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213話 救出? 第三者 視点


 バッキンッ!!ビキビキビキッ!!


フィズィ「な、なんだとっ!!?」


 デューキス家一族の全力の魔法攻撃で、自慢の結界に亀裂が入り出したと思った“フィズィ“が焦り、恐慌に出ようとした時、今度こそ、トドメを刺すかのように、何かの力を纏い身体全体が光り輝かせながら、結界の一点を力一杯に攻撃を加えた聖獣達、そして、今、この瞬間、明確に壊す事ができないと思われた結界に大きな亀裂が入ったのだった・・・・


フィズィ「な、何故だ!何故だっ!!たかが人間や聖獣共ごときに、我の結界を壊されるなど、あってはならん!!ありえない!ありえないっ!!我の長年の悲願を邪魔した、あのこっぱ神共だけではなく、このような所で貴様らみたいなただの人間や聖獣共にまで邪魔されるとわなっ!!貴様ら、我を怒らせたこと、後悔させてやる!!」


 結界に亀裂を入れられて自尊心が傷つけられたのか、激昂した“フィズィ“はアメトリンを刺した剣を頭上高く掲げた。


フィズィ「“邪術解放“!!」ドロッ


ゾワッ!!「「「「「っ!?」」」」」「な、何だの気味の悪いモノはっ!!」「あれで何をする気だっ!?」「怖気がする・・・」「あ、アレは瘴気か!?」


 そう言った途端、掲げた剣からドス黒い霧の様なものが滲み始めた。デューキス家の魔法総攻撃の邪魔にならないように、距離を置いて待機していた者達でさえ、あの剣の異常な程の異質感を感じていた。怒り、嫌悪、狂気、嫉妬、異常な程の憎悪、様々な負の感情を詰め込んだようなものを、あのドス黒い霧は纏っていた。


サフィアス王「くっ!アレは計り知れない、邪悪な気配する。あんな物に触れてしまったら人は容易く死んでしまうぞ!結界の完全な破壊まであともう少しだと言うのに!!」


アイオラト「私達はまだ諦めていません!もう一度全員で攻撃を加えれば、結界は壊せるはずです!」


 剣の纏う不吉な霧に最初は恐怖を感じたサフィアス王、あの剣の力を今ここで振るわれれば、ここにいる、いや、この区域にいる全ての人が死んでしまうだろうと直感で感じ、今は絶望したと同時にアメトリンを救い出すことができなくなった事で、悔しさも込み上げてきていた。そんな、アメトリンの救出を諦めかけているサフィアス王の隣で、アメトリンの父親のアイオラトは何があっても諦めないと言った表情で、再度、魔法と武器、両方での総攻撃をしようとしていた。だが・・・


フィズィ「“コレ“の魂は私の物だ!誰にも渡しはせんぞ!!悪夢の中でもがき苦しみながら死ねっ!!」


 アイオラトの考えている総攻撃を待つ事なく、“フィズィ“はその脅威を振るおうとする。そんな絶体絶命の状況で聖獣達は・・・・


?「誰がっ!お前の“モノ“だっ!」 ビュンッ!ドッゴッ!!! ビュッ!ガンッ!ビキビキッ!ガシャンッ!! ドスッ!!


 “フィズィ“の真後ろで音もなく立ち上がった人影が、高速で“フィズィ“に強烈な回し蹴りを喰らわした。“フィズィ“は勢いよく真横に吹っ飛び、亀裂の入っていた結界にぶつかった、その衝撃で結界は呆気なく粉々になり消えていった。結界にぶつかって飛んでいく勢いは半減し、消えた結界の少し先で“フィズィ“は床に落ちていった。誰もが予想外で、ポカンッとした表情で固まりそれを見ていたが、それを聖獣達は分かっていたのだろう、今までのやり取りを冷静に見て、あえて途中から何もしていなかった。

 でも、冷静な表情の聖獣達の横には今にも泣きそうな表情で、“フィズィ“に回し蹴りをお見舞いした人物を見ていた少年がいた・・・彼は今の今まで、その人物の生存を最初からずっと信じていて。いつでもその人物のために最善の行動をとり続けていた・・・


 「・・・っ、アトリー様、ご無事で、っ・・・」


 そう小さく呟いたのは、アメトリンの幼馴染で親友、彼の専属の従者で執事、護衛でもある、“ソルドア“だった・・・


アメトリン「僕は、僕の魂は僕自身のモノで、誰にもやった覚えはないっ!ましてや、お前のような気持ち悪い変態に差し出すことなんて絶対にしないっ!!」


デューキス家全員「「「「「アトリーっ!!」」」」」デューキス家使用人一同「「「「「アトリー様っ!!」」」」」


 そう、背後から立ち上がり“フィズィ“に回し蹴りを喰らわしたのは、先程まで右胸を刺され倒れてから、神殿にいる誰もが生存を願い、必死に救出を試みようとしていた“アメトリン・ノブル・デューキス“、その人、本人だった。その存在に少し遅れて反応したデューキス家一家は驚きと歓喜の声を上げた・・・


アメトリン「あ、父様、母様、皆んな、ご心配かけて申し訳ございません。でも、もうちょっとする事があるので、もう少し待っててくださいね♪」


 今の今まで、大量の出血を伴う怪我をして倒れ伏していた人とは思えないほどの元気な声で、そういったアメトリンはすぐに、先程自分が蹴り飛ばした相手である“フィズィ“の様子を見たあとあと、自分の服装を見た。


アメトリン「あー、せっかくの“祭事服“が台無しだ・・・これ以上汚れるのは嫌だし、動きにくいから上は脱ぐか・・・それと、ソルー、今、髪留め持ってるー?」


ソルドア「あ、は、はい、持ってます。どうぞ、アトリー様」


 急に話を振られたソルドアは驚きながらも、いつも常備している髪留めを渡すために、アメトリンがいる少し高い魔法陣の上に急いで上がり髪留めを渡す。


アメトリン「ありがとう、ソル、心配かけてごめんね。ジュール達も・・・」


 その時一緒に上がって来た聖獣達を1匹ずつ撫でながらお礼を言うと、受け取った髪留めで自分の髪を簡単にまとめた。


アメトリン「・・・・むう、ソル、度々悪いんだけど、この“祭事服“の上着を脱ぎたいんだ、この首の所の留め金、外してもらえるかな?」


ソルドア「畏まりました。少し失礼しますね。・・・・・はい、取れました。こちらの上着は僕がお預かりしますね」


アメトリン「わ、ありがとう、ソル♬“クリーン“っと、あ、そうだ、ついでにこの杖も預かってくれる?僕がスッキリするまで♪」


 髪を纏め、自分の血で赤く染まり汚れていた上着を脱ごうとしたが、特殊な作りだった襟元の留め金が自分で取り外す事ができず、ソルドアに頼んで上着を脱がせて貰った。上着が脱げて嬉しそうにお礼を言ったが、脱いだ上着の下のベストもやはり自分の血で汚れていたので、生活魔法の“クリーン“で簡単に綺麗にしたのち、手に持っていた“儀式の杖“をソルドアに、“自分がスッキリするまで“と言って預け、準備運動をし始めた。


ソルドア「スッキリ???」


アメトリン「うん!スッキリ♫」ポキポキッ ポキポキッ


 アメトリンの“スッキリするまで“の意味が分からなかったソルドアは首を傾げた。それに応えるようにアメトリンも同じように首を傾げながらまた“スッキリ“と言った。そう言って、良い笑顔で自分の拳を鳴らした。


ソルドア「あ、・・・・お気を付けてくださいね。アトリー様、ご用がありましたらいつでもお呼びください・・・」


 そして、色々察したソルドア。


アメトリン「うん♩スッキリし終わったら呼ぶから、その時、その杖を持って来て欲しいかな♪」


ソルドア「畏まりました、すぐにお持ちしますね」


アメトリン「よろしく、ソル、じゃあ、ちょっと行って来るね♫」


ソルドア「行ってらっしゃいませ・・・」


 礼拝堂内の全員が注目する中、いつもと変わらない様なやりとりをし、ちょっとそこの庭まで散歩しに行くような気軽さで会話を終えたアメトリン。そんな彼は今や、頭に付けていたサークレット型の神器は倒れた時に取れ、杖型の神器もソルドアに渡し、着ていた豪奢な“祭事服”も脱いで、身軽な格好で自分を刺した張本人である“フィズィ”の元まで軽快に歩き出した。


ソルドア「・・・・・相当、お怒りの様ですね・・・・」


 その呟きに同意する様に隣に並んだ聖獣達が深く頷いていた・・・そう、この時、アメトリンはかなり怒っていた。怒りがピークになって笑顔の口の端がピクピクしていたのを見逃さなかったソルドア、その怒りは“感情共感“でも強烈に感じていて、もう止めても無駄だと悟ったのだった・・・


ソルドア「・・・アトリー様、無茶をなさらないと良いのですが・・・」


 と、心配したのは、アトリー本人の身体か、それとも相手の身体なのかは定かでは無い・・・


 そして、ソルドアに見送られたアメトリンは足取り軽く、“フィズィ“に近づいていくが、気軽に見送ることできないのが周囲で驚き固まっていた大人達だった。


アイオラト「・・・はっ、ア、アトリー!危ない!今、そいつに近寄ってはダメだ!!」


サフィアス王「・・・はっ!?だ、誰か、アメトリンを止めるんだ!」


 ダッ!ダンッ!!


 焦った様子で静止してくる大人達の行動はすでに遅く、軽快に歩いていたアメトリンは突如トップスピードで消えるように走り、あっ、と言う間に、倒れている“フィズィ“の真上まで飛び上がった。


アメトリン「動けないふりをしても無駄だよ!僕は今、凄く怒ってるんだ、お前を逃す気はないよ!!」ヒュッ!ドコンッ!!


 バァーン!!カタカタカタッ!「「「「「うわっ!!」」」」」「「「「「きゃーっ!!」」」」」


 そう言って、倒れ込んでいた“フィズィ“の真上で一回転し、勢いを付けて踵落としを思いっ切り繰り出した。地面は凹みクレーターができるほどの衝撃が礼拝堂内に行き渡った。建物は震動し、あちらこちらで埃が舞い、悲鳴が上がった。


 アメトリンの反撃の、いや、怒りの猛ラッシュはここから始まったのだった・・・・・




 アメトリンの怒りの猛ラッシュが始まる少し前、傷が癒えて意識を取り戻したとこから始まる・・・・


 アメトリン 視点


(はぁ~、まじ油断した・・・)


 死んでてもおかしくない大量出血で気絶した後、魔法が全く通用しなかった“アイツ“の結界の中、制限をかけられた状態で、僅かばかりの効果だけしか発揮できなかった“超回復“のスキルが物凄く良い仕事していたおかげで、かろうじて生き延びていた僕に全ての力が戻って来たのは、魔法陣が再起動した時のことだった。何故そんなことになったかと言うと・・・・


 そもそも、今回の“送還儀式“を行う上で、魔法陣の起動に必要なエネルギー源は、魔法陣に溜め込まれていたこの世界の星の自然エネルギーだったのだが、“送還“自体に必要なエネルギーは僕の魂を経由して、身体から流れ出ている地球世界の星の自然エネルギーを使用していたのが前提だ。


 “送還儀式“の為にその自然エネルギーの使用権限の割合の殆どを魔法陣に割り当てられ、僕自身には必要最低限になっていた。“送還儀式“が終わっても暫くはその状態が続くとティーナちゃんが説明されていて、弱体化した状態と言って良いものなので、その間に襲撃者が来ると危ないので暫くは大人達のそばにいる様にとも言われたのだ。その忠告を元に神殿を覆う結界が完全になくなり、エネルギーの供給が正常に戻るのを、大人しく父様達に守られながら待つつもりだった。だが、そんな事を考えている時、“アイツ“がすでに背後から迫っていたなんて誰も思いもしなかった。


 “アイツ“は“儀式“が終了して、神殿に貼られた結界がもうすぐ無くなるか、完全に無くなってすぐに、外から襲撃して来るものと思われていたのに、その予想に反して、“儀式“の最初から神殿の、しかも礼拝堂の中にまで入って来ていた。その事に誰も気づか無かったのは“アイツ“がズューウス王国の第六王子、自分の腹違いの弟に擬態していたからだった。僕が最初“アイツ“の姿を見たのは、ズューウス王国の王侯貴族達が神々と仁達に謝罪をしていたのを見ていた時に、ほんの一目見たぐらいで、刺されて顔を見た時、誰だコイツって思っていた。周囲の人達は僕が刺された事に注目がいっていたのか、それとも“アイツ“自身が認識阻害をしていたのか、僕以外誰も“アイツ“の存在にすぐに気づくことはなかった。


 そして、僕は右胸を刺され“アイツ“の作り出した結界の中に僕は囚われる事になったのだが、その結界の効果とタイミングがまずかった、“アイツ“が作り出した結界は外側と内側の空間を完全に遮断し、内側の空間にこの世界の神の加護やこの世界特有の魔法を完全に使用できない、ちょっとした異次元を作り出し、“アイツ“の都合のいい環境になっていた。

 その結界が貼られたタイミングが、ちょうど魔法陣から僕の体へと自然エネルギーの流れが切り替わってる最中で、僕にいつも自然エネルギーで展開されていた加護の結界が、“アイツ”の結界のせいで急にエネルギーの流れを完全に遮断され、完璧な展開をされずに背中から刺されしまい、大怪我をした。回復魔法での治療を試みても魔法が発動できず、外からの回復魔法も弾かれ治療できず、結果それで出血多量で気を失い、僕は家族に死んだと思われてしまった。


 でも、その結界は完璧では無かった。神の加護や魔法への対策はバッチリできていたが、スキルに関しては制限が緩かった。“パッシブスキル“の発動はできなかったが、“アクティブスキル“に関しては完全に使用不可ではなく、効果がかなり抑えれれる物だった。だが、そのおかげで僕はかろうじて生きており、少しずつ回復には向かっていた。でもその速度はやはり通常と比べて物凄く遅く、いつ、“アイツ“にとどめを刺されてもおかしくは無かった状況の中、“アイツ“は自分の信者達の悲願とやらを叶えてやる為に“起動と供給の魔法陣“を再起動させた。


 それが“アイツら“の最大のミスだったとも知らずに・・・


 “アイツら“はわざわざ魔法陣に手を加え、この世界の自然エネルギーを自分達の物にしようとしたのだろう。だがその目論見もこの“起動と供給の魔法陣“が通常のものだった場合、可能であっただろうが、今回の“起動と供給の魔法陣“は特別性だったため、起動はしても成功はしなかった。


 何故なら、この魔法陣は僕の魂に結びついている地球世界の自然エネルギーを引き出すものであって、この世界の自然エネルギーは引き出すことはできないからだ。同じ自然エネルギーだとしても扱いは全くもって別で、信者達は“アイツ“に自然エネルギーを掌握させたかったんだろうが、そのエネルギーの使用権限の優先順位は魂レベルで密接に繋がっていた僕にあったから、“アイツ“にはエネルギーの使用権限は移譲されなかったのだ。


 そこで、完全に遮断されていた自然エネルギーが開通し、本来なら徐々に自然エネルギーの使用権限が戻ってくるはずだった僕に、急にエネルギーの使用権限の全てが戻り、そのおかげで傷が急速に癒えて今、目を覚ましたのだった・・・



(はぁ~、まじで油断した、“アイツ“、“儀式“の後の解け掛けの結界の隙間を縫って侵入して、僕の背中から刺しにくるなんてな、それも周囲の人達、誰にも気づかれずに・・・さすが神、邪神ってことか??はぁ、油断してたとはいえ、まじ、悔しんだが・・・)


 この詳細を目覚めて1番に天華達から聞いて、床に寝そべったまま聞いていた僕は反省して、悔しがっていた。


天華『まぁまぁ、アトリー、今は脱出の事を考えましょう。幸い、結界の内側と外側の環境が、アトリーから流れ出している自然エネルギーのおかげで徐々に同じような物になって来ているため。先程までとは違い、少しですが結界の効果が薄れて来ています。私達が今は“フィズィ“の気を引いてますから、この調子で結果内の環境をコチラと同等まで持ち込めれば、結界の破壊が容易にできるでしょう。それまでもう少しそこで寝たフリをしていてください』


 こうして、僕は救出が来るのを静かに待っていた・・・・

















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