38話 初めてのお泊まり冒険者活動6
「ふーん、あれが今度の“洞窟隊“のメンバーか・・・・」
どうも、僕です。今はまだ、冒険者ギルド内にある大会議室で、今週末に行われる“ゴブリンの巣、掃討作戦“の会議が行われている最中です。
そして今ちょうど、作戦時に2組の班に分かれる事になった人員の班分けが終了した所です。その人員は冒険者パーティー単位で分けられているので、会議室に備え付けられている黒板には、そのパーティー名が書かれているのですが、そのうちの半数のパーティー名が全くもって聞いた事のない名前だったんですが、どうしたら良いでしょうか?・・・・
「どうしよう。僕達のパーティーと“隊長“になるガイアスさんのパーティー以外で分かるのって、会議が始まる前に挨拶したヨンガンくんが仮で入っているパーティーの“栄光の腕輪“ぐらいしか分からないよ」
と、焦ってソル達に言うと・・・
ソル「・・・そうですか、と言うことは、“栄光の腕輪“や“蒼炎“も挨拶がなければ全てのパーティーを知らなかったんですね・・・全く、あなたと言う人は・・・いや、アトリー様は自分に必要と思った事はご自身で情報を収集なさるから、今まで本当に必要な事とは認識していなかっただけ、だから、この場合僕だけでも知っていればいい情報なのは確か、それにアトリー様の冒険者活動の邪魔にならなければ知る必要もなかった事、もしアトリー様の邪魔をしようものなら・・・」ブツブツッ
(いや、ただ単に、皆んなとの冒険者活動が楽しくて、他の冒険者に目が行かなかっただけなんだが・・・(*´ー`*))
ソルは後半小声で何か言っていたけどよく聞き取れなかった。と、言う事にしとこう・・・
後半何やら物騒な言葉が出た気がするが、イネオス達はいつもの事だと気にせず、同じ“洞窟隊“に選ばれたパーティーの事を教えてくれた。ちなみに、班分けが終わった時に、グループの名称が“洞窟内調査班“から簡略化されて“洞窟隊“となり、“野外遊撃班“は“遊撃隊“に変更されました。隊のリーダーも“リーダー“と呼ぶのではなく“〇〇隊長“と呼ぶようにと通達されました。そして、理由はギルマスが呼びにくいからって理由です・・・・
説明を受けている内に、ギルマスからそれぞれの隊で自己紹介と役割分担など話し合いをするようにと言われて、それぞれの隊に分かれる為に冒険者全員が席を移動しだした。
「じゃあ、僕達も移動しようか」
ソル&イネオス達「「「「はい」」」」
そう言って移動し出し、洞窟隊の人達が集まる場所に行くと・・・
ヨンガン君「よっ、アトリー達、こっちだ!今回一緒の隊になれて嬉しいぜ!」
「あ、ヨンガン君、そうだね、僕もヨンガン君と一緒の隊になれて嬉しいよ」
先に洞窟隊の集まりにいたヨンガン君が僕達を手招きしていて、僕達は自然とその集まりに合流する事ができた。一緒に依頼ができることに浮かれて互いに会話していると、洞窟隊の隊長である“蒼炎“のガイアスさん、ガイアス隊長が全員が集まったのを確認して、初対面の人達の同士で挨拶を交わすように言ってきた。なので、僕達はほとんどの人が初対面なので、全員に向けて自己紹介と挨拶をする事に・・・
「皆さん、初めまして、僕は“Cランクパーティー、情景の旅人のリーダーをしています。アメトリン・ノブル・デューキスと申します。僕のことは色々と噂でお聞きの事もありますでしょうが、その真意は皆様の目で確かめていただきたく思います。それと、これでも1人の冒険者として活動してます、できる事はしますので、あまりお気遣いなさらないでくださいね」
と、少し堅めだが挨拶を終えると、
?「ふーん?気遣うなって言う割にお貴族様らしいご挨拶をしてくれるなんて、言ってることがチグハグねぇ、坊や?」
ニヤニヤと笑いながら、僕を嫌味っぽく揶揄うのは会議前にヨンガン君を呼びに来た、“栄光の腕輪“のパーティーメンバーの内の1人の女性だ。
「・・・失礼、貴女、お名前は?」
女魔法使い「アタシ?アタシは“Bランクパーティー、栄光の腕輪“に所属している、平民出身のエピカリよ。担当は後衛で回復魔法を使っているわ。何?怒ったの?坊や?気遣うなって言ったからアタシなりにいつも通り話しかけたのだけど?ダメだったかしら?さっきのはお貴族様特有の建前だったのかしら?」
僕が笑顔で名前を尋ねると、次は捲し立てるように僕を煽ってくる彼女に、“蒼炎“のメンバーやヨンガン君が驚き、顔色を悪くさせ始めた。それ以外の“洞窟隊“に選ばれたパーティーの人達の反応はバラバラで、エピカリと同じパーティーのメンバーは彼女と同じようにニヤニヤ笑っていたり、無関心なのか俯いて話を聞いていなかったりしていた、そんな彼女達のパーティーリーダーであるローシさんは、僕がどのような反応をするのかと品定めするように様子を見ていた。その他のパーティーの人達の大半も彼らと同じような反応で、口出しはしてはいないが僕達に不満があるのは丸わかりだった。
(ふぅ、やっぱり理解してない人が多いか・・・(*´ー`*))
「いいえ、エピカリさん?でしたかね、貴女が何か勘違いなさっているようなので、訂正させていただきたのですが、僕は何も全てにおいて貴族として気遣う必要はないと言う意味ではなく、冒険者として必要な事なら言ってくれればちゃんとできますから、貴族だからと言ってそこまでは遠慮しないでください、と言う意味で気遣うなと言ったんです。
それと、僕は貴族だからと言って横暴な態度はするつもりはありませんが、僕が貴族であると言う事をちゃんと主張するのは皆さんの為にしているのです。僕達が貴族としての名乗りをするのは、僕達の事をちゃんと貴族であると認識させるためにしているんですよ。
もし、あなた方が僕達を貴族だと知らずに気軽に意地悪などした場合、あなた方が僕達を貴族だと知らなかったと訴えても、許される事はなく、厳罰に処されてしまいます。でも、貴族と知っていれば、あなた方は僕達に何かすれば罰せられると言うことは分かりますよね?そうなると下手に手出しはなさらないでしょう?なので、僕達のような未成年の貴族子息や子女は、貴族の家の保護下にあることを示し、自衛の意味も兼ねて貴族であることを隠しはしません。
それに、そうしないと、あなた方だけではなく、あなた方の身近な方々にも迷惑をかけてしまいますからね。
では、これでもう僕の言葉の意味はだいぶお分かりになって頂けたかと思います。ついでと言いますか、忠告までに、今、貴女のその僕に対しての態度は改めた方がいいですよ?危ないので・・・「はぁ?」あ、あと、他の皆さんも今後は僕達に対する態度はちゃんと改めてくださいね?「「「「「なっ!?」」」」」では一応、今回は先程の言葉の意味をちゃんと理解できていなかったと言う事で不問にします」
「・・・だから、ソル、戻って来てくれるかな?掃討作戦前に人員を減らすのは流石にダメだと思うからさ・・・」
「「「「「っ!?」」」」」 バッ!
エピカリさん「えっ!?」
僕が親切丁寧に説明をすると、その話を聞いた僕に不満がある人達は一気に顔を真っ赤にさせて、怒った表情をしたが、僕が続けた言葉に全員が驚きの表情で警戒体制をとりながらエピカリさんの後ろに視線をやった、それと同時に全員が反射的にその場から、いや、僕達とエピカリさんの側から飛び退いたのだ、その理由は、先程まで何も無かったエピカリさん背後に、殺気を含んだ人の気配が急に現れたから。
そして、その気配の正体に誰もがさらなる驚きの表情を見せた、何故ならその正体が静かにエピカリさんの首にナイフの刃を押し当てているソルだったからだ。ソルはエピカリさんが僕を煽るような発言をし出したあたりから、静かに気配を断ち、誰にも気づかれないようにエピカリさんの後ろに回って、その首にすぐにナイフを押し当てられるように構えていて、僕の許可が降りるのをその場でずっと待っていたのだった。でも、今ソルは僕が彼女の無礼な態度を不問としたので少し、不満そうな表情をしている。
ソル「ですが、アトリー様、この様な段階で、すでに僕達に舐めた態度をするような人達と作戦を実行した場合、足を引っ張られる可能性があります。それなら今のうちに障害になり得る人は排除したほうがいいのではないですか?」チキッ
エピカリさん「ひっ!」
「ダメだよ、ソル、彼女達は“まだ“僕達に何もしていないんだから、今の所、僕達に不満があると言う態度をしただけで、罰を受けるだけの事はしてないでしょ?それに、ソルがいつも言ってるでしょう?もっと他の冒険者達と交流を持てって、これじゃあ交流を持つどころか、避けられちゃうよ」
ソル「・・・そうですね。仕方ない、今回はアトリー様が不問にすると言われましたのでそれに従いましょう。・・・良かったですね。アトリー様がお優しい方で・・・」ボソッ
エピカリさん「っ・・・」
僕が戻って来て欲しいと言っても、まだナイフをエピカリさんに突きつけていたソルを説得するのに、少し手間取ったが、ソルがナイフを下に下ろして渋々僕の元に戻ってきた頃には、もう僕達に舐めた態度をしている人達はいなくなっていた。それもその筈、密かにエピカリさんの後ろに回っていたソルと同時に、イネオス達もアイテムリングから自分達の愛用のナイフを即座に出して隠し持っていたのを、僕が潜んでいたソルに声をかけたと同時にナイフを構えていて、ジュール達も密かに戦闘体制に入っていたからだ。その行動にこの場にいた洞窟隊のメンバー全員が僕達の実力を疑う事なく認めることになった。エピカリさんに至っては、先程までナイフを押し当てられていた自分の首に手を当てて、顔色を悪くして放心状態になっている。
そして、この時のやり取りで僕達を敵に回してはならないと、この場の大半がそう思ったのだった・・・
「すみません、僕の従者が・・・でも、良かったですね。今、僕の従者が出てなかったら、のちに行方不明になる可能性がありましたから「「「「「!?」」」」」・・・うちの家族は僕に対して凄く過保護で、特に今回のような宿泊もするような依頼は初めてですから、少し敏感になってるんですよ・・・」
「「「「「っ!!」」」」」
(脅すのはこれぐらいで良いかな?( ̄▽ ̄)でもこの話、事実だから、ちゃんと忠告してないと本当に行方不明者が出そうで怖いよな・・・(*´-`))
ジュール『あ、天井裏で気配が少し動いたよ』
(うん、動いたね・・・(*´ー`*))
自分がいくら強くてもうちの家族は僕を守ると言うことに心血を注いでいるから、冒険者として活動していても、必ず“家の影“が僕について来ている。それをちゃんと知っているからこその善意からの忠告なのだ。
(あ、“蒼炎“メンバーさんと他数人が気づいたかな?(・・?)・・・乙(^人^))
天井裏で気配が動いたことに気づいた人が数人いたのか、その人達の顔色がみるみる悪くなっていくのが分かり、僕は知らなくていい自分達より強者の気配に気づいてしまった人達に心の中で合掌を送ったのだった・・・
夜月『まぁ、あれに気づけたって事はそれなりの実力者だと言う事だろう?ある意味、今度の作戦で役に立つか立たないかの良い判断材料になって良かったんんじゃなか?』
(まぁ、うちの“影“の気配に気付ける人はそうそういないからね。イネオス達でさえ最近やっと気づける様になったぐらいだし・・・と言うか、僕達が作戦時に、この人達に頼るかどうかはまた別の話じゃない?(*´Д`*))
夜月『ふむ、それもそうか・・・』
と、夜月達との会話を終えて、僕は洞窟隊の役割分担の事で隊長であるガイアスさんにある提案をしたのだった・・・・
ガイアスさん「・・・ん?洞窟の探索の際に斥候役をやりたいと?」
「はい、僕達は他のパーティーの方と違って人数が少数ですから、乱戦時ともなると他のパーティーの方々の戦いを手伝う形になる可能性が高いと思うのですが、僕達は“未知への挑戦“のパーティー以外と連携をとった戦いをしたことがないので、その感覚のまま他のパーティーの戦いを手伝った場合、連携の取れた戦闘を乱しかねないので・・・」
?「ふーん、あなた達が連携の必要な戦闘には不向きって事は何となくわかったけどぉ、でもぉ、逆になんでそんなに斥候役に自信があるのぉ?」
「あ、あぁ、それはですね。僕達は基本的にどの依頼でも、全員で探索や感知系のスキルを使って、効率よく討伐対象や採取依頼の品を見つけて依頼を完遂させてますので、全員が本職の偵察や斥候の方々と同じくらいの探索能力を持ってます。それに全員がそれなりの戦闘技術も持ってますので、通常のゴブリン程度ならすぐに対処できます。なので僕達が先行して偵察を行えば大抵の危険は察知できますよ」
(まぁ、他にも正確な地図の作製とか出来るけど、それは後々の話だし今はいいか・・・(*´Д`*))
ガイアスさんと話していると、横から艶っぽい声で話に入って来たのは“Aランクパーティー、蒼炎“のメンバーのゼンガさん、(“男性“)、ゼンガさんは身長2メートル以上のガッチリとした体型の巨人種のタイタン族の男性なのだが、体は男性、でも、心は女性と言った人で、話してみるととても話のわかる良いお姉さん?おじさん?だ、ただ、この外見で話し方が完全に“おねぇ“なので違和感が半端ない、なので急に話しかけられると少し戸惑うのだ。(話だすと次第になれるんだけどね・・・(*´ー`*))
ゼンガさん「そうなのね、凄いわねぇ、て事はぁ~」チラッ
「あ、はい、彼らの存在は僕達は常に感じていますよ」
視線をわざとらしく天井に向けたゼンガさんに僕は素直に答えると・・・
ゼンガさん「まぁ~、それは本当に凄いわぁ~♪私達なんてさっき気づいたばかりですものぉ~」
と、体をくねくねさせて褒めてくれる。その動きにちょっと顔が引きつったが、褒めてくれるのは嬉しいので何とか耐えた。
ゼンガさん「そうだわ!それならガイアスリーダー、じゃ無かった、ガイアス隊長ぉ、この子達にも斥候役をして貰いましょうぉ~、多分ここにいるどの斥候役より、正確に偵察を行なってくれるわよぉ」
ガイアスさん「うむ、今回指名したパーティーの中には斥候役が優秀だと聞いたことがあるのと、他のメンバーとのバランスがいいと思ったから指名したが、今の聞く限り、斥候役は“情景の旅人“と“未知への挑戦“の2パーティーにも頼んでも良さそうだな・・・よし、君達のパーティーは斥候役を主体に動いてくれ、だが、洞窟内は複雑に道が分かれている可能性もあるから、君達だけではなく、他のパーティーの斥候役とも仕事をしてもらうがいいか?」
「えぇ、それで構いません、他の斥候役の方達ともちゃんと連携が取れるように尽力します」
ガイアスさん「おう、よろしく頼むな、他の斥候役もそれでいいか?」
「あ、はい」 「俺は構いません」 「・・・はい」
最初は僕の提案に良い表情をしなかったガイアスさんも、少々他の斥候役の人に失礼な言い方だったが、ゼンガさんの助言で僕の提案に乗り気になり、他のパーティーの斥候役にも押し切る形で確認をとって了承まで取ってくれた。若干不満そうな人もいたけど、先程の脅し、いや、忠告が聞いたのか、大っぴらに反対する人はいなかった・・・・
(まぁ、能力の高さを重視するのが冒険者だから、ソルのあの技術を見てしまったら反対はできなかったって方が正解な気もするな・・・)




