104話 後日談・・・その2
はい、どうも、僕です。現在、オーリーから先日あった事件の詳細を聞き出してる僕です。
「・・・さて、公爵家の事は分かったけど、“神狼教“はあの後どうなったのかな?」
オーリー「あ、そちらの方々の事ですが、アトリー様達が現場からいなくなった後、帝国との戦闘になったのですが、国境沿いの砦同士の戦闘がひと段落ついた所に、ダンシャンスー公爵家の領地にアトリー様のお爺様である先代侯爵イエロモンド様が直接乗りこまれまして、「えっ!?」・・・「あ、いや、ごめん、続けて・・・」はい、その際に“神狼教“の教会施設を襲撃して、そこにいた神官達を全て捕縛なさって、他にも元ダンシャンスー公爵家領に点在する“神狼教“の関係施設は全て把握してあったので、一斉に襲撃したことでほとんどの教団関係者は捉えられたと言っても過言ではないでしょう。
そして、捕えられた関係者の中から主要人物とされる教団の教祖と、複数人の高位神官は我が国の方に引き渡されて、こちらの法で裁かれる事になり、
その他の主要人物以外の教団関係者の処分、処罰は帝国の方で犯罪奴隷となり辺境の開拓地送りとなりました」
「っ、“神狼教“の関係者の処遇がわかったのは良いけど、モンドお爺様が直接、敵領内に乗り込んでいったの?いつの間に!?初耳なんだけど!?」
(あの日の朝はニモスおじ様と母様だけしか僕は転移魔法で“国境都市“に連れて行かなかったはずなんだけど??お爺様はちゃんとその時お見送りしてくれてたはず・・・(*´-`)てか、今回の戦いでの帝国領への進軍は王国の軍がすると思ってたんだけどなぁ、それに、“神狼教“の関係施設への一斉襲撃の手際がやたら良すぎる気がするんだが???(・・?)・・・もしかして、うちの影達が関係してる???)
オーリー「先代様はあの日、アトリー様をお見送りなさった後、すぐに“領都マーレゲンマ“の飛竜騎士団を率いて、“国境都市アミナ“に向かわれ、国境検問所の“アルクス・シノロアミナ砦“にその日のお昼前におつきになられて、翌日の早朝には帝国の公爵領に突入なさいましたね・・・」
「はぁ!?その日の昼前に!?」
オーリーに僕が気になっていた戦いが終わった後の“神狼教“の処遇を聞いてみたら、思っても見なかった情報まで入ってきて困惑しているとオーリーが追加で情報をぶっ込んできた。
(いやいやいや、いくら飛竜達に乗って移動したと言っても、僕達がマルキシオス邸を出たのが8時頃だったはずだし、その後、飛竜に乗って出たとしても地上ルートで最短2、3日かかる所をたった3時間やそこらで到着っておかしいって!( ゜д゜)地球での飛行機とかだったらそう言う事は十分可能だけど、飛竜は生き物だから人を乗せて運ぶと疲れるし、何より飛竜は竜と言っても小型だから体力はあまりない方だもん、だから絶対どこかで休憩も必要だ、3時間も続けて飛ぶことなんて出来ないはずなんだけど・・・どうやってあんな短時間で砦まで?(・・?)・・・あれ?オーリーの言い方・・・)
元々、マルキシオス領だけではなく、この世界の各地域には飛竜や大型の鳥類の魔物を手懐けて、飛行攻撃部隊などを保有する国々があるのだ。もちろん僕の家、デューキス公爵家にも“天馬“、いわゆる“ペガサス“を手懐けて航空戦力としている。
(僕は小さい時、領地の屋敷にある馬房が通常より大きいことに疑問があって聞いてみた所、あそこにいる半数以上の馬が“天馬“、で、その“天馬“達は我が家の騎士団の愛馬達だと、そして、僕とソルがお爺様にプレゼントしていただいた馬も、実は“天馬“で、もっと大きくなると飛べるようになると言われた時は、それはもう大いに驚いたもんだ( ̄▽ ̄)まぁ、今まで野生の“天馬“を実力のある騎士達が懐かせて、国の防衛や出かけ先での緊急時の移動手段として活躍していたものを、お祖父様が王弟時代に“天馬“の繁殖に成功させたことで、その功績を讃える意味もあって我が家の紋章にも描かれるほどだから、孫の僕にも“天馬“を贈るのは当然ちゃ当然なんだよなぁ(*´Д`*))
*この世界の“天馬“は自分の翼を魔力で構成して、魔法で飛んでいるそうなので、飛ぶ時以外の見た目はほぼ、普通の馬と変わらない、あえて特徴を挙げるとするならば、地球産の馬より体格が大きく、知能が高いので、手綱がなくても言葉で支持しただけでその通りに走り出したり飛んだりしてくれる。
後、この世界では“天馬“と“ペガサス“は別の物として扱われる。“天馬“は魔力で作った翼で飛ぶ魔物に分類される生物だが、“ペガサス“は“聖獣“の一種で、本物の翼が生えている。そして、“天馬“は“ペガサス“の下位互換とされて、世界的にも多く生息している。以上、ジェムシードウィキペディア(天華)より参照・・・
そう言うことで、マルキシオス領に飛竜達が飼育されているのは知っていたし(めっちゃ懐かれて撫で回したこともある)、それがどれぐらいのスピードで行き来できるかもちゃんと聞いていた、なのに、モンドお爺様がたった3時間ほどで領都から国境都市まできていた事に驚愕していたのだ。
「早すぎでしょう、飛竜達に無理させたんじゃ・・・と言うか、オーリー、まるで自分が見てきたような言い方だけど、もしかしなくても公爵領への突入に参加してた?」
オーリー「はい、私はモンド様に同行させていただいてました。他の方々は、帝国内の情報収集も兼ねて現地の諜報員との接触の為、到着当日に秘密裏に公爵領へ侵入しました」
「・・・っ、通りで・・・マルキシオス領に行く時たくさん付いて来てたうちの使用人達が、気づいたらほとんどいなくなってて砦に行く時も誰もついて来なかった訳か・・・てか、付いてくる使用人達が人数多いなって思ってたら、それが本来の仕事だったか・・・」(と、言うか、この問題が起こる前に、もう諜報員を送っていたとか、どんだけなんだ?うちの家・・・、あ、いや、それだけ元ダンシャンスー公爵家が前々から怪しい動きをしていたって事か(*´ー`*)・・・)
ソル「アトリー様、その…、その中にうちの母上もいました・・・」
「ま、まじか、聞いてないよ・・・」(それに気づきもしなかったなんて・・・)ズゥン・・・
モンドお爺様が公爵領に特攻して行ったのも聞いて驚いたのに、いつの間にかうちの使用人達も諜報活動のために紛争地域に行っていた。さらにその中にいつの間にかソルのお母さんのセラスさんまでいたなんて、その事全てを聞かされてなかった事と自力で気づかなかった自分に二重にショックを受けで凹んでしまった。
ソル「ア、アトリー様、僕も当初その事は聞かされてなかったんですよ。ですが、奥様の付き添いの使用人の中に母上がいる事には気づいていたんです。ただいつもの事かと思ったそれだけで、その後の仕事のことは全く知りませんでした。あの件のその全てが終わった後に、母上が帰ってきて、その時に僕も教えていただいただけなので、その時まで何も知らなかったのはアトリー様と同じですよ。だからそんなに気落ちしないでください」
「うぅ・・・うん、ま、まぁ、あの時、僕が自分のお仕事以外に気が回らなさすぎて気づかなかったのがいけないんだよね・・・よし!凹むのやめっ!知らなかったなら、知る努力をしたら良いだけ!オーリー、僕がお仕事が終わった後に起こった事を詳しく教えてくれるかな?」
ソルの優しい慰めを受けて、気を取り直した僕は、あの作戦の後に起きたことを時系列順にオーリーに教えてもらう事にした。
オーリー「はい、畏まりました。では、まず・・・・・・・」
こうして始まった説明は屋敷についた後も続き、合間合間で質問なども交えつつ教えてもらった。
「・・・ふーん、やっぱりあの後に帝国の反応が素直だったのは、自国の象徴をそのまま向こうにお任せしたのが良かったんだね・・・」
オーリー「はい、アトリー様のおかげでこちらの交渉は順調に進んだと、旦那様がおっしゃってました」
「そっか、父様のお役に立てたのなら何よりだよ♪・・・しかし、今回の紛争は思った以上に短い紛争だったな・・・」
夜月:『だろうな、出鼻を大きく挫かれたんだからな、それに地球の紛争と違い、兵器や武器ではなく個人の力量が戦いの勝率を大いに左右するこの世界では、アトリーの血縁者は相当強者の部類に入るのだ、向こうは頼みの綱だった“レッサーフェンリル“達を奪われたことで、大きく戦力が低下していたし、この世界の紛争としては妥当な短さではあっただろうさ』
「いや、でも、たった二日の紛争で終結ってあまりないと思うよ?」
そう、たった二日、それだけで、帝国の公爵領が陥落したのだ。それも、大きな損害は出す事なく・・・
簡単に話すと、僕が“レッサーフェンリル“達を拉致った後、その場に残っていたニモスおじ様が素早く動いたのが最大の決め手だったらしい。
僕達が消えていった後、その場に残った人達はまだ僕の放った“神気“で、身動きが取れていないことに気づいたニモスおじ様達が、交渉役に出てきていた前ダンシャンスー公爵をあっさり無傷で捕縛、その他お付きの人達も次々捕縛し、自領の砦に収監、その後すぐに準備させていた騎士団達を連れて帝国側の砦を襲撃、まだ動きが鈍い帝国兵達を無力化しながら、砦内を制圧して行き、最後には砦の屋上で倒れていた交渉の場を見ていたであろう現公爵当主をサクッと確保、その際、まだ動けていた帝国側の現場指揮官的な軍人に邪魔されてちょっと手間取ったらしいけど、その人はこっちの騎士団長に勝てなかったらしい、それを見た他の帝国兵は完全に戦意喪失し、結果、帝国側の砦はすんなり陥落した。後は砦の外にいた徴兵された一般市民や、緊急依頼を受けた冒険者達などは、すぐさまその場で解散させて、あっという間に帝国側の砦周辺はもぬけの殻となったそうだ。
そして、陥落に要した時間はほんの数十分で、帝国の砦の陥落直後にモンドお爺様達が自領の砦に到着し、到着と同時に一緒に来ていたうちの隠密使用人部隊は帝国領側で解散していく集められた人達の中に入り込み、秘密裏に現地の隠密と接触し、公爵領内に点在していた“神狼教“の施設の位置を把握、その時には向こうの重鎮などの情報も全て調査済みといった徹底具合。
翌日の早朝まで休息をとっていたモンドお爺様と、飛竜騎士団にうちの隠密の案内役が合流し、現地の隠密から受け取った情報を元に一斉に教団施設を襲撃し、主要人物達を捕縛、全ての人達の捕縛が終わった後、モンドお爺様はその教団施設を全て破壊するように指示し、お爺様、自ら“神狼教“の1番重要な施設、“リトス教“にとっての“大神殿“とも言える建物、向こうでは“大聖堂“と呼ばれている場所を、捕らえた“神狼教“の関係者達の目の前で、愛用の大剣を使い、徐々に切り崩すように壊していったそうだ。(・・・モンドお爺様は今回のこと、実はめっちゃくちゃ、怒ってたんだね・・・( ̄▽ ̄))
最後に教団の信徒達の前で、聖獣のちゃんとした役割を説明し、聖獣から神に至ることはないと言うことも詳しく説明して、その上で自分達が崇めていた“聖獣・フェンリル“が神になることを望んでいなかったことも暴露して、物理的にも心理的にも信仰心を徹底的に叩き壊して回ったそうだ・・・そうして、元ダンシャンスー公爵家領内の“神狼教“に関わる全ての施設はその日1日で完全に破壊され、教団自体もその場にいた重要な人員を全て捕らえて解体させられたそうだ。
(やる事が過激だ・・・マジ怖っ!∑(゜Д゜))
今回の件の関係者達のその後の処分については、先に説明してもらった通りの事だったので割愛するが、その時に少し気になった事があった、それは、帝国側では僕の事、特に“現人神“になった事についての情報はどこまでの人達が知ってしまったのか、と言う事だった。すると、オーリーの把握している範囲では“神狼教“の高位神官達と公爵家の人達だけだったそうだ、その事を聞いて僕は意外だなぁと思っていたら、オーリーが言うには僕の情報はかなり厳重に取り扱っていたらしく、帝国内の貴族達にはその情報が行かないように徹底していたらしい、どうも、帝国内でこのような有益な情報は強烈な争奪戦となり、いち早く情報をつかんだ者が出し抜こうとしたり、互いに足を引っ張ったりとすることが血縁関係でも平気で起こるとのことで、身内にあたる帝国の皇帝にすら報告していなかった、本当に帝国内で僕の情報は公爵家だけが独占していたそうだ・・・
これを聞いて僕は、良かった、と言うべきかどうか、ちょっと複雑な気分になった。
(あ、砦の方で僕のあの姿を見た人達は全員捕縛されて犯罪奴隷落ちになったから、奴隷契約の時にこの事は他言無用として契約に組み込まれているらしいよ( ・∇・))
なので、僕のあの姿を見た人達はその人達の間だけで語り継がれているとか、いないとか・・・
こうして、今回の僕を狙ったダンシャンスー公爵家、神狼教とマルキシオス家の紛争はたった二日で終結したという事らしい・・・・
後の歴史に語られる伝説の紛争となることを今は誰も知らない・・・・