97話 神様って???
夜月:『あぁ、アトリーの気配は独特だからな、“現人神“になってからさらに個性的で惹きつけられる気配がする』
「やっぱり、○ュールか・・・」ボソッ
作戦の重要性は納得したけど。それとは別に天華達から止められていた条件のうち一つが、効率を考えるとどうしてしてはいけないのかが分からなかったので素直に聞いてみた・・・すると、奇襲的な今回の作戦の為に重要なことだと言ってくれたのだが、僕は自分の体質が“猫まっしぐら“的だったことを思い出し、ちょっとやさぐれてしまったのだった・・・・
天華:『ま、まぁ、そのおかげで、いち早く“フェンリル“の仔共達の安全が確保できるなら良い事じゃないですか?』
「まぁ、そうなんだろうけど・・・」
ソル「あ、下の砦が騒がしくなってきましたよ。そろそろ和平交渉の申し込みの使者が出てくる時間みたいですね」
「あぁ、もう始まるんだ、作戦」
ソル「そうですね。まずは向こうの出方次第でアトリーの出方が決まります。ここで向こうが武力をひけらかすように、“レッサーフェンリル“達を連れてきてくれれば、探す手間はなくなるんですけどね・・・」
「そうだね。そうしてくれると、万が一、僕の姿を見ても近寄って来ない仔共達がいても、視認できる範囲だったらすぐに結界を展開して捕まえられるから、楽なんだけど」
ソルやジュール達とのんびり会話していると、にわかに地上にあるマルキシオスの砦の空気がざわついてきたのに気づいた。それは今から国王であるサフィアスおじ様や父様、ニモスおじ様などその他、国の重鎮達の話し合い?、作戦会議?で決まった作戦の始まりを意味していた。
今回の騒動の発端は、帝国貴族である“ダンシャンスー公爵家が一方的に仕掛けてきた紛争であるが、その目的が僕が“神“に至ったことの事実確認と酒乱ご令嬢の復讐、それと僕が“神“になった方法を聞き出すために僕を捕まえようとしているのが現在の状況なのだが、その捕まえると言う方法の中にどうやってするか分からないけど、“聖獣・フェンリル“の仔共達の力を借りて僕を捕まえる気満々だったらしい。
その情報を聞いた父様達が、相手の最終目的が僕の確保なら、こちらの時間稼ぎと思われる和平交渉には応じるフリをして、自分達の最高戦力となる“レッサーフェンリル“達を交渉の場に連れてきて、僕を引き渡すようにとこちらの交渉役を脅してくる可能性が高いと、ならばそれを利用して向こうが見せつけてきた“戦力“を、目の前で掻っ攫って、ついでに他の使役された狼達も連れて行けたら連れて行って良いと言われた、その上、僕の“神力“の強さを見せつけて向こうの戦意を削いでやろうと言う作戦らしい、その後の事は大人の仕事だから気にするなとも言われたな・・・
(まぁ、向こうが仔共達を連れて来なくても、僕が仔共達を探し出して連れて行く様子を見せればいいと言っていたしね。作戦としてもそんなに大きな差はないとも言ってた(*´Д`*))
騒がしい地上の様子を窺っていると、王国側の砦から和平交渉の話し合いを持ちかける知らせを持った使者が出てきた。そうすると帝国側の砦の緊張感が高まったのを感じた。
王国側の使者は相手を刺激しないようにゆっくりと国境になっている大河にかかる大きな橋を歩き、国境線である橋の中間まで来ると大きな声で帝国側に声をかけた。
使者「私はウェルセメンテ王国より派遣されてきました使者にございます!この度、我が国王陛下からダンシャンスー公爵様に和平交渉の提案をさせて頂きたく参りました!その詳細を記載した書状をお渡ししたいのですが、どなたか、応じていただけませんでしょうか!?」
と、言った言葉に帝国側の砦から1人の将校と思わしき人物が出てきて、緊張感を持って使者からその書状を受け取り戻っていた。その様子を見届けた王国側の使者も砦に戻っていくと、少し緊張感が和らいだのを感じた。
夜月:『さぁ、始まったぞ、向こうはどう出る?・・・』
少しすると帝国側の砦が少し騒がしくなってきて、明らかに警戒大勢に入っているのを感じた。
「あ、向こうも使者が出てきたみたい」
書状の返答を持ったと思われる兵士が1人帝国側の砦から出てきて、さっきの王国の使者のように大きな声で、王国の方の砦に向かってお伺いを立てて、急遽書いたであろう書状を渡していた。そして、帝国の使者は戻らず返事を待っているようで、王国の使者が急ぎ戻って書状を今回の責任者になるニモスおじ様の所に持って行った。
天華:『ふむ、向こうは返事をせかしているようですね』
「みたいだね。これは作戦成功なのか?」
王国側の返答を待っている間にも帝国側の砦内は慌ただしく、中では何やら戦闘の準備が整えられているようだ。
そして、少しすると王国側の使者が戻ってきて、さっきの書状の返事を持ってきて、帝国側の使者に渡した。今度は王国側の使者は戻らず、帝国側の使者が同じように返事をもらうために砦に書状を持っていき、返事を貰って戻ってくる。
その後もこんなやり取りを2、3回すると書状でひとまず話がついたのか、互いの使者達が砦に戻っていき、しばらく互いの砦内が慌ただしい空気を纏った後、キッチリ10分後に両側の砦から両国の交渉人達が出てきた・・・
「お、出てきた、あれは前公爵かな?・・・ん?“レッサーフェンリル“がいない?連れて来なかったのかな?」
帝国側の交渉人は僕達が予想していた通りダンシャンスー前公爵だったのだが、期待していた“レッサーフェンリル“を連れてきていなかった、少しがっかりしつつ、こちらの交渉人のニモスおじ様と言葉を交わしているのを見ていると・・・
ソル「あ、何か笛を吹いてますよ!」
「本当だ、見て、砦の上!」
交渉人達が会話を交わしていると思ったら、急に前公爵が何やら首から下げていた笛を吹くと、砦の上に1匹の“レッサーフェンリル“が現れ、前公爵の横に走って寄ってきた。
ジュール:『む?あれ!他にも出てくるよ!』
最初の1頭に続くように砦の屋上には“レッサーフェンリル“が4頭、それに付き添うように“神狼教“の神官服を着た人達が4人出てきて、他にも4頭の“レッサーフェンリル“それぞれの後ろに、色んな“狼“の魔物達が5、6頭ずつ群れをなすように付き従って出てきた。
「わぁ、打ち合わせしてたのかな?完全に見せつけて来たねぇ」
この演出で帝国側の兵士達の戦意が高まり、盛り上がっていたけど、僕達はちょっと白けたようにその様子を見ていて、反対の王国側はいつでも戦いが始まっても良いように警戒を強める。
ソル「そうですね。あぁ、どうやら予想通り脅しもかけてきているようですね・・・」
ソルの言う通り、音は聞こえないけど目がいい僕達には、橋の上で前公爵がニモスおじ様に何やらドヤ顔で話しているのが見えた。
「わぁ、本当だ、自信たっぷりの表情で話してる・・・お、そろそろ合図が来るかな?」
ソル「ですね。では、合図が出ましたら“神力“を解放し隠蔽をとして、帝国側に圧をかけながらゆっくり降下して行ってくださいね。僕達は隠蔽をしたままその後に続いて降りていきますから、心配せずに堂々となさってください」
「はーい♫」
と、返事をすると、橋の上のニモスおじ様が右手をあげて僕に合図を出した。
「では、いきますか、“神力解放“♪」
ブワッ!!
そう言って僕は体の中を常に巡る“神力“を外に解放する、すると、“神力“が僕の身体に纏わりつき、以前のように“神器の祭事服“を変化させて行く・・・
「えっ?あれ?“神器“は解放してないのに、またあの時みたいに“神装“の軍服風になるのかな?」
天華:『“神装“の発現はその時の“神力“の高まりによって、その時々で“神器“の服装が変わって行くものですから、今回は強めの“神力解放“に反応したと思われます。服の形もその時の状況によって変わるので、前回と同じ物になるかは不明です』
「ふーん?変な仕組みだね?」
とか、話しているうちに、祭事服がどんどん変化していき、最終的には日本の昔話に出てくる羽衣を纏った天女風に変化していった。靴とズボンはなくなり、素足の中指に紐を通した白のスパッツなって、インナーも手の中指に紐が通った長袖のピタッとなったハイネック、そして、上の服は長い袖の着物をゆったりと着付け、子供用の帯、へこ帯一本で締めている様な服装になり、豪華な刺繍が入ったマントは、刺繍の模様はそのままで天女の薄い羽衣の様に僕の腕に掛かってフワフワ浮かんだ・・・その服装を見て僕は、
「なんで、天女風なんだよっ!?」
と、つい突っ込んでしまったのはいけないことだろうか?
天華:『まぁまぁ、良いじゃないですか?とても似合ってますよ、“神器のサークレット“をしてても違和感がない服装になってますし、そこまで言うほど天女風ではないですし・・・(まぁ、性別不明さが増したのは確かですが・・・)』
「くっ!そう言われると、確かにとてもいい服なのは確かだ・・・」
そう言って悔しがってる僕にソルが呆れた声で、
ソル「はいはい、なら良いですね。ほら、早く隠蔽解いて下に降りていかないと、作戦が意味なくなっちゃいますよ?」
と、言いながら僕の背中を押した、僕は作戦を失敗させたくないので、渋々この格好のまま言われた通りに渋々、演出のために徐々に隠蔽を解いて、ゆっくり下に降りて行くのだった・・・
「むぅ、解せぬ・・・」
天華:『ほらほら、胸張ってー』
夜月:『笑顔だぞー』
ジュール:『神様っぽくねぇーアトリーならできるよ~』
春雷&雪花『『アトリー様頑張ってー!』』
ソル「ちゃんと後ろにいますから堂々としてくださいねー!」
(神様っぽくって何?どうやるんだ???(・Д・)てか、この格好で僕って認識できる人っている???)
皆んなのアドバイスや応援を受けつつ笑顔で降りていくが、内心、周りの人にはどう目に映ってるのか?神様っぽくとは?と悩んだのは仕方ないと思う僕だった・・・




