15話 “加護“
カイ兄様「もったいないお言葉感謝申し上げます、殿下方。・・・そうだ、よければ式の後の披露宴にもご参加していってください、招待客の皆様が殿下方の参加を心待ちになさっておいででしたよ」ニッコリッ
王子殿下達「「え、っ・・・・あ、あぁ・・・」」
最初は僕に遠慮がちな態度の殿下達から祝福の言葉をもらったカイ兄様は、凄く含みのある笑顔で式の後に公爵家の屋敷で行われる披露宴の出席を促した。その言葉を受けて王子殿下達は一瞬、嫌そうな表情をして何かを諦めたかのような返事をした。
(急に元気なくなったね?披露宴で何かあるのかな?・・・あ、“招待客“か、これは端的にそろそろお相手を探したらどうですか?ってやつか、周りも早く相手を見つけて欲しいって言われてんのか、王族は色々と大変だな、乙です・・・(^人^))
と、心の中で合掌しておいた・・・・
天華『何、他人事みたいに言ってるんですか、アトリーもそろそろお相手を見つけてきても良い年頃なんですよ?それに今回の結婚式は、まだお相手がいない人達の出会いの場みたいな事になっていると思いますよ?』
(えぇ~、13歳で、もう婚活するの?(*´Д`*)でも、僕は結婚する気はないよ?)
天華『それは分かってます。でも、この世界の貴族家では当たり前に行われている事ですから、そこはちゃんと理解していてくださいね。あなた以外のその他大勢の中には婚約者ができなくて困っている方々は沢山いらっしゃるんですから』
(そうか、この世界の貴族は早婚が当たり前だったね、でもこの国は珍しく結婚は20歳前後でするのが通例になってるから忘れがちだったけど、婚約者は他の国と同様10歳ぐらいから探し始めるんだった、そうなると今の王子達の年齢になっても婚約者が決まってないのは珍しいのか?(*´ー`*)・・・しかし、王族は恋愛結婚推奨だから、そこまで焦る必要はないんじゃ?・・・それに、ご本人達は披露宴のパーティー参加には前向きではなさそうだったな?むしろ嫌そうな表情をしてたって言うか・・・)
先程の王子殿下達の表情を思い返した、確かに一瞬だったが嫌そうな顔をしていたよな、と思っていると・・・
夜月『うーん、大方その披露宴パーティーに2人して会いたくない人物でもいるんじゃないか?」』
(あー、そうかもね、公爵家の結婚披露宴のパーティーは盛大に行われるから、結構な人数の人達が招待せれているし、その中でも有力な貴族家だったら、一家全員が招待されている事だってあるもんな、だからその中に王子2人が会いたくない人達がいても不思議じゃないか?(*´Д`*))
夜月『あり得ない話では無いな・・・それか、婚約者を見つけてこいと周囲にうるさく言われて、嫌気がさしているだけかもな・・・』
(・・・それも、ありそう・・・身内だったら母親のローズ様あたりにせっつかれてそう、そして、それを分かっててあえて王子2人にその事を言うカイ兄様、えげつねぇな( ´ ▽ ` )・・・その点、僕の母様はそんな事全く言ってこないよね?いくら、僕に選択権があると言っても、軽い催促や探りが入ってくると思って身構えてた時もあったけど、予想に反して全く何も聞いてこなくて今では警戒するのもアホらしくなっちゃった、前世では母と離婚した父と大人になって連絡先を交換した後から、よく電話で結婚はまだかってしつこく言われてたから、結構気合を入れて身構えていたんだけどね、( ・∇・)ちなみに前世の母は諦めてた・・・)
春雷『前のご両親は離婚なさった後も交流があったんですか?』
(あー、母と父は直接交流はなかったけど、母が父の母親、僕の父方の祖母にあたる人と父の弟嫁と仲が良くてね、離婚後もよく父の実家に遊びに行ってたよ。僕自身も大きくなった後に父と会ったのは、その祖母が亡くなった時のお葬式で13年ぶりに会って、そこで連絡先を交換して、数年後に父方の従兄弟の結婚式に出た時ぐらいの数回の交流しかなかったんだよね~、でも、連絡先を教えた翌年の僕の誕生日に電話がかかってきたんだ、これまで誕生日を祝えなかったからって、それから、毎年誕生日にお祝い電話がかかってきてたんだけど、従兄弟の結婚式以降に結婚の催促が始まったかな・・・、凄く面倒だった( ̄ー ̄ ))
ジュール『でも、アトリーのお母さんはそんなこと言わないから不思議だね?って事?』
(まぁ、そう言う事( ̄▽ ̄))
雪花『そう言えば以前、アトリー様のお母君が“アトリー様には本当に好きになった方と結婚して欲しいから、自分からは何も言わない“、と仰られていたのを聞いたことがありますね』
(へ?そうなの?・・・・そうなのか・・・ふふっ、なんかちょっと嬉しい・・・( ´ ▽ ` ))
この国の婚約事情をジュール達と念話で話していると、思いがけず母様の心内を知れて嬉しくなり無意識に照れ笑いしていた僕をみて、室内にいた人達全員が顔を赤くしたのを、僕はこの時気づかずにそのままジュール達と念話で会話を続けていた。
・・・しばらくして・・・
コンコンッ
と、ノックがされて、(お?父様達のお話し合いが終わったのか?と、思って扉の方に意識を向けると、入室の許可と共に入ってきたのは、最初にこの部屋に案内してくれた神官だった。
神官「失礼致します、新郎様ご家族の皆様、本日の結婚式のお時間が30分前に迫っております。ご準備の方はお済みでしょうか?」
カイ兄様「はい、準備は済んでますが、今、親族の数人と大司教様が別室で話し合いをしに出ているのですが、そちらにも知らせを入れてもらって良いでしょうか?」
神官「・・・はい、かしこまりました。それと、もう一つ、開始時間30分前となったので招待客の皆様が続々とご到着されてます。ご到着になった方々から受付終了されたら順にお席にご案内させて頂いてよろしいでしょうか?」
カイ兄様「はい、それは構いません・・・・」
と、そんな感じで事務的な会話が続き、神官は要件を言い終わり確認が取れると、部屋を去ってた・・・だが、いつの間にか時間は結婚式開始30前まで経っていたことに今気づいた僕は驚き、そして更に驚いたのはいまだに父様達が僕の“神力“の話をしに出ていって戻ってきていないことにも驚いた・・・
(おや?僕の“神力“の話をするにしては時間が掛かり過ぎじゃ無い?(*´ー`*))
天華『説明が難しいのかも知れませんね、人が自力で“神力“を獲得する事などこの世界ではそうそう無い事ですからね・・・』
(うーん、僕の“神力“の獲得方法は特殊だからなぁ、それは説明が難しいか・・・(*´Д`*))
そもそも、“神力“を扱ったことがない人に“神力“のなんたるかを説明しろってのが酷な気がするなと、思いつつその後も父様達が戻ってくるのを待った。
・・・・数分後、事情説明が終わったのか、大司教様を連れて戻ってきた父様達、カイ兄様の控室に大司教様が入ってきて僕を見た途端に崩れるように膝をつき、僕に向かって祈りを捧げ、拝み始めた。
大司教様「っ!?おぉ、この神々しい力の気配は間違いなく“神力“!アメトリン様!いと尊きお方となられたのですね!」ドサッ
(おぉおう!?待て待て!!拝むな!拝むな!僕はまだ神様にはなってないぞ!?Σ('◉⌓◉’))ガタッ!
天華『アトリー、そばに行くのはやめたほうが良いですよ』
(へっ?な、なんでっ!?い、いや、それより!)
「っ、立ってください!僕はまだ神になったわけではないのですから、祈られても困ります!」
僕は立ち上がり、大司教様のそばに行こうとしたら、天華に止められたのでその場で立ったまま、大司教様に立ち上がるように促した。それでも祈る事をやめない大司教様に僕がどうしたら良いのか困っていると・・・
母様「まぁまぁ、アトリー落ち着いて、大司教様も落ち着かれてください」
「母様・・・」
大司教様「あ、あぁ、も、申し訳ない、あまりにもアメトリン様のお姿や気配が神々しく神聖だったので、思わず祈りを捧げてしまいました・・・」
困っている僕を見かねた母様がとても落ち着いた声で僕らを宥めた。その声で、僕や大司教様は一旦落ち着き、僕は椅子に座り直し、大司教様も立ち上がって咳払いをして、気を取り直していた。
母様「大司教様、うちのアトリーが神々しく祈りたくなる気持ちはわかりますが、今はまず、挙式を上げる息子の方のお仕事に専念していただけませんでしょうか?」
(祈りたくなる気持ちはわかっちゃうんだ?・・・(*´Д`*))
大司教様「はっ!、そ、そうでした。本来今日の主役である新郎新婦にご挨拶に来たのでした!」
と、急いで慣れた様子で、新郎のカイ兄様に事前の作法などの確認とお祝いお言葉をかけて、後日また話を聞きたいと言って、今回のもう一方の主役である新婦の控室に向かうために部屋を慌てて出て行った大司教様、そんな彼の後ろ姿を室内の全員が苦笑いっ気味に見送った。
(ふぅ・・・結婚式の時間も差し迫っているってのに、あのままお祈りされ続けてたら、結婚式が台無しになっちゃうところだったよ(*´ー`*))
「母様、ありがとうございます・・・」
母様「ふふっ、良いのよアトリー」
あの状況を収めてくれた母様に感謝のお礼を言うと、そう言って僕の側まで来て軽く頬を撫でてくれた母様、その撫でる手がくすぐったくて目を細め笑う。
「ふふっ、くすぐったいです母様、ふふっ」
僕達のこのやり取りを見ていた王家の人達がポーッと見惚れていたのだが、お祖父様がてを叩き正気に戻してから、王家の人達を会場である礼拝堂の席に案内するように近くにいた神官に頼んで控室から追い出していた。
そうやってやっと本当に身内だけになった控室で、再度全員でカイ兄様に結婚のお祝いを告げて礼拝堂の方に移動することになった。
「カイ兄様、今日は本当におめでとうございます。僕はカイ兄様とパティお義姉様の幸せを心からお祈り申し上げます」ぽぅ・・・
と、言うと、僕の体から小さま白い光の玉が出てきて、カイ兄様の体に溶けるように消えていった。
「「「「「えっ??」」」」」全員が声を揃えて驚いた。
(い、今のは何!?・・・・も、もしかして・・・・)
夜月『アトリーの初めての“祝福の加護“だな』
(っ!!や、やっぱり!?(°▽°)え?い、いいの?てか、できたの?そもそも、僕はまだ神様になってないのに加護を付与させることってできるの!?Σ('◉⌓◉’))
急に起こった現象に驚き、ワタワタしていると・・・
夜月『まぁ、そうだな、“神力“があれば可能ではある。・・・“神力“を持った者が心の底から相手を思い願いを口にすることで“加護“と言うものが生じる、今回の“加護“はアトリーがまだ、“神“の仲間入りをしているわけではないから、“加護“の度合いは“祝福“ぐらいだろうな・・・』
(へぇ~、そうなんだ、・・・でもさ、“加護“の度合いってどう言うふうに決まるものなの?( ・∇・))
夜月『先ほども言ったが“神“であるかないかで、“加護“の強弱に明確な差が出るが、大体は本心から相手を思う願いの強さと具体的に現実可能なものであるかどうかが、“加護“の強さや効果に差が出る、・・・要は思いの強さと付与したい効果を現実にする想像力の高さで“加護の強弱“の度合いが決まっているな』
(ん?て事は、“加護“って、元々決められた効果があるわけじゃなくて、神様の思いつきや与えたい能力などを付与できるんだ?(・・?))
夜月の説明を聞いて違和感を感じ、ステータスに出ている“加護“の種類を思い出して、“加護の効果の種類“は固定ではなかったのか?と疑問が湧いた。
夜月『まぁ、付与できる“加護“にも条件は色々あるが、概ねそんな感じだな。今回のアトリーの与えた“加護“は“幸福を願う“と言う抽象的なものだったが、アトリーが心の底から兄夫婦の幸せを願ったものだからな、多少、日常での運が良くなるぐらいの効果がある“幸運の祝福の加護“になっているだろう』
天華『また、この世界の人達は“加護“を得るときに、神の言葉を聞くことがないので“加護の効果“の度合いを大雑把に“祝福“、“加護“、“愛し子“と区分けして認識しているようですが、神が“加護“を与えるときはその人に持っていてほしい“効果の加護“を与えているだけなので、全て含めて“加護“と呼んでます。でも、ステータスの“加護“の欄は人間達が理解しやすいように人間達が決めた区分けを適応させてますね』
(あー、神様達側からしたらそう言う感じで“加護“を与えるのか・・・・あ!そう言えば、僕もこっちの世界に転生する時にティーナちゃん達が僕に“加護“をつける時確かに言ってたよ!・:*+.\(( °ω° ))/.:+あの言葉がそのまま僕の“加護“の効果なんだね!だから“月詠様“からは“全ての害悪から僕を守る、守護の加護“で、“天照ちゃん“からは“良い人達との出会い、親交を結んでくれる、良縁の加護“?、“ティーナちゃん“からは“色んな良い物が自然と集まる、強い幸運の加護“、他にも色々と効果はあるけど、今あげた効果が強い“加護“がメインだから僕の“加護“の度合いは“愛し子“なんだね?( ^∀^))
天華の補足情報で、“加護の度合い“についての疑問が晴れてスッキリした僕は、自分の“加護“の度合いの強さにも深く納得した。
天華『まぁ、大体はあってます』
(わぁーい!せいかーい!当たったー♪、☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆・・・って、それは良いとして、“神格“を持ってない、“神“になってなくても、“神力“を持っていれば他者に“加護“を与えることができるって事だね?( ・∇・))
天華『そうですけど、急にテンションを低くしないでくださいよ・・・』
急なテンションの乱高下にドン引く天華を置いて、僕は(“加護“って意外と汎用性が高いな、でもこの事が他の人に知られたら面倒なことになるな・・・)っと、新たな懸念事項に頭を悩ませるのだった・・・・
*皆様、いつもご愛読頂きありがとうございます。舞桜です。
今回は8日ぶりの投稿となりましたが、先日励ましのコメントを頂きました。その励ましのお言葉でさらなるやる気が出て、心の支えとなり、コメントを頂いた方には親族全員が感謝しております。本当にありがとうございます。m(_ _)m
諸事情で慌しかったプライベートも最近はだいぶ落ち着きを取り戻しつつありますので、次回はもっと早く投稿できるようになると思います。d( ̄  ̄)
次回も皆様のご期待に応えれるような作品を作っていきますので、今後とも応援いただけると幸いです。٩( 'ω' )و
by舞桜




