国側に“天馬“の使用許可は得ていますが、我が国と帝国側では互いの王侯貴族が首都に向かう際は、その国の通常の移動手段を使う事という条約を独自に取り決めておりますので、その代わり、我が国では貴国のように保有する天馬と乗り手の数を登録していません。「「なっ!?」」そう言った理由もあり、基本的に緊急時以外は無闇に空を移動することないです。なので今回は“天馬“で直接帝都までは行っておりませんがね・・・」ニコッ


(大体、帝国側はどの馬が“天馬“だとか見た目では判別できないし、詳しくスキルで調べようとしても隠蔽用の魔道具があるから、そう簡単に見抜けないしな、それに条約では“天馬“で空から来ては行けないだけで、“天馬“を帝都に入れてはならないと言う条約は結んでいないから、こちらの用意した“天馬“が引く馬車で帝都入りしても良かったが、今回はアトリーとゆっくり観光するのと、“飛竜便“を体験させる目的があったから、そうしただけであって、事前に、帝都以外の地域では“天馬“を使用していいと言う許可は降りているから嘘は言ってない。

 しかし、このような不測の事態にを想定して、条約に“天馬“の頭数制限や入国頭数の申告義務も組み込まず、旅行中の馬を全て自領から連れてきた“天馬“にしといて良かった、おかげでアトリーを逃すことができて本当に良かった・・・)


 と、内心で事前準備を怠らず、用意周到に備えた自分を大いに褒めたい気分を押さえつつ、笑顔で説明すると、苦虫を潰したような表情をするボルテ側の人間達・・・それもそのはず、基本的にこの国、帝国に騎獣に乗って入るには騎獣の個体識別とその操り手を帝国に申請することになっている、それは自ら自国の戦力をバラしていると言ってもおかしくないことなのだ。

 ここ数十年は平和な時代が続いていたため、そんな情報漏洩とも取れる仕組みを互いが利便性だけの為に取り入れていた事に今更気づいたのだ、だからと言って今からその仕組みを撤廃することも難しい、そんなジレンマもある一方、我が国での騎獣と言えば“天馬“であることから、個体の識別が難しく飛ぶために羽を出さなければ“天馬“とも分からないため、と言った理由で、王族や公爵家が他国に行く場合いは、上手く手の内を隠すようにこのような条約を取り付けてある。

 それは彼らの国、ボルテ王国や他の国ともそう言う条約を結んでいるので特段隠すこともないのだが、我が国の特使がボルテ王国に行く時は、誰も自分が乗ってきた馬車を引いているのが“天馬“だと公言するものがいないため、長年何事もなく国交を続けていく中で形骸化していて、その条約のことをきっと今まで忘れていたのだろう、それを思い出して、自分達が簡単に欺かれたことに気づき、悔しそうにしていた・・・

 そんな周囲の反応より王弟は、自分の思い人がすでに遠くに移動していた事を知り安堵していいのか、それとも残念に思っていいのかと複雑そうな表情で、スッカリ先程までの勢いを無くし俯いていた・・・


ボルテの王弟「・・・もう彼女には会えないのか?・・・」ボソッ・・・


「王弟殿下、私達は“飛竜便“の出発時間が迫っておりますので、先に失礼致しますね・・・」


 なんとも言えない哀愁を漂わせる王弟に、冷めた視線を贈りつつも、先を急いでいるのは確かなので、塞いでいる発着場への道を脇に避けて開けてもらい、その横を通って、発着場に入り、予約確認やその他諸々の手続きをしているうちに、現地調達した馬車を引いてきた馬達の買取の交渉などして、やっと帝都行きの“飛竜便“に乗り込んだのだった・・・


(はぁ、これでこの王弟に追いかけられる事は無くなるはずだ。と、言うか、あの王弟、最後の最後まで何故自分がそこまで拒否されているのか、ちゃんと理解できていなかったな・・・それより、帝都に行けばやっと本来のアトリーと帝都を観光できるな・・・)


 一仕事終えた脱力感を感じつつも、その後の楽しみを思い描き、動き出した飛竜の背中で真夏の熱い日差しを感じながら空をかけるのだった・・・


*ついでに言うと、アトリー達が乗って行った“天馬“はアトリー達が降りたすぐに、アイオラトの率いる馬車の列に向かって飛んで合流。そして、護衛騎士達が乗ってきた“天馬“達も空を飛んで帝都入りできないため、アイオラトの方についてきた護衛騎士達の半数がこの場に残り、全ての“天馬を連れてアトリー達が帝都に滞在している間に地上から帝都入りし、帰りの道もアトリー達の馬車を引いたり護衛騎士達を乗せていくことになる。あと、馬車の本体は大容量のマジックリング(アトリー特製)に入れてカイルが持っているのですでにない・・・


















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入って➡️言って 言った➡️行った 誤字修正で出しててもアチラの方は無修正のままなんだね
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