35話 初めてのお泊まり冒険者活動3
どうも、僕です。ちょっと訳のわから無い状況になってきました・・・・
(あー、そっちのが有力な仮説だな、この農村自体も王都から近いけど、その横にある山の反対側にある“ゴブリンの巣“も王都からそんなに距離は変わんないもんね・・・王都を襲わせるとなると相手は他国の工作員の仕業?・・・・うーん、でも、王都を襲撃する目的だとするなら、逆に“ゴブリンの巣“の規模が小さい気が(*´Д`*)・・・)
『『『『『確かに?』』』』』
流石に町規模の“ゴブリンの巣“とは言え、一国の王都を攻め落とすには規模が小さ過ぎると思っていると、話は調査された“ゴブリンの巣“の周辺地形の話と、今回の1番重要な情報である“ゴブリンの数と発生しているかもしれない他の上位種の話“となっていた・・・・・・
サブマス「今回、ゴブリンの巣が発見された場所は、北の街道沿いにある村から程近い山の反対側にあると申しましたが、この山はそれほど高さがなく、形も独特なものなので村から距離はさほど無いのですが、ゴブリンの巣は周囲を切り立った山が囲むようにあり、唯一、南の一方向だけが開けていて、そこが入り口と言っても良い場所になってます。ゴブリン達の巣はさらにその先の奥まった窪地にある為、作戦は必然的にその窪地に入る南側からの入り口からの正面から、または周囲の切り立った山の上からの襲撃となる予定です」
と、地図を指差しながらサブマスが説明をしている。話の通り、山は変な形をしていて、よく見るとアルファベットの“J“の文字を逆立ちさせたような形をしていた。“J“と言っても大文字の“J“の長い縦棒の上に小さな横棒が付いているタイプの“J“だ。その逆さになった“J“の文字の曲がった部分の底にゴブリンの巣ができており、“J“の長い部分がゴブリンの巣と村を隔てている山となっていた。直線距離にすると凄く近いのだが、多分実際は山の高さもあるため、山の上からの襲撃となると、そこを越えてゴブリンの巣まで行くのは結構大変なのではないか?と思った僕。
(あらら?いつの間にか話が進んでいたね。よし!今は、黒幕の推測をするより、今回の“掃討作戦“の事を考えないとね!( ^∀^))
天華『そうですね。・・・それにしても何回見ても不思議な形をした山ですね?』
(だねぇ、自然にできたにしてはおかしな形、まさに逆さ“J“の字だね・・・でもコレ、ゴブリンの巣を全包囲するとしたら、村から最短で山越してから包囲するのかな?(・・?))
とか思っていると・・・
ギルマス「そして、諸君が1番気になっている“ゴブリン“に関しての事ですが、この巣には通常のゴブリンの数が約600匹以上、上位種と思われるゴブリンは約25匹以上確認されています」
ザワッ!!
「上位種が25匹以上!?」 「多過ぎだろう!?」 「いや、通常のゴブリンも数も600匹だぞ!?そっちも多過ぎだって!!」 「コレ、人数足りるのかよ!?」
と、先程まで慣れた様子で静かに説明を聞いていた冒険者達も、流石にゴブリンの数と上位種の数を聞いて騒ぎ始めた。
イネオス「通常のゴブリンだけで600ですか。多いですね、この人数で倒し切るにはかなり手間がかかりそうですね・・・」
ベイサン「普通の巣の10倍以上の数だ、多過ぎだろう・・・それに上位種が25匹か、どの種類かによるがこの人数だと厳しいんじゃないか?俺達がちまちま雑魚狩りして、上位ランクの人達がそれを相手にするにしても、1人1匹ずつ相手にすることになるぞ!?」
へティ「そうかしら?数だけなら私達でも剣で相手にしても、半分ほどならどうにかできるでしょう?そう考えると逆に冒険者の方が多いわよね?」
ソル「どうでしょう?通常のゴブリンだけの場合ならそう難しくはないですが、上位種がどのような力を持っているかは分かりませんよ?」
「皆んな、白兵戦する方向で話してるけど、盆地なら油を染み込ませた布や油が入った瓶ごと放り込んで、火魔法で火をつけて燃やせばすぐにかたがつきそうじゃない?それに周りの森に火が燃え移らないようにとゴブリンが逃げ出さないようにとで、盆地を覆うように結界で閉じ込めたらこちらの被害なくて済むし、後片付けもしなくて済むよ?惜しくはちょっと片付けが手間になるかもだけど盆地全体を氷魔法で凍らせるとか?・・・あ!でも1番簡単なのは雷を巣全体に落とすのが1番手取り早いね!コレなら火魔法で攻めるより火事にはなりにくいし、氷魔法で凍ったゴブリンから魔石をとる時より苦労はしないよ♪」
「「「「!」」」」 「「「「「えっ!?」」」」」 「「「「「はぁっ!?」」」」」
皆んなが討伐の方法を議論しているので、僕が思いつく限りの作戦を話したのが、イネオス達はそんな手があったの!?みたいな表情をしてたり、ソルはやれやれと言った表情をしてたりしていた。でも、ソルやイネオス達以外の冒険者達は目を大きく開けて、かなり驚いた表情をして僕を見てきた。
(あんれぇ???(・・?)僕の作戦ダメだった?)
と、頭を捻っていると、ソルが・・・・
ソル「アトリー様、ゴブリンの巣を燃やすのはともかく、あの規模の巣全体を覆うような結界魔法や、全てを凍らせることのできる氷魔法や、大量の雷を一度で落とす事のできる雷魔法は普通の冒険者の魔法使いでは無理ですからね?それに、その作戦だと他の方のお仕事まで奪ってしまいますからダメですよ?」
「・・・あぁ、そうだった。つい、いつもの癖で・・・」
自分の規格外をたまーに忘れる僕はまた、今回のゴブリンの巣を殲滅する為の作戦を自分1人でできる範囲で考えてしまっていた。
ソル「今回は他の冒険者さん達がいるからもっと抑え気味な作戦を考えましょう?」
「うん、分かった、あ、だから皆んな白兵戦での作戦を考えてたんだね?」
ソルにいつものように嗜められて反省した僕は、ソルが言った言葉で、皆んなが魔法無しでゴブリンの巣を襲撃する作戦を練っていた理由はそう言う事かと、納得しようとした時・・・
イネオス「えっ、いや、それはちょっと違います。今回の依頼では攻撃魔法を使わずに、他の冒険者さん達と協力して依頼を達成して来なさいと、父上達から言われてまして・・・あ、もちろん回復魔法や結界魔法のような補助系の魔法は使っていいと言われましたから安心してください・・・」
「え、そうなの?…もしかして今回のお泊まり許可された時の条件はそれ?」
イネオス「はい、そうです・・・」
と、イネオス達が家族から出された条件だったことを素直に話してくれた。確かに、今回のように日を跨ぐような依頼を受けるのは初めてなので、宿泊の許可を得るときに条件を出されることは、イネオス達だけじゃなく僕も何かしらあるだろうと予想はしていたが、僕の方は予想外に何もなく、イネオス達の方は条件がついたと聞いてはいたが、その条件、というか課題?のようなものだったとは今初めて聞いた。
「ん?じゃあ、皆んな武器だけで戦うのは決定なんだ・・・あれ?ソルは?ソルも何か条件出されてた?」
と、ソルは条件なんて出されていたか?と思ってソルの顔を見ると。
ソル「いえ、僕はこれと言った条件はないですよ。いつも通り、アトリー様と一緒にいるようにと言われてます」
「・・・そうか、僕達だけ条件無しって言うのはなんか面白くないから、今回の依頼中はイネオス達の条件と同じように攻撃魔法無しで行こうか」
イネオス達「「「えっ!?」」」 「「「「「はぁ!?」」」」」
僕の提案にイネオス達や他の話を聞いていた冒険者達も驚きの声をあげていたが、僕は今回の提案は案外良い思いつきだったのではないかと、少しウキウキしながらソルの返答を待った。
ソル「・・・ふむ、それは良いですね。最近、訓練も代わり映えがなくて面白みに欠けて来てましたから、条件を決めて依頼に挑むのも面白そうです」
「そうだよね!じゃあそれで行こう!」
「「「「「えぇっ!?」」」」」
僕の提案にソルが乗ったことで周囲の冒険者達はさらに大きな声で驚いていたが、イネオス達は逆に僕達が自分達と同じ条件になった事をそれはそれで楽しいかもと、言って賛成してくれた。一応、緊急時には攻撃魔法の使用をして良いと条件も足して、皆んなでワクワクしならがどう戦うかと話していると・・・
ギルマス「ゴホンッ!!」
ギルマスが大きな咳払いをして再びギルマスの方に注目が集まった。
ギルマス「話はまだ続いています!こちらに集中しなさい!」
と、一喝したことで浮き足立っていた冒険者達は大人しく席に座り直し前を向いた、その時ギルマスが一瞬、困ったかのような表情で僕を見た後、先程の話の続きを始めた。
ギルマス「では、話を続けます。今回のゴブリンの巣は周囲を切り立った山に囲まれているのは見ての通りですが、そこに新たな情報として、こちらの地図では、ここに洞窟があることが判明しました」
そう言って指を刺した場所は“J“の文字のアール部分の下の方、ゴブリンの巣の入り口から1番遠い場所だった。そこにはよく見ると小さく亀裂が描かれている場所でギルマスが言うにはそこの亀裂が拡がっていて、中は洞窟のようになっていたと、調査隊から報告があったらしい。そして、調査隊はその中を探索しようとしたが、出入りするゴブリンが多く、内部は細い道もあったため、奥深くまで進めず、入り口から浅い場所までしか調査ができてないとの事、なので洞窟の全域は未確認であると言う・・・・
(えー、それって、さっき言われた数以上にゴブリンが多く生息している可能性があるって事だよね?(*´Д`*))
ざわっ!!
僕のように討伐するゴブリンの数がもっと増える可能性に気付いた人達は他にも多くいたようで、会議室内は騒然、その中でもギルド職員側はこの騒ぎは想定内なのか、冷静に騒ぎが収まるのを待っているようだった。次第に冒険者達が落ち着いて来たのか、喧騒が静かになってきたその時、ギルマスが次の情報を出してきた・・・
ギルマス「皆さんが懸念されている事は今回この人数で“掃討作戦“を遂行できるのかと言う点でしょう、ですが今回の大規模なゴブリンの巣の発見は異例中の異例の状況であるため、王国側からも戦力として国軍の派遣を約束していただいてます。「「「「「何!?」」」」」「「「「「国軍が!?」」」」」派遣人数は約150名の予定ですので、今回の“掃討作戦“の討伐参加人数は総勢200名以上になります!」
驚きの情報に再び会議室内は騒然、国がゴブリンのような脅威度ランクが低い魔物の討伐作戦に軍の派遣をする事なんてそうそうない為、この反応にも納得だが、
「マジかよ!それなら、楽に討伐できるな!」「国軍が動くなんて、何年振りだ?」「ここ最近、暴動や戦争もなくて平和だったもんな」「力持て余してんじゃねぇか?」
と、意外にも国の軍が出てくることに関してこれと言った悪感情はない様子。
(ほわぁ~、軍人さんが出てくるのかぁ( ・∇・)、そう言えば騎士団や衛兵隊の人達にはあった事はあるけど、軍人さんには会ったこと・・・いや、会ったな・・・(*´ー`*))
3年前の神殿で起きた事件の際にあった事を思い出していると・・・
ギルマス「静かに!最後まで話を聞きなさい!」
と、ギルマスに再び一喝されたことでまたも静かになった冒険者達、ちゃんと静かになった事を確認してギルマスがまた説明を続けた。
ギルマス「・・・今回の“掃討作戦“では国軍と共同作戦となる為、事前に軍上層部との協議した結果、作戦中は役割分担をすることになりました。
まず、“ゴブリン掃討作戦“の簡単な内容を説明しながら、本作戦で我々が担う役割もともに説明していきます。
作戦決行日は今週末の日の日の早朝を予定、我々冒険者ギルド側は“掃討作戦“に参加する人達を前日の土の日の早朝に集めて王都を出発、その日のうちに件の農村、“チーボ村“まで移動しますが、今は当日の作戦の概要以外の移動手段や宿泊などの説明は一旦省きます。
今回の作戦は国軍を主軸にゴブリンの巣全体を静かに包囲し合図とともに総攻撃を仕掛け、徐々にその包囲を縮めてゴブリン達を追い詰めていく予定です。
そして、その際に国軍が取り逃したゴブリンの討伐や、国軍の手に負えない上位種の討伐を遊撃隊として臨機応変に対処していく役割を求められました。それとは別に今回の巣の奥には洞窟もありますので、そこはダンジョン探索などに慣れている“Aランク“冒険者パーティーを中心に、数組の冒険者パーティーに洞窟内のゴブリン討伐を任せて貰うようにかけ合いましたので、今から、その洞窟担当のパーティーの選出を行いたいと思います!」
「「「「「選出!?」」」」」
(おー、なんかゴリ押しっぽいけど作戦的には理にかなってるな、訓練された軍の連携で通常のゴブリンを倒して貰って、魔物との戦いに慣れた冒険者達を遊撃隊として上位種や取りこぼしを相手にして貰う事で、大人数の連携に不慣れな冒険者達の活躍の場を提供してもらい、国軍側も目の前の数の多い通常のゴブリンだけを倒すことに集中できる環境を作って貰っていると言う、win-winな関係ってことだね、うーん、実に理にかなってる。しかも、洞窟の探索の権利の方もちゃっかり貰ってきてるな、むしろギルドの目的はこっちの方か?(*´Д`*)洞窟内で巣を作るゴブリン達は必ずって言って良いほど、洞窟内の奥に行くと強い上位種が住んでいるからな、今回のゴブリンの巣の規模を見た感じ“ゴブリンキング“がいるとギルドは思ってるんだろう、そうなると“ゴブリンキング“が保有しているであろう“大きな魔石“が目当てだろうな、( ̄▽ ̄)じゃなきゃ、わざわざ洞窟内の探索権を貰って、洞窟内の探索に“A ランク“のパーティーを主軸にして探索に力入れる必要ないもんね・・・)
魔物から取れる魔石は様々な用途で活用されるエネルギー源扱いで、色形や大きさなどで使用用途が分かれていく。特に“ゴブリンの上位種“など脅威度ランクが高い魔物には、色付きの大きな魔石が手に入る確率が凄く高く、市場価値もすごく高いので冒険者ギルドはそれを手に入れようとしているのだろうと僕は推測した。
天華『まぁ、大きな魔石は国で使用されているようなエネルギーの消費が激しい大型の魔道具や、様々な儀式の為の供物などに使われますからね。今回の“掃討作戦“で冒険者達が倒した魔物の魔石を冒険者ギルドに売った場合、冒険者ギルドに他のギルドから買い取りたいと申し出が殺到することでしょう。そうなれば、他のギルドは冒険者ギルド側の言い値で買い取ることになりますから、買取価格と販売価格との差額で冒険者ギルド側の儲けが出ますからね。ただでさえ大きな魔石ほど時価での取引となりますから、金額は選び放題ですし・・・まぁ、それでも節度ある価格を提示はするでしょうがね・・・』
(あははは、まぁ、ギルドの運営にも資金は必要だからしょうがないよね!( ^∀^)あ、でも、今回の会議が僕達の学園終わりに設定されたのは、この国軍との合同作戦の知らせと、この選出があったから、全員が揃う必要があったんだな・・・)
夜月『まぁ、そうだろうな・・・』
と、話している間に洞窟内の探索担当のパーティーを選出の方法を決める話が進んでいくのだった・・・・




