34話 初めてのお泊まり冒険者活動2
(それにしても、お試しとは言え、新規の新人メンバー含めた初の依頼をこんな危険な“掃討作戦“にするものかね?むしろお試しで初めての依頼なんだからもっと危険の少ない依頼はあっただろうに(*´Д`*)そのパーティーのリーダーは何考えてるんだ??)
僕はヨンガン君の話を聞いて、彼に声をかけてきたパーティーリーダーの行動に疑問を覚えた。そして同じように話を聞いていたソルやイネオス達も僕と同じ疑問を持ったのか、眉根に皺を作って不信感を露わにした・・・・
「ねぇ、ヨンガン君、その誘われたパーティーの人は・「ヨンガン君!」!・・・」
ヨンガン君がお試しで入ったパーティーに不信感を持った僕は、そのヨンガン君を誘ったパーティーメンバーを教えて貰おうと話し出したその時、いつもの癖で中央の1番後ろの席に座っていた僕達、その前方から、ヨンガン君を呼びながら近づいてきた数人の冒険者達がいた。
?「話してるところごめんよ、ヨンガン君、そろそろ会議が始まりそうだから、すまないが元の席に戻ってきてくれないか?」
ヨンガン君「あ、ローシ“リーダー“、無断で抜け出してすんません、今行きます」
リーダー?「いや、良いよ、知り合いのだったようだし、積もる話もあったんだろう?それはそうと、君達は学生さんだよね?」
ヨンガン君に“リーダー“と呼ばれた優し気な男は僕達を観察するように見てきて、僕達が学生である事を確認してきた。
ソル「そうですが、何か?」
リーダー?「あぁ、いや、今回の“掃討作戦“は“Cランク“からしか参加できないと聞いていたから、君達のような若い冒険者達がいるのが珍しくてね・・・、あ、そうだ、名乗り忘れていたね、私は“Bランクパーティーの《栄光の腕輪》“のリーダーをしている、“ローシ“だ、見ての通り槍を主に使っているよ。他のメンバーを紹介したいところだけど、今は私だけで許してくれ」
(何だ?僕達の冒険者ランクを疑ってる??(-_-?))
ソルが素っ気なく返事を返したのにも怯まず、笑顔で自己紹介をしてきた“ローシ“というリーダーの最初の言葉に引っ掛かりを覚えた。
「自己紹介ありがとうございます。初めまして僕は“Cランクパーティーの《情景の旅人》“のリーダーを務めています、アメトリン・ノブル・デューキスと申します。僕のパーテーはこちらにいる彼と2人だけですので、他、3人の友人達が組んでるパーティーのリーダーがあちらの彼です」
イネオス「初めまして、アトリー様に紹介頂きました僕は、イネオス・ノブル・ヴィカウタと申します。“Cランクパーティーの《未知への挑戦》“のリーダーを務めています。以後お見知り置きを・・・」
リーダー「あ、あぁ、よろしく、・・・2組とも“Cランクパーティー“なんだね?若いのに凄いね君達・・・」
リーダーのローシは僕達が貴族である事を分かった上で、自分の言葉で少しは怒ると思っていたのか、自分の予想より丁寧な自己紹介が返ってきて、少し慌てた様子だったが、僕達の“パーティーランク“がちゃんと“Cランク“だったことに素直に称賛してきた。だが、彼のパーティーメンバー達は僕達のことを知っているかどうかは分からないが、少し思うところがあるようで、複雑そうな表情をしていたり、あからさまに僕達の実力を疑っていそうな表情をしている人もいた。
そんな会話をしている内に会議の時間がきたのか、会議室内にギルマスとサブマス、そして数人のギルド職員が入ってきた。
ギルマス「皆、席に着いて、会議を始める!」
と、言う掛け声で会議室内の冒険者達が素早く動き出した。ローシリーダーやその他のパーティーメンバーも元いた席に戻り始め、ヨンガン君も僕達にまた後でなっと、一声掛けてその後を追って僕達から離れていった。
そして、少しすると冒険者全員が席に座ったのを確認したサブマスが、連れてきていたギルド職員に何やら指示を出した。すると指示を受けた職員達が手に持ってきていた巻かれていた大きなポスターのような分厚い紙を黒板に広げて貼った。その広げられた紙を見た冒険者達は息を呑みしばらく沈黙した。
(・・・ふーん、やっぱり今回の“掃討作戦“でのこの人数の多さはそう言う事ね・・・・)
と、僕はその紙を見て、この冒険者の数の多さに納得し、今回の“掃討作戦“は一筋縄では行かないなと確信した。何故なら広げられた紙に書かれていたのは今回の作戦の実行場所になるであろう村の周辺地図であり、その村から山を挟んだ反対側の山の麓あたりに記されているゴブリンの巣らしき物が、近くの村より大きく描かれていたからだ・・・
どう見ても山を挟んで反対側の村の規模を軽く超えていて、ゴブリンの村と言うより町に近い規模で“ゴブリンの巣“は広く書き記されていた。それを見た冒険者達は予想以上の規模に驚き沈黙したのだった。
(ゴブリンの巣にしては大きすぎるし、この規模なら上位進化したゴブリンが絶対いるだろうな、ジェネラル級かそれ以上、もしかしたらキング級もいるか?)
そんな事を考えていると、押し黙った冒険者達を前に、ギルマスがよく通る声で今回の“ゴブリンの巣、掃討作戦“の話をし出した。
ギルマス「諸君、見ての通り、今回の“掃討作戦“の対象となる“ゴブリンの巣“は大変大規模である事はわかって頂けたたでしょう。その大きさに驚いた者達も少なからずいると思います。ですが、今回の作戦は当ギルドで今最優先に行わなければならない“緊急事態“と言っていいもの、もし、今ここで辞退したい人がいるなら、ここで見たものは他言無用と言う誓いを立てて、この部屋から出ていっても構いません・・・」
ギルマスはこの“掃討作戦“の参加を辞退するなら今だと言って黙ると、集まった冒険者達の顔を1人づつ見ていた、それはまるで今回の作戦に参加する覚悟があるかを確認しているようだった。そして、その沈黙はしばらく続き、この会議室から出ていく者達がいないか様子を見ていたが、誰もその場から動く様子がないないので、全員が“掃討作戦“の参加を辞退しないと意思表明したとして解釈したのか、“掃討作戦“に至るまでの経緯の詳細を説明し出した・・・
・・・しばらくして・・・
(うーん、ここの村って王都からかなり近い場所にあったよね?それなのに、ゴブリンの巣がこんなに大きくなるまで気づかないものかな?(・・?))
ギルマスの説明を聞いていて1番に思ったのはこの疑問だった。ことの始まりを簡単に説明すると、王都の北側、マルキース領へ続く街道の途中にあるさほど高さの無い山沿いの農村でここ最近、微かな異変を感じた村の狩人が通常なら滅多に行く事ない山の反対側へ赴き、その異変の原因を探る過程で遭遇した“ゴブリン達“がことの発端だと言う。
そのゴブリン達は見たところ何処にでもいる普通のゴブリンではあった、だが、ただそれだけでは普通今回のような大規模な“掃討作戦“を組むような事にはならない、では何故このような事になったか、それは単純にその数が異様なほど多かったからだ。
通常ゴブリン達が群をなして巣を作るとしても、5、60匹の群れであることが大半だ。そして、その群れから離れて食糧調達に赴くゴブリン達は、通常3~5匹程のグループを作り、そのグループも巣の規模にもよるが1~3組ほどが交代で狩に出ているのが普通、規模が大きくなってもグループの人数は変わらず、狩に出ているグループの数が増える程度だが、今回狩人が遭遇したゴブリン達は10匹程で行動しており、その中の少し大きな個体の1匹がそのグループを引き連れて狩りを教えているようだったと、そこで狩人はそのゴブリン達の行動の異常性に気づき、すぐに村に帰り村長に報告、その報告を受けた村長から丁度、街道警備で巡回中だった衛兵隊に相談したことで、冒険者ギルドにも一報が入り、その報告を聞いたギルマスが独断で調査隊を派遣し周辺の土地を調査した結果、今回の“ゴブリンの巣“の規模の全容が発覚し、その事を国に報告をあげた事で国からの依頼で大規模な“掃討作戦“が計画されるに至ったと言う事らしい・・・
*そもそもゴブリンが村などの近くに巣を作り始めた時点で、何かしらの異変に気づく村の専属狩人が多く、“ゴブリンの巣“を駆除する程の規模になるとすでに人里で悪さをしている事がある、だから、そう言う“ゴブリンの巣“はすぐに発見されてしまい、ギルドに依頼が舞い込み数組の冒険者パーティー達に討伐される。要は人里近くにある“ゴブリンの巣“はさほど大きくなる前に発見され壊されているので、今回のように村が近くにあるにも関わらず、前兆のないまま大規模な“ゴブリンの巣“の発見はかなり異例中の異例だ。
天華『そうですね。説明によると、その巣から1番近い農村専属の狩人が魔物や動物などの獲物の減少に違和感を覚え出して、山向こうの麓を確認しに行った流れで発覚した緊急討伐依頼のようですから、全く前兆がなかった訳ではなさそうなのですが、その動物の減少に気づいたのがここ最近と言うのに、ゴブリンの巣の大きさが異変が起きた時期からすると大き過ぎると思います。
あの地図に記されているような巣の規模からするともっと前から異変が起きていてもおかしくないですし、この規模でしたらもっと早くにこの農村がゴブリン達にバレていて、襲撃に遭っていてもおかしくなかったはずです。なのに、今回の狩人が発見するまで何も起こってなかったのは明らかに異常です』
(だよねぇ(*´Д`*)・・・そのゴブリン達を発見した狩人さんもさぞ驚いただろうけど、そこはすぐにその事を村長さん知らせる判断をしたのはさすが狩人さんだね。これがもう少し遅かったら周辺の食料となる魔物や動物達が減って、人里に出没して人を襲い出すところだろうし、真っ先に犠牲になるのはこの農村だっただろうしね。
でも、本当におかしな話だよね?天華の言う通り、誰にも気づかれずゴブリン達が少しずつ増えていったとしても、何処から食料を調達してたんだろう?もしゴブリン達が大規模に周辺の動物達を狩って食糧にしていたなら、魔物も動物達も馬鹿じゃないから、その危険な土地から逃げ出したりしてもっと早くに狩人さんは異変に気づけたはずだよね?
今回のように動物がいつもより少ない気がするな、なんて極わずかな異変しか無いぐらいの範囲でしかゴブリン達は動物を狩ってなかった?それに1匹のゴブリンが狩りの仕方を教えていたなんて、まるで、ここ最近、やっと周辺の動物達を対象に狩りをし始めたかのような、そんな印象だよね?)
天華や自分の分析でも異常さが際立つゴブリン達の行動や、その“ゴブリンの巣“の大きさは今までに無いケースと判断するしか無いのだが、どう頭を捻り考えてもその異変の原因が何処にあるかが分からない。
夜月『確かにな・・・あのゴブリン達の巣の周辺に農村方面とは別方向に動物以外の食糧となる何かがたくさんあったのかもしれないな・・・』
(別の方向に動物以外の食糧、それが増えすぎたゴブリン達のせいで尽きて農村付近の生物を狩り始めた、と?(*´ー`*))
夜月の仮説を聞いてもイマイチしっくり来ない説だなと思っていると・・・
夜月『うーん、アトリーの言いたい事は分かるぞ、その話だとあまりにも都合が良過ぎると言いたいのだろう?だが、この異変をどう考えればいいものか・・・・・、!、そうだな、もう一つ嫌な仮説を考えついた、だが、これが本当に実行できるものかどうかは分からん・・・』
(え?どんな仮説?(・・?))
夜月『誰かが意図的にゴブリンの巣を育てた可能性だ・・・』
『『『『(っ!?)』』』』
夜月の考えた末に行き着いた仮説は思った以上にぶっ飛んだ説を提唱してきた。
(・・・そ、それは人間が秘密裏にゴブリンを育てていた、と言うこと?)
夜月『あぁ、そう仮定すると、今までゴブリンが人里に出てこなかったのは、誰かが定期的に餌を与えていて、ゴブリン達が自分達で食糧をとりにいく必要性がなかったと予想できる、そして、今までゴブリンの巣が見つからなかったのは魔法か何かで隠していた可能性はある・・・』
(うわぁ、そう言われると、今回の異様に大きいゴブリンの巣が発見されるのが遅れた理由にも納得できる(*´-`)・・・それに今、このゴブリンの巣が発覚したって事は、それを仕組んだ相手が意図的にバラしたって可能性も出てきた。と言う事はこの“ゴブリンの巣、掃討作戦“を行わせるように誘導した事になる。要は、その“掃討作戦“に参加する冒険者達を罠に嵌めたいがためにゴブリン達を育てたってこと?・・・)
夜月『・・・もしくは、誰かがこの国の王都を襲わせるために秘密裏に仕組んだ作戦か・・・』
(あー、そっちのが有力な仮説だな、この農村自体も王都から近いけど、その横にある山の反対側にある“ゴブリンの巣“も王都からそんなに距離は変わんないもんね・・・王都を襲わせるとなると相手は他国の工作員の仕業?・・・・うーん、でも、王都を襲撃する目的だとするなら、逆に“ゴブリンの巣“の規模が小さい気が(*´Д`*)・・・)
『『『『『確かに?』』』』』
流石に町規模の“ゴブリンの巣“とは言え、一国の王都を攻め落とすには規模が小さ過ぎると思っていると、話は調査された“ゴブリンの巣“の周辺地形の話と、今回の1番重要な情報である“ゴブリンの数と発生しているかもしれない他の上位種の話“となっていた・・・・・・




