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間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜  作者: 舞桜
第4章 少年期〜青年期 学園3学年編
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95話 親としての覚悟


「わぁ、大きい!あ、初めまして、僕はウェルセメンテ王国に住む“アメトリン・ノブル・デューキス“、アトリーと呼んでください。急に押しかけてなんですが、あなたが“聖獣・フェンリル“様ですか?」


聖獣・フェンリル:『まぁ、私のような者にご丁寧なご挨拶ありがとうございます“現人神様“。私が今代の“聖獣・フェンリル“にございます。この様な所までご足労頂き、感謝の念に堪えませんわ』


「「「「「えっ!?喋った!?」」」」」 「「「「「しかも丁寧!!」」」」」


(えっ・・・もう既に僕が“現人神”だって知ってる!?Σ('◉⌓◉’))


 僕が軽い感じで挨拶すると、体長5メートルもある大きな“聖獣・フェンリル“が恭しく僕に向かって頭を下げて丁寧に挨拶をしてきたことに、ついて来ていた大人達は声をあげて驚いていたが、僕はそれより初めて会ったはずの“フェンリル“に僕の正体が既に知られていた事に驚いていると・・・


夜月『多分、神々から教えて頂いたのではないか?』


(ん?え?もしかして色々と既に連絡済み?( ゜д゜)??)


フェンリル:『はい、先程、主神様からご連絡を頂きまして、皆様のご用件の内容はお聞きしております』


「なら話は早い、今回の件、どこまで知ってました?」


 どうやら“聖獣フェンリル“はティーナちゃんからの事前連絡で僕達がここに来る事を知っていたようだ、そして、僕達の要件も聞いていたようなので、まずは今回の公爵家の陰謀をどこまで把握していたか率直に聞いてみた。


フェンリル:『それが大変不甲斐ない話なのですが、私はお役目上ここを気安く離れる事ができないので、今回の“神狼教“と帝国の公爵家が起こした事件のことは何も知らなかったのです。そして、その計画に我が仔達が加担していることも、先程、主神様からお教えいただいて知ったぐらいなのです。その事で貴方様のお心を煩わせてしまい申し訳ありません・・・』


 と、どうも、フェンリルは本当に今回の件を知らなかったようで、申し訳なさそうに耳を下げてまた深く頭を下げた。


「・・・そうなのか、知らなかったのはしょうがないね・・・」


(こりゃ、本当に聞いてなかったのか、向こうも徹底的に隠蔽していたんだろうな・・・そうなると、完全にフェンリルの仔達は自らの意思でこの戦争に参加するかしないかを決める事になるな、いや、むしろもう参加すると決めて出てくる仔もいる可能性もあるか・・・じゃあ、あとは止めれるかどうかだな・・・)


「ねぇ、フェンリル、今から仔共達を呼び戻せたりできないの?このままだと、仔共達が争いの戦力として戦闘に参加させられて、命を落とすことになりかねないんだ僕達はそれを止めたくて君に会いに来たんだ」


フェンリル:『それが、先程、知らせを受けた際に仔共達を呼び戻す合図を送ったのですが、こちらに戻ってきたのは半数の仔共達だけでした。後は何の返事もなく未だ戻ってきていません。・・・多分ですが、その仔共達の“見守り係“達に乗せられたか、自らその争いに参加すると決め、帝国の公爵家の兵達と一緒に最前線に向かったものだと思われます・・・』


「「「「「!!」」」」」


「そうか、もうすでに最前線、国境の砦まで行ってるってことか・・・」


 フェンリルが言うにはティーナちゃんから知らせをもらってすぐに仔共達を呼び戻したそうだが、どうも、自分の意思で紛争に参加すると決めた子供達が約半数いるらしく、既に戦いの場となる、帝国側の国境の砦にいる事が分かった。徐々に判明してくる現状に、誰もが顔色を悪くしていく中、僕は・・・


(一足遅かったか・・・でも、前もってこの計画に参加する意思を見せていたのなら、どうやっても“レッサーフェンリル“達との戦いは避けられなかったか・・・、だから、向こうはあんなに強気な計画を立てていたんだな・・・、フェンリルの仔共達の力に頼っての計画なら、その頼りの仔共達を無効化すれば済む話だけど、僕抜きでなるべく傷付けずに無力化もしくは捕まえる方法はないものか・・・)


 と、大人達が自分を国家間の争いに出す気がないと分かっているので、自分以外でもフェンリルの仔共達を無力化、または、捕まえる術はないものかと考え始めた。


(何と言っても“レッサーフェンリル“は、ギルド指定の脅威度ランクが一個体だけでもSランク相当の魔物だ。それを怪我をさせないようにどうやって無力化、いや、捕まえる事ができるかな?マルキシオス領の衛兵隊や騎士団の人達の中に、僕みたいに壊すことのできない結界を作れる優れた魔法士がいれば良いけど、もしくは国の軍にそう言う人はいたっけ?(・・?)僕が知る限りマルキシオス領では“プラセルお祖母様“ぐらいなんだよねぇ、“モンドお爺様“と“ニモスおじ様“は魔法より物理攻撃特化だし、“ネニュスおば様“は情報収集を得意とする隠密系だもんなぁ、そうなるとやっぱり“プラセルお祖母様“だけが頼りなんだけど、“レッサーフェンリル“を一気に5頭も結界に閉じ込めて置けるかが問題なんだよねぇ・・・・)


天華『そうですねぇ、アトリーが紛争に介入するのはご両親が望まれてませんからねぇ』


(そうなんだよなぁ、父様達は僕を普通の子供として育ててくれようとしてくれているからねぇ、うーん、どうしたら良いんだろうか?(*´Д`*))


 うーんと唸りながらどうにか自分が介入せずにフェンリルの仔共達を傷つけない方法を考えていると・・・


フェンリル:『“現人神様“や皆様に我が仔共達をそこまでお気遣い頂けて嬉しく思いますが、今回の件で戻ってこなかった仔共達は、“聖獣“の継承権争いでは既に失格となってしまってますので、この先どのような事になっても、私は関与致しません。なので、そのまま捨て置きくださいませ・・・』


「っ・・・そんな、いいの?貴女の産んだ大切な仔共達なんでしょう?」


フェンリル:『・・・私は最初、あの仔達に“聖獣“としての最低限の決まり事を教えたのち、“神狼教“関係に仔共達を預け、人の暮らしや外の世界を見て周り、それでもこの山脈を守るお役目の“聖獣“になりたいと思ったなら帰ってきて来なさいと、そして、辛い修行に耐えた者だけに“聖獣“になり得る、その権利を与えると言い聞かせてきました。今回の呼び戻しの合図に応じなかった仔共達はもう、“聖獣“になる意思がなくなったと言うこと。その上で今回の紛争に加担すると自分で決めたのなら、自身が傷つく覚悟があるのです。それが、あの仔達の生き方なのです・・・なので、容赦など不要です』


「「「「「っ・・・」」」」」


 僕の思考を読んだフェンリルは戻って来なかった仔共達の処遇には一切関与するつもりはないと、いつどこでどうなっても、それはその仔共達の自己責任だと、そう酷く冷静な表情で冷たく言い放った・・・それは、もし、仔共達と王国の兵が対峙して戦闘になったとしても、仔共達が傷つけられ、死ぬ事があったとしても、フェンリルはこの場を動く気はない、自分の仔共達だとしても助けに行く気はないと、そう言う事だと・・・

 その言葉にその場にいた全員がフェンリルの強い決意を感じ、何も言うことはできなくなった。


(これは“聖獣“としての覚悟なのか?それとも野生の魔物としても自然の摂理とでも言いたいのか?強気が生き残り、弱気は淘汰される、そう言う意味では戦争とは全てそう言うものだものね・・・でも、僕は、まだ子供なのに、悪い大人の策略に乗せられてしまっただけかもしれない仔共達を有無を言わさず攻撃できないよ…、見殺しになんて出来ない…、偽善だとしても、諦めたくないよ…、だって、あんなに可愛いのに・・・)


 今はこの場にいないが神官長の側にいた“レッサーフェンリル“を思い出し、あんな人懐っこい可愛い仔が他にもたくさんいて、そんな仔共達が騙されて戦わされて怪我したり最悪死んでしまうかもと思うと、やり切れない気持ちになって、悲しくなってきた。


ジュール達『『『アトリー・・・』』』


春雷&雪花『『アトリー様・・・』』


 悲しさでションモリと俯いているとジュール達や精霊達が僕の周りを取り巻き慰めてくる。


(どうにか、その仔共達を止めることはできないかな?本格的に戦いが始まる前に仔共達にあって説得できたなら・・・あんなコロコロモフモフした可愛い仔達が痛い思いをしなくて済むかもしれないのに・・・でも、父様達は僕がマルキシオス領に行く事さえ許可しないだろうし、・・・くそっ!僕は卑怯で無力だ・・・)


 親であるフェンリルでさえ覚悟を決め仔共達の生死に関与しないと言ったのに、僕は諦め悪く、いまだに仔共達をどうにか戦いから遠ざける術はないものかと考えてしまう、だが、自分は親の言いつけを破ってまで最前線に出向き、その仔共達を直接止める勇気も手段も無かった。


「父様達に嫌われたくない、でも、フェンリルの仔共達も諦めたくはない・・・一体どうしたら・・・」


夜月『・・・アトリー、一旦、王城に戻りお父上達に相談してみてはどうだ?それに、王城の地下牢にフェンリルの仔共が一頭入ったままだろう?それの引き渡しもしてやらねば、アイツは“聖獣“になる気はあったようだしな』


「あ、そうだった!オジさんと一緒にいた仔は少なくとも“聖獣“になる意思はあったもんね、呼び出しの合図があったときは僕の作った結界の中にいたから戻って来れなかったはずだし・・・うん、それに、僕1人で悩んでも仕方ないもんね!父様達に相談してみよう!ありがとう、夜月!」


 と、言うことで、夜月の提案を取り入れ、一旦、王城に現状報告と、仔共達との戦闘を避けるための相談をしに戻ることにした。その際にフェンリルにもあってもらう事を提案して、後で王城に呼んでも良いかと聞くとフェンリルは快く提案を了承してくれた。その時、棲家に戻って来ていた他の仔共達を紹介されて思う存分撫で回した後、僕達は王城に転移して行き、父様達に相談するのだった・・・・


「・・・・と、言う事なんですが、父様、僕はフェンリルの仔共達を止めに前線に行きたいんです。戦闘には参加しないので、どうか行くのを許可していただけませんか?」


 と、まずは父様達に前線へ赴く許可取りから初めてみた僕・・・・


母様「アトリー・・・」


父様「・・・“聖獣・フェンリル“様の覚悟はわかったし、アトリーのしたい事もわかった、でもね、アトリー、私達は君が戦争という悲惨な現場を見て欲しくないんだよ。いくらアトリーが賢く強くても、現実の戦争の戦闘と言うものは魔物と相対する戦いとは全く別物なんだ、人間同士の戦いとはひどく醜く、悲惨で虚しいものなんだよ?そんな、現場を子供のアトリーに見て欲しくはないんだ…、それがただ私達、親の我儘だとしてもね?」


「父様・・・」


 思った以上に父様の意思は固く、僕に戦争の悲惨さを見せたくない親心に、僕はどうやっても説得に応じてくれ無さそうだと思っていると・・・


夜月:『ふむ、お父上の言い分は分かった。では、戦いが“始まる前“に一度アトリーをマルキシオス領にある砦に連れて行ってはどうだ?』


「夜月?」


父様「どう言う事です?ヤヅキ様?」


夜月:『お父上はアトリーに人間同士の戦いを見せたくないのだろう?ならば、その戦いが始まる前に向こうの陣営が見渡せる砦の上に行かせて、“レッサーフェンリル“達を探させてはどうかと言ってるのだ。これなら父上達の言う人間同士の戦いは見なくて済むし、アトリーも仔共達を探す事ができる。それにその時、仔供達が見つからなければアトリーはそこで諦めるしかない。「!?」そうすれば互いの願いが叶うのではないか?』


 と、夜月が突然そんな提案をし出した。僕は何も聞いてなかったので驚いていると、


父様「!、・・・それは確かに、最初は戦いは見なくて済むかもしれませんが、アトリーが砦の上にいる間に戦いが始まったらどうするんです?向こうはアトリーを目当てに紛争を仕掛けて来たんですよ?・・・」


夜月:『それは心配ない、むしろ、“アトリーが姿を現せば向こうは動きが鈍くなる作“がある、その間にアトリーは仔共達を探し出せばいいだけだ』


父様「“相手の動きを鈍くする作戦“?・・・」


「でも、夜月、僕が砦の上に上がって姿を見せただけで本当に“向こうの動きが鈍くなる作戦“ってあるの?それに、砦の上から仔共達を探して見つけることが出来たとしても、説得するには近くに行かなきゃダメじゃない?」


 夜月の言う“作戦“はどう言うものか分からないが、その間に探索系のスキルを使って仔共達を見つけれたとしても、直接会いに行って説得できないと意味はないのではないか?と聞くと、


夜月:『大丈夫だ。“レッサーフェンリル“達ならアトリーの姿を見れば一直線にアトリーの元にやってくる。最悪、こちらに来なかったとしてもアトリーなら結界で仔共達を捕まえることができるだろう?』


「ん?あ!、確かに・・・仔共達はまだ魔物の部類に入るだもんね。僕の動物や魔物達に好かれる体質を利用すれば説得しなくても、僕の姿を見ただけで向こうは寄ってくるかも・・・と言うか、あの仔は寄ってきたね・・・」


 と、チラッと見た方向にいるのは母親のフェンリルに叱られている、一頭の“レッサーフェンリル“、その仔は軍事施設の森で神官長のオジさんと一緒にいた“レッサーフェンリル“で、森で僕の姿を見た時にすぐに僕に懐いてきた仔だった。今は、サフィアスおじ様に紹介するために連れて来ていた“フェンリル“に、捕まえていたあの仔を事情説明したのち引き渡したら、事情を聞いた“フェンリル“に迂闊な行動をしたと叱られて、耳をシュンと下に下げて粛々とお説教を聞いている最中だ。

 そんな様子を苦笑い気味に見た僕は少しあの仔とあった時の事を思い出していた。最初、あの仔との出会い方が多少複雑だったので警戒されていたが、それも一瞬のことで、すぐに僕に撫でて欲しそうにしていたので、呼んだらすぐに近寄って懐いて甘えてきたことから、いくら知性が高い“聖獣・フェンリル“の仔共とは言え、魔物は魔物、僕に撫でてほしいと言う本能には勝てなかったのだろうと推測できた。なので説得や無理やり捕縛しなくても問題が解決すると夜月は言いたかったらしい・・・


夜月:『あぁ、それにな、この提案はお父上達、いや、国にとっても有益な提案なのだぞ?』


「国に?」


父様「私達にも有益な提案ですか?」


夜月:『そうだ、アトリーが仔共達を惹きつけてその場を離れれば、向こうは“レッサーフェンリル“と言う大きな戦力を失うことになり、それを従わせる事ができるアトリーと言う“強大な力を持つ者“を目にすれば、本能的に勝てないと悟れたものは自ら戦線を降りるだろう。向こうは“アトリーがどう言う存在か、ちゃんと理解していない“、それを理解させれば向こうの戦力はガタ落ちし、こちらは殆ど被害は出さずに紛争に勝利する事も可能だ』


「「「「「!!」」」」」


父様「・・・ヤヅキ様はアトリーに“さりげなく凄さを知らしめ“ながら、向こうの最大戦力となる“レッサーフェンリル“を堂々と奪い、戦力を削ることで、向こうの兵達を精神的に追い詰め、敗戦濃厚と思わせて戦意を低下させこちらの被害を最小限、いや被害を出さない戦いにすると言うことですか?」


サフィアスおじ様「そうか、向こうは邪神教の言葉を聞いただけで、アトリーを手に入れようとしているが、“本当の意味でアトリーがどう言う存在か理解していない“・・・確かに、上手く行けばそれも可能か・・・そうなると、“アトリーの凄さを見せつける“方法が重要か・・・」


「ん???」(“僕の凄さ“って、どう言うこと???(・・?))


 夜月の言う戦力の低下のために“レッサーフェンリル“を引き抜くのは分かるが、“僕の凄さを見せつける?“と言う点においては理解がいかない僕、大人達は何かちゃんと理解できているようだが、当の本人が意味が分からず首を傾げるばかりだった・・・・


 そして、翌日・・・・・


「こんなので、本当にいいのかなぁ?大丈夫?ちゃんと役に立てるの?」


 いい風が吹く大きな川沿いの遥か上空でこうボヤく僕がいる・・・・
















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