91話 野外実習中止、そして事情聴取・・・
はい!どうも!僕です!現在、何故か、王城で、事情聴取されてます!( ^∀^)☆彡
(まぁ、しょうがないっちゃしょうがない状況なんだよねぇ、だって、国際紛争の危機だもんねぇ・・・(*´-`)でも、マジ、面でぇなぁ・・・)
と思いながらも、“影“の知らせを受けて、軍の訓練施設の森まで駆け付けてくれた父様、母様と一緒に、同じ様に学園の先生方から事件の話を聞いて衛兵隊を率いて駆け付けてくれたクオツお兄様の提案で王城までやって来ていた。
(あ、ついでに言うと、野外実習はもちろん中止されて、生徒達は野外実習当日に雨が降った時の代打案だった学園内で実技実習となったらしいよ( ^∀^))
そして今は、王城内にある応接室で、国王のサフィアスおじ様を筆頭に王族男性陣、全員と宰相、さらに補佐官のシベラスおじ様やその他の王族の側近達を交え、美味しいお菓子とお茶をいただきながら、今回の事情聴取、と言う名の説明会をしている。
サフィアスおじ様「しかし、まだ諦めていなかったのか・・・」
そう、ため息混じりに話すサフィアスおじ様の悩みの種は、例の“酒乱ご令嬢“だけではなかった。まず、今回の騒動を起こした者達の裏には黒幕が存在しており、その黒幕は前々から我が国の王族や公爵家にちょっかいをかけて来ている人物達だった、その人達が、今回の件を利用し、我が国に言い掛かりをつけて、自分達の目的を果たそうとしていることが判明したのでため息の一つも出るという状況だ。
また、その黒幕となる人物達というのが、“酒乱ご令嬢、レイティア・フォン・ダンシャンスー“の父親、“クピドゥス・フォン・ダンシャンスー、現公爵”と、祖父、“アンビシオン・フォン・ダンシャンスー、前公爵“だった・・・
このダンシャンスー公爵家、親子三代は利己的で目的はバラバラ、ご令嬢は単純で深く考えずに自分のしたい事をする自己中女、今回の目的は逆恨みからの復讐、“現公爵“は自分の目的を達成させることを優先しつつも公爵家の利益も追求する強欲な人で、その目的も娘を使って、この国の王族の血を取り入れ、公爵家を繁栄させること、その上で、国際的な立場の強化を画策していた。そして最後に“前公爵“は以前から、自領内で古くから存在している“神狼教“の教義に心酔し、熱心に信仰している教団の掲げている目標のために、ありとあらゆる手段を用いて来た人で、今回の騒動の発端は、その教団の掲げている目標が現実するかもしれない、と言う情報が入って来たことと、他の2人の目的が合致したことで起こったことだった。
そして、その教団の目標と言うものが…、自分達が“神狼“と崇め祀っている、“聖獣のフェンリル“を本当の神に押し上げること“・・・
(しつこいよねぇ、それに今回のあの騒動だけで一石三鳥も狙ってたんなんてね・・・ガメツイと言うか、厚かましいと言うか、図々しいと言うか(*´ー`*)・・・)
天華『アトリー、全部同じ意味ですよ』
(分かってるよ、でも、それほど欲深いってことさ( ̄Д ̄))
天華『まぁ、確かに・・・』
あの親子3人は今回の騒動で、それぞれ自分の欲を満たす画策をしていた。ご令嬢は公衆の面前で恥をかいたことへの復讐、その父親の“現公爵“はその娘が起こした事件が成功し、学園の生徒、特に留学生である、他国の王族に被害が出れば、それを国際的に非難し、外交的圧力をかけると脅し、そうされたくないなら王家の血をひく男性と娘を結婚させろと強要させるつもりだった。
そして、もし、失敗したとしても、以前、結婚式で娘を辱めたことで、娘が自暴自棄になり今回の事件を起こしただけ、と言い訳し、娘を返してほしいと要求する、だが、事件を起こした犯人を国が引き渡す事は絶対にない。“現公爵“もその要求に我が国が応える事はないと分かった上で、傷心の娘を犯罪者として収監しこれ以上追い詰めるなら、こちらも考えがあると脅すつもりらしい。
王国側がそんな脅しに折れないと確信していて、“現公爵“はその先の計画があった。具体的には娘は事件現場に偶然いただけで、王国が無実の娘に冤罪をかけて引き渡し要求に応じなかったと周辺国にプロパガンダとして吹聴し、さらには王国がダンシャンスー公爵家を侮辱し、軽んじて名誉と誇りを汚したと言う理由で、帝国の貴族法に反さないようにダンシャンスー公爵家単独の報復戦争を仕掛けるらしい・・・
・・・だが、そんな国際的な紛争を帝国の王族主導ではなく、その臣下である帝国貴族の“公爵家“が単独で起こしていいものかと思われるだろうが、帝国の貴族法には貴族の名誉と誇りを守るための争いは多少の条件はあるが法的には許されているらしい。
この法は通常、国内の帝国貴族達の間で適応されていることが多いが、成り立ちが複数の国を統一してできた帝国の性質上、他国相手でも一応適応されている、それは、“自分の名誉や誇りを傷つけられ、失ったのなら、自分の力で取り戻せ“と言った方針があるので、今回の場合は“帝国自体は関与する事はないが、帝国貴族が単独で挑むのは止めない“、と言う事になるらしい。
そんな法がある帝国といえど、長年国内外で争い続けた帝国も最近やっと安定して来たこのご時世で、そう言うオラついた風潮も薄れているので、流石に他の帝国貴族から待ったの声が出るのが普通だと思われるだろう、だが、王国と帝国は長年に渡り、争う事なく平和的な国交を築いていた仲でも、昨今、我が国の繁栄ぶりが帝国の国力を上回っていることに焦りを覚えていた帝国貴族達は、今回の件で待ったをかける者はないと、“現公爵“は確信している様だった。
むしろ、大々的に王国に喧嘩が売れるのなら協力して、上手くいくなら利益を共有したいと思う帝国貴族は多いと予想していた。
そして、紛争を起こして“ダンシャンスー公爵家“にどんな利益があるかというと、帝国の国境と面している領地が“マルキシオス侯爵家“で、そこには最近新たに発見された“ダンジョン“がある事、ここを抑える事ができれば膨大な利益が見込め、王国の大規模な流通を司る、港や交易所はかなり魅力的らしい、他にも地理的にも有益な場所であると判断したようだ。だが、ここまでは“現公爵“の求める表向きの目的で利益である。そして、それとは別の彼らがマルキシオス領を攻める最大の目的は“デューキス公爵家“との縁戚関係がある事、それが真の目的を達成するための前段階であると、“ダンシャンスー公爵家“は思っている。と言うか、それが今回の件を起こした最大の狙いだったようだ。
向こうの計画では、自分達がマルキシオス領に攻め入った場合、デューキス公爵家は確実にマルキシオス侯爵家のために助力するため駆けつけると予想、その中に僕がいれば彼らの狙い通り、いなくても、デューキス家やマルキシオス家の誰かを捕まえて、僕を呼び出す。そして、やって来た僕に人質を返して欲しければ、“現人神“になる条件を教えろと言うつもりらしい。それが“前公爵“の最大の目的、さらに、“現公爵“はその話が終わった後に王国に対して、“マルキシオス領を返して欲しければ、王家の血筋を誰でもいいからダンシャンスー公爵家の子供との結婚させろ“と要求するつもりのようだ。
(まぁ、そんな訳で、ご令嬢の計画が失敗に終わった今、国際紛争が確定されているので、その対策を王城で話し合っているところなんだよねぇ・・・そして、あの宗教団体が関わった経緯がねぇ・・・・(*´ー`*)・・・)
父様「それに“邪神教“も手段を選ばなくなってます・・・」
父様が苛立ちを滲ませるほどの理由があった。その理由は神官服のおじさんから吸い出した情報で判明した、“神狼教“と“邪神教・マルモーヴェ教“の利害関係だった。
(僕が1歳になった頃、庭で母様と本を読んでまったりしていた時に、襲ってきた狼の使役方法を教えたのがこの“神狼教“の神官だったのが判明したんだよなぁ( ̄▽ ̄)、と言うことは、“神狼教“と“邪神教“はかなり前から交流があったって事、今までは互いに深く自分達の宗教の理念などに干渉はしていなかった様だが、今回の魔道具の件に関しては“神狼教“が奪ったとかではなく、供与、もしくは取引などで手に入れた物となるんだよね、と、言うか邪神教の方から勧められたみたい。しかも、“神狼教“に僕が“現人神“になった事を教えて、僕を狙う様に仕向けたのも“邪神教“だった(*´ー`*)
“神狼教“の悲願である“聖獣・フェンリル“を神にすると言う目標を持つ彼らは、僕から“神に至る方法“を聞き出すためだけに今回のような計画に乗った。
要は“邪神教“は“神狼教“の悲願を分かっていてわざと僕の情報をリークし、その悲願が成就するかもしれないとほのめかし“前公爵“を含む信徒達を煽って、あの世界の摂理を曲げるような危険な魔道具を“神狼教“に渡し、僕を襲わせ、その上で、運よく捕まえることができて、用済みになったら僕を引き渡して欲しいと言って来たそうだ。
と言うわけで“邪神教“の奴らに父様はかなり怒り浸透なんだよなぁ( ̄Д ̄))
天華『それは怒るのも同然ではないですか?アトリーが1歳の頃から狙ってきてる相手が、さらなる厄介ごとを持って来たのですから』
(まぁねぇ、それはそうなんだけど、そもそも、その“神狼教“ってかなり前から存在するのに、なんでいまだに“聖獣のフェンリル“は“神格“を得てないの?“聖獣“って神様の次?ぐらいに神聖視されてる存在でしょう?信者もかなりの数椅子はずだよね?なのになんでまだ“聖獣“のままなのかなっ?って思ったんだけど(*´Д`*))
ジュール『それは、“聖獣“だから無理なんだよ』
今まで得た情報を精査した結果を思い起こし、父様の怒りの原因を考察していると、天華に父様が怒るのも当たり前だと言われ、僕もそれは同感なのだが、それ以上に気になっていた疑問を言うと、今度はジュールがそっけない感じでそう答えた。
(ん?“聖獣“だから無理ってどゆこと?(・・?)??)
ジュール『“聖獣“は元々神様から与えられた役目があるから、それが終わらない限りその役目から外れる事はできないんだよ』
(ほー、そう言えばそう言うお役目があるのは知ってたけど、そのお役目中は昇進がないみたいな事なのかな?(・Д・))
ジュール『まぁ、そんな感じ、あと、“聖獣“は役目によるけど寿命がきて終わりって事にはならなくて、その役目は“聖獣“の子供が後を継ぐ事になって、本当の役目の終わりは役目を与えた神様から任務終了を告げられないと、本当の終わりにはならないんだよ。だから、それまでいくら信者がいて、神のように崇められても、神様にはなれないって事』
(へぇ~、お役目は継承式なんだねぇ、あ、それで教団の神官長が“聖獣フェンリル“の子供を世話してたりするんだね?でも、“聖獣フェンリル“の子供なのにあの仔の種族は“レッサーフェンリル“になってたんだろう?後継者なんだよね?(・・?))
ジュール『あー、それは、“聖獣フェンリル“の子供がアイツだけじゃないんだよ、アイツに他の兄弟がたくさんいて、そのたくさんの兄弟の中で最も“次代の聖獣“にふさわしい奴がその時の“聖獣“に選ばれて、先代の“聖獣“が亡くなると同時に神様から“次代の聖獣“として認められたら、正式に“聖獣“になったら種族がそれに合わせるように変わるんだよ』
(ほう、それは珍しい仕組みだね?そうなるとお役目を忠実に遂行することができる仔じゃないと選ばれないんだね?それだと、“次代の聖獣“に選ばれなかった他の仔達はどうなるんだろう?(*´ー`*))
ジュール『さぁ?“聖獣“に選ばれた仔のお手伝いするか、外に出て行くかするんじゃない?』
(ふーん、そんなものか・・・・ジュールさぁ、さっきからやたらそっけないね?どうしたの?(*´Д`*))
さっきから“聖獣“の役目の説明してくれているジュールだが、どこかそっけなさを端々から感じられるので、何かあったのかと思い聞いてみると、
ジュール『うー、さっき“レッサーフェンリル“のアイツと話した時ね、今した話をアイツは全く知らなくて、それなのに自分が“聖獣“に選ばれて、神様になった時は私を自分のお嫁さんにしてやる、なんて偉そうに言って来たから、さっきの話をして、お前なんか一生、神様になれないし、私はお前なんかのお嫁さんなんてなりたくもないって言ってやったの!』 ふんっ!
と、ぷりぷり怒ったジュールは不機嫌そうにそっぽを向くので、宥めるように撫でながらも、その仕草が可愛くて仕方ない僕はニヤケしまっていた。
(そっかぁ、あの仔はだいぶ、おませさんだったみたいだねぇ、しかし、“聖獣“になるための基本的な事は教わってなかったのかな?それで神様になれないって聞いてかなり落ち込んでたみたいだもんねぇ・・・( ̄▽ ̄))
ジュール『私はそれも気に入らないんだよ!大袈裟に落ち込んで、アトリーから慰めて貰ってたの!撫でてもらいたいからってさ!!わざとらしいんだよ!アイツ!!』「ガウガウッ!!」
(っ、・・・まぁまぁ、落ち着いて、ジュール、皆んなが驚いてる。それに、あまり怒ると可愛いジュールのお顔が怖くなっちゃうよ?( ^∀^))
さらに気に食わない事が僕に慰めて貰ってる事だと言うジュールに、僕はもう、この仔はどれだけ僕のことが好きなんだと思って、胸のキュンキュンが止まらない、だが、ジュールが急に吠えたことで大人達がびっくりしているので、先程よりさらに強くジュールを撫でて宥めた。それでも完全にご機嫌が治らなかったジュールは、子犬サイズになって僕の膝の上で撫でられながらふて寝したのだった・・・・・