31話 伝言をしてきたのは・・・
今、この時、会議室内の人達はアトリーが纏った“神力“の神々しさに圧倒されていたと同時に、“神力“の淡く光るオーラを纏ったアトリーの美しさにも見惚れて言葉を失っていたのだった。ここ最近は体も成長し少し男の子らしい特徴が出てきたとはいえ、元来の中性的な美しさも損なう事なく成長してきていたアトリーに、“神力“がもたらした変化がさらにアトリーの中性的な美しさに磨きをかけていた。
美しい白銀の髪はキラキラと光り、元々色白で滑らかな肌は淡く光るオーラのおかげで、さらに現実味のない陶器のような滑らかさと白さに魅せて、そのまだ幼さを残す美しい中性的な顔立ちに妖艶さが追加された。トドメは珍しい色合いの瞳がさらに色鮮やかさを増し、全てを見透かすような人々を惹きつける力が加わって、誰もが目を離せない魅力があった・・・そして、全身を包むオーラには神々しい畏怖を感じる効果があるのか、魅了されても近づくことが許されない、そんなもどかしい心境にさせるのだった・・・
そうして、結局、この変化に全員がどう反応したら良いのか分からず、ただ呆然と魅入るだけの状況が数分続いた・・・
(ところで、僕はいつまで“神力”出してれば良いんだろう???(・・?))
と、大人達の心境に全く気付いてない僕はそんな事を思っているだけだった・・・・
・・・・数分後・・・
最初に我に帰ったのは僕の母様だった。母様は正気に戻ってすぐに自分の横にいた父様の肩を揺すり正気に戻すと、反対の席にいたお祖父様も同じように正気に戻す。そこからは他の人達もポツポツと正気に戻る人たちが出てきて、やっと大司教様以外の人、全員が正気に戻り、さっきまでの惚けた表情ではない緊張した顔つきで再びこちらを見た。その間うちの家族の次に正気を取り戻した王族の大人達が、まだ呆然としている、ことの発端のロズ殿下を無言でグーで殴って、正気に戻していたのを見てしまった。正気を取り戻している他の人達の騒ぎに紛れてよく聞こえなかったが、ロズ殿下は大人達に小声で次々叱られていたようだ。
サフィアスおじ様「ん゛、んっ!我が息子が失礼しました。・・・ミシオン大司教、そろそろ立ち上がって、本来の役目を果たしてもらえないだろうか?」
サフィアスおじ様の簡単な謝罪に僕は軽く頷いて返すと、少し安堵した様子を見せた王族面々、次は仕切り直しとばかりにまだ床で僕に祈りを捧げている大司教様を正気に戻した。
大司教「はっ!・・・も、申し訳ございません。あまりにも神々しいお姿につい祈りを捧げてしまいました・・・」
「いいえ、気にしてませんよ。それより、今回の本題である、神殿で起こったことの詳細な説明をして頂きたいのですが…、あ、あと、結婚式の最中に騒動を起こした、あの女性の事もこの場でお聞きして良いんでしょうか?」
正気を取り戻した大司教は少し恥ずかしそうに謝罪してきたのだが、僕はこの人にこれ以上祈り続けられると話が進まないので気にしてないと言い、自分がここに呼ばれた本来の話題と、ついでに披露宴で中断された、あの女性の件を合わせて問い合わせた。
大司教「?、神殿でのお話はわかりますが、あの女性?」
と、大司教は首を傾げた。
(うん?これは管轄が別だったか・・・て事は・・・( ̄▽ ̄))
明らかに大司教様があの女性の件に関わっておらず、情報の共有もされてない事に気づいた僕は、当事者であるジルおじ様をチラッと見ると。
ジルおじ様「あ、それは私から後で説明します。ミシオン大司教は神殿での事を先にお話しなさってください」
と、簡潔に返答し、大司教はそれを聞いて分かりましたと返事を返した後、姿勢を正して会議室内を見渡した。
大司教「皆様、先程はお見苦しい所を見せてしまい申し訳ありませんでした。「ペコッ」・・・んっ、では、仕切り直しさせて頂きます・・・・・・」
最初に謝罪をして頭を下げた大司教に、全員が無言で軽く頷き返し、その後も言葉を発する事なく、視線で続きを促したので、大司教は気持ちを入れ替えて話を進めた。
話はまず“魔法契約書“の破棄で生じる情報漏洩に関する件で、今回の話し合いの詳細は他言無用と念入りに釘を刺し、僕の前で主神様に誓わせてから、やっと神殿で起こった事を話し出した。
「「「「「・・・・・」」」」」
「・・・あの時、そんな事が・・・・」
(・・・えーっと、コレって、よその世界?の神様の手違いで僕に伝言メッセージが飛んできたってことで良いかな?(*´Д`*))
天華:『まぁ、そんな感じです』
頭の中で情報を整理して、出た答えを天華に確認していると、ふと、ココであることに気づいた。
「ん?天華、今のは、今だけじゃなくて、夜月も何回か皆んなに話しかけてた?」
いつもだったら僕とだけ念話する天華達の声が、会議室に入った時や他の時もちょいちょい話に参加をしていたことに今頃気づいた僕、この話し合いの空気で少し緊張していたのもあったが、会議室内の皆んなが当たり前のように聞いていたから、気づくのが遅れた。
夜月:『今頃気づいたのか?うむ、そう言えば、私達もアトリーにその事を伝え忘れていたな・・・バラした経緯は、アトリーが倒れた後、その場が少々混乱していたのでな、混乱を鎮めるために仕方ないしに声を伝えた』
「そうだったんだ・・・」
夜月達が前々から僕以外との会話をするのを嫌がってはいたけど、意思疎通が必要な時はバラす事もあるだろうと、ちゃんと事前に聞いていたから、そう大して驚きはしなかったが、自分に関係することで来た伝言の事でこうもあっさりとバラしてしまったのが意外だった。そして、室内の人達は僕と天華達が話している間でも物珍しそうに見てはいるけど、それについて質問してくる事なく、僕達のやり取りを静かに見守っていた。
(まぁ、その混乱で結婚式を中断されそうになったんだろうと察しはついたけど、今後、自分に話しかけてくる煩わしさより、僕の楽しみを優先させてくれた事はかなり嬉しい( ´ ▽ ` ))
「・・・まぁ、混乱するのも仕方ないね、その伝言?って言うのはどう聞いても僕のことだったんでしょう?それに伝言を寄越したのがかなり高位の神でそれがいつ来るか分からないとなればね・・・まぁ、でもあの球を受けた感覚からすると、爽やかな新緑の香りに穏やかで優しい印象を受けたから、悪い事が起こるわけではなさそうだし、そんなに警戒しなくても良いじゃないかな?」
内心嬉しさで照れつつも、神殿で自分が感じた感覚をもとにこの世界に害はないんじゃないか?と言う意見も付け足すと。
サフィアスおじ様「えっ!?その伝言主にそんな印象を受けたのですか?」
「え、えぇ、まぁ・・・」
僕の話した内容に驚きの表情を見せたサフィアスおじ様、僕は正直に話したのだが、なんでそんな反応を見せるのか分からず首を傾げた、するとそんな僕の反応を見てか、口に手を当て何かぶつぶつ言い出した。
サフィアスおじ様「私達には畏怖と威圧感しか感じなかったのに、伝言を直接その身に受けた本人にはそんな印象は全く受けなかったと言うのは、やはり、ただの人と“現人神“の差だと言うのか?やはり神には畏怖の念を感じるのは人の性分か・・・」ブツブツっ
(ほー?そう言うものなの?・・・あれ?でも、僕が“現人神“になる前にティーナちゃん達と話しててもそんな威圧感?みたいなものは感じた事はなかったんだけどなぁ?(・・?))
ジュール『アトリーは産まれる前から交流があったから慣れたんじゃない?』
(ん?・・・・確かに?慣れ?なのかな?うーん、分からんなぁ、この世界の人達とは最初から条件が違うから比べようがないし・・・まぁ、いっか!( ・∇・))
サフィアスおじ様の呟きの内容は興味深かったが、ジュールの言う通り神々と距離が近い自分には当てはまらないなと、言う事で気にしない事にした。
「それより、この“神力解放“はもうやめて良いですか?これ以上してると周辺の環境に影響が出そうなんで・・・」
大司教「はっ!それは気づかず申し訳ありません!アメトリン様の神々しいお姿、しかと目に焼き付けさせて頂きました!私の我儘を聞き入れてくださり感謝申し上げます!」
サフィアスおじ様「あ、あぁ、お手数おかけしました、ありがとうございます。コレで皆も貴方様が“現人神“と言うことは疑ったりしませんでしょう」
“神力解放“をやめるタイミングを今だと思って聞いたら、大司教様はかなり大袈裟に反応し少し驚いた、サフィアスおじ様もその勢いに引きつつ感謝の言葉をくれたので、僕はその時点で“神力解放“をやめた、それを見た人達は緊張気味だった体から少し力が抜けてホッとした表情をしていて、その中でも母様達がすごく安心した表情で僕のことを見ていた。
サフィアスおじ様「・・・それで、あの、先程の言葉は“現人神“としての直感で災いにならないと仰って頂けましたが、その・・・」
一旦、口を閉ざしていたサフィアスおじ様は少し考えた様子を見せた後、言いにくそうに先程の僕の予想のことを改めて聞いてきた、その表情から、僕の言葉は本当に信じて良いものだろうか?という疑問が見て取れた僕は・・・
「確証が欲しいと?」
と、聞いたら、サフィアスおじ様だけではなく他の人達も小さく頷くので、
「うーん、確証か・・・どうでしょうか?偶然とは言え、僕達は神々の手紙のやり取りを無断で覗き見したような感じになってますが、その伝言の詳細を直接主神様にお伺いしたりするのはどうなんでしょうか、それに、よくて当事者である僕が聞く分には良いかもしれませんが、関係がなさそうな人達にまで内容を話しても良いものか、判断に困ります・・・」
そう呟いたら、室内の全員がさぁっと顔色を悪くし再び緊張状態になった。神々同士のやり取りに“現人神“とは言え、まだ神ではない未熟者とただの人間達が簡単に踏み入って良い事では無いはずだと思ったのだ、それに伝言の話題の内容からすると、当事者である自分は最低限の詳細を聞く権利はあるだろうが、全く関係がないと思われる人達に神々の話の内容を教えても良いものなのか?と、いくら国に害がないことの確証が欲しいからと言って、そこまで明かさなければならない謂れはないはずだしなぁと、思っていると・・・
ちなみに、伝言の内容の話になった時、何故かうちの家族は白けた様子で、サフィアスおじ様をジーッと見つめていた。“ほら、言わんこっちゃない“と言った表情で・・・
ジュール:『主神様は気にしてなさそうだったよ?むしろ、アトリーを心配してた、体に不調は無いかって・・・』
と、どうやらそうでも無かったらしい・・・
(おや、いつも通り過保護だね?それは僕に関することだったから、見逃す感じ?しかし、ティーナちゃん達が僕の体調を気にするほどの事だったって事は、もしかしなくても、伝言を送ってきた神様想像以上に偉くて凄い神様だったりする?(*´-`))
ティーナちゃん達はいつも僕の事を心配してくれるけど、基本的に精神的な方面での心配をしてくれて、身体的な方の心配は僕が保有しているスキルを知っているから、体調の心配をされる事は稀だった。それこそ、三年前の邪神教襲撃事件で受けた刺し傷以降は、身体的な怪我を心配することはそうそう無かった。なのに、高位な神からの伝言を受けたぐらいで体調を心配するのは、明らかに過剰な反応だった、そこから推察するに伝言を送ってきた神の地位や力がかなり高いのではないかと、その予想をジュールに話すと・・・
ジュール『・・・・う、ん、まぁ当たってる・・・』
と、何故か歯切れの悪い言い方で肯定したのだが僕は、
(おぉ!正解した!?・:*+.\(( °ω° ))/.:+・・・で、どんな神様??)
凄い興味津々で聞いた。
ジュール『う、うーんとね、物凄く偉くて物凄く強い神様!』ドヤァ
(・・・う、うん?・・・・凄い神様かぁ・・・)
ジュールが渾身のドヤ顔で教えてくれたけど、肝心な詳しい情報がなくてどう返していいか分からなくなった僕・・・
天華『ジュール、そんな説明では何も分かりませんよ。・・・ですが、アトリー、私達に言えるのはそれ以上の情報はないんです』
(うん?そうなの?(・・?)何故に?)コテンッ
ジュールの説明不足にいつも適切な説明や情報を教えてくれる天華が、ジュールに一言注意を言ったので、その後はいつものように詳細な情報を説明してくれるのかと思いきや、予想外の言葉が出てきた。それが不思議に思い首を傾げて何故なのか問うと・・・
天華『私達はこの世界で生まれてから、この世界以外の神々とは交流がないんです。なので知識としてそう言う神々が存在しているのは知っていますがまだ生まれて間もない神獣である私達には、ある一定の神々の詳細なプロフィールなど、あった事はないですが知識として知ってはいます。ですが一定以上の力ある神々に関しては情報が入ってないんですよ。なのでそう言う神々とは直接関わり合いがない場合、抽象的な印象しか知らないのです。今回の場合、伝言を送ってきた神は相当なお力を持った方の様なので、より情報がありません。なのでジュールが言ったような抽象的な説明しかできないのです・・・』
(そうか、今思えば、天華達はまだ神様としてまだ子供の部類に入るんだね、それならこの世界の外のことを詳しく説明出来ないのも納得か・・・(*´ー`*))
自分も小さい時は屋敷の外の世界は何も知らなかった、今でこそ自分であちらこちらを探検し、さまざまな知識に触れることができているけど、それでもまだ自分の知らない未知の知識はいくらでもある、ジュール達はその世界で知らないことは殆どないだろうけど、その世界以外の事は僕同様にまだ未知のままなのだと、深く納得した・・・
夜月『そうだな、だが、私達は私達をお創りになった神々の知識はそれなりに引き継いでいるので、私と天華は地球世界の知識にもそれなりに詳しいと言うわけだ、ただ、神々に関しては常識程度、上位神に関しての知識はお会いしてからその神の性質を知ると言うのが神々の間の通過儀礼みたいなものだ。そう言う意味では今回アトリーに関心を持った神はその通過儀礼をしにやって来るのではないかと思っている』
(おー、それは新人の“神候補“に顔合わせを兼ねた一種の試験?みたいなことなのかな?(*´Д`*))
天華『そうですね。相手のお方の神としての格の違いを自分自身で感じ、格の差を思い知らなければならない、そんな試験ですかね・・・』
(えっ、な、何!?戦うの!?なんだその物騒な顔合わせ!?Σ('◉⌓◉’)怖っ!)
夜月の説明で通過儀礼と称したただの顔合わせなんだろうと軽く考えていた僕だったが、天華の言葉でそれはそんな甘くない儀式だと再認識した・・・
天華『いやいや、そんな物騒な話ではないですよ?戦闘になったりするわけではなく、ただ向き合っただけで格の違いを思い知らされると言った感じのことらしいですから・・・』
(えー、っと、肌で感じて耐えろっ!って感じの顔合わせ?なの?(・・?)??)
再度、天華の説明を聞いたけど、その次の顔合わせの印象は圧迫面接かな?って感じになってしまった・・・
天華『うーん、どうなんですかね?なにぶん私達も初めての事になるので、説明に困りますね・・・』
と、困った様子で言うのだった・・・・




