36話 初めてのお泊まり冒険者活動4
(あははは、まぁ、ギルドの運営にも資金は必要だからしょうがないよね!( ^∀^)あ、でも、今回の会議が僕達の学園終わりに設定されたのは、この国軍との合同作戦の知らせと、この選出があったから、全員が揃う必要があったんだな・・・)
夜月『まぁ、そうだろうな・・・』
と、話している間に洞窟内の探索担当のパーティーを選出の方法を決める話が進んでいくのだった・・・・
・・・パーティーの選出方法としてあちらこちらから意見が飛び交う中、冒険者の1人が手を挙げて意見を言い出した。
?「選出されるパーティーのランクは主軸となる“Aランク“以外はどのランクでも良いんですか?それとパーティーの数はどれくらいまでとお考えでしょうか?」
と、根本的な質問を投げかけていた。
(あれ?あの人、エレオスさんだ・・・今回もソロで参加かな?(・・?))
質問を投げ掛けた冒険者は知り合いの“ソロAランク“冒険者のエレオス・シエリーさん、この人は冒険者ギルドのサブマスであるグノーメ・シエリーさんの弟さんで、長年ソロで活躍する腕利さんだ。昨年、若手の冒険者達の中で1番早く“ソロでAランク“になった人で、誰もが認める実力者の彼はギルドの中でも評価が高く信頼されているので、僕達も依頼でよく分からない事があった時はよく質問をしていて、その質問にも嫌な顔もせず快く答えてくれる良いお兄さんだ。なので今回の“掃討作戦“でもソロでの参加が許されたのだろうと思い、眺めていると。
ギルマス「そうですね。洞窟の探索班にはまとめ役として“Aランクパーティー“は1組、あとは下のランクから最低でも5組ほどは欲しいです、実力があればランクは気にしませんよ」
(ふーん、そうなんだランク重視かと思った。それに5組ほどかぁ、まぁ、妥当な人数にはなるか・・・それに、洞窟内調査班に“Aランクパーティー“は1組だけか、他にも“Aランクパーティー“は人数は違えど数組いるのにそれより下から選ぶって事は、何が有るかは分からない洞窟内と外の大規模なゴブリンの巣を確実に殲滅させるために、参加している冒険者の戦力のバランスや洞窟内での動きやすさを考えて、あえて、人数調整で洞窟内は“Aランク“1組に他のランクから5組?って事?・・・て事は外の遊撃隊のリーダーも残った“Aランクパーティー“から選ぶつもりかな?(・・?))
通常、パーティーを組む時は最低でも3人から5、6人で組む事が多いので、それを“Aランク“を除いて残り5組というと最低でも15人、最大でも30名まで選ばれる可能性があるが、各パーティーの実力や洞窟内での動きやすさなどのバランスを考えながら選出するとなると、総勢20人から多くて25人ほどが妥当な人数になるだろうと予想、その結果、選出からあぶれた残りの冒険者達が遊撃隊となり、必然的に他の“Aランクパーティー“も遊撃隊に参加となるため、そちらのまとめ役となるパーティーも残った“Aランクパーティー“から同時に選び出すつもりなんだろうかと思っていると、そんな時なぜかエレオスさんが僕を見てニッコリッと笑ったのを見た・・・
(へっ?なんでこっち見て笑ったの?Σ('◉⌓◉’))
エレオスさん「ギルマス、その探索班のパーティーを推薦で決めるのはどうですか?」
(ふぁっ!?も、もしかして!?)
ギルマス「ええ、構いませんよ?どなたか推薦したいパーティーがあるんですか?」
「ちょっ「はい、“Cランクパーティーの情景の旅人“と同じく“Cランクパーティーの未知への挑戦“の2組を俺は推薦します!」「「「「「!?」」」」」・・・っ!」
(あ゛~~~~~遅かったぁっ~~~~!!(⚪︎Д⚪︎:))
春雷『やられましたね・・・』
夜月『あぁ、向こうが一歩早かったな・・・』
(くそぉ~~~!!僕はそんな目立つ事したくなかったのに!!(ノД`))
特にどこの配属になりたいとかはこだわりはなかった僕だったが、洞窟内の担当は目立つし若干面倒だとすら思っていたので、選出方法が話し合われている最中は沈黙を貫いていたのだが、予想外の人からかなり目立つ形で推薦されてしまった。
天華『まぁまぁ、アトリー、推薦されたからと言って、採用されるとは限りませんよ』
雪花『そうですよ、他にも同じランクのパーティーはたくさんいますし、他の人達もそれぞれ別のパーティーを推薦し出す人達が出てきますって』
(そ、そうだよね!それに僕達みたいな若いパーティーが出しゃばるなって思ってる人達だっているよね!( ̄▽ ̄;))
ジュール『まぁ、いると思うけど・・・それよりアトリーはさっき言ってた“大きな魔石“は欲しくないの?』
(ん?・・・あぁ!そうか!目立つし面倒とか、めちゃくちゃ他人事で考えてたけど、洞窟探索班になったら自分で取りに行っても良いのか!うーん、新しい魔道具の開発にも役に立つだろうし・・・チャンスがあるなら“大きな魔石“は欲しい!٩(^‿^)۶・・・はっ!なら、指名された今がチャンスか!?Σ('◉⌓◉’))
と、ジュールの言葉で簡単に心変わりをしていた僕は、この時、鋭い視線が密かに向けられていたのに気づかなかった。
「おい、その2組って例のあの子供達だろ?良いのか?推薦して・・・」 「あいつら本当に実力はあるのか!?」 「そうだな、貴族の子供達だしな?」 「でも、あの子供にはあの方達がいるから平気じゃない?」 「えっ、どうゆこと?あの子達の親のこと?」 「違うわよ、あんた知らないの?あの子達はね・・・」「はぁ!?それ本当なの!?」 「もともと実力もあるって触れ込みだったぞ?」「あんなにヒョロヒョロで?」 「前にあの子達が戦ってたところに出くわしたが、相当強かったぞ」 「でも、実力があっても子供よ?大丈夫なのかしら?」
(うわぁ、もう、僕達のことが知れ渡った・・・( ;´Д`))
僕達の実力や素性を知る人達と、知らない人達が半々で会話がなされていて、徐々に知らなかった人達が知っていた人達に教えてもらってと、次々と伝播していき、僕達の情報が行き渡った頃、エレオスさんの推薦を聞いて俯き加減で少し考え込んでいたギルマスが、顔を上げて僕達を見た。
ギルマス「そうですね、良いでしょう。推薦された2組のパーティーは実力は確かですので、洞窟内の探索班に入れましょう、ですがこの2組のパーティーは人数が少ないので、2パーティーで1パーティーとして数えます。あと残りは“Aランクパーティー“が1組と、その他のランクで4組を選びたいと思います。自選多選は問いませんが、実力が確かな方の参加希望、または推薦を受け付けましょう。その他要件があるときは手を挙げて、こちらから指名された方から順に発言なさってください、ではどうぞ」
「「「「「っ!!」」」」」 ガタガタッ! 「はい!推薦します!」 「こっちは参加希望だ!」 「はい!こっちも!」
そして始まったのは挙手の嵐、この光景はしばらく続くだろうと思い、僕はこちらを見てニヤニヤ笑っているエレオスさんにジト目で睨み返した。
(もう!ギルマスが僕達を洞窟探索班の参加を許可しなかったら、僕も自分も赤っ恥かくところだったのに、何ニヤニヤ笑ってるんだよ!( ゜д゜))
と怒っていると・・・
天華『(ギルマスはアトリーの実力をちゃんと理解した上で、参加を許可したんでしょう)』
夜月『(そうだな、今回の“掃討作戦“で1番難しい洞窟内調査をアトリーに頼むのは懸命な判断だ。もしもゴブリンの上位種の“ゴブリンキング“が出ても、アトリーならすぐに対処できるだろうから、他の冒険者達への保険の意味もあるだろうな)』
春雷『(それは良いのですか?)』
夜月『(何がだ?)』
雪花『(そ、その、アトリー様が親しくもない人間達に良いように利用されているのは宜しいのですか?)』
夜月『(あぁ、そう言う事か、アトリーが良いように利用されるのは面白くはない、面白くはないが、アトリーは自分の利益のために今回の洞窟調査には乗り気になっているからな、そこは尊重しなければならない、それに元々、アトリーが本気を出せば誰1人として怪我をさせずに終わらせる事ができる簡単な依頼なんだ、そういちいち騒ぎ立てる事はないだろう・・・)』
春雷『(そうなのでしょうが・・・)』
天華『(貴女が納得いかなくても、アトリーは全くもってそう言う事を気にしませんから、気にするだけ無駄ですよ。それにアトリーには強者としての自覚は薄いですが、自分の力が誰かに利用されているとわかっていても、実害がなければ困った人を自分のできる範囲で人助けする優しい性格なのです。それに、もしアトリーに実害が生じそうになっても、私達が目を光らせているんですから、すぐにそれを全力で阻止すれば良いだけの話ですよ・・・)』
春雷&雪花『『(!、そうですね!私達もアトリー様に悪さをしようとする者達に目を光らせます!)』』
と、アトリーの預かり知らぬ所で周囲への警戒態勢のレベルが1番高くなっていた・・・・
そんな、精霊達の気合いの入り方など梅雨知らず、僕は黒板に増えていく参加希望と推薦のリストをぼーっと眺めていると、今回招集された冒険者達の中にいる“Aランクパーティー“の2組で洞窟内調査班の筆頭争いが起こっていた。
(ふぁー、どちらのリーダーも自信満々で自分のパーティーで参加を希望してきてるから、ギルマスもどちらを採用するか悩んでんなぁ(*´Д`*))
と、他人事のように傍観していると・・・
パンッパンッ!
ギルマス「皆さん!一旦、落ち着いてください!このままでは、一向に班分けが進みません!なので、今から野外班と洞窟内班のリーダーとなる“Aランクパーティー“を投票にて決めていきたいと思います!」
そう言って、急遽始まった各班のリーダーを決める投票戦、こうなるとあらかじめ予想していたのか、小さなメモ帳サイズに切り揃えられた紙の束と大量のペンを取り出し、投票箱用なのか程よい大きさの四角い箱が黒板前の机の上に載せた、その紙の束をギルド職員が手分けをして、記入用のペンと共に配り始めた、そして、しばらくすると、その紙が全員に行き渡るのを確認すると、ギルマスが投票の説明をし出した。
投票方法は至ってシンプルで、配られた小さな紙に、洞窟内調査班のリーダーに相応しいと思った方の“Aランクパーティー“の名前を記入し、黒板前のテーブルの上に置かれた四角い箱に、パーティー名を書き終わった人から折り畳んだ紙を入れていって、全員の紙が回収できたら、回収した紙をサブマスが一枚一枚開いていき、書かれているどちらかのパーティー名を読み上げる、それを聞いたギルマスが両パーティーの名前が書かれている黒板に、読み上げられた方のパーティーの名前の下に票数を表すための線を描きたしていき、どちらがより多くの票を獲得出来たかで洞窟内調査班のリーダーに決めると言う事だった。
(あー、やっぱりこうなったか、ちょうど2組だもんなぁ、ギルド的にはどっちがどっちのリーダーになってもいいと判断したんだろうな・・・てか、さっきから手際がいいし準備万端って感じだから、ここまではいつものお決まりの流れっぽいね?(*´ー`*))
先程、洞窟内調査班の人選の条件を聞いた時から思っていたように、ギルマスは洞窟内リーダーの選出とともに野外の遊撃隊のリーダー決めを、この2組の“Aランクパーティー“で手っ取り早く決めようとしているなと、すぐに気づいた。周囲で交わされている話を聞く限り、この2つの“Aランクパーティー“は色々と個性的ではあるけど、悪い噂などは少ない印象だ。なので、ギルマスはどちらがどの班のリーダーになってもいい働きをすると判断したから、今この提案をしたのだろうと僕は思った。それに何故かすでに用意されている投票用紙と投票箱、それに準備の手際の良さなどを見て、これが定番の流れなのだろうと分かって、少し驚いたけど、このような争いがいつも起こっているのかと思うと少し呆れた。
天華『まぁ、よくある事なんでしょう、自己主張が激しい冒険者達同士が、ただの話し合いでスムーズに話が纏まる事がそうそう無いんでしょうね・・・まぁ、この方法なら、選ばれなかったパーティーからの不満は出にくいでしょう、自分達の日頃の行いが如実に現れますからね。それに、このような重大な探索任務となると、他の冒険者達からの信頼性が重要になってきますし、複数のグループを纏めるリーダーとなると軽くない責任も伴いますから、それをちゃんと理解して、尚且つ人望がない事にはリーダーとしてふさわしくないと言う意味での、この“投票でのリーダー決め“なのでしょうね・・・』
(うーん、そうだよね、妥当な方法だよね、そうしないと、他の参加希望の冒険者達を納得しないんだろうし(*´Д`*))
ジュール『それで?アトリーはどっちに投票するの?』
(あー、それねぇ、どうしようか・・・・・)
と、言葉を濁した。何故なら僕は、今、洞窟内調査班のリーダーの座を争っている2つの“Aランクパーティー“の事を何一つ知らないので、どちらに投票したら良いものかと頭を悩ませる事になってしまった・・・・・




