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223話 間話 異世界からの伝言 元勇者候補:花村 仁 視点



 母に異世界であった公開授業参観での映像を見せたあと、続きを話している間にも母は所々で懐かしそうに目を細めたり、また泣きそうになったりとしていたが、最初の約束通り絶対に口は挟まず、話を聞いていた。


「でね、帰る儀式が行われる日の午前中にアトリー君に“おばま“の事を聞く事にしたんだ。それで・・・・」


 僕達の異世界冒険譚は終盤に差し掛かり、今はアトリー君が“おばま“だと確信して、その事を本人に確認を取った時の話になった。“おばま”だと聞いた時のアトリー君の反応や、その後にアトリー君が“おばま“に変身した時の様子、他にもどこで気づいたとか、“おばま“が死んだ後の世界の話など、本当に色々と話たと言って。中でも、これくらいは言っても大丈夫だろうと彩ちゃん達と相談して決めた、母の失敗談を話した。


「母さん、そう言えば、走行中の車の中での殴り合いの兄弟喧嘩は危ないよ?“おばま“運転しててヒヤヒヤしたって、それにお気に入りのティッシュカバーよくも壊したなって怒ってた・・・」


母「え“っ、何でそれを・・・」


「それがね、“おばま“が自分の色んな黒歴史を、僕達に面白おかしく伝えた復讐だって・・・」


母「うっ!・・・」


 心当たりがありまくった母は、わざとらしく胸を押さえた。その光景を僕達は声をあげて笑った。ひとしきり笑った後に、僕は“おばま“にあの時頼んでいた映像を母に見せる事にした。


「そうだ、母さん、僕さ、この時“おばま“に親族に向けてメッセージをちょうだいって頼んだんだ。その時の映像見てくれる?」


母「!!!・・・見るに決まってるよ・・・」


 さっきまでのふざけていた表情をさっと切り替え、嬉しそうな悲しそうな表情になり、そう答えた母。僕は母の言葉に無言で頷いて自分のスマホを操作し、その映像を再生した・・・


“おばま“「これを最初に見ているのは多分、姉さんだと思うから、姉さんへのメッセージを伝えるよ。

 “亜実子姉さん“私、本当に念願の異世界転生したよ!前世で色々と話題になっていたいう世界転生ものの、物語の主人公に自分がなるなんて思っても見なかったよ!前世から憧れだった魔法と剣のファンタジーワールドに生まれ変われて私は今、絶好調に幸せです♪

 そうだ、仁からの話によるとこの世界がそっちの世界で大ヒットしているゲームだって聞いて驚いたけど、そのゲームを“まどか“が気にってるって聞いてさらに驚いたよ。あの子もこんなゲームする年になったのかぁ、って感慨深いものがあるよね?

 最後に姉さんお酒を飲みすぎないようにして80歳まで長生きして、母さんを最後まで見てあげてね。私が最後まで見ようと思ってたけど、ダメになっちゃったからさ、今はそこだけが心残りだったから・・・、よろしくお願いします。

 姉さん、旦那さん、まどか、仁、これからも元気で過ごしてね!」


 幻影魔法で生前の姿をした“おばま“が明る声で、ニコニコ笑いながらいつも話すような感じで母さんに話かけていた。僕は最後に僕達家族に元気でと、締め括った所で一旦映像をとめた。


母「っ!・・・“咲子“・・ずっ・・・・ぐすっ・・・幸せそうで、よかった・・・ぐすっ」


「母さんへのメッセージは一旦ここまでにしとくよ、後の映像は編集して母さんのスマホに送るね」


母「ぐすっ・・うん、ありがとっ・・すんっ・・・」


 久しぶりに見た“おばま“の動いて喋る姿にまた涙がとめどなく流れ始めた母は、涙で映像がボケないように一生懸命ティッシュで涙を拭き、最後に“おばま“の名前を愛おしいそうに呟いて、手で顔を覆って静かに泣き出した。少しして僕がすると決めていた事を言うと、顔を上げてこっちを見た、顔はもう化粧が涙で全部落ちてぐしょぐしょだったけど、その時の母さんの顔の表情は今までに見たことがない、嬉しさを全面に出した子供のような表情をしていた。


「・・・母さん、後は僕達がどうやって帰ってきたかの話があるんだけど、続けても良いかな?」


母「すんっ・・・うん、大丈夫、続けて?・・・すんっ・・」


 そして、最後に僕達がこの世界に帰ってきたかの話を、また写真や映像を交えて説明した。ここまで自分1人だけじゃなくて、彩ちゃんや夢ちゃん達の補足も入れて話し切った頃にはもう、時間は最初に話し始めてから既に2時間はゆうに超えていた・・・


「・・・母さん、これで僕達が今日たった5時間の短い間で起こったことの全てなんだけど、信じてくれるかな?」


 ここまで色々と話してきたが、母が本当に僕達の話を信じてくれたか気になり、僕は恐る恐るそう聞いてみた。


母「何言ってるの、こんだけの証拠を揃えて、私達兄弟しか知らない話までされたら疑うなんて事しないよ・・・」


「ほっ、そうか、そうだよね、よかった・・・・」


 母の答えに夢ちゃんや彩ちゃん達もホッとした様子で、先程まで緊張で固まっていた姿勢から力を抜き背もたれに背中を預けていた。


母「あはははっ、そんなに緊張してたの?まぁ、しょうがないか・・・これだけの大冒険してきたんだものね。・・・でも、偶然て恐ろしいわね、仁達が召喚された世界の先で“咲子“いや、今はアメトリン君だっけ?に会えるなんてね・・・しかし、あの“咲子“があんな美形の男の子になるなんて、メッセージの時のあの姿は魔法かなんかなの?・・・それにしてもずるいっ!あんな天使みたいな顔面に私もなりたかったっ!キラキラの天使の輪の浮く銀髪に、絵画にでも出てきそうな天使みたいな可愛い顔、目なんてキュルルンって効果音がしそうなほど大きくて、まつ毛も長いし、瞳の色なんて名前の通り希少鉱石の“アメトリン“まんまの黄色と紫のツーカラーで、左右で色の割合が違ってオッドアイにも見えるって、もう“美の塊りかよっ!“て叫びたくなったわ!しかも無自覚に可愛い仕草するんだよな、あの子!そんな時に“可愛いっ!!“って叫びたくなるのを堪えるのに苦労したわ!!!」


「おっ、おぅ・・・」


 母のアトリー君の容姿を褒める言葉の勢いにドン引きの僕は、(最初に突っ込むところはそこか?)と思ってしまった・・・


彩ちゃん「分かるっ!!“ジンママ“の言いたい事、凄く分かる!アトリー君、最初から自分の容姿の破壊力に無自覚で、私、そんな可愛い仕草を目の前で見て何回も鼻血を噴きましたもん!特に着飾ったアトリー君が拝みたくなるほど神々しくて、もう、天に召されそうになりました!!」


母「あ!あの、最後の動画での“祭事服“?っていう白い服でしょう⁉︎分かる〜!あれ凄く似合ってた!性別超えてたよねっ!?」


彩ちゃん「です、です!!あの服装を見たのが神殿の中だったんで、女神でも舞い降りたんじゃなかってほど綺麗だったんですよ!」


夢ちゃん「そうだよね!私もあの服は凄くいいと思ったよ!あれは女性よりの中性的って感じだったけど、男性的だったら王城でのパーティーの時のあの格好を私は推しちゃうなぁ、もちろん普段着の時のアトリー君もちゃんと男の子してて凄い可愛いんだけど、カッコいいってなるとあの時の正装が当てはまるよね!」


母&彩ちゃん「「分かる分かるっ!!」」


 変な共感をし出した女性3人に僕は呆れながら、お茶を一口飲んでため息を吐いた。その後もアトリー君とあってから毎日撮っていた、“アトリー君の本日のコーデ(成長記録)“を見ながら話が弾み、母は今まで聞いた話の中で疑問に思ったことや、アトリー君とのやりとりの詳細などを聞いてきたりして、アトリー君の言動の端々から“おばま“の面影を感じては寂しそうな、嬉しそうな表情をしては最後には楽しそうに話していた。


夢ちゃん「アトリー君ってあの容姿や言動だけでもハイスペックなイケメン男子なのに、あの世界での能力の“魔法やスキル“なんかの扱いもチート級でやばいくらいカッコいいんだよねぇー、学園に通う傍ら休日は冒険者としても大活躍してるんだから、戦ってる姿はまじ惚れ惚れしちゃったよ・・・」


彩ちゃん「あー、それも分かるー、アトリー君の身体って超ハイスペックな血筋だから、凄く運動神経いいんだよね、でも血筋だけでやっていってるんじゃ無くて、毎日ちゃんと努力してトレーニングしてるから、屈強な大人の騎士相手でも負けないし。魔法なんて前世の記憶があるからか、事象を再現するイメージが明確で繊細な魔法を出すんですよ、それに、魔力量はもうほぼ無限大みたいな感じだから威力も高くて、あの世界で最強格の1人だと思うんですよねぇ・・・」


「うわー、そう言えば、なんか神様がお詫びでつけた加護?ってのもあって?悪いやつは近づけないとか言ってなかったけ?あの子、マジチート野郎じゃんWWずるっ!!WW」


「ぶっ!」


 話はアトリー君の能力の高さについての話題になっていたが、母の表現に少し吹いてしまった。


夢ちゃん「チート野郎ってWWWW、・・・あ、そうだ“ジンママ“、“おばま“って手先も器用だった?」


母「ん?“咲子“は手先は凄く器用だったよ?自作で服やバック、ネイルアートとかアクセサリーも、自分で作ってたまに私達にも作ってくれてたわ・・・それがどうしたの??」


夢ちゃん「やっぱり・・・こっちに帰る少し前にアトリー君が自作してくれた魔道具のペンダント、これ、本当に精密な装飾が凄くて職人並みなんだよね、それにアトリー君って、料理までできるって言ってたから、前世での“おばま“の得意なことや習慣付いてたことがスキルにも反映してるんだって、だからさらにチートに磨きがかかってるんだと思う!」


母「うわぁ、またこんな細かいものを・・・確かに・・・それはもうチート通り越して神だよ!あの子は昔から何でもそつなくこなしてたから、“ばあば“の美容室の常連さんに“「一家に一台って感じで“咲子ちゃん“がうちに欲しいわぁ」“ってよく言われてたの思い出したわ!」


夢ちゃん「それ分かるぅ~、アトリー君、元女性だったから凄く優しくて気がきいて紳士なんだもん、掃除、洗濯、料理に裁縫までできるなんて、マジあんな彼氏欲し~」


母「そうだよねぇ、それにあの子、前世の20代の頃は交通整理のバイトしてて、いろんな業種の人とお知り合いになってた時に、水道業者から水道の配管の取り替え方、建築関係で電動工具の扱い方から左官作業とか、電力会社では電気配線の剥き方や繋ぎ合わせ方まで、色々と教わってて可愛がられてたのよ。

 男顔負けの仕事っぷりで力持ちだったけど女性やお年寄りに凄い紳士だったわよぉ~、自営業してた時とかは近所のお年寄りが買い物に来たら、商品を取ってあげたり、買い物で重たい物を買ったら絶対その荷物持ってくれるし、車で迎えに来たら、私が家から出てくる頃には車の扉は雨でない限りあの子が車の扉を開けて待ってくれるし、仁達が小さい時に一緒にお出かけしてた時なんて車を道路に停めて、玄関まで仁達を迎えにきてくれて先に車に連れて行ってくれるし、親族で集まった時は何か足りないものがあって、自分が買い物しに行く時は必ず他の人に“何か買ってきて欲しいものとかある?“って聞いてくるし、私の嫌いな虫が出てきた時は率先して追い払ってくれるしで、凄い男前で紳士だったわ!」


夢ちゃん「わぁ、なにそれ⁉︎それマジ、スパダリなんですけど⁉︎」


彩ちゃん「それ、昔からだったんですね?私向こうで、ちょっとポカした時にアトリー君が庇ってくれた事あって、その時、10歳男児に胸がキュンッとしましたもん!」


母「あー、あの子ねぇ、若い頃、あの子の幼馴染が通ってる女子校の文化祭に行った時に、茶道部がしてた茶道体験の場所で、茶道部の部員が着てた浴衣の帯が崩れて落ちそうな所を素早くとめて、乱れた浴衣を自分の上着で隠して裏方に連れてってやって、その乱れた浴衣を着付け直してあげてたら、そこの担当教員に他の子も着付け直してもらえないかって言われて、結局、茶道部員全員の着付けし終わった後に名前も告げずに出て行ったらしいんだけど、後日、その話が学校中で話題になったらしくて、その時の話の中ででたあの子の容姿と格好で、幼馴染の子が“咲子“って気づいてね、その事を茶道部の子に教えたらしいのよ。そしたらそれ以降そこの学生に大モテしてたって時があったよ・・・女だった前世でそれだからね、それは胸キュン必須ですわWW」


彩ちゃん「“おばま“マジ男前すぎる!乱れた浴衣を自分の上着で隠してやって、着付けもこなした後に、名前も告げづにその場を去るとかマジ紳士!!」


夢ちゃん「むしろ今、その話で胸がキュンッとした!てか、“おばま“って浴衣の着付けまでできたんですか⁉︎」


母「それは出来るわよ。あの子18まで日舞習いに行って、自分で着物着てたし、“ばあば“の美容室での成人の振袖の着付けまで手伝ってたもの・・・、あの子日舞で男役もしてたから、袴も自分で着れるわよ?それに、私も友人の結婚式とかで着る留袖を母とあの子によく着付けして貰ってたし、あの子の友達とか夏祭りでは必ずあの子に着付けを頼みに来てたくらいだよ?あの子の結ぶ帯のアレンジが可愛いから皆んな頼むのよねぇ~」


夢ちゃん「マジですか!それ私もしてほしかったーっ!!」


母「甥姪のチビ達もよく可愛く仕上げてたわよぉ~、その時の写真あるわ、仁も着付けられてたからね♫」


彩ちゃん&夢ちゃん「「え~っ、それ見た~い!!」」


 次々出てくる“おばま“の懐かしい思い出に話が盛り上がる女性3人、その中で僕は1人肩身が狭い思いをしていた・・・・


(“おばま“に男として、今も昔も勝てる気がしないんだけど・・・・(*´ー`*))


 その日は“まどか“が学校から帰ってくるまで“おばま“の思い出話で盛り上がっていた母は、ご飯を用意するのを思い出して、そこでやっと僕達の話は終わったんだが、その後に母から他の兄弟や“ばあば“にこの話をする時にできれば僕だけじゃなくて、彩ちゃんや夢ちゃんにも来て欲しいとお願いしていた。そのお願いを2人は快く了承してくれて、後日、全員が集まる日を設けて纏めて話をすると決まった。


 数日後、母はかなり強引に親族一同を集め、母の実家である“沙樹崎家のばあば“の家に全員が集合した。“沙樹崎のばあば“の家の敷地はそれなりに広く、建て直した時に親戚一同が入っても余裕があるリビングを設けてあるので、そこで話をする事になった。

 この日のために母は事前に父に相談をしようと言い、その日の夜に母と一緒に異世界の話を父に話した、僕の父は頭ごなしにその話を否定する人ではないので、静かに僕達の話を聞いてくれていて、すぐに僕の話を信じてくれた。

 そこで母は父にこの映像を全員に見せたいのでどうにかできないか?と相談したら、実家のリビングに置いてある大きめのテレビにパソコンを繋げて全員に見せる事になった。その為に僕や夢ちゃん達のスマホに入っている映像を父のパソコンに送り、父が軽く時系列順に分かりやすく編集をかけて繋げてくれた。おかげで僕達はその映像を見ながら話をするだけでいいようになっていて。思い出せる限りの話題をメモにとっておいた。


 そして、“ばあば“の家に全員が集まり、静かに全員が座った頃、母が司会となって話が始まった・・・



















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