218話 お届け物でーす♪
どうも僕です。“勇者送還の儀式“終盤で起こった襲撃事件の首謀者を、この世界から追い出す直前で取り逃してしまった僕です。
現状かなり面目無い状態ですがティーナちゃん達との約束の為、“アイツ“、“原初の蛇神“が使用していた“剣“を教えられた“儀式“?で、神界にいるティーナちゃん達の元へ届ける準備をしています。
「じゃあ、ジュール、“剣“を渡してくれるかな?」
ジュール『はーい、どうぞ♪』
「持っててくれて、ありがとう」
流石に人に持たせるのはダメだろうとの判断から、僕が服装を整えている間は、ジュールが“邪神の剣“を咥えて持ってくれていたのでそれを受け取り、礼拝堂奥のティーナちゃんの神像の目の前にある祭壇の上に置いた。
(よし、これで後は祈るだけって、めっちゃ簡単なお仕事なんだが・・・・しかし、この“剣“、中々エグい効果がついてたな・・・(-᷅_-᷄:))
祭壇の上に置かれた“邪神の剣“、この剣をティーナちゃん達の元に送る前に、“情報開示“の“神力“バージョンで見てみると、物凄い数の危険な効果が付与されていた事が発覚した。
*情報の詳細はこちら・・・
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+邪神の剣(不浄の剣)+
詳細:上質な素材で作られたロングソード、長い年月数々の持ち主を渡り歩いた“いわく付き“の呪いの剣を素体に作られた“不浄なる剣“
付与:素体を呪詛の媒体とし、数多くの人の恨みや妬みの悪感情を“怨念“として溜め込んでいる。また、長年呪いの剣としての汚れた魔力、“瘴気“も溜め込んでいる。その2つを混ぜ込むように“邪神“自ら不浄なる力“邪気“を付与してあり、この世界で最も不浄な剣となっている。それとは別に簡易的な“瞬間移動“の魔法陣が刻まれている。
効果:この剣で斬られたものは状態異常の“呪い“や、瘴気が原因とされる“魔障病“にかかり、様々な精神異常をも起こす。複数の症状を同時的に発症させるので正しい治療を施さないと、発症者はじわじわと苦しみもがいて死にいたる。そのままでも剣から漏れ出る“邪気“で土地を汚す厄災となる。“瞬間移動“の発動は一度きり、転移場所は使用者の指定する場所に行く事ができるが、魔力量が足りない場合は失敗する。
価値:なし
製作者名:複数人の怨念や瘴気が混じっているので“特定不可“
備考:この剣には神の依代となった形跡あり、乗り移った神は“瞬間移動“でどこかの土地へ移動しているが、転移先は不明・・・そして剣の効果は浄化され無効化されている。
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(ってさ、どう見ても、これ、僕を苦しめて殺す気満々だったよね。それに逃亡用に“瞬間移動“の魔法陣までしっかり刻んで、めちゃくちゃ用意周到じゃん、しかも、物質の重量と面積の量によって使用するエネルギーになる魔力の量も異なってくるし、魔力量がそこそこないと転移したい場所にも行けないはずなんだよね、だから“アイツ“わざわざ自分が乗り移ってた物質的に重い肉体を切り捨てて、この剣に自分の本体?精神体?見たなのと力を全部移して、ジュール達の結界を一点突破で壊してから、剣に自分の溜め込んでいた魔力の大半を使って、重量がほぼ無い状態で“瞬間移動“していったからかなり遠くまで逃げてるんだろうなぁ・・・それにしても、こんな物騒で特徴ある剣を持って転移したらトレースされると思って、わざと転移の時にここに残していくと同時に、この剣を時限爆弾がわりにして、この辺一帯を誰も住めない土地にするつもりだったな、完璧に嫌がらせ目的で・・・まじ、この剣の浄化が終わってなかったら、ヤバかった・・・( ;´Д`))
天華『そうですね・・・』
(はぁ、あの時、余裕ぶっこいて追い詰めて楽しんで、それで逃げられたとか、めっちゃ恥ずかしいし、悔しい・・・(T ^ T)・・・あぁ、さっさととどめを指しとけば良かった)ギリッ
夜月『アトリー、過ぎたことはどうしようもない、だが今回の件で“ヤツ“は大きく力を削がれただろうから、自分の正体を隠す能力も低下しているはずだ。だから、力を蓄えるために今後数年はアトリーの前に出てくる事はないはずだ、もし“ヤツ“がまた力を蓄えてアトリーの前に出てきた時には、今度こそ確実に仕留めれるように対策を練っておけば良いじゃないか・・・』
(・・・うん、そうだね、今回は色々と予想外な事も起こったし、加護の結界に頼り過ぎてた面もあるから、僕もちょっと気を引き締めて鍛え直さないといけないな・・・)
ジュール『私も鍛え直す!!』
天華『そうですね、私達も、少々油断していた所もありますし、いい機会ですから1から鍛え直すついでに、アトリーが学園を卒業して冒険者活動がメインになった時に、色々に役立てるものを覚えてみるのもいいじゃなでしょうか?』
夜月『あぁ、そうだな、新たな知識や技術を習得するのも楽しそうだな。だが無理のない範囲でだが・・・特にアトリー、焦りで無茶をしないようにな』
(むぅ、はーい(*´-`)」)
“アイツ“の逃亡を許した件をいまだに悔やんでいると、夜月達に次に活かせるように対策と更なる力をつければいいと励まされた。その上で無茶な修行はしないようにとも釘を刺されてしまった・・・
こうして、念話で会話している間にも僕はティーナちゃんに物を送る“儀式“を始めるために、“邪神の剣“が置かれた祭壇前から少し距離をとり床に両足を跪き、両手を組んで祈りのポーズをとり。祝詞と言っていいか分からないが神々に語りかけた。
「神々よ、この度は我が身に起こった災厄にお力添えいただいた事感謝申し上げます。その際にお約束した“邪神“の討伐に失敗してしまいました大変申し訳ございません。ですがもう一つのお約束であった品を献上いたします」
(ティーナちゃん、本当にごめんなさい!“アイツ“は逃したけど“アイツの剣“だけはちゃんとゲットしたよ!)
ティーナちゃん『はいはーい、アトリーちゃん、ありがとーう♫』
(お?・・・あれ?今回は神界にお呼ばれじゃなくて念話?(*´ー`*))
祈りと共にかけた言葉に軽~い感じで買ってきた言葉に、祈りで閉じていた目を開けると、そこは祭壇前の風景だった。いつもなら神界に精神が飛ばされるのだが、今回はどうやら念話での対応をされているようだ。
ティーナちゃん『あ、そうなのよー、今こっちにアトリーちゃん呼んじゃうとそのまま“神格化“されそうだから、今回は念話通信でお話ししましょう♪』
(あ、そうなんだ?・・・・・うん?神格化?僕が?)
月詠様『アトリーは今“神力“を纏っているだろう?神界では高位な魂を持ち“神力“纏った精神生命体が“神格化“されやすい、魂と精神は紐付けされているからな、“神力“を纏った精神体が“神格化“されてしまうと、必然的にその魂まで“神格化“されてしまう。今のアトリーの魂は私達の加護の影響で、この世界のどの人間の魂より高位な位置にあり、格が高いのだ、それが“神力“まで纏っていてはその若さで“神格化“、神の仲間入りすることになって現世での肉体がなくなってしまうんだ。だから、今はこちらに呼べないんだ・・・』
(ふぇっ!?月詠様!?ま、マジですか・・・で、でも、この“神力“って皆んなからの借り物だよ?自分の力じゃないのにそんな事になる?)
ティーナちゃん『それがね、分からないのよ、今まで現世の人達に“神力を貸し与えることは何回かあったんだけど、その人自身は“神“に至るほどの格の高い魂を持った人はいなかったから、あと一歩って感じの人は居たには居たけど、それでも今のアトリーちゃんほどの高い格を持った魂の人はいなかったから、今、アトリーちゃんを神界に連れてくるのは危険じゃないかってことで、こんな感じでお話しするしかなくて・・・ごめんね?』
今の状態がそこそこヤバめな状態だって事が判明した。神になるとかなんだそれって感じだが、でも、確かに“神力“とは神の力、それを持ってでもしなきゃならなかったって事、そこまでしないと“アイツ“を追い出せなかったのに自分は・・・
(へ、あ、いや、むしろ気を遣ってもらってごめんね?それに僕、“アイツ“逃しちゃったし・・・・シュンッ(*´ー`*))
天照ちゃん『まぁ、そんなそんなに落ち込まないでアトリーちゃん、逃げたものはしょうがないです、向こうも必死だったでしょうし、何より相手は神ですから、今回は向こうが油断してたから途中からでもあそこまで巻き返せれましたが、奇襲の最初ではこちらも想定外でアトリーちゃんに痛い思いをさせてしまいましたし。すぐに治す事ができたとはいえアトリーちゃん痛かったでしょう?ごめんなさい、もっと相手の力量を私達が見極めれていればあんな痛くて怖い思いをさせませんでした・・・』
(・・・天照ちゃん・・・確かに痛くて怖かったけど、僕はまだちゃんと生きてる。僕は一度は死んだ身だ、人はどんな事をしてもいつか死ぬんだから、また死んだとしても、“しょうがない“と思ってるよ。むしろ、今日受けた傷は前世で受けた傷より全然痛くはなかったし、その痛みも寝て起きたらなくなってたからもう平気だよ。怖さも怒りで吹き飛んでっちゃったし。だから、今回はスキルのおかげで助かってラッキーだったって事だよ♪相手も神だったんだから、正確な予測できなかったことは“しょうがない“んだよ、気にしちゃ駄目、僕だって“アイツ“の逃亡の可能性をちゃんと予測できなかったし、今思えばちゃんと冷静に考えれていたら真っ先に思い付かなきゃならない事だった。だからさ、都合がいいと思われるかもだけど、今回の事はお互い様って事で水に流さない?)
ティーナちゃん達『『『アトリー・・・』』』
僕は極力、明るい感じの声で怪我のことは気にしてない、だから、皆んなも気にしないでと言いたかった。でもそれじゃあ神様達は納得しないだろうから、自分の失態を引き合いに出して、互いの罪悪感を水に流そうとした。でも、ティーナちゃん達は僕の言葉に悲しそうな声で僕の名前を呼ぶ。
月詠様『アトリー、自分の死を“しょうがない“で済ませるんじゃない、君の事を大切に思ってくれている人達が聞いたら悲しむぞ。それに自分の死や痛みに慣れるものではないよ・・・』
(あ、・・・うん、そうだね・・・ごめんなさい、ちょっと、軽率過ぎた、でもね、生きるのを諦めてるわけじゃないんだよ?・・・ただ、それが・・・)
自分が誰かの大事な存在、それを忘れるなと、僕の発言を聞いた月詠様はそう言いたいのだろう。その言葉に自分の迂闊で軽率な内容があったことは認める、その上で僕は絶対的な法則があることもまた知っている。前世を含めた今までの人生で何度か体感してきたこと、それは変えられない出来事だから、自分の今の人生にいつ起こっても不思議ではないそう言う認識からでた言葉であって、今の自分の人生を簡単に手放すつもりは無かった、そう言いたいけど、どうしても後ろ向きな発言をしてしまう自分がもどかしかった。ちゃんと伝えたいそんな思いを相手を悲しませたり不快な思いをさせずにどうやって伝えたらいいのか、そう思いっているだけで、言葉が詰まってしまった・・・
天照ちゃん『・・・分かってます。アトリーちゃんが言いたいのは、“人の死“、それは自然の摂理だからと言いたいのでしょう?そんな泣きそうな顔をしないでください、私達にはちゃんと伝わってますよ。でも、それでも、アトリーちゃんの口から自分を蔑ろにする発言をさせたく無かった、私達のわがままなんです。・・・・先程の互いの失敗を水に流す提案は受けます。・・・だから、先程のアトリーちゃんの自分を蔑ろにする言葉も私達のわがままも全部一緒に水に流してくれますか?』
(っ!・・・うん、全部水に流すよ。でもね、僕はどうしようもなく説明下手なところがあるからさ、また同じような事を言うかもしれないんだ、その時も今みたいに皆んなのわがまま僕に言ってくれる?そして、またその後には同じように水に流させてくれるかな?)
天照ちゃん達は僕の言いたい事は分かってくれていた、その上で心のどこかで自分を軽視している僕の認識を正したかったんだと思った。そして、自分の言葉で自己嫌悪に落ちる僕の心の負担を、自分達の“わがまま“と共に水に流すことで軽くしてくれようとした。そんな天照ちゃんの言葉に僕はまたつい“甘えて“しまう・・・
・・・自分はなんて浅はかなんだろうか、また“甘えたい“とそんな事・・・思って・・・いいのか?・・・自分のような人間に・・・そんな“甘え“許されない・・・
そう思い直して、今の発言を撤回しようとした。
(やっ、やっぱr『はい、いいですよ』・・・えっ…い、いいの?面倒くさいとか思ったり・・・)
ティーナちゃん『そんな事ないわよ、アトリーちゃんは私達の大切な友達でしょう?友達が落ち込んだり、間違った事をしたときには助けるのが“友情“って物でしょう?これぐらいのお願い聞くわよ、それに、私達は自分のわがままを言うんだから、好きにするわ、遠慮もしないわよ!そして最後はみーんな水に流すの♪どう?わがままでしょう?』
天照ちゃん『そうですよ、わがままを言うのは私達の方なんです。アトリーちゃんの発言は私達のためを思っての事だって分かってます。その事はとても嬉しいですが、その中にご自分のためを思った発言が出てくるまで、私達はあなたにわがままを言うと今決めました。なので、頼まれなくともわがまま言います♫』
月詠様『私も遠慮するつもりはないよ。大切な友のためだからな・・・』
(皆んな・・・・ふふっ、ありがとう!)
ティーナちゃん達『『『どういたしまして!』』』
分の甘えた言葉を撤回しようとしたら、皆んな揃って了承してくれた。その心遣いの言葉に胸が熱くなるのを感じ、僕はその時の自分の弱音や失言も、ティーナちゃん達がわがままと称した励ましや指摘も、全部自分の心の中にちゃんとしまっておく、そう決めた。自分の不甲斐無さは戒めに、皆んなの言葉は大切な思い出として・・・嬉しさで涙がでそうになったけど、今は現世での“儀式“の最中だから涙を流さないよう、自分を誤魔化すために話題を変えた・・・
(っ・・・あ、そ、そうだ、忘れてた、はいこれ、お届け物でーす♪)
ティーナちゃん&天照ちゃん『『・・・アトリーちゃんったら…』』
月詠様『アトリー・・・』(いつも通り感情を抑えてしまったか、だが、この状況では仕方ないか・・・でも、ここ最近はアトリーも感情を隠さなくていい場所もできてきたからな、数年前よりはだいぶ感情が表に出始めて、年齢相応になってきた。いい傾向であるがたまにこうやって後ろ向きな発言が出てくるからな、まだ“原初の蛇神“の洗脳のような刷り込みの影響が残っているようだ、今後も細心の注意を払いながら、この子に健全な精神を取り戻せるようにしないとな・・・)
ティーナちゃん『・・・はい、荷物はしっかり受け取りました♫』
ティーナちゃん達は少し悲しそうな仕方ないなって感じの声色で僕を呼び、少しして、僕のノリに合わせてティーナちゃんが返事をくれた。すると、祭壇に置いてあった“アイツの剣“が光の粒に包まれで消えていった。
僕は自分の泣き顔や感情を大勢の人に見られたり、知られたりするのが、恥ずかしいとも、怖いとも思ってしまって、急に話題を変えることで自分の気持ちを強引に切り替えてしまった。その事でティーナちゃん達が怒ってないか、嫌われたりしてないかと、ビクビクしていたけど、ティーナちゃんが僕の話題変えに乗ってくれて内心ほっとした。そして、そんな事をしておいてまだ誰かに嫌われるかもしれないと勝手に怯えて、でもほっとして、ティーナちゃん達の優しさに縋って甘えている自分が情けなくも思った・・・
ツキンッ・・・(僕は心底馬鹿だ・・・)
そんな自分の臆病で卑怯な面を自覚して、胸に小さな痛みを感じている間に、“アイツの剣“はティーナちゃん達のもとにちゃんと届けられ、後は僕に貸してくれた“神力“を返すだけとなった・・・・




