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間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜  作者: 舞桜
第4章 少年期〜青年期 学園3学年編
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84話 野外実習5 大人としての矜持 Fクラス担任教師 ザック・ウチーチリ視点


(・・・彼女は、感知系のスキルのレベルが僕より高かったはず・・・副学園長達が言ってる問題の何かに反応してるのか?もしかして、何か危険なものでもあったのか?・・・いや、まさね、それなら今悠長に話し合いなんて設けるわけないよな・・・)


 と、少し委員長の異変に違和感を持ちつつ、集合場所となったAクラスの長馬車の方に向かって歩き出した・・・


 僕達が向かって歩いていると、前方にAクラスの長馬車に向かって、各クラスの担任教師と、その同じ馬車に乗ってきていた専門教員達が歩いて行ってるのに気づいた。その中に自分と同じ平民出身の先生を見つけて、少し歩く速度を上げてその教員の横に並んで声をかけた。


「リーラール先生」


リーラール先生「!、ウチーチリ先生、先生は副学園長先生から詳細はお聞きになられましたか?」


「いいえ、詳細は全員が集まってからだと言われました。ですが、外の空気?気配の事だと言ってました」


リーラール先生「やはり、同じ説明ですか、この気配、私にも何かは分からないですけど、凄く嫌な予感がしませんか?」


「嫌な予感ですか…、僕は魔力が少ないので気配とかよく分からないんですよね…ただ、感知系にたけた生徒が不安がってましたね」


リーラール先生「そうですか、うちのクラスの生徒でも数人そんな子がいまして。かく言う私も先程からこの場の空気が異常に張り詰めているのを感じているんですよ」


「先生がそこまで言うほどですか・・・それは、かなり危ないですね・・・・」


 リーラール先生との会話の話題はすぐに今起きている現象についてになって、自分には違和感ぐらいしか感じられない異変をリーラール先生は強く感じているようだった。リーラール先生の専門分野が魔力操作や魔力感知についての座学と実技なので、その事を知っている僕はすぐにその話を信じ、警戒を強めた。


(僕には違和感程度しか感じないが、リーラール先生は平民出身の教員達の中で1番魔力が多くて、魔力や感知系のスキルにも明るいからな、これは相当危ない状況になっているな、周囲の様子は静かだが、何が起こるか分からないから周辺警戒だけは怠らないようにしないと・・・)


 そう思いつつ、周囲を見回し警戒して歩いていると、すぐに集合場所した・・・


(・・・あ、あの子達は・・・)


 ついてすぐに、気づいたのは先程、長場車内でメーチ先生が言っていたように、Aクラスの長馬車の入り口付近で生徒2人が立っていたのが見えた。だがよく見ると、学園内で1番の有名人である貴族子息の“アメトリン・ノブル・デューキス君“と、その幼馴染の“ソルドア・ノブル・ソンブラ君“の2人と聖獣様の御三方が、真剣な表情で僕達が集まるのを待っていた。


「あの方々が何故あんな所に?」


メーチ先生「そりゃ、あの方々が1番今の異変を感じ取ってるからだろう」


 不思議に思った僕の呟きに真後ろを歩いていたメーチ先生が理由を簡潔に答えてくれた。


「・・・魔力量が多いからですか?」


リーラール先生「それもあるだろうけど、今回は多分、デューキス君の保有しているスキルが関係しているでしょうね。彼、“鑑定スキル“と“魔力視スキル“を持っているそうよ。それに聖獣様方もすでにお気づきなっているでしょうから、聖獣様方からデューキス君に伝わった可能性もあるでしょうね。どちらにしろ彼にしか分からないことだけは確かね・・・」


 メーチ先生が彼らがあそこにいる理由を教えてくれたので、僕はすぐに魔力量の違いで、異変の察知が早かったのかと聞くと、次は隣を歩いているリーラール先生が補足として他の理由を話してくれた。その理由は、学園内でとても有名な彼の噂は数多くある中で、1番信憑性が高いとされている話の一つになっているのが彼の保有するスキルに関するものだった。この噂話の真実を彼には確認は取ってないが、彼がする行動から見て、確実と言われているものだ。それに、聖獣様方は異変に気づいたとしても伝えられる相手が彼以外いないらしいので、どちらにしても異変にいち早く気づけるのは彼以外にいないだろうと言うことらしい。


「そう言えばそんな事を聞いた事がありますね。希少なスキルと聖獣様方からの助言もあったらか異変にすぐに気づいたんでしょうか?」


メーチ先生「多分、それだけじゃねぇと思うけどな、聖獣様方の助言がなかったとしても、あの方はすぐに気づいたと思うぞ?なんせ、あの方は“神々の愛し子“だからな、俺らじゃ“想像もつかない能力やスキル“も持ってそうだ」


 そう言ってまだ12歳の子供に空恐ろしいと言った表情を向けて肩をすくめたメーチ先生。


「・・・“神々の愛し子“・・・“想像もつかない能力やスキル“・・・僕には雲の上のような話ですね」


メーチ先生「それは俺にもだよ…」


「貴族のメーチ先生でもですか?」


メーチ先生「そうだよ。俺は男爵家、それも成り上がりだぞ?そんな平民と変わらない生活している下っ端貴族の俺と、王族の血を引いている公爵家の三男坊、その上に複数の“神々の加護“を受け溺愛されている、それこそ王族より雲の上、神々に近いと言われている規格外のあの方を、“貴族“という言葉の括りでひとまとめにするんじゃない、格が違い過ぎて会話すらした事ねぇわ」


(・・・話には聞いていたけど、貴族内でも身分の違いから会話すらできないなんて、その上、“神々の加護“の件でも国の頂点の王族よりも身分が高いって、僕にはもうその凄さの意味すら理解できないな・・・・)


 僕達平民にしてみれば、貴族は貴族、と言った認識でしかないので、メーチ先生の言う貴族位の違いでの身分の差や、格の違い的なものの話を聞いて、僕だけじゃなく、隣にいるリーラール先生もいまいちピンと来てない様子だった。


「そこまでですか・・・」


メーチ先生「そうだぞ?あの方は魔力量や魔法の技量だけじゃなくて、武術方面の技量も相当あるからな、授業で俺が教えることなんて何もないんだ、だから会話する機会さえないんだよっ」


 そう言って、少し興奮気味に力説するメーチ先生、そんな先生に僕はちょっと引きつつ言葉を返した。


「す、凄いですね。そんなに優秀な生徒とは知りませんでした。僕は同じ学年のFクラスの担任ですが、Dクラスから下の魔法座学基礎と社会学の授業が担当ですから、成績優秀な彼のAクラスの社会学の担当にすらなれない僕が、実際に彼に間近に会ったり実力を見る機会があったのは、数年前の公開授業ぐらいでしかなかったんですけど、それも、その時は来賓が多くて対応で色々と忙しかったですし、あの騒動もあってまともに見た事もないです。でも、メーチ先生がそこまで言うほどの実力者で、今日のその異変の事も何か分かっているかもしれないから、あそこに彼がいるって事ですよね?」


(・・・彼の実力を疑うわけじゃないんだけど、それでも、彼がこの先生達の話し合いの場にいたとして、先生達が感じている異変をどうこうできるとは思えないんだけど・・・)


 こんな感じで、彼の事をよく分かっていなかった僕はこの後、メーチ先生が力説する彼の実力が嫌でも分かる事になるのだった・・・


・・・数秒後・・・


副学園長「デューキス君、他のクラスの担任の先生達と実技授業の先生達、あとはここの管理を任されている軍関係者の方々を連れてきましたよ」


デューキス君「ありがとうございます。副学園長先生、他の方々もお集まり頂きありがとうございます。今はこの状況のため、自己紹介は省かせて頂きますね。現状の説明を今から行いたいと思いますが、質問等は説明が終了してから受け付けます。宜しいですか?・・・・」


(説明は彼からあるのか…、メーチ先生の予想通り、彼が1番今の状況を把握しているってことか・・・それにしても、誰も口を挟まないなんて珍しいな・・・貴族の先生達はもっと口出しすると思ったのに・・・しかし、こんな間近で彼を見たのは初めてだ、本当に人間離れした美しさだ、これで男の子って・・・本当なのかな??)


 集まってきた僕達に向かって、1番最初にそう言った彼は慎重に周囲の大人達の反応を見た。この時、彼の元に集まってきた大人達の人数はかなり多かったが、子供の彼がこの場を仕切っていることに誰も文句を言うことも、胡乱な目を向けることはなく真剣な表情で頷いている事に、僕は内心、少し意外だと思っていると、彼はその反応を見て、この大人達が自分を軽んじる事はないだろうと確信したように話を続け出した。


*この時、貴族出身の教員達の間ではアトリーの言葉を疑ってはいけない、その発言を遮る事もしてはいけないと言う、不文律が出来ていた・・・そして、この話が平民出身の教員達に浸透していないのは、元々、地位の高い貴族であるアトリーに対して、いつも一歩引いた態度をしている彼らに教えても、いつもとたいして変わらないと判断されたためであった。かくして、知らず知らずの内に貴族、平民、両方の教員達の気遣いのおかげでアトリーの話は口を挟まれることがなかったと言うことだ・・・


デューキス君「では、詳細は省き端的にこの状況を説明すると、今現在進行形で、“開放型のダンジョン“がこの場で生成されている最中です。「「「「「!!?」」」」」今この場は、皆さんのご想像の通り、かなり危険な場所となってます。ですが、この周辺は結界のようなものに取り囲まれ、このまま出る事ができるかも分かっていません。

 なので、まず、施設の管理をなさっている軍関係者の方々に、この周囲を囲む結界の調査をお願いします。そして、先生方には生徒達にこの不測の事態により、野外実習が中止になった事の説明と、長馬車をすぐにでもこの場から出せるように方向を転換をして、すぐに脱出できるように準備してください。その際、僕が乗ってきた長馬車は扉を開けたまま結界のふちで待機して頂き、結界の調査をお願いした軍の関係者の方々がすぐに乗り込めるようにしてくださると助かります・・・」


(ど、どう言うことだ!?“開放型?のダンジョン“が出来ているって!?それにここから出れないかもしれないって!?彼は何故そんな事がわかったんだ!?)


 彼の簡単すぎる説明の内容に大人達は困惑していると、質問はないかと大人達を見回す彼に、副学園長が静かに手を挙げて発言の許可をまった。


デューキス君「どうぞ?」


副学園長「ありがとうございます。まず、デューキス君の指示の“結界の調査“と“脱出の準備“は理解できましたが、結界の調査の結果次第ではすぐに脱出とはいかないように思えます、それにその間の異変に対しての対応にクラス担任ではない他の先生方に協力頂いた方がいいのでは?」


 と、副学園長は彼の指示に一定の理解を示しつつも、もっとも重要な解決方法や他の先生達の役割分担などについての指示がなかったことに、これでは何かあった時に対応が遅れて対処できないのでは?と、彼の指示の不備を指摘していた。その指摘に他の先生達も頷きながら同意しているのを見て、僕ももっともな指摘だなと、無言で頷き同意していると・・・


デューキス君「確かに、調査次第では脱出までの期間が長引く可能性はありますし、その間の周囲の変化によっては魔物達がこちらを襲ってくる可能性もあります。ですが、その事も、その事以外の不測の事態も含め、全て僕が対応します。「「「「「っ!?」」」」」(全てに対応するって!?そんな無謀な!!本当に彼1人でこの状況をどうにかできるってこと!?)

 結界の調査で、簡単に外に出ることが叶わないと分かったとしても、僕にはこの結界を強制的に破る術を持っていますし、全ての長馬車を守る結界も作ることもできますから最小限の労力で脱出が可能です。なので、先生方には他の生徒達の安全を第一に考えて頂きたい」


「「「「「っ・・・」」」」」(それでは僕達に何もするなと言ってるようなものだ・・・)


副学園長「・・・っ、それではデューキス君の負担が大き過ぎます!せめて補佐に教員を数人付けてください!」


(!、確かに、たった1人で出来ることなんて限られてくるはず!複数の長馬車に保護の結界を張りながら、周囲を囲っている未知の結界を破るなんてこと、いくら彼の実力が凄いからと言って、12歳の子供には難しいはず!)


 彼の言葉は誰もが不可能だと思えるようなことばかりで、流石に副学園長も彼の心配をして、補佐役に教員をつけた方がいいと言い出した。それに賛同するように僕や他の先生達も声を上げようとした時・・・


デューキス君「先生、ご心配はありがたいのですが、長馬車を守る結界に関してはすでに展開済みです。「「「「「えっ!?」」」」」(い、いつの間に!?)

 それに、僕の補佐をできるのは今も僕の側にいる、ソルと聖獣達だけです。皆さんには申し訳ないですが、僕が力を使う時に側にいて耐え切れるのが彼ら以外いないので・・・」


 この時、すでに結界を張り、この異変に対応をしていた彼に、僕達は自分達と彼との間にはどうやっても埋める事のできない差があると、まざまざと突きつけられた。


「「「「「くっ・・・」」」」」(・・・僕達は彼に取ったら足手纏いにしかならないって事か・・・・)


 彼の言葉に集まっていた大人達は、大人として何もできない不甲斐なさや悔しさで手を強く握ったり、歯を食いしばったりして、眉間に皺を寄せ下を向いたりしていた。


 そして、彼は僕達に申し訳なさそうに綺麗な眉を下げていたが、その決意は揺るぐことはないと、誰もが一目で理解するほど覚悟のある希少な色の瞳で見られてしまっては、僕達は反論することはできないまま引き下がるしかなかったのだった。


(悔しいが、彼の足手纏いにはなる訳には行かないか・・・、彼はどれほどの力を持っているんだろうか?はぁ…、やはり雲の上の存在でしかなかったか・・・)


 自分の力不足が恨めしいと思うと同時に、彼の才能に嫉妬なんて覚えることなどできないほどの差にため息しか出なかった僕…


デューキス君「結界の色が徐々に変わって行ってる・・・」


 そう小さく呟きながら空を見上げた彼の視線の先を、僕も追ってみたが何一つその変化を感じることがなかった。そうしてしばらく空を見上げた後、副学園長の指示のもと、僕達は動き出した。


・・・そして、自分の担当のFクラスの長馬車に戻っている最中に問題が飛び込んできた・・・・















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