220話 諸々のその後・・・
はい、どうも、僕です。今日は久々の学園登校の日です。ここ数日間、療養という名の軟禁生活からやっと解放された僕は、ご機嫌で学園に登校している最中です♪
「はぁ、久しぶりの屋敷の外だ」
ソル「そうですね、実に五日ぶりでしょうか?」
「そうだよ、五日も屋敷に篭りっぱなしで身体が鈍りそうだったし」
そう、僕はあの日から五日ほどの療養を言い渡されて、最初の三日は完全に病人扱いだった。あの日の夕方に軽く目を覚ましたらしい、だが、その時は意識がぼんやりしていたみたいで何か食べ物を食べた後にまた寝たようだ。翌日、意識がはっきりした状態で起きた時は、それまでに家族全員が心配して誰かがずっと側にいたと聞き、申し訳なく思ったが、その日も身体のだるさが抜けず、強い風邪を引いた感覚で1日起きたり寝たりを繰り返し、家族やソル、オーリー達専属に甲斐甲斐しく看病されて、合間に簡単な食べ物を食べてゆっくり休んだ。
二日目は少し症状が緩和され、起きている時間が長くなった、それでも全体的な身体のだるさで動くのが億劫だったので、その日もソル達専属や家族に看病されながら過ごした。
三日目、だいぶ症状が落ち着いて、通常通り起きてソルやジュール達とおしゃべりしたりして過ごし、父様達が襲撃があった時の話を軽く聞いてきたりしていた。ついでにソルは二日目の時から学園が始まっていたんだけど、僕の世話は自分がすると言ってガンとして譲らず。僕と一緒に学園をお休みしたのだった。夕方にはイネオス達がお見舞いに来てくれて、軽くおしゃべりして楽しく過ごし、翌日もお見舞いに来ると言ってくれて嬉しかった。
四日目は、身体の体調もすっかり良くなり、通常と変わらなかったので、学園に登校したいと言ったのだが、家族は大事をとってちゃんと次の日まで休みなさいと言って譲らなかったので、仕方なく屋敷で過ごすことにした。でも、暇で暇でしょうがなくなって、屋敷の庭園を散歩すると言って外に出て庭園の端っこで筋力トレーニングをしていたら、速攻でソルやオーリー達に見つかり、母様達にしこたま怒られた。そしてその日の日中は母様と強制的なまったりお茶会をして、夕方にはまたイネオス達がお見舞いに来てくれて、夜は母様が僕が寝るまで側に一緒にいると言って本を読むことになった。だが、久しぶりにそんな風に過ごしたのが嬉しくてつい甘えてしまって、いつの間にか母様の腕の中で寝落ちしてしまった。
五日目は、とうとう、お散歩も本を読むのも飽きてきてやることがなくて、室内で魔力操作の鍛錬をしていると、ソルに見つかったのでソルも巻きこみ、いや、説得し、2人でいつもの魔力弾での対戦をしていると、ついヒートアップしてしまい、いつの間にか部屋に入ってきていたお祖母様に2人して怒られた。その時、母様はカミィ姉様とお出かけ中で、僕は母様もいないし父様も仕事で忙しいので大丈夫だと思って完全に油断していたのだが、どうやら僕の様子を見るのを母様がお祖母様にお任せして行っていたようで、まぁ、案の定、お祖母様から両親に報告が行き、結局また両親にお小言をもらったのだった。しょんぼりしている僕達をお見舞いに来ていたイネオス達が慰めてくれて、優しさが心に沁みた・・・
そして、今日、療養してから六日目なのだがやっと学園への登校を許されて、馬車の窓から外の景色を堪能している最中です。
「いやー、屋敷にいるのは嫌いじゃないけど、身体が動かせないのはキツかったなぁー」
ソル「それはしょうがないですよ、神々から十分療養を取る様にと連絡事項に書いてあったのですから・・・」
「あー、そう言えばそんなこともあったねぇ、あ、そうだ、あの時、“神力“を引きわした時の最後の方、僕が神殿で寝る前に神様達から“加護の結界“の件で言われてた事があって、それを、確認してみたら加護の結界に新しく凄い機能が付いてたんだよね・・・・」
ソル&オーリー「「えっ?」」
「神様達、僕が刺されたのを気にしてるのか、“儀式“の最中でも加護の結界が消えないようになって、結界自体に魔法属性がつけれて、結界に接触したら付けた属性の魔法攻撃で反撃ができる様になったみたい、他にも色々とできるみたいだけど、僕が意図的に結界を消したとしても危険が迫れば勝手に発動する様にもなったんだって。だから、今の結界はちょっとやそっとじゃビクともしない、反撃もできる結界になったみたい。その説明を見て僕さ、もうこれ、最強の防御壁なんじゃないかな?って思ったんだよねぇ」
ソル「そ、それはまた、凄いことになりましたね・・・・」
結界の詳細を聞いたソルとオーリーは物凄く驚いた顔をしていたけど、僕はそれとは別のことを思い出した。
「だよねぇ、あとね、この間、結界内で僕が“アイツ“をボコボコにしてた時、あの剣から出てた“邪気“?の影響を、精霊達が一生懸命無効化してくれていたらしいんだ。だから、今日のお昼にはいつもの場所で精霊達のリクエストを3つ聞いて、歌ってあげるって約束したんだよ。だからね今日の放課後は真っ直ぐあそこに行こうと思ってるんだ。」
ソル「そうなんですか、通りで、あの時、僕には何も害がなかったんですね。・・・そうなると、僕からも何かお礼ができればいいんですが・・・」
「そうだねぇ、昼休みの時でも何がいいか聞いてみたら?」
ソル「・・・そうしてみます」
その後もソルとたわいも無い会話をしながら馬車に揺られること数分、馬車が学園に到着し、いつも通りロータリーの学園の入り口正面で馬車が止まり、いつも通りの順番で馬車を降りていく。そして登校してきていた学生達にいつも通り注目され、学舎内に入っていくと・・・
「あれ?人が少ない?・・・」
教室に行くまでの道中にいつも通り大勢の生徒達がたむろしたりしているのだが、ほんの僅かだが人数が少なく感じた。そしてやけに僕達の顔を見て驚いた表情をする人達が見受けられた。
「それにやたら額を出している人が多いような?・・・」
通り過ぎる生徒達の大半が額を出すような髪型をしているように見えて、たまたまか、今の流行りなのかは分からないが不思議に思い首を傾げた。
ソル「アトリー様、多分アレですよ。神々の連絡事項にあった、一文のせいじゃ無いでしょうか」
「あ、あぁ、アレね、あの“宗教“との関連している者の額に印が出るってやつね。それで、皆んな自分の額を見せることで自分は関係ありませんよって、示してるんだね」
(まぁ、なんとも分かりやすい方法だけど、今も王城で行われている“邪神教“の信徒達の事情聴取の時に出た名前の人達の中で、関連性が強くて犯罪にあたるものが事実だった場合、その人達に次々大きな印が出ているって聞くから、額を見せててもいきなり印が出てくる可能性はあるんだけど、いいのかな?あと、騙されて信者になった犯罪性が薄い人でも小さく出てくるから、騙されて入信しただけで犯罪には関与してないのに、“邪神教“の関係者でしたって学園の全員にバレると不味く無いかな?学園に来にくくなるんじゃない?・・・あ、もしかしてそれで生徒数が少なかったりするのかな?(*´Д`*))
天華『まぁ、そうなんでしょうね、後はご両親やご親戚などがあの“邪神教“に傾倒して、狂信していた可能性がありますね』
(あー、子供を巻き添えか、それは可愛いそうだね・・・)
そう会話しているうちに1学年の教室がある廊下まで来ていた。
「「「あ、アトリー様!ソル!おはようございます!」」」
「!やぁ、皆んな、おはよう♪」
ソル「おはようございます」
そして、いつもの様にイネオス達が廊下で僕達が来たのを見て朝の挨拶をしてくれる。その光景を見て、いつもと変わらぬ風景に日常が戻ってきたなぁと、しみじみ思った。
イネオス「そう言えば、アトリー様、つい二日前のことなんですが、アトリー様達のクラスの担任教師が突然お辞めになったんですよ。それが今回のあの事件に関与していた疑いがあるとかで今、学園はその事件の噂で持ちきなんです。なので、もしかしたら、教室で質問攻めに合うかもしれませんので気をつけてください」
「えっ!そうなの?今回の神殿での事件は色々と国交とかに関わるから詳細は伏せられているのに、教員が関与したとなぜバレたんだろう?と言うか、本当にあの教師が関与してたのかな?」
ヘティ「それは、正直言って分かってないんです。噂は他にも学園を急に休んだ生徒はこの間の“襲撃事件“にも関与して額に印がでたから捕まったなど、あらぬ疑いをかける方々がいたせいで、ここ数日でわざと額を出すような髪型をする方が増えたりしてるんです。それにアトリー様の休養のことも色々と噂話は出ているんですけど、そんな数ある噂の中でその教師の噂だけがやけに詳細で、真実味があるんですよね・・・」
「うーん、それでなんか学園全体が騒がしいというか落ち着かない雰囲気なんだね・・・」
(神殿での事件は詳細が明らかになってないから的外れな憶測やデマが出回ってしまったんだな。大体、本当に額に印が出たとしてもまだ学生で未成年を、ちゃんとした罪状もないのにそう簡単に捕まえたりしないだろうに・・・しかし、あのレーラー先生がねぇ・・・まぁ、いっつも僕だけには塩対応だったけど、“邪神教“と関わりがあったからあんな態度だったんだろうか?(。-∀-)いや、だからと言って塩対応だった理由はわからんけどな・・・)
自分のクラスの担任が教師を辞めたと聞いて驚きはしたが、今の学園の空気は神殿で起きた事件に対しての、憶測やデマが蔓延したものだと言うことはハッキリした。
「・・・それで、関与したっていう噂の内容は?」
ベイサン「それが、学園で起きた公開授業襲撃事件の侵入者達を裏で手引きしたって言うのが、あの教師だと噂されてますね」
「あー、そう言う事か・・・」
ソル「それはまた、あり得そうな内容ですね・・・」
ヘティ「そうなんですよ。あの襲撃事件の前にもあった学園への侵入者の件、あれを私達は知ってますから、真実味があり過ぎて否定できないんですよね・・・」
「はぁ、確かにあの教員が侵入者を手引きしたって可能性は大いにあり得るけど、まだ正式な発表はないから真実はわからなからね。この件を誰かに聞かれても憶測は話さずに分からないと言って避ける方向で行こうよ」
ソル&イネオス達「「「「はいっ」」」」
真実かどうかはわからない時点でこれ以上の憶測を重ねるのは無意味だろうと思い、周りからの質問にも極力応えない方針を提示した。皆んなはその提案に元気よく了承してくれて、その後はいつものように今日の皆んなの授業や放課後の予定などを話し合い、チャイムがなる前に別れて教室に入った。
「「「「「ザワッ!」」」」」
僕が教室に入るなり中にいた生徒達全員がこちらを振り向き、驚いた表情をしていた。その表情はここに来るまでに何回か見た表情だが、その原因が先程ヘティから聞いた話が原因だろうと思いながら、いつもの自分の席までその視線を無視して歩いた。
「あ、ロシュ君、数日ぶり、お見舞いの手紙ありがとう。今日からまた一緒にお昼ご飯食べようね♪」
ロシュ君「あ、アトリー様!・・・良かった・・・お元気そうで・・・ぐすっ・・・」
(あー、泣いちゃった・・・、ロシュ君はお見舞いに来たかったけど、あの事件があって警戒態勢が高くなった貴族街に入れなくて、お手紙をいつもイネオス達に渡してくれて心配してくれてたんだよね・・・僕もお手紙は返してたけど、僕に何があって休んだのか詳しい情報も、今日学園に復帰することも伝えてなかったからなぁ、かなり不安にさせてしまったか・・・)
「心配させてごめんね・・・」
泣いてしまったロシュ君の背中をポンポンと叩いた。ソルもハンカチを渡して涙を拭かせ、落ち着くまでそばでそっと背中をさすった。
ロシュ君「うっ、うっ、ぐすっ、す、すいません、も、もう大丈夫です・・・」
「ふふっ、心配してくれてありがとう・・・」にこっ
ロシュ君「はっ、あ、いや、当然の事です!友達なんですから!」
泣くほどに心配をして真剣な表情で友達と言ってくれる彼は、いつも偽りのない本心を言ってくれていると再度理解し嬉しくなった。
「ふふっ、やっぱりロシュ君は凄いな。そう言って貰えると嬉しいよ♫ふふっ」
(僕みたいな規格外で身分違いの同級生を、本当にただの友人として接して、なおかつちゃんとそれ相応の場では身分を弁える振る舞いをしてくれる、それをすぐに切り替えれるロシュ君は凄いよな・・・(*゜∀゜*)とても10歳とは思えないよ・・・)
泣き止んで照れてるロシュ君を見ながら自分の席に移動し、いつもの様に僕とソルはロシュ君と前と後ろの席で仲良くおしゃべりしていると、チャイムがなり、知らない教員が入ってきて出席をとってホームルームを始め出した。
(やっぱり、レーラー先生は教師を辞めたのか、そして今度の担任は男性ね、名前なんて言うんだろ・・・)
男性教員「・・・では、このまま魔法基礎の授業を始めます。最後にデューキス君、体調がすぐれない場合は早めに申告してください」
「はい、問題ありません、先生、お気遣いありがとうございます」
少し考え事をしている間に新任の教師からそう言われて少し驚いたが、いつもの貴族特有のアルカイックスマイルを浮かべて返事を返した。
(僕を見て侮るでもなく怯えるわけでもない、むしろ普通の気遣いさえしてみせたあの教師は国からの派遣かな?(*´ー`*)しかし、僕に対して媚びる感じがないのがポイント高いね!(°▽°))
僕に対して極端な反応をしなかった教員に好印象を持ったのだが、向こうは僕が教師から優遇されずに普通の対応された事に驚きもせず、怒りもしなかった、逆に貴族の大人な対応で返してきた事に、若干引いた様子を見せた。でも、それもよく見ていないと分からないぐらい一瞬だった。すぐに普通に戻った男性教員はそのまま自分の担当科目の魔法基礎の授業を淡々と進めた。
(ふーん、あの先生、身のこなしがただものじゃないね、かなり国からの信頼があつい有能な人物なのか、それとも教員免許持ちの影騎士か・・・どちらにしても好都合、僕に無駄に絡んでこないから、これからの学園生活は楽しくなりそうだね♪( ´∀`))
今後の学園ライフの憂いがなくなったと喜びつつ授業を受け、そして、一限目の授業が終わると、クラスメイトから囲まれました・・・




