13話 地味とは・・・
結婚式用の装いを整え終わった僕は、ソファに座るお腹の大きいカミィ姉様をゆっくり立ち上がらせ、エスコートする為に腕を差し出すと、ニッコリ笑顔で僕のエスコートを受け入れてくれて、仲良く自室を後に家に残っている家族皆んなが待っている家族用リビングに移動する事に・・・
「カミィ姉様、今日はハウイお義兄様は結婚式に参列なさるんですか?」
カミィ姉様「えぇ、向こうで落ち合う事になってるわ」
「じゃあ、もう、王都にこられてるんですね?」
カミィ姉様「昨日の夕方に王都に着いたと知らせがあったわ、結婚式を楽しみにしてるそうよ。ふふっ」
「そうなんですね・・・しかし、カミィ姉様、ご出産はこちらでとの事ですが、ハウイお義兄様は反対なさらなかったのですか?」
カミィ姉様「あ、それはね、産まれた子の瞳の色を見てすぐに良い名前を付けてあげたいから、こちらで産んで欲しいんですって」
「?・・・・」
(名前?・・・あ、そうか、カミィ姉様とハウイお義兄様との間の子なら確実に魔力の強い子が生まれるからね、瞳の色も魔力に応じて、色が濃く珍しい瞳の子が生まれる、そうなると“輝石命名”の認定をして貰うはずだ、“輝石命名“はこの国の貴族家では凄く名誉な事だから、当然ムーグラーフ辺境伯家でも同じ。
でも、基本的に王都から遠い領地には認定士が居ない事が大半で、その場合、自領から認定士がいる街までわざわざ出向いたりするが、そこまで行く時に悪天候に見舞われたり、他のトラブルで行けなくなる場合があって、人によっては最悪”輝石命名“を諦めたりしなきゃいけないって聞いたな。(*´Д`*)て、事は、ムーグラーフ領には認定士がいないから、認定士のいる領まで危険をおかして行くより王都のデューキス家で出産して、命名して貰うのが1番確実って事だな・・・)
「・・・あぁ、そう言う事ですか・・・」
カミィ姉様「ええ、そう言うことよ、ふふっ」
と、微笑むカミィ姉様の言いたい事がすぐに理解できた僕は物凄く納得した。
「出産するだけでも大事なのに、名前を付けるにも色々とする事があって大変ですね・・・」
カミィ姉様「そうね、でも、産まれてくるこの子には最大限できる事はしてあげたいと思っているの、それにね、もっと大変なのは子育てだと思うわ、だからこれぐらいの事で根はあげてられないのよ」
「ふふっ、確かに、そうですね・・・」
(特に、1歳から2歳ぐらいまでのイヤイヤ期と、8歳から18歳ぐらいまでの思春期の子供は手に負えないぞぉ(*´ー`*)前世で散々体験したからな・・・)
などと、前世での体験を思い出し遠い目をするのだった・・・
カミィ姉様「ふふっ、アトリーったら、今から先の事を心配しても仕方ないわよ?でも、それでも心配だと思うなら、それも楽しみの一つだと思えば気が楽になるわよ?」
「・・・まぁ、そう思えば気が楽ではありますね・・・」
(まぁ、前世でも、思春期を拗らした弟妹達の騒動は後々もお笑い種にはなったりしたな( ´ ▽ ` )、黒歴史として・・・ふふふっ( ´∀`))
カミィ姉様の言うことももっともだなと、心の中で前世の兄弟を思い出し、それに付随して兄弟の恥ずかしい黒歴史も思い出した僕は、1人黒い笑みを浮かべ、ニヤけていると、今度はニヤけている僕の顔を微笑ましそうに見ていたカミィ姉様が僕の近況を質問して来た。
カミィ姉様「ふふっ、あ、そう言えば、アトリー、ここ最近の冒険者活動は何も問題なくできている?変な人に目をつけられたり、怪我などはしてないかしら?」
「あ、そうですね。僕は怪我などはしては無いですけど、ここ最近仲良くなった冒険者のお友達のお家にお邪魔させてもらったり、冒険者ランクが上がったことで出来るようになった依頼などに挑戦して楽しく過ごしてますよ」
(まぁ、変な人にはよく絡まれたりはするけど、今は黙っとこう( ´ ▽ ` )・・・)
僕の返答に後ろをついて来ていたソルが少し反応したのが分かったが、それでも何も言ってこないのでセーフ・・・
カミィ姉様「あら、楽しそうにしてるのね。冒険者ランクが上がったとの事だけど、今、何ランクになったの?」
「以前のランクは“D“ランクでしたが、つい先日、“C“ランクに上がりました。この年齢ではかなり早めのランクアップだそうです」
カミィ姉様「まぁ、それは凄いわね、アトリーが頑張って依頼をこなした証拠ね」
そう、このランクアップは冒険者ギルドの依頼を特定数こなし、ギルドや依頼者側からの評価が高い者がランクアップできる仕組みなので、僕達は学園の休日を使い、週に一回は冒険者として活動している。その際に依頼をその日にできる最大数受け、真面目に依頼を達成してきた証拠なのだ。
同じように冒険者活動をしているイネオス達もそろそろ同じ“C“ランクになれそうだと聞いた。ついでに言うと、イネオス達とは以前の約束通り、“F“ランクから“D“ランクに上がるまで一緒に冒険者活動をしていたが、今はもう一緒の依頼を受けたり行動を共にはしておらず、朝の冒険者ギルドへ向かう時や、帰りの時間が重なった時だけ一緒に行き来をしているだけなので、互いのランクの上がり方は少々異なっている・・・
そんな風に互いの近況を話している間に、家族が待っているリビングに到着、カインとイーロが両側から扉を開き、中に招き入れてくれて、中を見ると煌びやかな装いをした家族が、まったりとお茶をしていた。僕達が中に入ってくると全員が僕達を見たのだが、少し静かになった。
「お待たせしましたか?」
母様「いいえ、そんなに待っては無いけど・・・アトリー、今日は本当にその装いで行くの?」
「・・・え、えぇ、そうですが・・・やはりダメでしょうか?」
(やっぱり変かな?少し装飾をつけたと言ってもまだっ地味っちゃ地味だもんな・・・(*´ー`*))
静かになった原因はやはりこの服装のせいだったようだが、これ以上の派手な装いは自分の容姿を含めると派手になり過ぎると自分では思っている。すると・・・
母様「ダメでは無いけど、アトリーが地味な装いをしていると、逆に目立つわね・・・」
と、カミィ姉様と同じようにまだまだ地味で、逆に目立つと言われてしまった・・・
「えっ、これでも装飾品を足したんですが・・・それでもまだ地味でしょうか?」
(えー、これ以上どうしたらいいんだぁ?(*´Д`*)・・・今からでも母様達みたいな通常のパーティー服に着替えたがいいんだろうか?・・・真面目に、どうしたらいい?( ・∇・))
と、念話で天華達に呼びかけると・・・
天華『そうですねぇ、多分ですけど、アトリーの服装が地味だと、アトリー本体の容姿やプロポーションが際立ってよく見えているので、目立って見えるんじゃないんでしょうか?』
夜月『確かに、今日も念入りなお手入れのおかげで肌艶もいいし、シンプルなスーツはアトリーの均等の取れた体格を、より目立たせているように感じるな・・』
春雷『そうですね、最低限の装飾もこうなると、本当にアトリー様の魅力をさらに際立たせているだけにしか見えません』
(おうぅ・・・目立たないための工作の全てが裏目に出てる?(*´Д`*)・・・・)
雪花『この紺色のお召し物も、アトリー様の白銀の髪にはえてとても良いですし、その髪型もアトリー様のお美しいお顔が際立ってとても目立ちます』
(ぐふっ!!ダ、ダメージが・・・( ;∀;))
ジュール『まぁ、でもさ、ぶっちゃけちゃうと、アトリーは何を着ても似合い過ぎちゃうんだよね。今から着替えても同じだと思うんだ。だから、今日は、もう、その格好でいいじゃない?』
(ぐふぁっ!!!_:(´ཀ`」 ∠):)
ジュールにぶっちゃけられて心に大ダメージをくらい、しょんぼりとしていると・・・
母様「あらあら、そんなに落ち込まないで、その装いが似合わないとかじゃ無いのよ?アトリーが目立ちたくないと言ってたから、その衣装を作るのを許可したのだけど、・・・衣装だけを見ると本当に地味だったのに、アトリーがその衣装を着ると不思議と地味じゃなくなっちゃうのよね・・・」
カミィ姉様「ふふっ、そうなのよねぇ」
ヘリー姉様「本当に不思議だわ・・・」
お祖母様「どうしましょうか?アトリー、お着替えする?」
と、女性陣達に次々言われて僕はさらにしょんぼり。
「いいです。今日はこのまま行きます・・・」
そんな、しょんぼり顔の僕を見て他の男性陣達は苦笑い。
(僕にはもう目立たない服装なんて無いんだ・・・( ;∀;)べそっ・・・)
元々服装にそんなこだわりは無かった、だが最近はいかに没個性になるかを考えて新調する服に注文をつけてみたりしていた、でも、今回の件で、とことん自分は“地味“という言葉には縁がないと理解した、そして、なんだか、虚しくなった僕だった・・・
天華『まぁまぁ、そう落ち込まないでアトリー、今日は大切なお兄様の祝い事なんですから。もっと前向きに考えましょう』
(う、うん、そうだね、おめでたい結婚式で凹んだ表情をしてたらダメだよね、( ;∀;)・・・よしっ!もう服のことでメソメソするのはやめっ!今日はカイ兄様を全力でお祝いするんだ!٩( 'ω' )و)
と、気合を入れ直し、しょんぼりと俯いていた顔をあげた。
カイルさん「皆様、馬車の準備ができましたのでそろそろ移動をお願い致します」
タイミング良く馬車の用意ができたと知らせが入り、すぐに家族全員が動き出した。
(あ、ついでに言うと、今日は何故かソルの家族は執事やメイドの格好で僕達家族のサポート役にてっしているよ、カミィ姉様の時はちゃんと招待客だったんだけどなぁ、多分ソル家族は今回は臣下として結婚式をお手伝いしますって決めちゃったんだろうね・・・(*´ー`*)まぁ、ソルは僕が無理矢理招待客にしたけどね・・・)
そんなこんなで、馬車に乗り込み、皆んなで貴族街にある神殿にGO!!
*投稿が遅れてしまい申し訳ありません。この先1ヶ月ほどは諸事情により、このように投稿が遅れることがあると思われますが、引き続きご愛読いただけると幸いです。m(_ _)m
By舞桜




