11話 招待状
夜月『それにアトリーが今の肉体の死を迎えたとして“神格“を得て神になれるかは、正直、私達にも分からないからな?』
「え、そうなの?“神創機関“があっても必ず神様になれるわけじゃないんだ?」
夜月『そうだな、私達みたいに元々神として生まれたもの以外は、自分以外の人々からの信仰心がないと“神“には至れない、まずそこからだな』
「あー、そう言えばそんな話し聞いたね・・・・じゃあ、僕は神様にならなくて済むかぁ・・・敬われてないし・・・」ふっ・・・・
夜月の話で、以前聞いた神々の成り立ちを思い出した僕は1人皮肉げに笑うのだった・・・・
はい、どうも、僕です。1人先日の話を追い出して少し虚しくなっている僕です・・・・
(いやー、自分で言って何だけど、何回考えても僕が“神“になるなんてありえねぇなぁって思うわ、僕こっちの世界で暮らしてきて、少し人見知り気味になってるし、他人に対して尊敬や敬われるようなことしてきた覚えもないもんね、“神“になれなくてガッカリって言うより、今まで自分のしてきたことを振り返って、凹んだわ・・・僕、こんなに人に対して薄情?っていうか、無関心だったっけ?・・・いや、完全に無関心ってわけじゃないけど、家の人や友人達以外ではあんまり興味がなかったのか?)
なんて、考えていると・・・
夜月『アトリー、それは普通じゃないか?前世のアトリーの職業を考えてみれば、以前の人との関わり方が違うのは当たり前じゃないか、前世では接客業だっただろ?必然的に人と広く関わり合わなければいけなかったんだ。だが今は、人との関わりを厳しく見極め付き合わないといけない貴族だ、用心深く生きていくことに慣れていった結果が今なんだ、何ら不思議な話ではないんじゃないか?』
(うーん、確かに?そっか、普通か、これが貴族の普通か・・・)
天華『それに、アトリーはまだ学園に通う子供です。学園を卒業して、成人すれば冒険者として色々なところを旅するんでしょう?そしたらその内素敵な出会いがありますよ』
(うん、そうだね、そう言えば僕まだ13歳だったよ!( ^∀^))
いつも何かと忘れがちになっている自分の年齢を思い出し、納得・・・そんな風にまったりと食後のお茶を楽しんでいると・・・・
へティ「あ、そう言えば、アトリー様、今週末のカイヤト様のご結婚式は私達、本当にお伺いしてよろしんでしょうか?」
と、急に今週の土の日に行われる予定のカイ兄様とパティお義姉様の結婚式の話になった。
「ん?どうしたの?招待状届いたんでしょう?」
(あれ?カイ兄様はちゃんと招待状出したって言ってたよね?招待状届かなかったのかな?( ̄▽ ̄))
へティ「はい、恐れ多くも、招待状をいただきましたが、私のような直接カイヤト様とは関わり合いの無い准男爵家の四女が、デューキス公爵家の次期御当主のご結婚式にお招きしていただけるなんて分不相応なのでは無いかと・・・ただでさえ、カシミール様のご結婚式にまでお招きいただきましたのに、それ以上の華やかな場で粗相でもしてしまったら・・・」
と、遠慮がちに言ってくる。
(あー、一昨年あったカミィ姉様の結婚式の時も凄く遠慮してたもんなぁ、前は国の中枢で争ってる派閥とか関係ない、ムーグラーフ辺境伯家との結婚式だったから辛うじて知人枠として出席してたけど、今回はどうにかしたら王族も招待される公爵家の次代当主の結婚式だもんな、それは気が引けるか・・・(*´Д`*))
仁達が向こうの世界に帰った翌年の4月に、うちの兄弟の長女カシミール姉様が婚約者である、ハウイ・ノブル・ムーグラーフ辺境伯の長男と結婚式を挙げたのだ、この挙式は数年前から決まっていた事だったので、準備も抜かりなく行い向こうの親族とも交流を深めるために盛大に行われたのだが、挙式はムーグラーフの領地で行われたので、招待客だったイネオス達とそのご両親を、僕がムーグラーフ領から転移魔法で迎えにいった時からずっと恐縮しっぱなしだった。
まぁ、それもその筈、イネオス達の家はムーグラーフ辺境伯家とは殆ど関わり合いのない間柄だったので、ムーグラーフ家の招待客からしてみれば付き合いの無い人が紛れ込んでいると思っただろう、でも、貴族の結婚式とは両家の知らない親族友人が集まり、お知り合いになり繋がりを持つための顔を合わせのようなものなのだ。だから顔見知りでは無いからと除け者にするのは良くない、積極的に話かけ交流を持とうと努力する方が健全だだろう。それにイネオス達の家はデューキス公爵家側の招待客なのだから、家格的に粗相をしてはいけないと思うのが普通。
だが、その普通を分からなかったムーグラーフ家のかなり遠縁にたる地方の貴族子息末子、期待されず、甘やかされて育った碌でも無いボンボンの代表的なお子様(王都の学園の試験に落ちたらしき同年代)に、絡まれて色々と言われたらしい、そのせいで今回の結婚式の参加も躊躇っているようだった。
(へティは優しくて気遣いができる良い子だからな、自分達が嫌味を言われて嫌になったとかじゃなくて、自分達が結婚式に出て僕に悪評が立つかもしれないって、思ったんだろうなぁ( ̄▽ ̄)・・・でも、逆に今回の結婚式は王都の神殿で行われるから、今回の招待客は僕とイネオス達の関係を知っている人達の方が多いんだよね、だから、変に絡まれることはないと思うんだけど、それでもやっぱり気になっちゃうんだろうな・・・)
「うーん・・・へティ達は僕の友人枠ってだけじゃなくて、家同士の事業でも関係があるから、カイ兄様に直接関わり合いがなくても、そんなに遠慮することはないと思うよ?親同士の仕事関係でもその親が子供を連れてくるのは不自然でもないし・・・へティが絶対に無理と思うなら僕も無理強いはしないけど、できたら、披露宴でソルと僕、互いしか話し相手がいない寂しい僕達の話し相手になってほしいなって思うんだけど・・・だめ?」
と、あざとくブリっ子上目遣いで首を傾げながらへティに聞いてみた。
へティ「うっ!・・・アトリー様、私がそのお願いの仕方に弱いのをわかっててやってますわね?」
「ふふっ、何の事かな?ふふっ」
へティ「むぅ・・・・・ふぅ、仕方ありませんわ、アトリー様にそこまでお願いされたら嫌とは言えませんもの」
そう言って、結婚式の参加を約束してくれた。
「ふふっ、ありがとうへティ、ふふっ結婚式でも皆んなと会えるのを楽しみにしてるよ」
そんな、僕達のやり取りをソルは呆れた様子で肩をひょこっと上げ、イネオスとベイサン、ロシュ君は苦笑い気味でみていた。
「それに、披露宴ではたくさん美味しいものが並ぶって言ってたから、楽しみにしてるといいよ」
ベイサン「おぉ!それは楽しみですね♫あ、でも、王族の方が参加するかもしれないってのは本当ですか?」
僕の言葉に釣られて嬉しそうにしたベイサンだったが、今回の結婚式で1番気掛かりな問題に言及してきた。
「あー、それは分からないな、確定ではないけど、来るんじゃないかって言われてるのは確かだね・・・特に先王陛下のロブル大叔父様は先触れなしに来そうではある・・・」
(サプラーイズとか言ってね・・・(*´Д`*))
夜月『やりそうではあるな・・・』
(でしょ?(*´ー`*))
なんて思っていると、ベイサンが凄く複雑そうな顔をしていた。
(分かるよ、分かる、君の言いたい事は分かるよ。来るか来ないか分からない、あまりにもあやふやな答えに、国のトップの王家が飛び入り参加する可能性を予測に入れるの?って疑問と、それを毎回あったのような言い方する僕の言動にも違和感を覚えるのも良く分かる。でもね、それが現実なんだよ。僕の7歳の“洗礼と祝福の儀“の時は大叔父様は正式な公務じゃなくて、自分の孫の公務についてきてたし、翌日のお披露目会にも急遽参加を表明して、追加で現国王が当日に飛び入り参加してきたし、一昨年のカミィ姉様の挙式には場所が遠くて参加はできないからって、サプライズで大量のプレゼントを送りつけてきてた、・・・この国の王家はこんな人達ばかりだよ?(*´Д`*)うちの家の使用人達はこんな突飛な行動をする王家の人達になれちゃって、急な来客にはちょっとやそっとじゃ動揺しなくなってるし、いつもの事だから気にしたらダメなんだって、僕達一家は開き直っちゃったよ、でもまぁ、流石にイネオス達は王家にそこまで開き直れないか・・・( ̄▽ ̄)でもなぁ、・・・)
「来るかどうかはさておき、来たとしても僕達に話しかけてくる事はないと思うんだけどな、まぁ、話すことがあるとしても僕と挨拶を交わす時ぐらいだと思うよ?それ以外は流石に主役そっちのけで僕にかまってきたりはしないと思うし・・・多分・・・」
ベイサン「多分、ですか・・・」
僕が曖昧に答えるとさらに複雑な表情をするベイサン、でも、こればかりは僕にも誰がどのように参加しに来るかは分からない、なのでそこは言明ができないのは許して欲しい・・・
「まぁ、王族の方々は本当に気まぐれだから、来るか来ないかははっきりとは分からないんだ、でも、今回の結婚式には来る確率は高いとは思うよ?でも、それも、どれぐらいの時間参加するかも分からないんだけどね・・・」
確率的には飛び入り参加してくる可能性は高いので、一応はくるものと想定して話を進めてみる。
ベイサン「ほぼ確定ですか?」
「うーん、来るとも、来ないともはっきりは言えないけれど、来ると思っていた方が心の準備ができていいいじゃない?」
イネオス「まぁ、確かにその方が後々粗相をしないで済みますかね?・・・」
来ないと思って参加するより、来ると思って参加していた方が、心構えができてて失敗しなくて済むと納得してくれたようだ。
「そう言う感じでいいじゃない?・・・それにしても、今回もロシュ君が招待できなかったのが僕は残念でならないよ。ロシュ君もいれば皆んなで楽しくお祝いできたのに・・・」
ロシュ君「へっ!?さ、流石に僕が参加するのは、ぼ、僕や両親は公爵家とお仕事での関係もありませんし、平民の僕がアトリー様と親しくして頂けてるのも不思議なくらいですから・・・」
僕の言葉に驚くロシュ君は焦るように早口で自分が参加できない理由を並べ立てる。
「ふふっ、そんなに焦らなくていいよ、ロシュ君、ロシュ君と一緒にお祝い出来ないのは本当に残念だけど、今回の結婚式でロシュ君家族を招待すると、ロシュ君家族が他の貴族家から嫌がらせを受けて、嫌な思いをさせてしまうかもしれないから招待状を贈らなかったんだって、父様が言ってたからね。僕も理由をちゃんと聞いて納得してるから今回は、いや、今回も渋々引き下がったよ・・・でも、皆んなと一緒にお祝いしたかったのは本当だよ・・・」
(前回のカミィ姉様の結婚式の時は、仕事関係性的にも物理的な距離的にもムーグラーフ家との関係がなさすぎるから、僕が寂しいってだけで招待して迷惑かけちゃダメだって言われたんだよね。まぁ、今回も似たようなもんだ、今回は王都住まいの貴族達を招いた結婚式に王都住まいで一般市民のロシュ君を参加させると、近い距離にいる分、デューキス家と家族ぐるみで親しいって思った、デューキス家を良く思わない貴族達に色々と探られて迷惑がかかるだろうから、それなら最初から招待せずに本当に僕とだけ親しい間柄として扱った方がいいのは理解できてるよ・・・(*´ー`*))
シュンッと俯いて悲しげな雰囲気を漂わせると、ロシュ君が申し訳なさそうな表情で困っていた。
ロシュ君「あ、アトリー様・・・」
「だからね、今度、身内だけのパーティーでロシュ君も招待するから来てね!お願い♪」ニコッ
落ち込んでいる僕を励まそうと出したロシュ君の手を僕は掴み、明るい笑顔でお願いした。
ロシュ君「ふぁっ!?は、はい・・・あっ!」
「やった!絶対来てね!その時はお迎えを送るから、迎えの馬車に乗ればいいだけだよ、何もいらないからね!ふふっ」
ロシュ君「ふぇ!?」
「良かった、良かった、これで皆んなと楽しくお祝いできるね!」
ソル「また、そんな約束の仕方をして・・・」
僕のゴリ押しに負けて返事をしたロシュ君に畳み掛けるように約束を取り付けた僕は、ソルに何か言われようとも1人満足してやり切った感を出して頷くのだった・・・そして、無理やり約束を取り付けられたロシュ君は、まだ理解が追いつかず目を点にしたまま呆然としていた。
イネオス「あ、その身内だけのパーティーにも僕達も参加が決定されてるんですね・・・」
ソル「すまない、言い出したら聞かないからな、アトリー様は・・・」
へティ「私達もその身内だけのパーティーの参加だけでも良かったんじゃ・・・」
ベイサン「それは無理じゃないか?アトリー様は結婚式の時に一緒に話せる相手が欲しかったんだからさ、それにもし、アトリー様とソルだけで結婚式に参加してみろ、いつも一緒にいるはずの僕達がいないのをこれ幸いと思った他の貴族令嬢や子息が、2人に群がって大変なことになるだろう?公爵様はそれを見越して僕達を招待してるんだよ。僕達が近くにいればアトリー様の話し相手にって言って近寄ってくることはできないからな・・・まぁ、アトリー様は本当に寂しいだけかも知んないけどな・・・」
(うっ!ベイサンの予想が全て当たってる!Σ('◉⌓◉’))
ベイサンの言葉に少し慌てたが無言でやり過ごそうとしたら・・・
ソル「正解ですね・・・」
と、内心をバラされて僕は視線を空に投げたのだった・・・・
「はぁー、天気がいいなー」
ソル「わざとらし過ぎですよ・・・」
「むぅ、そこは突っ込まないでいいの!」
ソル「皆んなにはバレバレですよ」
「いいの、それでもそっとしておくのが正解なの!」
皆んな「「「「ぶふっ!ふふっ」」」」
僕の白々しい演技の誤魔化し方にもソルが突っ込みを入れてくるので怒ったら、そのやり取りが面白かったのか皆んなが笑い出した。
皆んな「「「「ふ、ふふふっ、あはははっWWW」」」」
「皆んな笑いすぎ!!むぅーっ」
皆んなの笑い声が大きくなって恥ずかしくなった僕が、膨れっ面をして怒ってもまだ笑う皆んなに釣られて、最後には僕も皆んなと笑いながらその日の昼の休み時間は穏やかに終わったのだった・・・
(ふふっ、今週は色々と誤解も解けたし、寝不足の原因もはっきりしたし、今週末には祝い事もある、楽しい1週間なりそうだな・・・( ^∀^))
と、心の中で今後の楽しい日々に胸を踊らして空を見上げた。
だが、そんな穏やかな日常はそう長くは続かない・・・・
・・・アトリーが“神力“を発現させた時、とある、次元の狭間で・・・・・
?「!!・・・やっぱり、この“神力“は・・・・急いで、行かなきゃ・・・・」




