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206話 神々の心配


「・・・バイバイ、皆んな・・・・」


 まだキラキラと光る、光の粒の残滓を見つめながら、僕は言葉にできない寂しさを覚え1人そう呟いた。



 こうして、神界でのもう一つの“送還儀式“を終えた僕は再び、“ジェムシード“の世界の現世に戻る時が来た・・・・


 とは行かず、その前に、僕はティーナちゃん達と色々としなければならない話がたくさんあるのだった。まずは仁達が無事に“アース“に戻れたかの確認と、この後 僕が現世に戻った時に起こるかもしれない事態への対策の相談。これは向こうに帰る仁達がいる間は心配させるといけないので、話題にできなかったことを今からするのだ。


 光の粒が消えてすぐに天照ちゃんが空中に何かのウィンドウ画面を出して、それを確認した。暫くするとこちらを見てこう言った。


天照ちゃん『仁さん達は無事、元の場所に戻りました。向こうでの時間の流れはほとんど立っていないので少し戸惑うでしょうが、今の所変わった変化は見られませんよ』


「ほっ、良かった・・・」


 仁達の無事の帰還はすぐに確認が取れて、一安心したところで、


ティーナちゃん『さて、アトリーちゃん、これからの事なんだけど・・・・・』


 と、再びソファに座り、小さい姿のジュール達を膝に抱えながら今後の話をし出した僕達は、時間が許す限りの対策を話し合い、何通りかの可能性に備えて対応をする事になった。まぁ、結果的には殆ど臨機応変に対処していくしかないと言うことで話は終わったが、その中でも可能性が高いものに対してできた対応策はこうなった。


 まず、前提として現世に戻るといつも僕を守って張ってある加護結界が、“儀式“にエネルギー供給する過程で今は展開してない事。“儀式“が終わったとしても徐々にしか力が戻らないので、そのタイミングで邪神が神殿から出てくるアトリーを狙って、神殿の入り口付近でいろんな手口で襲撃をしてくるだろう、それをわかった上で周囲を警戒しつつ囮として待ち構え、相手が仕掛けてきたら、油断させて引きつけてから反対に返り討ちにする作戦と、あと、相手が痺れを切らして、真っ正面から神殿の結界を突破すると言う手段に出る可能性もあるから、現世に戻ったら神殿内でもなるべく大人や護衛の近くにいる事、1人にならないようにと、言われた。僕は今、初めてその事を聞いたが天華達はその事を事前に聞いていたのか、その話に口を挟まずに静かに聞いていた。まぁ、ジュールだけは僕の膝の上で丸まって寝ているんだが・・・


ティーナちゃん『まぁ、今、星のエネルギーを使って神殿に張ってある結界は、外から中からもそう簡単に突破できるとは思えないけど、“儀式“が終わればその結界の力は徐々に消えてしまうのよね、それとアトリーちゃんの結界が万全になるのは少しタイムラグがあるけど、神殿に張った結界から、アトリーちゃんの加護の結界に徐々に切り替わる感じかしら?だから、その結界が完全に消えるまでは神殿内にいなきゃならないの、その待機中で神殿の結界が消える寸前ぐらいの弱い状態だったら、もしかしたら“人“でも突破される可能性があるのよね、そこだけは気をつけてほしいわ』


「うん、分かった、現世に戻ったらすぐに父様達の側に行くよ、父様達やソルには結界の魔道具を持って来てもらってるから、いざとなったら、それを発動して貰って、加護の結界が元に戻るまで匿ってもらう」


天照ちゃん『アトリーの衣装には色々な防御に力を入れてはいますが、加護の結界までの完璧さはないですからね、油断しないようにしてくださいね、アトリーちゃん』


「あー、あの“神器“として変化させた時の付与だね?あの付与を見る限り、普通の襲撃に見せかけてまた“呪詛“や“邪気“を使うような卑怯な手で来るかもしれないって思ってるんだね?」


 初めてこの“祭事服“の情報を見た時のことを思い出して、今まで“邪神教“が仕掛けて来た事件の数々を思い返した。


月詠様『あぁ、これまでの奴らの手口から見て、正面から衝突して注意がそちらに向いた隙に、“邪気“を含んだ“呪詛“をアトリーに掛けようとするだろうと予想される、だからあのような“瘴気や邪気“の浄化に特化した付与になっているが、代わりに防御力が心もたないので、今回ばかりはあまり前に出て戦うようなことはしては駄目だぞアトリー』


 月詠様は現世に戻った後の僕の防御力の低下を心配してくれていて、僕はその真剣な様子から襲撃の際により注意をして迎え撃つと気合を入れた。


 そして、可能性は限りなく低いと思うが、襲撃者が来た時に“邪神“が出て来た場合も考え、“人“でも“邪神“に対抗できる手立ての使用方法などを伝授された。


天照ちゃん『“邪神“が現れるとすれば、多分、向こうは自分の正体を公に晒したくはないでしょうから、本体を隠し、意識だけを何かの“物“に移して出てくると思います。

 ですが“邪神“に落ちたとしても、元は何処かの世界を管理していたと思われる神なので、形代にはそれなりの大きさの無機物でないと意識を移すことはできないでしょう。ですが大きさを優先しても、ただの銅像とかでは身動きは取れませんから、自立して動ける大きな無機物、“地球世界“だったら2メートル以上のロボットとか人形?関節が動く物でしたら意識体だけでも動かせますかね?・・・こちらで言うならゴーレムでしょうか?そのような物で出てくると思うのですぐに気づくとは思います』


「おぉ、ゴーレム、ちょっと見てみたい・・・・・ん?でも、なんで“邪神“は自分の正体を隠そうとするの?」


 ふと思った疑問に、


ティーナちゃん『あぁ、それはね、“邪神“の正体が分かれば、私がこの世界から強制退場させることができるよ、向こうはこの世界に無断で侵入している異物だから、その正体が判明すればピンポイントで排除できるのよ。だから、向こうは私達の目の届く範囲から逃げ回って、巧妙に目眩しして隠れてるの、排除されたくないからね。一度排除されると、もう2度と侵入できないように対策も取れるから、向こうは必死で隠れてるのよねぇ~。おかげでこっちが頑張って探しても出てこないからほんと嫌になっちゃう・・・』


 と言った、返事が返ってきて。


「な、なんか、パソコンのソフトシステムに入り込んだウィルスみたいな扱いだ・・・」


 と、言う感想が出て、でも相手は一応、力のある“邪神“だから、その例えは変か?と思っていると、ティーナちゃんは同じような物だと言って、大笑いしていた。その様子を見ていた天華達や月詠様達、他の神々もなぜか納得してた。


(・・・あ、それでいいんだ?・・・)


 そんなこんなしているうちに、手足が透けて来ているのに気づいた、どうやら僕は現世に意識を戻す時間が来たようだ。


ティーナちゃん『あ、時間だわ・・・アトリーちゃん、今回は色々と協力してくれてありがとうね。向こうに戻っても、暫く見守ってるわ、神殿やその付近で襲撃が起こったらすぐに動けるようにしておくわね』


 と、言ってくれて。


「ううん、気にしないで僕が役に立ったのなら嬉しいし、今からのこともあるからお互い様だよ。頼りにしてる!」


 そう言うと、ティーナちゃんや“ジェムシード“の他の神々も頼もしい笑顔で頷いていた。


天照ちゃん『私達は、これと言った手助けはできないですが、いつでも見守っていますからね』


月詠様『気をつけるんだぞ、アトリー』


 と、2人は心配そうに見送ってくれている。


「うん、気をつけるよ、皆んな、また神殿い会いにくるね!」


 そう言って、僕の視界は真っ白に染まりながらも笑顔で手を振った。皆んなの別れの挨拶の声を聞きながら意識は遠のいていき、再び意識がはっきりして来た時は現世の神殿内の元の位置で、手には神域では持ってなかった杖を持って“舞“の締めの姿勢のまま、止まっていた。魔法陣にはもう力が巡っている感じはなく、光は段々と治っていっているのが見える、結界もゆっくり消えていくのも分かった。


 (現世に戻ってきた?・・・これはちゃんと踊り終わったあとなんだな?この後はもう声を出して動いてもいいんだよね?)


天華『はい、もう大丈夫ですよ』


 杖を自分の胸の辺りで立てて両手で握り絞めていた僕は、力を抜き腕を下ろして、仁達が立っていた魔法陣を見つめた。


(・・・・・ふぅ、・・・・よし、これでひと段落ついたね、さて、父様達は、っと・・・)


 少しの寂しさを感じたが、次にする事に気持ちを入れ替え、家族がいる方向を向こうとした。


夜月『ん⁉︎なんだこの反応は!?』


「どうしたの夜月?」


夜月『神殿の結界内に急に人の気配が増えた!』


「えっ!?どう言うこと!?」


天華『アトリー、今は早くご両親の元にっ!』


「あ!うん!父様、母様!すぐにここから、「ドンッ!」っ!・・・・えっ?・・・」


 夜月が感じた異変に慌てた様子で天華が僕を両親の元へと言ってくる。僕もそれに従い両親の方に体を向けかけた時、後ろから何かがぶつかった音がした。


(・・・何?何が・・・あ、何これ・・・銀色の棒?いや剣?なんでこんな所に?・・・)


「っ!ぐっ、ああ"ぁ、ゴボッ!ゴホッ!」


 急に息苦しさを覚え、吐き気がした喉の奥から何かが込み上げてきて、反射的に咳き込むと、自分の口から信じられないほどの真っ赤な水、いや、血が出てきた、咳き込む時に添えた手が真っ赤に染まり、一瞬、自分で何が起きたのか理解ができなかった・・・


「「「「「キャァー!!!」」」」」「「「「「アトリー!!」」」」」「「「「「愛し子様!!!」」」」」


ジュール達『『『アトリー!!』』』春雷達『『アトリー様!?』』


(えっ、刺された?)


 周囲の悲痛うな悲鳴で、僕は今、自分自身が剣で貫かれたと理解した。後ろからした音は誰かが僕の背中から剣で突き刺した音で、さっき視界に入った銀色の棒だと思った物は僕の右胸を貫いた剣先だった。息苦しさで吐き出した血は貫かれた右胸の肺に血が入ったことで起きた吐血で、今も次々と口からその血が溢れ出してくる。胸からも血が出て来たのか真っ白の衣装が赤く血で染まり広がり始めた。


(な、なんで?だ、誰が?・・・)ガフッ!ゴフッ!


 混乱のせいか不思議と痛みを感じなかったので、誰が自分を刺したのか確認しようと、咳き込みつつも後ろを振り返ろうとすると・・・


?「あぁ、ずれたか・・・」


 そう、耳元から聞こえた幼い少年の声はすごく残念そうだった。


「うっ!?」(だ、誰⁉︎子供!?)


 ズズズズッ ズルッ!


「ぐっ!!あ"あ"あ"あ"ぁ!!」


 ちゃんと振り返り相手を見ようとした時、後ろにいた何者かが、僕に突き刺していた剣をゆっくりと引き抜いた、そこで僕はやっと痛みを感じ叫び声をあげた。今までにない痛みで思考が乱れ、何も考えられない。


 ドンドンッ!ダンッ!! 「「「アトリー!!」」」 ガンッ!ガンッ!「「「「やめろー!!」」」」 ガキッ!!ガキッン!!「「アトリー様!!」」 


ドカッ!!ダンッ!!ガリガリッ!!『『『アトリー!』』』


「お前は何故そこにいる!?」「何故だ!何故そんな事を!!」「誰か早くここの結界を止めるんだ!!」「報告!!反省室に侵入者!」「なっ!?侵入者だと!?」「どこから来た⁉︎」「突然現れました!」「くそっ!賓客を守れーっ!」「神官達は結界の解除を急げ!」「早く“愛し子様“を助け出すのだ!」「無理です!“儀式“とは別の結界が張られています!」「ならここからでも良い、治療魔法を早くかけるんだ!」「すでにしてます!ですが結界が強固で届きません!魔法発動を阻まれてます!!」


(痛いっ!痛いっ!痛いっ!右胸が焼けるように痛い!!息ができない!苦しい!だ、誰か…、誰か助けて・・・)


 ゆっくりと引き抜かれた剣、それが支えになっていたかのように僕はゆっくりと床に倒れた。僕が倒れ込んだちょうどその視線の先に両親や他の家族全員が座っていた場所の正面だった、先程までゆっくり消えかけていた魔法陣の結界が何故か復活していて、その結界の壁を破ろうと家族全員が叩いたり、魔法を放ったり、剣で切りつけたりしている。その他の人達も異常な事態に気づきそれぞれ動き出しているが、どこからか侵入した黒いローブを纏った一団の対応に追われて、周囲は大混乱していた。その中で必死に魔法で結界を壊そうとしている両親と目が合い、無意識に助けを求め、手が出ていた。


「とう、さま、か、かあさま・・・」


母様「っ!アトリー!母様はここよ!しっかりして!今助けてあげるから!!死なないで!!」ダンッ!ズダンッ!!


父様「アトリー!今、結界を壊すから、持ち堪えるんだ!!」ガンッ!ドカンッ!!


?「ほう、今世でのお前の大事な物はあの両親か?・・・丁度いい、そのまま見ておけ、今、我がお前の死での旅のお供にしてやる」


「っ!?や、めろ!!ゴホゴホッ!!」ガシッ!


 倒れ込んだ僕の横に来て、そう囁いた襲撃者は結界の向こう側にいる両親に向かって歩き出そうとした。そこでやっと、襲撃者の姿を見ることができたが、全く持って見覚えのない同年代の少年だった。僕は痛みを堪えながらもその襲撃者の少年の足首を必死に掴んで止めるが、血を流し過ぎたのか大した力も入ってない手は容易く放り払われ、襲撃者は嘲笑うかのように振り返り恍惚とした表情で笑い出した。


?「ふふっ、あはははっ、それの願いは聞けんな、お前の魂が絶望に染まる瞬間はとても美しい・・・ふふふっははははっ!もっと絶望しろっ!!」


 ドカッ!


「ガハッ!・・・・と・さま、かあ、さま、コポッ、に、げて・・・」


(痛い、寒い、それより、父様、母様を助けなきゃ、どこ?見えない・・・・お願い、どこでもいいから、ここから逃げて・・・・・)


 大量の血を流しながらうつ伏せに倒れている僕の腹を、容赦なく蹴り飛ばした襲撃者の少年はまた高笑いを続け、僕は血の流し過ぎによる寒さや眩暈で焦点が合わない中、痛みを我慢し振り絞って出した言葉は届いたのかも分からないまま、血溜まりに沈みながら、まぶたをゆっくり閉じた・・・


母様「いやーーっ!!!アトリーー!やめて!!だめよ、だめっ!!こっちを見て!!目を開けて!!アトリー!アトリー!?」


父様「アトリーーーっ!!くっ!!今行く!!今行くから、目を開けるんだっ!!」


天華『アトリー!気をしっかり持って!』夜月『寝てはダメだ!アトリー!』ジュール『アトリー!アトリー!すぐに助けるよ!寝ちゃダメ!!』


(遠くで、皆んなの声が聞こえる・・・あぁ、僕はまた、死ぬのかな?あの時みたいに、・・・あの時?何だっけ?・・・・分からないや・・・・寒いな・・・何も聞こえなくなって来た・・・死ぬのはやっぱり寂しいな・・・・・)


 思考が暗い何かに沈み込む感覚、何かを思い出そうとしてけど、自分の感情さえも希薄になって、それが以前にも感じた死の予感?、こんな体験、何度も味わいたくないな・・・・
















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[気になる点] 仁たちが元の世界に無事に帰れたことが確認できて安心したばかりなのに、なんでこんなことに・・・ アトリーは神様の加護を授かっていたよね こんな時には役に立たないの? スキルに自動回復能力…
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