217話 逃げられて、心配される・・・
フィズィ「くっそっ!!!」ガシッ!
ビュッ!!
「っ!?」 バッ!ザンッ!!
ガシャーンッ!!
「何っ!?」
フィズィ「我は、我は、諦めんぞ、いつかまた、お前をこの手に・・・・・」ドサッ!
「チッ!逃げられたかっ!!」
“アイツ“は最後の足掻きとばかりに僕に投げ付けて来たのは、僕に蹴り飛ばされて壁際に落ちていた自分の剣だった。僕は咄嗟に横に避けて、“アイツ“を横から切ったのだが、後ろの方で天華達が張った結界が破られた音がして、どういう事だと思った時、“アイツ“は余裕そうな仄暗い笑顔で諦めの悪い言葉を吐き倒れた。すると、僕はすぐに“アイツ“がこの場から逃走したというのが不思議と分かった。
ソル「アトリー様!お怪我はありませんか!?」
僕が斬った相手を見ながら悔しがっていると、ソル達が心配して近寄ってきた。
「あ、あぁソル、僕は何ともないよ、でも、“アイツ“を逃してしまった・・・」
ソルが来たことでやっと相手から目を離し、ソルを見たが逃した“アイツ“の事を考えると悔しさが湧き出てきた。
天華『逃げたのはどうして分かったんですか?』
(あぁ、僕ささっきからずっと“情報開示“を“アイツ“に使ってたんだよね、ちょっとした拍子に“アイツ“の名前の続きが見れないかなって思って、視界の端に“アイツ“のステータスの表示を置いていたんだけど、そしたらさっき剣投げられた拍子にステータスに違和感があったんだ、でも、何かはすぐに分かんなかったんだけど、状況的に目の前の“アイツ“を先に切らなきゃって思って、斬った後、“アイツ“諦めの悪い言葉を言いながら笑ったんだ。それで変だなって思ってさ、今“アイツ“乗っ取ってた身体を“情報開示“で見たら・・・
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+ステータス+
+名前+ トルペ・ズューウス
+性別+ 男性
~~~~~~~~~~~~~
+称号+ 愛し子に叱られた愚か者
王族籍を剥奪されし者
マルモーヴェ教の生贄
邪神に憑依された者
+備考+ マルモーヴェ教の神体の欠片[異世界の原初の蛇神✖︎+*○$△]は消滅した・・・
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って、感じで“神体“から“神体の欠片“に表示が変わってて、ほんの小さな変化だったんだけどね、それで逃げられたって分かったんだ。多分、“アイツ“も用意周到に逃げ道を作ってたんだよ、飛ばされた剣の所に行くまでの怯え方とか全部演技だったみたいだ、さすが“狡猾な蛇の神“って感じ・・・)
夜月『剣の方に何か細工があったんだろうな・・・出なければ私達の結界をそう簡単には破る事はできないだろうしな・・・』
(そうだろうね・・・はぁ、“剣“の方も最初からちゃんと“見て“おけば良かった・・・)
ジュール『そう落ち込まないで、アトリー、今回は“アイツ“の名前の最初が分かっただけでも一歩前進じゃん』
(うん、まぁ、そうなんだけど・・・ちょっと僕も怒りで周りが見えてなかったのが恥ずかしいと言うか、何というか・・・)
天華達と会話している間にちょっと冷静になって来た僕は、貴族子息としてあるまじき今までの行動に羞恥心が湧いて来ていた。
ジュール『あー、うん、最初アトリーブチ切れてたもんね・・・』
(は、恥ずかし!こんな大勢の人達の前でキレ散らかすとか!恥ずかしっ!\(//∇//)\)
天華『まぁまぁ、それより、まだやる事がありますよアトリー、それを先に済ませましょう。反省は後でしましょうね』
(あ、はい・・・( ;´Д`))
「「「「「アトリー!!」」」」」
天華達と離しているうちに天華達の結界が完全に無くなったのか、結界の外にいた家族が慌ててやって来ていた。
「心配おかけしましたっ?!「がばっ!ぎゅっ~!」おぅ・・・」
父様「アトリー怪我の方はもうちゃんと塞がっているのかい?さっきの剣で怪我はしてないか?」頭をなでなでっ
母様「そうよアトリー、大丈夫?どこか痛いところはない?よく顔を見せて、顔色があまり良くないわ」ほっぺたをむぎゅっ
僕の元に1番に辿り着いた父様と母様は僕を強く抱きしめ、怪我の有無を確認し、顔色まで心配してくれる。
カミィ姉様「本当だわ気分が悪いのかしら?前みたいに“邪気“が入り込んだりしてない?悲しかったりしない?大丈夫?」肩をよしよしっ
「うむぅ~、大丈夫です・・・」
カイ兄様「怪我は無くなったとはいえ、治った直後に激しい運動をしたから気分が良くないのでは?」背中をさすさすっ
シベラス叔父様「その可能性もあるね、出血もたくさんしていたみたいだから貧血かもしれないよ」頭をなでなでっ
カミィ姉様やカイ兄様、シベラス叔父様も僕の精神面や怪我した後の体調まで気にしてくれて。身体を優しく撫でてくれる。
ライ兄様「そうだぞ、あんな“ヤツ“を体術だけで倒そうなんて無茶をするな、心配するだろ!でも、怪我がなさそうで良かった。ソルも気分は悪くないか?」頭をぽんぽんっ
ライ兄様は僕の戦闘での無茶を心配し、同じ結界内にいたソルの体調も心配もしてくれた。
お祖父様「そうだ、あの黒い霧の中に2人ともいたんだ、どこか異変はないか?」ソルと僕の頭をなでなでっ
お祖母様「そうよ、どこか怪我はしてない?気分が悪くなったらすぐに言うんですよ、アトリーもソル君も遠慮しては駄目ですからね」ソルと僕の背中をよしよしっ
ソル「は、はい、だ、大丈夫です」
「僕も平気です」
ライ兄様の言葉にお祖父様やお祖母様も僕とソル、両方を同じように心配してくれて。僕達2人を両腕に包むように撫でてくれる。それにはソルも嬉しくて照れてしまって顔が真っ赤だ。
ヘリー姉様「・・・アトリー、今の状態は長く続いて平気なの?」僕の頭をなでなでっ
「「「「「・・・はっ!」」」」」
少し遅れてヘリー姉様の心配の言葉に全員がその事を思い出した。そう、実はまだ僕は“神力全力モード“だったりする。
父様「そ、そうだ、その“神力“は身体に負担はないのかい?それにいつまでそのままなのかな?」
“神力“の事を思い出し、身体などに影響はないのかと心配して聞いてくる父様、他の家族も同様に心配そうな表情でこちらを見てくる。
「あ、えっと、身体への負担とかはまだ分からないんですけど、この状態は今からする事でなくなりますから、もう少し待ってください」
母様「今からする事??」
「はい、神々から頼まれている事なので…、あの、その、準備がしたいので、離していただけませんか?母様・・・」
最初の抱擁から今までずっと抱きしめられていた僕。何なら途中からソルまで巻き込み抱きしめている母様に、照れながらそう言うと・・・
母様「あら、まぁ、もう離さないとダメかしら?」
「・・・はい、ちょっとした準備が必要でして・・・・」
心底離れがたそうな表情で見つめて首を傾げる母に僕は心の中で、(母様可愛よっ!!)と、叫んだのは仕方ないと思う。これでこう見えてそろそろ40代に入ろうとしている母様の仕草はいつまでも可愛い、その仕草をされるとすぐに許したくなるので、要件を優先するのは至難の技なのだ・・・
母様「まぁ、それはしょうがないわね・・・」ぎゅっ
「母様・・・」
名残惜しそうに僕達をもう一度強く抱きしめた母様の腕は微か震えていて、僕達の身体を心から心配してくれていたのを感じた。少しして僕達から離れると最後に頭を撫でて父様の横に移動して行った母様。僕は少し申し訳ない気持ちになってしまった。
母様「さぁ、アトリー、神々から頼まれたお仕事が終わったら皆んなでお家に帰りましょう・・・」ニコッ
「はい!すぐにお仕事済ませます♫」
僕はたくさん心配をかけてしまった母様の願いを叶えるためにサクサクっと要件を済ませることにした。
「ソル、簡単にでいいから僕の服装を整えてくれるかな?」
ソル「あ、はい大丈夫ですが、こちらの上着はどうなさいますか?それに今お召しの服も少し損傷しておられますが・・・」
「あー、そう言えば、穴が空いたままだったね・・・うん、魔法でなおすよ、上着も一緒に汚れを落としてなおすから、元のように着付けてくれる?あ、そうだ、1番重要な、あの“アイツの剣“を持ってこないと・・・」
ソルが見せてきた“祭事服“の上着はまだ僕の血で真っ赤に染まったままで、今着ている服や上着には右胸に剣で刺された時の切れ目が入っていた、そこを指で広げて見ていると、家族が悲しそうな表情をするのに気がつき、僕はこの切れ目が家族に嫌な思い出を思い出させると分かって、この切れ目はすぐさまなおすことにした。手に持っている“神器“を下に戻して、今からすることに必要な“剣“を取りに行こうとしたら・・・
ジル叔父様「これの事か?」
「あ、ジル叔父様!どうしてここに!?」
ジル叔父様「シベラスと増員を連れてきてたんだよ」
僕が“アイツ“の使っていた“剣“を取りに行こうとしたら、タイミングよくジル叔父様が目的の“剣“を持って来てくれていた。
「そうなんですね。っ!その“剣“、そのまま持ってて大丈夫ですか!?」
ジル叔父様が素手であの健康に悪そうな黒い霧が出ていた“剣“を持っていて驚いていると。
ジル叔父様「ん?あぁ、大丈夫だ、一応、“鑑定“して何の問題もないと確認してから持ったからな、それで?さっきの話は聞いていたが、この“剣“をどうするんだ?」
「ジル叔父様、それでも、何が仕込んであるか分からないものを簡単に素手で持たないでくださいよ。それと、この“剣“は神々にお渡ししなければならないので僕がお預かりしますね。あと、“邪気浄滅“「パァーッ」・・・これで大丈夫でしょう」
凄い軽い感じで返事を返して来たジル叔父様から、僕は呆れつつも“剣“をすぐに預かり、ティーナちゃんから教わった“アイツの邪気“を浄化する光を照射した。
「ふぅ、これでよしと・・・ジル叔父様、他にご気分が優れないとかはありませんか?」
ジル叔父様「・・・あ、あぁ、大丈夫だ、・・・だが、アトリー、君がそれを持っても大丈夫なのか?」
「え、あ、はい、僕が“神力“を纏っている限り“邪気や呪い“など、そう言う不浄な類のものは効きませんから心配ないですよ」ニコッ
(あ、僕も簡単に触っちゃったから心配かけちゃったか・・・(*´꒳`*))
ジル叔父様「ほっ、そうかそれなら良いが、・・・では、先程言っていた、“剣“を神々に渡すとはどう言うことだ?」
サフィアス叔父様「私達もその事を聞きたいな・・・」
色々と会話している間に安全の確保がされたのか、サフィアス叔父様が大司教や国の各国の要人を達を連れて、戦いで荒れた礼拝堂の奥の祭壇前にいる僕達の所までやって来ていた。
「サフィアス叔父様・・・少々お待ちください・・・天華」
(ねぇ、今思ったんだけど、これからやる“儀式“って他の人に見せて大丈夫なやつ?)
天華『あぁ、大丈夫ですよ。今から行うのは“アトリー専用の儀式“ですから、誰かが勝手に真似しても神々には何も届きませんから』
(あ、そうなのね、誰かが見ようみまねでティーナちゃん達の所に変な物を送ったりしたら大変って思ってたけど、僕専用なら、僕が変なもの送らなければ済む話だよね)
天華『そう言う事です。なので誰が見ていても構いませんよ』
(分かった、じゃあ、皆んなに説明するね!)
サフィアス叔父様からの申し出に僕はふと、思った事を天華に確認する為に時間を貰い、今から行う“儀式“が大勢の目のに入るところで行っても良いものかと言う考えを、天華に話し確認をとった。何せ今から行う“儀式“は特定の物質をティーナちゃんのもとに直接送るものなのだ、もしこれが良からぬものに悪用されて、ティーナちゃんのもとに変な物がたくさん届けられたりしたら大事になると思ったからだ。
「・・・サフィアス叔父様、皆様、今から行う事は大前提として、誰でもできるものではないという事だけをご理解ください。それをご理解いただいた上でなら、ご説明いたします・・・」
サフィアス叔父様「・・・分かった、できれば誰でも出来ない理由も話してくれるとありがたいが・・・」
「はい、それも含めてご説明しますね。あ、すみませんがまずは服装を整えさせていただきますね。ソル上着を・・・」
そうして、待たせて申し訳ないと思いつつも、ソルとオーリーから再度、“祭事服“を綺麗に着付けて貰い、それが済む頃にはサフィアス叔父様達は神殿側の神官達が用意した椅子に静かに座り、僕の説明を待っていた。僕が着付けている間も神殿側が用意した衝立や椅子をありがたく使用させてもらったのだが、どうも僕に対する神官達の態度が恭し過ぎる感じがして、他にも各国の要人達も何の文句もなくただ静かに待っていたこともあり、少々落ち着かない気持ちになった。
ついでに言うと、僕が“神器の剣“で斬った“アイツ“の入れ物の“元・第五王子“は全身打撲だけで済み、すぐに治療が行われている。あの“神器の剣“は本当に邪気や不浄のような悪いものだけを斬り払うものなので、生身の人間には無害だ、むしろデトックス効果があると思われる。“元・第五王子“の全身打撲も治療魔法ですぐ治る範囲なので“無問題“、心配無用だ。
(静か過ぎると逆に怖いな・・・( ´ ▽ ` )しかし、この“祭事服“いつの間に“自動修復“の付与までついていたんだ?僕が上着を着た途端に下に来ていたベストとかシャツも綺麗になおってるんだが?・・・まぁ、自分で無属性魔法の“修繕・リペア“の魔法を使わなくて済んだから楽で良いけど・・・)
右胸にあった切れ目が綺麗に修復されていて、血の跡や糸のほつれすら分からないぐらい新品同様に変わっていた。そんな疑問は今のところ横に置いて、服装が綺麗に整ったので、サフィアス叔父様達の視線を遮っていた衝立をどかして貰い、説明を始めた。(衝立をどかした時に何故かどよめきが起きたのはよく分からない・・・しかも、いつの間にか礼拝堂内がそこそこ片付けられてるし・・・)
「・・・と、言うわけで、祭壇の方をお借りしますね。ミシオン大司教」
大司教「は、はい、どうぞお使いになってください。本部にでさえ記録にない、神々との交流の為の“新たな儀式“をこの目で見ることができるとは思っても見ませんでした。こんな機会をいただきアメトリン様に感謝申し上げます・・・」
「・・・いいえ、そこまで言われるほどでは・・・」
天華『アトリー、神々が“剣“をお待ちだと思いますよ。質問などは後で受ければ済む話ですから、先に“儀式“を済ませませんか?』
(あ!そうだね、長々説明しちゃったからティーナちゃん達は早く物証欲しいよね、じゃあ、“まき“で行きますか( ´∀`))
説明を終えて、祭壇の使用許可を貰うと、大司教は快く祭壇の使用を許可してくれて、“新たな儀式“を見れるだけでも感無量って感じで僕を拝み始めたのだが、僕はただ、お届けものをするだけの“儀式“にそこまで感動する意味が分からず、困っていると、天華に時間が掛かっている事を教えられた。
「ん゛、ん、時間もそれなりに経っていますので、神々がお待ちだと思われます。他のご質問などは“儀式“が終わり次第と言うことで、早速“儀式“を始めましょう」
そう言うと、サフィアス叔父様や各国の要人達は何か言いたげだったがこれと言った質問や苦情もなく、静かに座っていた。
(まぁ、大司教達みたいなリトス教の神官達と違って、ちょっと複雑な気分になるのは仕方ないよね、何せ今回の襲撃事件の1番重要な物的証拠を神々に引き渡さなければならなくなったし、何か判明したとしてもその事を神々が教えてくれるとは限らない、神々に自分達にも情報を下ろして欲しいけど、口出しして良いのか分からないもんなぁ、・・・それに僕だけしか通用しない“儀式“を見てもしょうがないって思ってるんだろな・・・旨みが無さ過ぎるし、むしろ、情報の塊の物的証拠を取られてマイナスだもんね・・・(。-∀-)まぁ、でも、この“剣“はこの世界にあってはダメな効果がついちゃってるし、色々と“アイツ“に繋がる痕跡が残ってるはずだから、ティーナちゃん達に渡さないって選択肢はないから、“マジごめんなさい“っとしか言いようがないわ・・・)
複雑そうな表情をする人達に乙って感じだが、僕にはどうしようもないのでさっさと“儀式“を行う事にした・・・・




