66話 初めてのお泊まり冒険者活動33〈掃討作戦終了〉
皆んな「「「「「忘れないから!だからいつも、そばにいた事!!忘れないでね!!大好きだよ!!アトリー君!!」」」」
・・・・・だから、皆んなの最後の言葉もちゃんと分かった・・・・
「っ!忘れないよ!!僕も、皆んな事、大好き!!・・・元気でねっ!!・・・・」
こうして、ゲートの穴は小さくなって行き、その穴が最後、完全に無くなるまで、僕達は互いに笑顔で手を振り見送り続けた・・・・
そして、ゲートの穴が完全に閉まりきり、ただの大きなダンジョンの扉に戻った後、僕は大きく深呼吸をして自分の気持ちを切り替えた。
「ふぅーーーーーっ、はぁーーーーーーーっ・・・よし!・・・“キュア“」
最後まで笑顔で見送ったとは言いたいところだが、最終的には皆んなでボロボロ泣きながら手を振っていたので、目がパンパンに腫れていることは自分でも自覚していた、暫くすれば“超回復“のスキルで元に戻ることは分かっていたが、今こちらに向かって来ているソルやイネオス達を心配させないために、手早く目元の腫れを魔法で治して後ろを振り返り、ソル達に手を振った。
ソル「アトリー様、大丈夫ですか?」
(やっぱり、ソルには僕の寂しさが伝わっちゃったか・・・でも、ソルも、仁達との別れは寂しかったみたいだね・・・)
「うん、ちょっと、いや凄く、寂しかったけど、2度と会えないって思っていた人達にまた会えただけでも、幸運だと思わなきゃね・・・」
へティ「そうですわね・・・」
イネオス「皆さん、お元気そうで良かったです・・・」
ベイサン「ご家族がたくさん居られて楽しそうでしたね・・・」
ソル「えぇ、本当にまた会えて良かったです・・・」
少し寂しさを残し笑う僕に、ソル逹もまた少し寂しそうに笑って返してくれた。
「よし!依頼のゴブリンの巣、掃討作戦の大半はこれで終わったと思うけど、一応、他に魔物達の残党がいないか見て回ろうか!それに、ちょっと気になる事もあるから中央にあった玉座のところに戻ってみていいかな?」
しんみりした空気を払拭するように、自分達の今日の目的だった依頼の最終確認をしようと提案、それとは別にさっきはゲートの向こう側の皆んなを優先して、放置してきた物の確認もついでに行う事にした。
スタフお兄様「アトリー、少しいいかな?」
玉座が元々あった大空洞中央に向かう途中、砂のように崩れた石舞台の状態を観察していたスタフお兄様に呼び止められた。
「?はい、いいですが、何かありましたか?」
スタフお兄様「いや、…何かあったのは君の方じゃないかな?」
「・・・あっ・・・」バッ!
スタフお兄様に呼び止められて不思議そうに首を傾げた僕に、スタフお兄様は凄く複雑そうな表情で、僕の体を指差した、そこでやっと僕は自分の今着ている服の事を思い出した・・・・
「そ、そう言えば、これ、なんでこんな事に?・・・」
スタフお兄様「えっ、自分の意思でそうしたんじゃないんだ?」
「え、えぇ、“神器“に込められた力を使おうとしたら、突然こうなったんです・・・なので、僕にもこれの説明はできかねます・・・」
今ここには僕が“現人神“となった事を知らない人がたくさんいるので、自分の“神力“でこうなった事は伏せて、他に普通の人達でも使われている“神器“の使用に対しては隠さず、こう説明はしたが、この現象自体には本当に僕自身は説明ができないのだ。
しかし今よく見ると、この“神器“の服は元の“祭事服“から、パーティーなどできる“伝統の正装“を動きやすくした感じの形になっていて、意外と着心地は抜群に良かった・・・(あ、“祭事服“の名残なのか、背中のマントには“祭事服“の上着に描かれた刺繍が同じようについていたよ・・・(*´ー`*)でもあれ、かなり細かい模様だったんだけど、“祭事服“の広いローブから正装の少し狭いマントによく綺麗に収まったなぁ、ちゃんと規模を縮小されてて綺麗に再現されてるよ“神器“って何でもありなんだな・・・)
僕の困惑ぶりが伝わったのか、スタフお兄様もそれ以上は聞いてこなかった・・・そして、僕がゆっくり“神器“に“神力“を込めるのをやめると、服は元の“祭事服“の形に戻り、“千変万化の神器“も元の杖の形に戻っていった・・・
(・・・元に戻るんだこれ・・・まぁ、疑問は尽きないけど、今は元の冒険者の格好に戻った方がいいよね・・・(*´ー`*))
「“神器収納“」
「「「「「おおぉぉ~~~っ」」」」」
そう呟くと、強い光が放たれて、それが収まると、元々の冒険者スタイルに衣装チェンジしていた。その様子を見ていたイネオス達や他の大人達から何故か歓声が沸いた・・・
スタフお兄様「聞いてはいたけど、凄いね、その“神器“・・・」
「そ、その事は今はいいので、そ、それより、スタフお兄様、僕ちょっと“気になる物“があるんです」
じっと僕を見ながら、しみじみそう言われてしまうと、創った本人としてはなんか照れてしまうので、僕はさっきしようと思っていた事に話を切り替えた。
スタフお兄様「ん?“気になる物“?ゴブリン達の落とした武器達の事かな?」
「いえ、それとは別です。こちらに・・・」
と言って、誘導するように、目的の物のところまで行く。
「これなんですが・・・」
と、指差したのは、アイツ諸共きった玉座から出てきた、赤黒い棒のような物・・・正確には長さ50センチほどの気味の悪い赤黒い色の、葉もついてない枯れ木のような“木の枝“だ、だが、見ていてとても違和感があったので、これを“情報開示“で見てみたら全て文字化けしていて、なんなのかハッキリしなかったのだ、そもそも、アイツの分身体自体も“神力“で強化した目で“見て“も、僕達が見抜いた事実だけが“邪神の分身体“とだけ1番上に表示されていて、後の説明文のほとんどが文字化けで、意味がわからず。そして、前回の自分の失態を繰り返さないためなのか、どう言う仕組みであの分身体を作っているのかも解析不可能だった。
どうやら今回は残していったこの異物にも、そこら辺をしっかり対策をしてきたようで、情報が少なかったので意見を求めようと皆んなを連れてきたのだが・・・
スタフお兄様「ふむ、これが玉座からね・・・」
「それがですね。あの“邪神“の分身体が出てくる時、この“木の枝“と同じ色のオーラが、この玉座から出てきていたので、この“木の枝“が分身体の発生源ではないかと思ったんですよ」
スタフお兄様「ほう、これを触媒に分身体を送り込んで来ていたと・・・うん、確かに、この“木の枝“何やら不思議な力が込められているな・・・しかし“邪神“が使っていたにしては見た目に反して禍々しい気は感じないな・・・」
「そうですよね?だから気になって・・・」
(ほんと、不思議、むしろ何処か馴染み深い感じが・・・)
と、思いながら吸い寄せられるように無意識に床に転がって、砂まみれのその“木の枝“を左手で取ろうとした・・・
『『『『『アトリー!?』』』様!?』』
ソル「アトリー様っ、何があるか分からないので無闇矢鱈に手で拾わないで・「ピカッ!」っ!?アトリー様!?」
「「「「「わっ!?」」」」」
無防備に手で触ろうとした僕を嗜めるソルが手でも僕を止めようと手を出した、それで僕の指先は後数センチほどで“木の枝“を触ることはできなかったのだが、突然その“木の枝“と、左腕にいつも付けている“神力制御の神器“が同時に共鳴し合うように光った・・・
「あれ!?ない!なくなった!?」
光が収まり、手元を見ると、さっきまで自分の指先のすぐそばにあった“木の枝“が忽然と姿を消していた・・・
「も、もしかして・・・」
さっきの現象と似たようなものを見た事がある僕は、もしかして、嘘だろう?と言った表情で、自分の左手に付けている“神力制御の神器“の腕輪をじっと見つめた。そして、・・・
「“神器召喚“・・・」 パァーーーッ!
例のキーワードを呟くと、先程と同じように“衣装チェンジ“機能が発動し、僕が思い描いた“物?神器?“が僕の手の中に現れた・・・
「出てきた?・・・えっ!?何これ!?色が変わってる!?と、言うか、これ“神器“なの!?」
(さっきまでの、赤黒い枯れ木だった枝が、なんで瑞々しい葉っぱを生やして、いま、切り落としてきたばかりです!みたいな新鮮な?枝になってるの!?Σ('◉⌓◉’)ありえないんだけど!?)
自分で出しておいてなんだが、信じられずに軽くパニックだ。
春雷『・・・これは・・・』 雪花『なんか、懐かしい・・・』
夜月『落ち着け、アトリー、その“枝“は多分、アトリーの“神力“が満ちてる“腕輪の神器“のオーラに触発されて、浄化されて元の姿に戻ったんだろう、多分だが、その枝は“神器“に並ぶほどの“神聖な樹木“の枝だと思うぞ』
天華『神々も、それを見て驚いておいでです。今、神々がその枝に該当するものを検索されています。なので、いったん落ち着きましょう』
(う、うん、そうだね。僕の“情報開示“では詳細が読み取れないし、神様達が調べてくれるのを待つしかないか・・・しかし、そうか、これは元々、結構すごい神聖なものだったのか?・・・確かにそう言われると、ちょっと神々しいような?(・・?))
と、一生懸命、心を落ち着かせようとしている僕に、
春雷『アトリー様、多分ですがその“木の枝“、“精霊樹の枝“ではないでしょうか?』
(はっ!?“精霊樹“???それって、精霊を生み出すと言われている樹木のことだよね?・・・なんで、そんな物がアイツの分身体の触媒に使われてたんだ??そもそも、これをどこから入手したんだ??“精霊樹“って、大陸中央にある“聖域“の中心に生えてるんだよね???(・・?)???)
以前、精霊達に聞いた話で、“聖域“は神々が結界を張っているところだと知っているので、春雷の言葉で何故そんなところにある筈の物がここにあるのかと、困惑が深まった僕、ずっと首を捻り考え込んでしまっていると、
ソル「アトリー様?大丈夫ですか?」 ゆさゆさっ
「はっ!?」
と、ソルに肩を揺らされ現実に戻った。
「あ、あぁ、大丈夫・・・それにしても、これ、どうしようか、浄化しちゃったみたいだし・・・」(それにしても、元の姿だったなら多少はアイツの情報が取れたかもしれないのに、綺麗に浄化されちゃったから、情報がなくなっちゃったかも・・・)
イネオス「そうですね。・・・それにこれ、アトリー様の“神器“として登録されたようですけど、他の方が持っていっても大丈夫なんでしょうか?」
「はっ!!そうだよ、これ僕の“神器“認定されちゃったんだった!!」
浄化で変化してしまった“木の枝“にがっかりしていた僕は、イネオスの言葉で1番重要な事に気づいた。この“木の枝“は今回の騒動の重要な物的証拠だったと言うこと、その重要な物的証拠を僕がわざとでは無いとは言え、勝手に浄化し、その上、自分の所有物としてしまったのだ、それに、一度、“腕輪の神器“に登録されてしまった“神器“は、僕から一定の距離離すことはできない、何故なら、僕から一定の距離離すと僕の手元に戻ってくるからだ・・・その事を思い出して慌ててスタフお兄様を見た。すると・・・
スタスお兄様「うーん、どうしようか?・・・」
と、困った笑顔でそう言い、考え始めた・・・
(どうしよう、この“木の枝“スタフお兄様は今回の件の報告と共に持っていくはずだった物なんだよね・・・(*´ー`*)詳細が分かればいいかな?“精霊樹の木の枝“って言えば良いのかもしれないけど、それを言っても信じてもらえるか・・・それにまだ、“精霊樹の木の枝“ってのも、本当かどうか分かってないし・・・あ、そうだ!ねぇ、ジュール、ティーナちゃんにこの“枝“って本当に“精霊樹の枝“で合ってた?って聞いてもらえるかな?(・∀・)ティーナちゃんからの太鼓判を貰えれば、スタフお兄様も現物がなくても報告書に載せれるから困らなくて済むんじゃないかな?)
ジュール『うん!分かった!聞いてみるね!』
そして、ジュールに頼んだ結果・・・
「!・・・スタフお兄様、この“木の枝“、どうやら“精霊樹の木の枝“だそうです…ただ…“この世界の精霊樹“から取られた枝ではないそうで、お兄様達が持ち帰っても解析などはできないだろうとの事で、この“精霊樹の木の枝“は神々が預かって詳しく調べると仰ってます・・・」
「「「「「!!」」」」」
スタフお兄様「・・・それは神々しかできないとの事なんだね?」
「はい、今、ジュールを通してそう伝えられました・・・」
(ガチ目にヤヴァイ品物じゃんコレ!!Σ('◉⌓◉’)他世界からのきた異物って事でしょコレ?しかも、コレ、かなり力を持った物なんじゃ!?僕ではその凄い力の存在すらも感じ取れないヤツだし!!( ゜д゜))
自分の存在より高次元にあるものはその存在の凄さを感じることすら難しい、そんな事を以前神々に聞いたことがあった僕は、この“木の枝“の凄さが逆に分かって恐れ入るばかりだった。
そして、今ジュールから聞いた説明ではこうだ、神界から見ていた神々曰く、“精霊樹の木の枝“なのは間違い無いらしいが、“この世界の精霊樹“に切り取られたような痕跡は一切なく、見たところ、“この世界の精霊樹“から放たれているオーラとは異なるオーラが見て取れることから、別の世界から持ち込まれたもだろうと推測され、そのオーラを詳しく調べるには実物を神界で解析するのが1番だろうと、なので、ティーナちゃんは僕に以前にもやったように、神殿で奉納の祈りをあげて神界にお届け物として送ってくれとの事だった・・・
(おうぅ、そもそも、人間が解析しようとしても無理なヤツだったーーー!(・Д・)異世界のものだったら、世界の法則とかが違うから、そら、この世界の人じゃ解析できんわな!!( ゜д゜)てか、やっぱり“精霊樹“って他の世界にもあるんだね、全く同じも物じゃ無いだろうけど・・・)
と言うことで、結局、スタフお兄様にはこの“精霊樹の木の枝”の解析結果は、開示できる範囲での報告を約束する事で同意して貰ったので、“木の枝“はそのまま僕が預かり、後に神殿で奉納の祈りをあげてティーナちゃん達にお届けする事になった・・・
(でもまぁ、スタフお兄様も報告書に書く事ができてコレで一安心じゃなかろうか・・・)
なんて思う僕だった・・・・




