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間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜  作者: 舞桜
第4章 少年期〜青年期 学園3学年編
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99話 返信 叔父:マルキシオス領主 プロモニス 視点


 叔父:マルキシオス領主 プロモニス 視点


 ・・・・午前10時・・・・


「さて、アトリーも無事上空に上がったな。・・・あちらも砦入りして一息ついた所だろう、副団長、この書状を向こうに届けてきてくれ」


副団長「はっ!お任せください!」


 上空に溶けるように消えていったアトリー達を見送った後、私は早速、次に行動に移った。シリーはそのまま中庭に残り、自分は砦内にある自分の執務室に移動し、デイル団長と副団長を呼びだし、作戦のためにあらかじめ書いておいた、和平交渉に関する内容の手紙をこの砦に務める騎士団の副団長に手渡し、使者として指名した。指名された副団長は背筋を伸ばして任務を承諾、少し緊張した様子も見受けられたが、自分の内心を悟らす事なく、ハキハキと動き私から手紙を受け取り、任務の為に部屋から出ていった。


「・・・しかし、我が領と隣接している帝国ダンシャンスー公爵領は、以前から良好な友好関係を築いていると思っていたんだがな、こうもあっさりと手のひらを返して、こちらに攻め入ろうとしてくるとは・・・、しかも、その理由が“現人神“に至った我が甥、“アメトリン“を手に入れるためとはね・・・」


団長「!?・・・閣下、それは、私のような地方騎士団の団長が聞いていい話なのですか??」


 副団長がいなくなった所で私がポロッとこぼした言葉の意味に気づき、物凄く驚いた表情をして、恐る恐るそう聞いてくるでいる団長。そんな彼に私はなんてないと言った風にこう続けた・・・


「あぁ、ちゃんと許可は出てる、今回の騒動の発端を現場の指揮官が知らないまま戦うのは不誠実だと、アトリーが言うのでな・・・」


団長「アメトリン様がそのような事を・・・」


 団長はさらにあり得ないと言った感じの感情を含ませた驚きの表情をした。それは、アトリーが現場で働く人に気を配ってくれることが意外でたまらないのだろう、普通の貴族子息なんて、自分より身分が低い人間、特に平民の都合なんて気遣うことなどない、むしろ下々の者達が自分の都合に合わせるのが当たり前だというのが大半だ。だが、アトリーが言動の端々に見せる他人を気遣う心、それは何も下手に出ているわけでもなく、身分が高い者が下の者達にする施しそのものだ、その身分が高い者が本来するべき義務を自然体で行うアトリーは、最近の歪んだ思想を持った貴族達が多い、この時勢ではどこか歪にうつるのだろう・・・

 現に、平民出身の団長に自分の秘密の一部を教えていいと許可まで出した、いや、教えておいてほしいと言った、この戦いの本当の理由だからと、ただ上に命ぜられるままに戦うのは、ゴーレムでもできること、だが、人は心があるからこの戦いの理由も知らずにいると、その戦いの最中に意味があるのかと考えたとき、自分はなんの理由も知らないと気づいてしまったら、“虚しさ“で人には一瞬の隙が生じる可能性があると、その一瞬の隙で死ななくていい戦いで死ぬ可能性が生まれるからと、そう言って、団長に戦うための意義を見い出すきっかけになるのなら、これぐらいの秘密、バラしても問題ないと判断したそうだ・・・


「それに、敵側はアトリーが“現人神“と知って攻めてくる、敵が知っているのに、味方が知らないのは平等ではないとも言っていたな」


団長「・・・このように、私にまでお気遣い頂けるとは思っても見ませんでした。私達はただ淡々と敵を倒し、民衆を守ることが使命で誇りだと思っておりましたが、アメトリン様はそんな私に戦う理由を教え、戦う意義を見出す手助けまでしてくださいました。ご自分が狙われて大変な時に・・・」


 と、団長はアトリーに気遣いに感無量とばかりに胸に拳を置き、ここには居ないアトリーに向けて最敬礼をした。その様子を見て私は団長の心の中に長年騎士として染み付いる騎士精神に僅かな嬉しい変化が見てとれた。今までただ盲目的に任務を全うするだけだったデイル団長の生活に、さまざまな変化が訪れるだろうと・・・


「そうだな・・・、あの子は自分が大変な時に他人を過剰に気遣う癖がある、それに、ひどく自分が迷惑をかけていると気にする」


団長「!?アメトリン様は何も気にすることはないではないですか!?」


「そうなんだが、あの子は本気で自分のせいで迷惑をかけていると思っているんだ・・・昨日、何度も謝られてしまったよ・・・」


 昨日、我が家に泊まるために、夕方の少し遅い時間帯にシリーと転移魔法でやってきたアトリーは、私達と会った瞬間に頭を下げて謝罪してきた。


“「この度は僕のせいで、マルキシオス侯爵家の方々に多大なご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした!」“


 そう言って、両手を握りしめて、ひたすら頭を下げるアトリーに家族全員が慌てて止めに入ったと言う事があったばかりだ・・・


団長「そんな・・・何も悪いことをなさった訳でもないのに・・・」


「そう、そうなんだ、向こうが勝手にアトリーに目をつけ、一方的に狙ってきただけだ・・・、だが、アトリーはその事で周囲の人達を巻き込んだことを自分がいたせいでと、そう思ってしまったんだよ。昔からどこか自己肯定感が低い賢い優しい子だと思っていたが、あそこまで自分以外の人が巻き込まれることを嫌い、自分のせいだと思ってしまうとは、今回のことがなかったら気づきもしなかった・・・シリーによると、それは幼少期の時からずっとそんな調子だったそうだよ・・・その事を今の今まで気づかなかった私はダメな叔父なのだろうな・・・」


団長「閣下・・・」


 作戦を前にして少々情けない気持ちになった私に、気遣うような視線を送ってくる団長に、今、この場だけの弱音を吐いたのだった。


(以前似たような事があった時、私はアトリーが賢い優秀な子としか見ていなかった、その時、親であるシリーやラトはもっと前からこんな悩みを抱え込んでいたんだろうと思うと、私はその時の楽観的な自分を殴りつけたくなってきたよ・・・)


 その後はなんとも言えない空気になって、私は窓の外、青く晴れ渡った空を見上げ、


「ふぅ、子供はもっと、わがままでいいと思うのだがなぁ・・・」(今、この時、空の上で、アトリーがこの空を見て楽しんでくれているといいんだが・・・)


 と呟いた・・・


 少しして、溜まっている書類の整理をしていると、副団長が書状の受け渡しが問題なく完了したと報告に来た。


「そうか、書状が問題なく受け取って貰えたなら後は向こうの出方次第だな・・・」


団長「そうですね。しかし、やけにあっさり書状を受け取りましたね?向こうは使者に攻撃はしないまでも、書状を受け取ると言って何分も待たせるなど、軽い嫌がらせをしてくると思っていたんですが・・・」


 今回のように紛争が起こった時、いくら違いが対峙していたとしても、和平交渉などの申し出の書状をもった使者に危害を加えるなどの行為をすると、国際的な信用を落とすとして、使者への攻撃行為は控えるのが一般的なのだが、それでも、敵対している勢力から来た使者を良く思ってない人達は多いので、使者に直接手を出さないだけで、嫌がらせや嫌味など、少し子供じみた行為はしてくる可能性は高かったのだが、なんとも拍子抜けしたと言いたげな表情を団長も副団長もしていた・・・


副団長「そうなんですよ。自分も少しごねられるか、嫌味の一つでも言われるかもとか思って構えて行ったんですけど、やけにあっさり受け取っていきましてね。砦の警備兵達の雰囲気は少し警戒している感じではあったんですけど、書状を受け取りにきた騎士は騎士らしくない雰囲気で、どこか余裕があったように見えましたね」


「そうか…、受け取りに出てきたのは向こうの砦の所属ではなかったかもしれんな・・・それこそ、例の“神狼教“の信徒だった可能性もあるな・・・」


 副団長が受け渡しの際の向こうの雰囲気を話してくれ、少し違和感を感じた私は憶測ではあるが、多分、間違いってはいないだろうとそう話すと、


団長「・・・そうなると、やはり、砦内にはすでに例の魔物達がいると・・・」


「ほぼ確定だろう、その余裕そうな態度が自分達のもとに強力な戦力がいることからの心の余裕だと、予測すればだがな・・・ただ、その余裕の元をどこで使ってくるか、そこが重要だ、現時点で使者を脅すような事はしないだろうが、私との和平交渉の場で使ってくれると、話は早く済むんだがな・・・」


副団長「物騒な願いですが、確かにそれが1番手取り早やいですもんねぇ・・・」


 と、今回の作戦の目的である“レッサーフェンリル“達の保護と言う目的のため、こちら側から和平交渉を持ちかけた、そうすれば帝国側はこちら側がした手に出たと勘違いし戦力を侮り、なおかつ調子に乗ってくれないだろうかと考えたのだが、向こうが“レッサーフェンリル“を最後まで出し渋れば、アトリーのする手間が増える、ため私達はそれを阻止するため、この書状のやり取りでどうにか向こうの内情を予測しようとしていた。


副団長「まぁ、もう少ししたら向こうからの返事がくると思いますので、その時、あちらの使者の様子もまたよく観察しときます」


「あぁ、頼んだ・・・」


 そうして、数分後・・・・


団長「む、来たようです・・・」


副団長「受け取ってまいります」


「そうか・・・、さて、なんと書いてあることやら・・・」


 団長が、相手の使者が来たこと感知すると同時に副団長が書状の返信を受け取りに部屋を出ていった。


(しかし、以外と早かったな・・・)


 と、思っているうちに、副団長がシリーを伴い部屋に入ってきた。


シリー「お兄様、私もご一緒させてくださいな」


「あぁ、構わないよ」


 相手の返事の内容が気になって副団長についてきたのだろう、いつもより少し険しい表情で、不安そうに私に許可を求めてくるシリーに、私は快く答えた。


シリー「ほっ・・・ありがとうございます。お兄様・・・」


 そう言って執務室に備え付けのソファに座ったシリーを見た後、返信を持ってきた副団長に視線を向けると、受け取ってきた書状を恭しく差し出した。


副団長「使者殿がご回答をお待ちしておりますとのことです・・・」


「ん?門の外で待っているのか?」


副団長「はい、早急に返事を返せと言っているようです。どう見てもこちらを下に見た感じの態度をしてました」


「そうか、返答を急がせこちらの余裕を削りにきているかもしれんな・・・まぁ、いい、返答はこの手紙の内容次第だ・・・」


 相手の傲慢さが透けて見える行動に、こちらは慌てず静かに構えるのが得策だろうと思いながら、受け取った書状をひらき、内容を確かめた・・・


「ん???なんだ?この勘違いだらけの手紙は・・・」


 書いてある内容はとても正常な常識を持った人間が書いたとは思えない内容で、私は数秒、内容を理解するのに時間を要したのだった・・・




















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