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211話 デューキス家の団結力2 第三者 視点


サフィアス王「さて、後は其方達だけとなった、良い加減諦めて大人しく捕まるんだな」


 完全に魔法陣とその2人を包囲した状態で告げられた最終通告、ようやくこの騒動に終止符がつこうとしていた・・・・



・・・その前に・・・



 最後の戦いが始まろうとしていた、その少し前、魔法陣に取り付けられた魔道具を排除するために動いていた、デューキス前公爵夫妻の場合・・・・


アメトリア「ねぇ、イディ、あの魔道具、最低でも二つは無傷で回収しましょう」


インディ「うむ、そうだな、後、あれを扱っている、者達も数人確保できるといいな・・・ふむ、直接二つ取り外しに行くか、その時に同時に2人ほど確保するか、そうなると人手が欲しいな、誰か、手伝ってくれる者はいるか?」


 デューキス家前公爵夫人、アメトリンの祖母“アメトリア“は今回の魔道具が起こした現象の危険性を危惧し、今後似たような魔道具を使用された場合の対応策を模索するために、研究材料として魔道具の確保を提案した。その夫でアメトリンの祖父にあたる前公爵の“インディ“はその提案を受け入れ、尚且つ、その魔道具の周りで作業している魔道具技師らしき人物達にも目をつけ両方の確保を決めた。それには人手が足りないと思ったが、今回は自分達の専属は屋敷に残してきていたので、適当に手伝いを求めた。


?「大旦那様、私共でよろしければお供します」


 その手伝いを求める声に反応したのは、夫妻と同年代に見える初老の執事姿の男と、息子夫婦と同年代に見えるメイド姿の女性、その2人はアメトリンの専属執事兼従者ソルドアの、祖父“セルドス“と母親の“セラス“であった。2人は気配を消して、ずっと前公爵夫妻の後ろで声が掛かるのを待っていたようだった。


インディ「おぉ、其方達も来ておったのか、其方達ならば大丈夫であろう、よろしく頼むぞ」


ソンブラ親子「「畏まりました」」


 前公爵夫妻はソンブラ親子に絶大な信頼を持っており、その申し出を快く受け入れ、2人を伴い、歳を感じさせない足取りで魔法陣の方に向けて歩き出した。


アメトリア「ライとヘリーが数を減らしてくれたおかげで、ここまで来るのは楽でしたわね」


インディ「そうだな、2人はまた腕を上げたようだ」


 礼拝堂入り口から見て魔法陣の右横に行くまでの間、なるべく魔道具技師達に気づかれないように移動するため、かなり遠回りをして移動していたが、聖獣達の邪魔をしていた侵入者達の排除を孫の双子が率先して行っていた事で、前公爵夫妻が直接相手をする事なく、すんなり来れて孫の成長も知れた事を喜んでいると。


セルドス「大旦那様、お話中失礼致します。どうやらあちらにいる者の話を聞く限り、あの年嵩の男が魔道具技師達の長のようです。魔道具の方もこちらから見える範囲ですと三つ取り付けられているようですが、魔道具技師と、魔道具どちらを先に確保いたしますか?」


インディ「ふむ、そうだな、私は魔道具技師の長の確保を優先しよう。捕縛にはセルドス其方が協力してくれるとありがたい、その間、魔道具はアリーが取り外せそうなら取り外してくれ、アリーの作業中の護衛はセラスに任せる」


アメトリア「えぇ、やってみるわ」


ソンブラ親子「「畏まりました・・・」」


 諜報や情報収集に関する技術に特化した裏家業のソンブラ家、その能力を使って数メートル先にいる魔道具技師達の会話を拾い、すぐにインディに情報を報告し、指示を仰いだセルドス。その情報を元に素早く役割を決め指示を出されると、すぐに動き出したインディ達、その4人の行動は初めて連携したとは思えにほど素早く、尚且つ、手際が良かった。


 音と気配、魔力までも極限まで消してターゲットの魔道具技師の長に遠まりして近づいていくセルドス、そのセルドスを補助するように、自分の存在を全面に出してゆっくり近づいていくインディ。


 コツッ コツッ コツッ コツッ


インディ「・・・お前達がこれらの魔道具を作り上げた張本人で間違いないか?」


魔道具技師1「!な、何だ!?貴様!」


魔道具技師の長「っ!け、警護隊は何処にいった!?敵に近づかれてるではないか!は、早くあいつを止めろ!」


魔道具技師2「し、師匠!け、警護隊が次々捕まってます!」


魔道具技師の長「何!?わしの作った魔道具を持っていて、何故捕まっておるんだ!?・・・くっ、なんとも使えんやつらだ!こうなったら、よ、予備の魔道具を持ってこい!」


 急にインディに話しかけられ、大袈裟に驚くのは、先程まで自分達の警護を担当していた者達がいなくなっていることにも気づかないほど、魔法陣に集中していたという事だが、それとは別に自分達が開発、制作した魔道具を持った仲間がそう易々と突破されるとは思いもしなかったんだろう。こうなったら自分達で魔道具を使い抵抗しようとしたその時・・・・


 ヒュッ、ドスッ!


魔道具技師の長「がっ!?」・・・トサッ


 後ろから忍び寄っていたセルドスに首の急所をつかれて、気絶した魔道具技師の長。その長の身体を静かにキャッチして、流れるように身動きできないように縛り上げた。


「「「えっ?」」」


 あまりの手際の良さに思考回路がついていけてない魔道具技師の面々、その隙を逃さず、インディは愛用の“ロングソード“を抜き放ち、予備の魔道具を持ち出してきた魔道具技師に素早く近づいた後、剣を首に突きつけた。


インディ「その魔道具をおとなしく渡してくれるとありがたいんだが、どうかな?」


魔道具技師1「ひぃっ!こ、殺さないでくれっ!」


「「ひっ、ひぃ~っ!」」 ズザッ、バタバタッ!


セルドス「大旦那様」


インディ「・・・・」


 インディの強烈な威圧を含んだお願いに、剣を突きつけられた魔道具技師は魔道具を持ったまま硬直し、脂汗を浮かせて今にも気絶しそうだった、その時、他の魔道具技師達は怯え後退り、同僚である魔道具技師を置いて、魔法陣の奥、祭壇方面の階段まで逃げ出した。セルドスが追いかけるべきか視線で聞いてきたが、インディは無言で頭を振り、“放っておけ“と示した。セルドスも無言で頷き返し、剣を突きつけられている魔道具技師の横に来て、硬直している魔道具技師の手からそっと、吸収の魔道具らしき物を取り上げた。それを確認したインディがやっと威圧を解いた。


魔道具技師1「っ、はぁぁ・・・」 ドサッ


 魔道具を奪われ、威圧も無くなった魔道具技師は腰が抜けたのか、その場で床に座り込み項垂れたのを、セルドスはまた手際良く縛り上げ、先に縛り上げられた魔道具技師の長の横に並べた。その時・・・


アメトリア「イディ、こっちに来て」


インディ「アリー、どうした?」


 インディ達が魔道具技師達を捕縛している間に、アメトリアはセラスの得意な隠蔽スキルで魔法陣に近づき、側面に取り付けられた魔道具の取り外しを行なっていた。そのアメトリアから小さな声で呼ばれていくと・・・


アメトリア「イディ、あなた、悟られないように結界の中を見て・・・」


 姿勢を低くし、取り外した魔道具を持ったまま手招きするアメトリアに、同じように姿勢を低くし近づいていくインディ、魔道具の取り外しが終わっているのにまだ何かあるのかと不思議に思って横まで辿り着くと、硬い表情をし、音量を抑えた声でそう言うので静かに彼女の視線の先を辿った。魔法陣に張られた結界の中にいる“フィズィ“が見えた、“フィズィ“は結界を壊そうとしている聖獣達に気を取られており、こちらを気にしている様子もない。アメトリアの視線をさらに追うと、その“フィズィ“の真後ろにある血溜まりに倒れて動かない可愛い我が孫の姿が目に入った。


インディ「っ、・・・アトリー・・・」


 自分の胸が引き裂かれそうなくらい痛ましい姿に、“どうして可愛い我が孫がこんな目に“と歯を食いしばったインディ、悲しみと怒りで我を忘れそうになった所に。


アメトリア「イディ!良く見て!アトリーを!」


 アメトリア愛用の“マジックロッド《魔法杖》(大・長杖と呼ばれるもの)“の頭で肩を叩かれ、声を抑えたまま必死でそう伝えてくる自分の妻の言葉に、インディは心を落ち着かせ、再度、痛ましい姿で倒れているアメトリンを見た。


インディ「・・・・・っ!?」(!?う、動いている!?アトリーの胸の辺りが微かに、ほんの微かだが動いている!?)


 この結界は色んな物を遮断しているようで、外側からは何も通さないほど強固だ。それは内側にいる人物の魔力すら感じることのできないもので、アメトリンが倒れた後、微動だにせず、魔力すら感じられなかったことで、家族全員が絶望した物だったが、こうやって間近まで近づいてやっとわかる、その動きに、2人は気づいたのだった。それと同時にセルドス達が持っていた通信の魔道具から全員にある緊急の通達が届いた・・・・




・・・・最後の戦いが始まろうとしていた、その少し前、今回の襲撃の首謀者の1人の“セルパン“を捕らえるために動いていた、デューキス公爵夫妻の場合・・・・


 デューキス公爵夫妻と、2人の専属達以外が行動に移った後、公爵夫人であるシトリスをエスコートして歩き出したアイオラト、その行く先にいるのは今回の襲撃を計画したと思われる主犯格の1人、“セルパン“が結界に攻撃を加えている聖獣達に攻撃の指示を出している場所だ。その場所は礼拝堂正面入り口から見て、中央奥にある魔法陣の左横、少し手前に出てきているが、聖獣達の攻撃範囲外から怒鳴るように指示を出しているのが見える。


シトリス「ラト、あの“セルパン“を捕らえるのが目的でしたよね?でも、私、手加減ができそうに無いのだけれど、どうしたら良いかしら?」


 視界に入った“セルパン“の姿を見て、怒りが湧いて出てきたシトリスは愛用の“マジックロッド《魔法杖》(中)“強く握りしめていた。彼女の使っているマジックロッドは、魔法発動補助と物理攻撃対応型のハイブリッドで、見た目は持ち手の長い装飾の凝ったメイスのような物である。その重みのあるマジックロッドを軽々扱う事が出来るのは、一重に彼女の父が世界一の怪力を持つ人種と言われている、“巨人族ジャイアント“の血が混じっているからだ。その彼女が手加減なしで、力任せにそのマジックロッドで人を攻撃した場合、攻撃を受けた方は無事では済まない、最悪、死亡する恐れがある。彼女の血を引く子供達の中でもその血を多かれ少なかれ引いていることで、今回は“捕獲“を目標とした戦いの中では不利に働いていた。その中で最もうまく力の使い方がわかっている“ライ“は大活躍しているが・・・


 怒りで力加減ができそうにない事で“セルパン“の捕獲の心配をする妻を見て、ラトはニッコリ笑ってこういった。


アイオラト「シリー、手加減しなくて良いよ、多分、あいつは死なないからね」


シトリス「??どうして?」


アイオラト「・・・あいつはどうも臆病者で卑怯者でもあるようだよ」


 手加減は必要ないと言った夫に可愛らしく首を傾げてみるシトリス、そんな愛らしい顔をしているシトリスに顔を綻ばせたアイオラトだったが、それも一瞬のことで、すぐに怒りを含んだ嫌悪の感情を表情に出していた。そういうアイオラトの表情を見てシトリスはもう一度“セルパン“を見た。


シトリス「・・・・何かの魔法?が発動している?」


アイオラト「そう、あいつは自分だけが守られる結界を張っているようだ。多分だが魔道具でその結界を発動させている、その他にも複数の魔道具の反応が“見える“よ・・・」


 “セルパン“を再度注意深く見てみたシトリスは、“セルパン“の周囲から微かな魔法反応を感じた、そのことにいち早く気づいたアイオラトは、自身のスキルで詳しく“セルパン“を探った結果、複数の魔道具を所持している事が判明した。周囲の部下達も吸収の魔道具以外の魔道具をもっているのかと思い、注意深く見てみたが、他に魔道具を使用している者達はいないのも確認が取れた。結局、複数の魔道具で自分の身を守っているのは“セルパン”ただ1人だけで、部下達には吸収の魔道具だけを渡していた。そして、それだけ守りを固めているにも関わらず、自分は戦闘に参加もせずに、安全な場所から指示を出し、自分だけの身の安全を確保している“セルパン“のその姿に、強い怒りと嫌悪感を感じ。


アイオラト(こんな奴の野望の為にアトリーは犠牲になったと言うのか!?怒りではらわたが煮えくり返りそうだ!!)


 可愛い我が子を都合のいい生贄として扱っただけではなく、部下達の命さえも軽んじるあの男にもはや手加減など必要ないと判断した。


シトリス「・・・・では、本当に手加減は必要ないと言う事ですね?」


アイオラト「あぁ、思いっきりやろう」


 アイオラトの言葉で手加減は必要ないと理解したシトリスも戦意を高めた。そのシトリスと共に真っ直ぐ標的となった“セルパン“の元へと歩き出す。その間、邪魔をしてくる者達は全て公爵夫妻の専属である、カイルとリアが排除していった。自分達の主人の目的の邪魔をさせないように・・・・


 そして、デューキス公爵夫妻がどんどん自分に近づいてきている事に気がついた“セルパン“は、次々と部下達を差し向けてきてはカイルとリアに倒され、捕まっていき、気づいた時には周囲に誰もいなくなっていた。自分の右腕的な“黒ローブの女“もいつの間にか姿を消しており、名前を呼んで探したが、出ては来なかった。“黒ローブの女“はこの時すでに、カシミール達に捕まり“OHANASI“をしている最中だった。そんな事にも気づかなかった“セルパン“は、徐々に近づいてきているデューキス夫妻からいい知れぬ気迫を感じており、本能的に逃げ出した。


セルパン「くっ、来るな!」ダッ!


カイル「逃げられはしませんよ」バッ!


 礼拝堂から出ることができる、左奥にあった扉に向かい逃げ出した“セルパン“の先に回り込み、扉に前に立ちはだかって逃げ道を塞いだカイル。


セルパン「っ!く、くそっ!」クルッ!


リア「こちらも通しません」スッ


 カイルに扉を塞がれたと分かるとすぐに方向転換して、魔法陣の反対側にある扉を目指そうとした所、それも予想して逃げ道を遮ったリア。


セルパン「なっ!そこを退け!」


 礼拝堂正面入り口方面から真っ直ぐ自分に近寄ってくるデューキス夫妻、礼拝堂右奥の扉を塞ぐカイル、最後の脱出口がある礼拝堂右奥の扉までいく道、祭壇と魔法陣の間の細い道をリアに塞がれ、完全に包囲された“セルパン“は大いに焦っていた。


アイオラト「もう逃げられないよ。大人しく捕まった方が身のためだ」


 一応、アイオラトは降伏するように呼びかけるが、“セルパン“は往生際が悪かった。


セルパン「舐めるなよ!こちらには結界があるんだ、捕まれるものなら捕まえてみろ!痛い目に遭うのはお前達だ!!」 バッ!


 そう言って懐から何か小さい魔道具を取り出し、全員に見せつけるように掲げた。


アイオラト「何の真似だ?」


セルパン「ふふふっ、お前達の信じる神々だけが神罰を下せると思うなよ、少しでも私を守っている結界に触れてみろ、お前達に“フィズィ様“から直々に神罰を下されるのだから!」


「「「「!?」」」」


アイオラト「・・・お前を守っている結界が“神々の愛し子“である私の息子の結界と同じものだと?」


 よく知っている結界の効果を自慢げに語る“セルパン“に取り囲んでいる全員が眉を顰めた。アメトリンの加護の結界は神々からの恩寵であり、かなり強固で様々な効果を持つものだ、それを魔道具で再現できるものではないと言うのが世間一般的な常識だ。だからアイオラトは“セルパン“の結界が魔道具で張られているのはわかっているからこそ、その効果が本当に付与されているのか疑った。


セルパン「あぁ、そう言えばお前達はあの“フィズィ様“の“贄“となった“愛し子“の親でしたかね?そうです、その“愛し子“の加護の結界を模して作られた最新の結界魔道具ですからね!お前達の方がその“威力“をよくわかっているのではないですか?」


アイオラト「!、魔道具で加護の結界が再現できたと、本当に思っているのか?」(魔道具で再現できるようなものではないはずだ、それにあいつは主神様の神罰の内容をよく知らないみたいだ・・・)


 アメトリンの事を“贄“と言った“セルパン“に怒りが湧いて出たが、自信満々に最新の結界魔道具だと言った事に、さらなる疑問が出てきたアイオラト、怒りを抑えつつも質問を続けると。


セルパン「はははっ!愚問ですね!この魔道具の素晴らしい所はその加護の結界をも超える完璧さにあるのです!「バサッ!」こちらに取り付けられた魔道具で結界を私個人に途切れる事なく張り巡らせ、「バッ!」こちらの補助の魔道具で私に害をなそうとした者を認識し、それと同時に“フィズィ様“直々の神罰が降るのです!あの“愛し子“が与えられた“不完全な結界の加護“などと比べるなど烏滸がましいですよ!私の結界の魔道具はあのように少し細工をすれば機能しなくなる結界で“無様な醜態“は晒しませんからっ「ドッ!!」っ!?」ビュンッ!ドコンッ!!


「「「っ!?」」」


 “セルパン“は自身の魔道具の素晴らしさを語り、わざわざ着ていたローブをめくり、自分の腰に付いていた箱型の魔道具をも見せ、結界の魔道具の本体だと教え、手の持った魔道具が神罰を下すためのトリガーになるとまで詳しく説明してきた。そこまではアイオラト達も黙って聞いていた。向こうが機嫌よく魔道具の仕組みを話し、この調子でもっと重要な情報も聞けるのではないかと思って、静かに聞いていた。だが、そこでアメトリンを侮辱するような言葉を出したのが運の尽き。神罰なのど恐れもせず、目にも止まらなぬ速さで、“セルパン“を殴り飛ばしたのはアメトリンの母親であるシトリスだった。


シトリス「・・・・私の可愛いアトリーを侮辱することは許しません!」


 愛用のマジックロッドを使って“セルパン“を殴り飛ばしたシトリスは、怒りで魔力を溢れ出していた。突然の攻撃で身構えることのできなかった“セルパン“は無様な姿勢で飛んでいき、礼拝堂の祭壇横の壁に突き刺さった。結界の魔道具は本当に本人だけを包み込んでいて、物理的に飛ばされていく事を想定していなかったようだ。アメトリンの加護の結界は、本人が空を飛ばない限り飛ばされることのない使用だったため、このような事になった事はない。


アイオラト「はっ!シリー!どこか異変はないか!?」


 “セルパン“が飛ばされていった事に驚いたアイオラト達は数秒固まっていたが、すぐに我に返りシトリスの方を心配した。


シトリス「・・・いいえ、何も変わったことは・・・・ないです・・・?」


アイオラト「えっ??神罰は??」


 どこか異変があるかと心配されたシトリスは自身の体を見渡し、魔力を操作してみたり、ステータスも見てみたがどこにも変化はなかった。アイオラトもシトリスの体を見渡し何処か怪我などはないか確認してみたが、本当に何処にも異変はない事が分かり驚いた。


アイオラト「ど、どう言うことだ?あいつは自信満々に“フィズィ“から神罰が降ると豪語していたのに・・・・」


シトリス「え、えぇ、私も覚悟の上で攻撃したんですけど・・・どこも異変はありませんわ・・・」


カイル「そのようですね・・・」


リア「ハッタリだったのでしょうか?」


 全員が不思議そうに頭を捻っていると・・・・


 ガラガラッ、ドスッ!


セルパン「っ!く、くそ!な、何だ!?今、何が?・・・・!!お、お前か!お前が私を殴ったのか!!“フィズィ様“あの女に“神罰“を!!」


 そう言って手に持っていた魔道具の先端をシトリスに向けた。


「「「「っ!!」」」」


 今から神罰が降るのかと全員が身構えた。


・・・・・・・シーンッ


「「「「「ん???」」」」」


 アイオラト達は覚悟をして身構えていたが、何も起こらない事に首を傾げ、“セルパン“も同じように首を傾げた。


セルパン「なっ、何故、神罰の炎が舞い上がらないんだ!?“フィズィ様“の全ての罪人を燃やし尽くす神罰の炎が何故!?」


 自分の思っていた効果が発揮されず慌てふためく“セルパン“は見たところ、これと言った怪我もなく立ち上がっている。結界の魔道具はちゃんと仕事をしていたようなのに、何故か神罰の魔道具はちゃんと機能していない、その原因は分からないがアイオラト達にとっては好都合だった。


アイオラト「・・・どうやら、神罰の魔道具?とやらは動いてないようだな?ならば今の内にお前を捕まえて、その魔道具を壊せば何の問題もないな・・・では、“襲撃者セルパン“覚悟はできているな?」


 先程の“セルパン“が言ったアメトリンを侮辱する言葉に、シトリス同様に怒っていたアイオラトは愛用のロングソードを構えて“セルパン“にジリジリと近付いて行った。この後、“セルパン“の周りに展開された結界が壊れるまでボコボコにしたデューキス夫妻、その時間はたいした長さでは無かったとだけ言っておく・・・


カイル「旦那様、大体の制圧が終了しているようです。それと、今、反対側で大奥様が魔法陣に取り付けられた魔道具の撤去をなさっているようですが、我々もこちら側の魔道具の撤去は行いますか?」


 周囲の状況を確認し、魔道具の確保、または破壊を頼まれていたデューキス前公爵夫妻の状況までも細かく把握したカイルは、魔法陣の周囲に付けられた魔道具の撤去の進捗具合的に、こちら側からも協力した方がいいと判断したようだ。


アイオラト「あぁ、そうしようか、向こう側の魔道具は母上が上手く取り外したのなら、こちらの方は壊しても問題はないだろう。だが、カイル、上手く取り外せそうなら取り外してくれ」


シトリス「ラト、私も手伝うわ、カイル1人では取り外すにしても壊すにしても時間がかかるでしょうし、壊すだけなら私達でもできますから・・・それに、今ならアトリーの様子が見えるかもしれないでしょう?」


 シトリスは“セルパン“の所に辿りつくまでの間、ずっと魔法陣の結界内に倒れているアメトリンを気にしていた、今はもう“セルパン“は捕えられて、他に邪魔をしてくる人達もいない、今なら、中にいるアメトリンの様子をゆっくり見ることができる。倒れてから動かなくなってしまっているがまだ生きていると言う希望を持って、一眼でもいい可愛い我が子の姿を見たい。もしかしたら、また立ち上がって自分達の元まできてくれるかもしれない、そんな淡い期待を持って、シトリスは魔法陣の方を見た。


アイオラト「・・・そうだね・・・」


 シトリスの思いを理解し、無駄な事は言わずに静かに魔法陣に近付いていく。聖獣達の激しい攻撃音が鳴り響く中、“フィズィ“の視界から外れるように、姿勢を低くしながら魔法陣の側面に取り付けられている魔道具近付いていくと、魔道具はすでに機能を停止しており簡単に取り外すことができた。


アイオラト(母上が向こう側の魔道具を取り外していたようだし、そのおかげで簡単に取り外せたのか?連動式だったならあり得るな・・・)


 そんな事を思っていると。


シトリス「!、アトリー??」


アイオラト「どうした?シリー?」


シトリス「ラト、アトリーが、アトリーの胸が微かに動いていない?」


アイオラト「!・・・・確かに、動いている!?」


カイル&リア「「っ!」」


 シトリスはじっと魔法陣内で倒れているアメトリンの姿を見ていた、その時、微かな異変を感じ取ったことで、アメトリンの生存に光がさした瞬間だった・・・


?「緊急伝達、緊急伝達、通信具を持つものはすぐに周囲と情報を共有せよ。現在、アトリー様の救出についての新事実が判明、アトリー様の生存が確証に変わった、今、現在での優先順位がアトリー様の救出が最優先となったため、この通信を聴いたものはカシミール様のもとに集合せよ」


「「「「!?」」」」


カイル「旦那様・・・」


アイオラト「あぁ、聞こえた、行こう、カシミールが何か掴んだのかもしれない・・・」


 突然の通信に驚いたが、今やっと自分達が気づいたアメトリンの生存だが、魔法陣の近くにいるわけでもないカシミールが別のアプローチから気づいたと言うことは、自分達よりももっと詳しい情報を持っているだろうと判断し、アイオラト達はすぐさまカシミールとの合流に動いた。
















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