20話 心からの感謝
はい、どうも、僕です。気づいたらもう、お家に着く一歩手前です。どうしてこうなった?誰か説明プリーズ!!
僕が目を覚ましたのは馬車の中、母様に膝枕をして貰っていた頃・・・・
「・・・んっ、・・・・あれ?ここどこだ???」
母様「アトリー、目が覚めたかしら?」
「ん、母様?・・・わっす、すみません!重くなかったですか?」ガバッ!
母様「あら、いきなり起き上がってはダメよアトリー」ボスッ
「おっと?」
目を覚まして1番に気づいた事が母様の膝枕だった事に驚き、慌てて起きあがろうとしたら、すぐに母様に押し戻されてしまい、再び母様の膝枕状態になった。
母様「気分はどう?アトリー?」
父様「頭が痛いとか、気分が悪いとか、何処か体が変とか変わったところはあるかい?」
「えっと・・・どこも異変はないですが・・・気分も悪くはないです・・・と、言うか、僕は何故、母様の膝の上で寝てたんでしょうか???」
両親から矢継ぎ早に心配の言葉をもらい、困惑気味にどこも悪くないと返事を返し、疑問に思っている現在の状態への質問をした。
(何で僕は馬車?の中、それも母様の膝枕で寝てたんだ???(*´-`)それに結婚式はどうなったんだろう??)
父様「アトリー、心配しなくても大丈夫だよ、結婚式は順調に進んで、今、家に戻っている最中だ。家に着いたらすぐに披露宴が始まるからね。アトリーはそれまでゆっくり休みなさい。アトリーが寝てしまった後の事は結婚披露宴が終わってからゆっくり教えてあげるから、今日はカイの結婚式を盛大に祝ってあげようね」
現状把握のため周囲をキョロキョロと見渡していると、僕の内心を察した父様にそう言われた。
「あ、・・・はい・・・」
(ね、ねぇ、天華、僕、あの変な球をキャッチした時、寝てた?いや、気を失ったの?その後どうなったの?なんで、父様は“後で“っていうの?絶対なんかあったよね?僕、また何かやらかしちゃったの???(・・?))
自分の望んだ答えが返ってかなかった。絶対に何かは起こったはずなのに、その説明がないまま披露宴に出なさいと言われ、さらに困惑、どうしても詳細が知りたくて、状況の説明を求め、いつも分かりやすく説明してくれる天華を父様の頭の上でくつろいでいるのを発見し、念話で話しかけた。
天華『・・・、アトリー、今はお父君の言う通り、もう少し休んだ方が良いですよ・・・』
(えっ・・・どうして?( ・∇・)・・・やっぱ僕、何かやらかした!?Σ('◉⌓◉’)はっ!誰かに迷惑かけちゃった系!?後でコンコンとお説教されちゃうのか!?)
天華『・・・ん~~・・・誰か?には迷惑はかけてはないですよ?』(どっちかと言うと、迷惑をかけられたのはアトリーの方だと思いますし・・・)
(へっ!?・・・じゃあなんで今説明して貰えないの??(・・?)・・・Σ('◉⌓◉’)はっ!縁起が悪いことが起こったとか!?)
天華『それもないです・・・』
夜月『アトリーそこまでだ、今は大人しく休むんだ。今説明しても頭に入って行かないだろうから、他のもの達への詳しい説明もしていない、だから両親に何があったかを詳しく説明しろと言っても説明できないのが現状だ、今は、兄弟の祝い事に専念すればいい・・・』
(ん?・・・あ、・・・そう言う事か・・・ふふっ、ありがとう皆んな、僕が披露宴を楽しみにしてたのを気にして優先させてくれたんだね♪ふふっ本当にありがとう!( ´ ▽ ` ))
頑なに僕が寝た後の事を話そうとしない天華、僕はやはり自分が何かやらかしたのかとか、縁起の悪い事でもあったのかと色々と考えていると、夜月が呆れたような声でぶっきらぼうに説明して、最後には僕を気遣うように今は披露宴のことだけを考えればいいと言ってくれた。
僕はその言葉だけですぐに父様達と天華達が僕のことを思って、そう言ってくれているのが分かり、嬉しくなってちょっと照れくさくなった。
夜月『祝い事の最中に必要ないことだからな』
天華『まぁ、すぐにどうこうするような事でもないですしね』
ジュール『今は楽しい事をいっぱい楽しむのが1番って事だよ!』
(ふふっ、分かったよ、今はカイ兄様の結婚披露宴をめっいっぱい楽しめばいいんだね?でも、後でちゃんと詳しく何が起きたか説明してね?)
天華『はい、ちゃんと後で説明します』
(約束だよ?(*´Д`*))
夜月『あぁ、約束する』
ジュール『私も約束するよ♪』
天華『えぇ、約束します』
(ふふっ、ありがとう( ´ ▽ ` ))
天華達がちゃんと約束してくれて僕は上機嫌で笑うと、その様子を見ていた母様が・・・
母様「後でちゃんと話しますからね、今はいい子で休んでね?」
「・・・はい・・・母様、ありがとうございます・・・」
また、内心を読まれて照れくさかったけど、母様にお礼を言って膝枕されたまま目を閉じた。
母様「・・・ふふっ、どういたしまして」
母様はそう言って膝の上にある僕の頭を優しく撫で始め、その優しい感触に僕は何処か疲れてたのか眠気に襲われ、そのまますぐに夢の中に旅立った。
・・・・・・数分後・・・・・
ガタンッ!
「んっ・・・」
母様「アトリー、お家に着きましたよ。起きれるかしら?」
「んぅ、・・・はい、おはようございます。母様・・・」
母様「ふふっ、はい、おはようアトリー、短い時間だったけどよく眠れたかしら?」
馬車が停止した振動が来て、母様からそう声をかけられ、膝枕のそのままの体制で目を擦りつつそう返答すると、母様が少し笑った声が聞こえた。
「うんぅ、・・・はい、よく眠れました・・・」(お寝坊さんだと笑われてしまった気がする、むぅ父様も笑ってる!恥っ!・・・でも仕方ないんだよ!母様の頭なでなでは最強だからな!( ・∇・))
今度はちゃんと目を開けて体を起こしそう答えると、僕を見ながらニコニコ笑う父様の顔が1番に目に入り、ちょっと恥ずかしくなって目を逸らしたが、心の中では完全に開きなっていた。そして、お屋敷の裏手にある出入り口で馬車を降りると・・・
母様「さぁ、アトリー、あなたはまず装いを整え直してもらいましょうね」
「あ、・・・そうですね」(さっき起きた時には気づかなかったよ・・・)
母様にそう言われて、自分の服装の状態を確認すると、僕が寝ている間に窮屈な上着は脱がされ、ネクタイも苦しくないように取られていて、装飾品も不要なものは全部取り外され、纏めていた髪も寝るために綺麗に解かれており、どう見ても寝起きですって感じで、今から結婚披露宴に参加するには相応しくない格好になっていた。
ソル「アトリー様、お部屋の方に新たな衣装を用意してありますので、急いでそちらにお着替えください」
「!、ソル!いつの間に・・・分かった行くよ・・・」(準備よすぎでしょう・・・・)
と、いつの間にかすぐ側まで来ていたソルにそう言われて、母様達と別れ、自分の部屋にソルと向かうために歩き出した。
「ソル、心配かけてごめんね?そして、ありがとう・・・」
ソル「っ・・・・アトリーが無事ならそれでいいんです・・・」
“感情共感“でソルの心配の感情が強く伝わって来たから、心配かけた事や多分、自分が気を失う時に1番近くに居たソルがすぐに助けてくれたのは分かっていたから、“感情共感“の状態をそのままに、心の底から感謝を伝えると、ソルに僕の言葉そのままの感情が伝わったのか、振り返って声を押し殺し、小声でそれだけ言って、また歩き出した。その時のソルの表情は心配なのか、嬉しいのか、よく分からない複雑な表情をしていて、僕に伝わって来た感情も複雑で、でも、最後には“良かった“と安堵の感情で終わっていた。
「・・・本当にありがとうソル・・・」
それ以降は感情つながりは途絶え、いつもの様子に戻ったソルと、たわいも無い話をしながら屋敷の廊下を歩いた。そんなやり取りをしている僕達の後ろをジュール達が静かに着いてきて、春雷達は他の精霊達と僕とソルを見守るように周囲をフワフワ漂っていた。
・・・・そして、部屋に到着し、入ってすぐ・・・・
「うわぁー、それが着替え?いつの間にそれ用意したの?僕、その礼服見た事ないよ?」
入ってすぐに、用意された着替えが目の前に置いてあり、その用意された着替えの服は今まで見たことのない礼服だった。着替えとして用意されても、前回のカミィ姉様の結婚式の時に着た礼服が用意されているだろうと思っていた僕は、完全に不意打ちで、今回仕立てた“地味“がコンセプトだった礼服とは真反対の華やかなデザインの新品の礼服を用意された。
(しかし、この礼服、何処か以前着たあの“伝統の正装“に似てるな・・・まぁ、この国の普通の礼服は“伝統の正装“に通ずるものがあるから、似てくるのも当たり前だけど、それにしても、本当、マントとストラを取って、色合いを変えてるだけで、形はほぼあの正装だな(*´ー`*)(*今回の色は今着ているスーツとお揃いの紺色だった。)・・・・はぁ、あの堅苦しい服を今から着なきゃならんのか・・・嫌だなぁ、またこのスーツっぽいの着直したらダメなんかねぇ?(*´Д`*))
天華『アトリー、せっかくだから着たらいいじゃないですか、私はこれを着たアトリーが見てみたいです』
夜月『シャツは寝ていて、シワにもなってるから、新しいのを着たら良いじゃないか、それに私もアトリーが新しい服を着ているのは見てみたいぞ?』
ジュール『私も見てみた~い♪』
春雷&雪花『『私達も見てみたいです!!』』
(おぅ・・・うーん、まぁ、天華達がそう言うなら着るけど・・・(*´Д`*))
用意された着替えに難色を示していると、天華達が揃って来たところを見てみたいと言うので、渋々だがリクエストに応えるように着替えを始めた。と。言うか、ほぼ強制的に着替えさせられた・・・
あれよあれよと言う前に着替え終わり、今度は髪型もあっという間にセットが終了し。今までの最短記録のお着替えが済んだ。
「お、おぉ・・・いつもより速い・・・」(・・・てか、速すぎるな、ん?もしかして、前々からこの礼服でのヘアセット会議を進めてたな?って事は元々この礼服を着せる気満々だったって事だな?( ゜д゜))
チロッ、とソルと他の専属使用人達であるオーリー達を見ると・・・
バッ!っと、ソル以外の全員に目を逸らされた。
「はぁ、まぁいいか・・・」
ソル「さぁ、アトリー様、そろそろ行きましょうか。イネオス達が披露宴会場の庭園で待ってますよ」
「あっ!そうだった!早く行かなきゃ!一緒にご飯食べるって約束してたんだった!」
ソルの言葉で約束を思い出した僕は、慌てて部屋を出て急いでイネオス達のところに向かうことに・・・
(なぁんか、うまく逸らされた気がするけど、今はそれより約束を守らなきゃだよね、まぁ、この礼服の件は後で礼拝堂であったことを聞く時に一緒に聞けばいいか・・・さて、今は目立たないように会場に入ってすぐにイネオス達を探さなきゃ(・Д・))
と、思いながら、披露宴会場である庭園に続く入り口に到着し、こっそり会場に入る方法を考えていると・・・・
カイン「アトリー様、イネオス様方はこの入り口から見て庭園の左端のお食事席にお通ししていますので、扉をお出になられましたら、左の壁沿いに向かわれた方が1番目立たず、かつ最短距離になるかと思われます」
「分かった、教えてくれてありがとう、カイン。よし、じゃあソル、行こうか」
ソル「はい、アトリー様」
そうして、目立たないように会場入りして、イネオス達と合流、・・・できるはずだった・・・・




