68話 初めてのお泊まり冒険者活動35〈掃討作戦の最後の後始末〉
僕に会えた事をで嬉しそうに駆け寄ってくる彼女に、ソルやイネオス達、それにジュール達まで僕の前に出て警戒体制に入った。ソルの牽制に本気で不思議そうに聞いてくる彼女の異常さに皆んなが顔を顰めた。そこでへティが前に出て厳しい表情で彼女に接近禁止だったはずだと、彼女の行動を非難するように言った。
?「え?何の事ですか?私達は婚約関係にあるんですよ?それなのに婚約者に会いに来てはダメなんておかしいじゃ無いですか!?」
「「「「「「はぁ!?」」」」」」
彼女の意味不明な発言に周囲の人達が驚きの声が上がり、その声は山の中にこだまして行ったのだった・・・・・・
「えっ、アトリー坊って婚約者いたんか!?」 「婚約者なのに警戒されてるっておかしくないか?」 「いや、いないって言ってじゃん!!」 「じゃあ、あの子は?・・・」 「それはアトリー君に聞いて見ないと・・・・」
周囲で、話を聞いていた事情を知らない冒険者達はザワザワと騒ぎ、遠巻きに様子を見ているが、事情を知っている大人達の王族2人と総元帥は顔を顰め、彼女を連れてきた他の神官達を警戒してみていた。そんな騒ぎの中、注目を集めている僕は彼女が出て来てから、ずっと無表情で彼女がここに現れた意味を考えていた。
(ねぇ、彼女が僕に会えるようになったのはさっきのアイツの結界の効果のせいで、加護結界の設定が初期化されたのはわかるんだけど、僕がここにいるって事を、わざわざ彼女に教えてここまで連れて来た神官は、何がしたかったんだろう?(・・?)彼女に何か話しかけている感じでもないし、僕と彼女の中を取り持とうって感じでもない・・・それに、リトス教の神官なら僕と彼女の間に何の関係もないってこと知ってるはず、むしろ、僕が毛嫌いしてるのも知ってるはずなんだけど・・・あの神官は本当にリトス教の神官か??・・・!!、もしかして!?)
「!、すぐにその神官達を取り押さえろ!!“アースバインド“!!」バッ
ソル「!“アースウォール“っ!!」 イネオス「っ“アイスロック“っ!!」 へティ「!“ダークバインド“!!」 ベイサン「くっ“クリーパーバインド“っ!!」
「「「「「!!?」」」」」
僕は様々な仮定を立て、予測した中で1番嫌な予測に行きつき、危険と感じた瞬間、すぐに周囲に呼び掛けると同時にスルージバ元侍祭を“アースバインド“で拘束。その僕の呼び掛けに瞬時に反応したソルが逃げ出そうとした神官達の退路を“アースウォール“で塞ぎ、行き場を無くして戸惑ってる神官達をイネオス達が次々魔法で拘束していった。他にも僕の呼び掛けに反応した総元帥さんや軍人さん、冒険者達も自分達に1番近かった神官達を取り押さえてくれた。
スルージバ「な、何をなさるんですか!?」
「は、放しなさい!!」 「我々神官にこのような事をなさって良いとお思いですか!?」
拘束されて身動きができなくなった。彼女や神官達は必死で拘束を解こうともがき始めた。
スタフお兄様「アトリー君、ちゃんと理由があるんだよね?」
スタフお兄様が拘束された人達を見ながら僕にそう聞いて来たので、僕は彼らをよく“見ながら“それに答えた。
「はい、彼らは本物のリトス教の神官達ではないと思います。もしくはリトス教に潜入した工作員だと思われます」
「「「「「!!」」」」」
総元帥「根拠は?」
「根拠は彼らが、ここに現れた時間があまりにも時期が良すぎるんです。それに、彼女は僕には近寄れないようにしていたのに、ここで、顔を合わせているのが何よりの証拠です」
スタフお兄様「それは、例の加護の効果だったね?・・・そうか、それが今効いてない、もしかして、さっき、大空洞で・・・・」
察しがいいスタフお兄様が納得顔をしている近くで、まだ話が見えない総元帥や他の人達、そんな彼らに僕は軽く説明をした。
「彼女は以前、先程の様に僕に関することで嘘の申告をしたことで、神々から、僕への接近禁止命令が出ていたんです。言葉で通達しただけでは約束を守らない可能性が高かったので、神々が僕の“加護の結界“に手を加えて、特定の人物への人避けと認識阻害効果をつけてくださってたんです。なので僕からは彼女を認識できはしますが、彼女からは僕に近づけないようにと、もし近くにいても僕が判別できない様になっていた認識阻害の効果が、洞窟内で起きた現象により、その効果が無効にされてしまったままなんですよ。先程まで僕すら気づかなかった事を、元から彼らは知ってて近寄って来ていた様なんです。それをわかってて出来るのは洞窟内で起きた現象を起こした人物、もしくは同じ組織の一員だと言うことです。それに今回の件で教会に協力要請は出してないと聞いてましたので、ここに神官達が来るのは不自然過ぎましたから・・・」
「「「「「あぁ~~!」」」」」 「「「「「ほー・・・」」」」」
スルージバ「そ、そんな事・・・わ、私はアメトリン様の為にと!」
前者は大空洞内で一緒に戦った冒険者“蒼炎“のメンバーや軍人さん、護衛騎士さん達、後者はそれに参加してなかった人達からの反応だ。この時、彼女はまた何か訳のわからない理屈を叫んでいたけど、煩かったのか、ジュールが遮音結界で覆ってしまったので、僕はそのまま視界に入れる事もなく完全にスルーして話を続けた。
スタフお兄様「じゃあ、やはり彼らは・・・」
「えぇ、“邪神教“の手のものかと・・・」
スタフお兄様はリトス教の元聖女だった彼女が、同じリトス教の神官を見分けることができなかったのかと思っているだろうけど、彼女は例の件以降、リトス教の教会や神殿ではなく、学園の寮で生活しているので、現在のリトス教の関連施設にいる神官達を把握してない、そこにどこから入手したかわからない、本物のリトス教の神官服を着た使者が来て、僕に会える様になったと言って連れ出したんだろうと僕は推測した。
スタフお兄様「目的は、やはりアトリー君の拉致か?」
「どうでしょうか?例の魔法陣が試作品で僕の加護の結界の効果が無効化されているのを、ただ確かめるために彼女を使ったかもしれませんし、もしくは純粋に僕に好意を持つ彼女を使って何か仕掛けるつもりだったか、後、考えられるのは僕を含めたこの場所全部の後始末をするつもりだったか・・・まぁそれは彼ら自身に聞いた方が早いと思いますけどね。・・・ん?」
(まぁ、僕の“加護の結界“の主な機能の“絶対防御“は今回の改良された魔法陣でも、使用不可にさせるまでには至らなかったけどね。多分向こうは、認識阻害の機能と、絶対防御の機能が連動していると勘違いしているから、認識阻害の効果対象である彼女を試験役がわりに連れてきたんだろうな・・・・ん?何を見てるんだ?・・・)
「っ!おい!静かにしろ!!」 ガッ! 「うわっ!!」 ドンッ! 「っ!逃げたぞ!!」 ガンッ! 「てっ!こっちもだ!待てっ!!」 「捕まえろ!!」 「そっちに行ったぞ!!」
「「「「「!!」」」」」 「こっちに来たぞ!!」 「怪我をさせても良い止めろっ!!」
ふと、軍人さんや冒険者達が捕らえた神官達に目がいった、彼らは何かを狙っているように静かに視線を巡らし、目的のものを見つけると、再び暴れ出した、腕を掴んで捕まえていた冒険者に頭突きを入れて、緩んだ手を振り解き走り出した、その騒ぎに乗じて他に2人も冒険者や軍人さん達に体当たりしたり、突き飛ばしたりして、その手から逃げ出した。そして、彼らが走り出した先にいたのは大空洞で捕らえた邪神教の信徒達、そこに目掛けて走りながら、懐から何かを取り出し、それを前方で立ちはだかる軍人さん達に向かって投げ付けた。
「っ!!全員!伏せろ!!“プリズン“!!」キィンッ!
ボコンッ!!!
「“アースバインド“っ!!」
「ぐわっ!!」 「ぐぅ!!」 「くそっ!!」 ガチンッ!
彼らが投げたのはルービックキューブのような形の魔道具、それも投げた先で強い衝撃を感知すると“爆発“するタイプ、所謂、手榴弾の様な小型爆弾だった。僕がそれを危険と判断したのは以前に学園の石舞台に仕込まれていた、結界の魔道具を流用し爆弾にしたタイプの魔道具と同じ魔力の流れを感じて、すぐさま強力な結界魔法の“プリズン“で爆弾自体を閉じ込め、被害を出さないようにし、爆破に失敗した彼らが再び逃走しないようにすぐさま“アースバインド“で拘束したのだった。
「ふぅ、よかった失敗しなくて・・・」(ピンポイントで小さい結界張るのは難しんだよねぇ(*´Д`*))
一瞬の出来事で身を屈めることしかできなかった人達が、恐る恐る体を起こし始める頃に僕は捕まえた神官達の前に来て距離をとりつつ観察した。この時、夜月が念入りに彼らの周囲を結界で取り囲み万が一にも逃げ出せない様にした上で、僕は彼らを観察していた。
「うーん、まださっきと同じ魔道具はもう持ってなさそうかな?変な魔力の動きも見えないし・・・うん、大丈夫そう!」
ソル「大丈夫そう!じゃ、ありませんよ!アトリー様!もう!また1人で行動して!危ない物があるなら貴方がわざわざ見に行かなくても良いでしょう!」
「あ、・・・・ご、ごめんなさい・・・で、でもね、ちゃんと夜月が結界張ってたから大丈夫だったよ?」
ソル「そう言う問題じゃありません!大体、いつもいつも言っているでしょう!?勝手に飛び出して行ってはいけませんと!!」
「はい…、ごめんなさい…」
爆弾の有無の確認をしていたら、ソルがとても怒った顔で僕に近づいてきた。そして僕は案の定、怒られた・・・・
(さっきは“魔力視“で軽く“見た“だけだったから、今度は“情報開示“であいつらをじっくり見ながら尋問しようと思ったのに…、はぁ、最近、このお小言は始まったら長いんだよなぁ(*´Д`*)・・・)
天華『それだけ、アトリーがソル君を心配させているってことでしょう?』
(うぐっ!・・・反省します・・・・)
天華『よろしい』
そして、いつも通りお小言を拝聴していると、その間にスタフお兄様が苦笑いを浮かべながら横を通り過ぎ、僕が捕まえた神官達に何やら尋問をしていた。その後数分ほど僕はお小言を聞いて、解放される頃には捕まえた人達は全員、魔力封印の手錠をかけられて、軍人さん達に連行されていき、後に残ったのはスタフお兄様達とその護衛騎士、数人の軍人さん達と冒険者達だけとなっていた。それとスルージバ元侍祭は僕に完全無視を決められて心が折れたのか、それとも自分も口封じの対象になって、爆破に巻き込まれそうになったのが怖くなったのかは知らないけど、静かにて魔力封印の手錠をかけられて連れていかれていた。
スタフお兄様「ソルドア君そろそろ、最後の後始末をして帰らないといけないから、アトリー君を解放してあげてくれないかな?」
と、言う言葉で解放されて、僕は“無限収納“に入れていた魔物達の死体を、地上部隊の倒して積み上げていた山の上にさらに上乗せするように全て出した。
「これで全部です」
(なんかこれでやっとスッキリした感じ!( ^∀^))
スタフお兄様「では、魔法師達は一斉にこれに点火してくれ」
最後の後始末とは魔物達の死体の山とゴブリンが巣として使っていた木材などを一纏めにして、その上から大量の可燃用の油を撒き、一斉に燃やすことだった。この様なことを最後に行うのは、ここにもう2度と魔物の巣を作らせないためと、死んだ魔物達が腐って変な病気を発生させないため、後は魔物の死体がアンデットにならない様にするために、全て灰になるまで燃やし尽くすのだ。
どうやら軍人さん達で残っていたのはその点火のための魔力の多い魔法師達だったそうだ。その他にも、冒険者達からも魔法使いを募り一斉に点火、魔法で燃やすと早く燃え尽きるので、時間短縮の意味で人数を必要としたらしい。(まぁ量が量だからね)
「じゃあ、僕も!「ちょっ!」“ファイアートルネード“」 ドボォーーーッ!!! 「「「「「うわぁっ!」」」」」 「・・・あ・・・まぁ、いっか!これなら早く終わるし♪」
ソル「遅かった・・・・」
僕もお手伝いまでにと思って火魔法の“ファイアートルネード“を使ったら、何故か加減を間違ってしまって、炎の色が青になるほどの高火力になってしまった、だが、これならすぐに燃え尽きて灰すら残らないのでいいか、と楽観的に考えた僕。この時、僕達の持っているアイテムリングなどを密かに狙っていた冒険者達が、僕が放ったこの魔法を見て恐れをなして、大人しくなったとかならなかったとか・・・・
(なんか、ソルが言ってたけど、これで後始末はすぐに終了するでしょ、後はキャンプ地に戻って軽く話が終わったら、やっと念願のゆるキャンに再挑戦だ!٩( 'ω' )و)
こうして、青い炎の竜巻が燃え尽きるまでのんびりこの後の予定をウキウキと立て、時間が過ぎるのを待つのだった・・・・




