92話 まずは対策・・・
ジュールが僕の膝の上でふて寝し始めた時、大人達は僕に何やら聞きたい事があるような視線を向けて来たので、先程までしていたやり取りを話した、すると・・・・
「「「「「えっ!?」」」」」
サフィアスおじ様「ア、アトリー、それは本当なのか?その、“聖獣“はお役目が終わるまで“神“にはなれないと言うのは・・・」
「?えぇ、本当の事みたいですよ?それがどうしましたか?・・・あ、・・・」
サフィアスおじ様が珍しく僕に話の内容の確認して来たので不思議に思って少し考えてみると、この話をした時大人達が驚きの表情をした意味がすぐにわかった。
「えっと、もしかして、“マルゴー獣人国“のことでしょうか?」
サフィアスおじ様「あぁ、あの国の“神“の事だ・・・」
(あー、そうなると、今の話は公にできないかも??( ̄▽ ̄))
“マルゴー獣人国“とは、僕達の国がある“ディアマンディ大陸“とは別の小さな大陸である“トパシオ大陸“を統治している国で、その大陸の住民は獣人で構成されている国だ。今の話の流れで、この国の何が問題になったかと言うと、この国、の成り立ちが“聖獣“が“神“になりその子孫が国を起こし、今もその“神“の血筋が王族として敬われていると言うことだ。・・・要は、その建国の祖となる“聖獣“が現在もお役目についている最中なら、もし、この話を“ウェルセメンテ王国“から公にすれば、“マルゴー獣人国“の成り立ちが根幹から覆される事になり、その話を公にした我が国に“マルゴー獣人国“からどんな抗議が来るかわからない、と言うことだ。
(絶対、怒る、自分達の先祖で、敬うべき“神“を汚されたとして激怒するだろうなぁ、それこそ発言を撤回しないと、戦争を仕掛けて来そうだ・・・・(*´ー`*)面倒ごとが増えた・・・・)
天華『ですねぇ。あ、でも、以前“ショウスデット獣王国“の王子と揉めた時に、「“聖獣“と“獣人“はなんの関係性はない」的な話を暴露しませんでしたっけ?』
(あ・・・そう言えば・・・言った、いや、言ってた、ジュールが、〔お前達のように“聖獣“全てが獣人の祖先などと勘違いしている輩に、“神々“が提示した任務を選択する権限を持たせた覚えなどない!その烏滸がましい思考の根源たる教えを即刻改よ!〕だったかな?( ・∇・))
天華『えぇ、そう言ってましたね・・・」
(てか、この一文だけは確か、ティーナちゃんからの伝言だったんだよね?ジュール(*´Д`*))
“聖獣“の話の一件で更なる国際紛争が巻き起こるのではないかと頭を悩ましていると、天華に数年前のドゥーカ公爵領のダンジョン内で揉めた件を指摘され、当時のやり取りをしたのを思い出した僕は、ジュールにその時の会話の中にあった一文が“主神“であるティーナちゃんのものかと念の為、確認を取った。
ジュール『うん!そうだよ!それと、〔現時点でお役目が終わっている“聖獣“はいないし、“聖獣“から“神“になったものは神界にいない〕って、あと、〔過去にお役目の任期が終わった“白蛇の聖獣“が“神“になりそうになったけど、調子に乗って“邪神“になったから討伐した事はある〕って!』
(・・・そ、そっかぁ・・・今も僕達の様子を見るんだね・・・ってことは、“マルゴー獣人国“の王族の祖先は最初から普通の“獣人“だったってことでOK?(*´ー`*))
ジュール『うん!てかね、“聖獣“と“人間“との間には子供はできないんだって、“聖獣“が子孫を残せるのは自分と同じ種族の下位互換?の魔物とだけ、だから、“聖獣“が“獣人“の祖先説は全て“獣人“の願望?妄想?らしいよ!あと、“神様“になったとしても“人間“と“聖獣からなった神様“では根本的な存在の定義自体が異なる?から、どっちみち子供を作るのは無理だって!!』
ジュールは先程までとは打って変わって、ふて寝していたのに、すぐに起きて元気に僕の質問に答えてくれる。どうやら、いつも僕の疑問に答えるのは天華や夜月ばかりだったからか、僕の疑問に自分が答えることができて嬉しいのか、僕の膝の上にちょこんっとお座りして尻尾を振っている。
((ギュン可愛いかよっ!!(о´∀`о)))
そんな可愛い様子のジュールに胸が締め付けられる思いだが、その後に続けて話した言葉に、僕は疑問に答えてくれたジュールを撫で回しながら、今知った新事実は、さっきの「“聖獣“はお役目の最中は“神“になり得ない」と言った話の件と合わせて、かなり重大な事実を知って少しの間、現実逃避気味に視線を遠くに投げたのだった・・・
(・・・・・そ、そうかぁ、無理かぁ・・・これは紛争確定かぁ?・・・ん、しかし、そうなると、“ショウスデット獣王国“の王子との一件、“マルゴー獣人国“の方にはどう言うふうに伝わってるのかな?・・・あれ?むしろ伝わってるのか?これ?学園に“マルゴー獣人国“の王族もいたはずだよね?でも、これまで一度も接触された記憶がないな?(・・?))
天華『伝わってて、逆にこないのかも知れませんよ?』
(ん?不敬な噂を流す人族とは関わり合いになりたくないとか?(・Д・))
夜月『いや、アトリーに敵意を持って近づこうとしたが、近づけなくなったんじゃないか?』
(あ!そっち!( ・∇・)確かに、僕に敵意を持つと僕が認識されなくなっちゃうんだっけ?あれ?でも、それって僕が会いたくない人を設定しなきゃ意味なかったんじゃ・・・)
夜月『・・・その設定の仕様設定を神々が変更したみたいだな・・・』
(おぅ・・・いつの間に・・・・(*´ー`*)設定の仕様を変更するとは、これまたどんな設定になっていることやら・・・)
天華『えーっと、そうですね。神々のお話ではアトリーのしたい事の妨げにならないようになったようですね。学園では最低限の対人関係が保てればいいようになっているそうなので、他のクラスにいる“マルゴー獣人国の王子“は敵意も高かったので、例の元聖女の時のように認識阻害を最大限にして接触できないようになったそうです。それと、同じようにアトリーに敵意を持つ冒険者達は合同依頼などの場では、依頼の仕事に支障が出ないように認識阻害を受けないような仕様になったみたいですね。それ以外では王子と同じように接触も不可能になっているとのことです・・・』
今回の件だけではなく、また別の国との問題も浮上したなか、その次の揉め事になるであろう国家の王族である“マルゴー獣人国の王子“とは、相手が学園に留学してきたと聞いた時から、今まで一度も接触していない事に気づき不思議に思っていると、最初は同じように不思議に思って、さまざまな視点から意見を言ってくれていた天華や夜月から、その不思議現象を起こした原因を説明された。そして、どうやら、その原因は“加護の結界“がいつの間にか更なる進化をしていたことだったようだ。
(ぅおっふ(・Д・)・・・、やばい、最近変な人に接触する機会が少ないと思ってたらそんな事に・・・確かに僕に敵意があるなってわかってる人に僕自身がその人に用事がない以外は出会わなかったな( ̄Д ̄)・・・、まぁ、便利そうだからそのままでいっか!٩( 'ω' )و)
夜月『考えるのを放棄したな・・・』ボソッ・・・
不思議現象の原因が神様だった事はもうどうしようも無いので、気分を改めて新しい“加護結界“の機能を受け入れていると、ジト目の夜月にボソッとそう突っ込まれた。
(いやいや、有用性はちゃんと理解しましたよ?( ̄▽ ̄)、てか、そうなると、例の“聖獣“の話を知っても、王国側に何か抗議などをして来てないみたいだから、“マルゴー獣人国“は“僕を含むウェルセメンテ王国“に敵意はなく、僕個人に敵意があるみたいだね。それなら、他の人の迷惑になってないから、現時点では放置でもいいか?(*´-`)あ、でも、この話は“マルゴー獣人国の王族“、と言うか、“獣人国自体“にも“聖獣“の件が伝わってるかどうかで対応が変わってくるか(*´ー`*)?・・・)
夜月のツッコミに少し慌てて反論しつつ、現状の相手の行動から察するに、一応、国際的な争いにはなりそうには無かったが、それでも、なんの確認も取れていない状況では、結局、向こうの出方次第で臨機応変の対応するしかないと言った結論しか出なかった・・・
(まぁ、今、向こうから何か抗議や圧力などをかけられている訳じゃないから、“マルゴー獣人国“の方は一旦置いとこう、それより、今は攻めてくるであろう帝国の公爵家への対応策を考えなきゃ!( ̄Д ̄)ノ)
その後すぐ、急に黙った僕を心配した大人達の声掛けで気付いた僕は、大人達にも今のやり取りも追加で報告、今の所“マルゴー獣人国“から問い合わせや僕に対しての抗議などが入ってないなら、放置でいいのでは?と、と言う意見も交え、今は帝国の公爵家が攻め込んでくる事への対策を優先しましょうと提案した。
サフィアスおじ様「・・・そうか、確かにあちらから何の書状も来てないな、一応、向こうの出かたを警戒はしておくが、今は“ダンシャンスー公爵家“の件だな、さっき、“ライヒスル帝国の皇帝“に今回の件で緊急連絡を出したので、その返答が返ってくるまで、交渉や防衛などを含んだ対策の話を詰めよう。まず、交渉の方だが、何か良い案はあるか?」
宰相さん「交渉の方ですが・・・・・・・・」
と、言う感じで始まった大人達の会議は国同士の対応となるので、特に子供の僕には国同士の交渉ごとなどはわからない事だらけなので、僕は完全にノータッチの方向で、ただただ、話し合われているのをお菓子を食べながら聞いているだけになっていると、いつの間にか“マルキシオス領“の防衛に関しての話になった時に、以前僕が開発した“イヤーカフス型通信機・テレフォン“の最新型、“モニター型通信機・TVテレフォン“が起動していて、32インチ程のテレビモニターには“マルキシオス領“にいるはずの“母様のお兄さん、モニスおじ様“が写っており、現在の帝国側の税関の様子などを報告していた。
モニスおじ様[「現在、帝国側の兵士などに不審な動きは見られませんが、目的が不明の冒険者達の入国申請が相次いでいます。今の所、明確な入国目的がない者には入国の許可は出してないので入国はしていないのですが、入国できなかった冒険者達が帝国側の税関近くの街に止まっていると報告が入ってきています。私の予想ではその冒険者達が“ダンシャンスー公爵家“の斥候、または内部から騒ぎを起こすための潜入兵だと思っております。同時に交易港の方でも帝国からの商船が数隻入港の許可を求めてきています。ですが、こちらは入港手続きが事前に申請されていなかったので、事前申請していた他国の船を優先して入港許可を出しているので、領地内には入ってきてないです」]
(あれ?もしかして、向こうの思惑はことごとく失敗してないか?( ̄▽ ̄)・・・てか、あからさまに怪しい冒険者を税関で入国させることってないよね?それに入港手続きの事前申請してないって、いきなり来たのか?帝国の商船・・・普通に考えたら計画を立てた時に支障が出ないように入港申請って事前にしておくよね?何でしてないの?馬鹿なの?(・・?))
天華『・・・下調べもせずに計画を実行したか、下調べをしていたとしても、帝国の商船を入港で待たせると言ったことはしないだろうって、傲慢な考えから強行したか。それにこの世界の中でこの国の入国審査などの手続きは世界一厳しいですからね。他の国のほとんどが同じレベルで入国審査が緩いですから、いくら審査が厳しと言っても、少々強引に行けば入国できるとでも思ってたんじゃないですか?それか賄賂でも渡せばいけるとか思ってそうです。・・・どちらにしても、こちらの税関のセキュリティを甘く見ていたって事でしょうね・・・』
(あー、そんな感じするよねぇ、あの公爵家の人達って・・・)
と、相手の傲慢さが透けて見えた瞬間だった・・・・