199話 入場と“送還儀式“の作法
ゆっくりと重厚な両開きの扉が開き、中から入ってくる光で僕は照らされて少し眩しさを感じ目を細めた。
(・・・ふぅ~、よっし!行くぞ!)
春雷達&精霊達『『『『『頑張ってー!』』』』』
光に慣れてきたぐらいで気合を一つ入れて精霊達に声援をもらい一歩足を踏み出したのだった・・・・
先に礼拝堂内に足を踏み入れたのは、それぞれ自分を生み出した神々の象徴となるネックレスをつけたジュール達だ。
先頭を行くのは少しオレンジがかった赤い魔石を、太陽に見立てたペンダントトップがついたネックレスをつけた天華が、珍しく50センチほどの大きさで僕の目線の高さでゆっくり飛び、その後ろをティーナちゃんのシンボルマークのペンダントトップをつけたジュールと、薄く銀が散らばったような白い魔石で、月を表現したペンダントトップをつけた夜月が本来の大きさで並んで進み、そのさらに後ろを僕がゆっくり転けないように続く、ソルとオーリーは僕の後ろを本物の神殿騎士のようにキリッとした表情でついてきていた。
精霊達は僕の周りをクルッと回った後、姿を消しながら中に入っていき、春雷達も僕に『近くで見守ってますね』、と耳打ちしていつの間にか消えていった、だが薄く気配は感じる、でも意図的に姿を消したのでもう僕の目にも姿は映らない。少し寂しく思うが今回の“送還儀式“の間、精霊達は神々からの依頼で各国の要人達の監視任務を請けているそうなので、来賓の中にいるエルフやダークエルフに気づかれないように意図的に姿を消したのだ。姿は見えなくても側には居てくれるそうなので、何かあればすぐに声をかけてくれるだろう。
(あ、行っちゃった・・・ん?なんか、周囲がすっごく静かなんだが?それにコレってどこまで進めばいいの?((((;゜Д゜))))))))
消えていく精霊達を見送り天華の後を追って中に入っていくと、礼拝堂内は自分の着ている服の布ずれの音しかしないほど凄く静かで、周囲にいる人達は僕達をただ黙って見ているだけなのだ。その様子に少し焦りながらも昨日習った通り、両手を持ちげ胸の辺りで重ねた状態で黙って姿勢良く歩き出した僕だったが、正面に見えてきた光景に目を奪われた・・・・
(わぁ、すっごい大きな魔法陣、それに、周りにあるのは魔道具?いやアレは“神器“?(・Д・))
入り口中央から伸びる青い絨毯を歩いていくと、入ってすぐの両脇には等間隔に並べられた椅子の列、そこは各国の使者達が座っており、いつもなら礼拝用のベンチ型の長椅子がたくさん並べられている広い礼拝堂の中央に、直径5m以上の大きな魔法陣が描かれていた。その魔法陣を取り囲むように、4つの見たことのない魔道具のようなものが均等に配置されていた。
それのさらに奥に円形に1m床がせり出したように高くなった石舞台のような場所があり、手前の魔法陣より1.5倍の大きさの魔法陣が、床一杯に渦巻き状の魔法陣が描かれていた。
(魔素吸収の魔法陣?でもなんか少し違うような・・・・?)
多少の違和感を感じながら恐ろしいほど静かな空気の中、天華に誘導されるがまま歩いていると、どうやら入り口手前にあった椅子の列を通り過ぎ、手前の大きな魔法陣の上を通るようだ。
(魔法陣の上を歩いていいのかな?(。-∀-))
夜月『大丈夫だ、このまま真っ直ぐ進んで、もう一つ上の魔法陣の中央で止まるぞ』
(あの渦の中心まで?)
夜月『そうだ』
(了解・・・えっ?魔法陣が光った!Σ('◉⌓◉’)な、なんで?)
事前に入場の作法は知らされていたが、“儀式場“に入ってからの歩くルートは、天華達について行けばそれでいいと言われてだけで、中の配置など何もわからない状態でここに来ているのだ。だから夜月が問題ないと言うので、素直に真っ直ぐ進むと、手前の魔法陣の上に僕の足が触れた瞬間に、ほのかに魔法陣が光出すことさえ知らなかった。
「「「「「おぉ!!」」」」」
(こ、コレ、光って大丈夫なやつ⁉︎( ;´Д`))
夜月『あぁ、大丈夫だ。正常な反応だから気にするな、それより止まらずに先に進むぞ』
(は、はーい・・・(。-∀-))
周囲から驚きや感嘆の声が沸き立つ中、僕は言われた通りにまだまだ真っ直ぐ進む、すると、手前の魔法陣を通りすぎ、もう一つの魔法陣の前に日本の学生服姿の仁達が通路の右側に並んで椅子に座っていた。
(あ、仁達だ、ここに座ってたんだ、後ろ姿だと気づかなかったよ・・・)
そして周りを良く見ると魔法陣の周囲からは距離を置いた場所、礼拝堂の壁際近くに自分の家族や王族達、それに多分だが各国の使者の中でも王族達が均等に並べられた椅子に座っているのが見える。他にも礼拝堂内の至る所に、リトス教の神殿騎士達や、この国の騎士達が警備をしているのも確認できた。
(ふふっ、緊張してるのかな?( ´∀`))にこっ
仁達「「「っ!」」」
僕は仁達の姿を確認できてにっこり笑うと、何故か顔を真っ赤にして顔を俯けた。でも、手に持ったスマホのカメラレンズはしっかり僕の方を向いていた。
(??どうした??大喜びすると思ってたのに・・・あ、カメラはちゃんとこっち向いたままだな、なら大丈夫か?・・・(*´ー`*))
ジュール『アトリー、階段あるから気をつけてねぇ~』
(ん?あぁ、はいよ~(*´Д`*))
予想の反応とは違った仁達の行動を不思議に思って見ていると、ジュールが魔法陣の前に設置されている小さい階段の存在を知らせてくれたので、視線をまた前に戻し慎重に渦巻き状の魔法陣の上にゆっくり上がって行く。
(うーん、これはやっぱりただの渦巻きの線じゃなかったんだ・・・)
渦巻き状の魔法陣を近くで見ると、渦巻きの線だと思っていたものは全て文字の列であった。書いてある文字はどれも統一性がなく、一つの線ごとに言語が異なる文字で渦巻きを構成していた。
(んん??アルファベット⁉︎あっちにはアラビア文字!あっ!日本語!?漢字だけの所もある!えっなんで!?Σ(-᷅_-᷄๑))
何故か前世で見たことのある文字の列を見つけて驚いた。
(あ、ハングルまである、何これ、見たこともない文字もあるけど何故かどれも読める・・・あ、スキルのおかげか…、何々?・・・・)
書かれている文字に知っているものと見覚えのないものが入り混じっていた、どれも読もうと思えば読めたのだが、1番読みやすい慣れ親しんた日本語の部分を読むと・・・
(“星を巡る強大な力を、この魔法陣に集約させ、送還の異次元転移魔法陣の発動に使用する、送還の異次元転移魔法陣に力を送るのは歌い手の魔力を媒体とし、歌い手が歌い出す時“・・・ってことは、僕が歌い出したら“送還儀式の異次元転移“が始まるって事か?それに魔法陣の上を通って真っ直ぐここに来たのは、僕の魔力自体がエネルギーの供給線にする為か、魔法陣が光ったのも僕の魔力に反応したのが原因か・・・)
天華『そう言う事です。アトリー、さぁ、ちゃんと前を向いて中央に・・・』
(・・・うん、分かった・・・)
この文を読んでやっと、自分が教えて貰った入場の作法の意味が分かった。禊が終わったら魔力を使わないように言われたのは、僕の清められた魔力を異次元転移の魔法陣に認識させる為、だから天華はわざわざ魔法陣の上を僕に通らせ、エネルギー集約の魔法陣との繋がりを作った。そして黙ったまま礼拝堂に入るのは僕の歌、もしくは声が“儀式“の始まりを意味するから。“歌い手”を認識させる手段は多分、この頭に乗せられた“サークレット“だろう、だから先に魔法陣の上を歩いたジュール達には魔法陣が反応しなかった。
全て理解した僕は天華に促されるまま文字の渦巻きの中心に立った・・・
フォンッ!
(!・・・やっぱり光った・・・)
「「「「「っ!」」」」」
僕が渦巻きの中央に立った時、魔法陣がパソコンの起動音みたいな音を立てて光だした。その様子に“儀式“の立会人達全員が何故か息を呑み固まった。
天華『アトリー、このまま暫く待ちますが立っているのがきついようでしたら、その場で座っても構いませんからね』
(うぃ、何分掛かるかにもよるんだけど、長くなりそうなら、“あぐら“は駄目か?正座も無理だな、そもそも直に床に座るのは駄目か、さてどうするか・・・)
と、思っていると、ソルがいつの間にか神官から椅子を借りて持ってきていた。
ソル「アトリー様、コチラをどうぞ・・・」
(あ、ソル、ありがとう♪)ニコッ
ソル「っ・・・ど、どういたしまして・・・」
椅子を持ってきてくれたソルに笑顔でお礼をして、やたら豪華な椅子に座った。するとオーリーとソルがサクサクっと僕の身だしなみを整えて、椅子の後ろに控えるように立った。ジュール達も僕の周りを取り囲むように座り、“儀式“が始まるのを待った。
・・・・数分後・・・
そして、周囲のフリーズが徐々に溶けていった頃、ようやく“儀式“を執り行う神官達も動きだした。
(うーん、これから暫くここで待機かぁ、暇だなぁ~(*´Д`*))
いつもながら秒で暇を感じた僕は今から始まることの内容をぼーっと振り返ることにした。
(確かぁ~~事前説明では・・・・)
手順的に今から神官達が各国の使者達に向けて今回の騒動の概要を話し、どうしてこの国で“儀式“を行うことになったかと言う経緯をも説明、そして、今回の騒動の原因となったズューウス王国の王太子自ら、各国の使者達のいるこの場で正式に仁達に謝罪、その流れで主神であるティーナちゃんにも今回の騒動を引き起こしたことを謝罪し許しを乞う、その謝罪の本気度でズューウス王国全体への神罰の内容が変わる、要は課せられるペナルティーが変わる。
神罰の内容は色々あるが軽いもので主犯の王侯貴族のスキル剥奪、ひどいもので国そのものが滅びる、地味に痛いので今後数年間、国内の作物の収穫量の低下だ、なのでこの時の謝罪は真剣に心の底からしないと、国全体の未来が決まると言っても過言ではない。
実際、数十年前に神々の法に反した国が1つ滅びた前例がある。その時の神罰の内容はその国全体で段々と土地が衰えていき、最終的には作物が実らなくなって、国から人が徐々に離れていき、その国はゆっくりと滅びたのだと言う。今、その国があった土地は周辺の国々が平等に分け合い領土としたそうだ。
(でも、この話の真実は、ズューウスみたいに無断で“勇者召喚“を行おうとしたその国に、神々が危険なのでやめなさいと警告を出したんだけど、それを無視して“勇者召喚“を強行して結局は失敗、その失敗の原因はエネルギー不足、その国全体の土地のエネルギーでは全く足りず、“勇者召喚“を失敗した反動で、土地全体が自然を維持するためのエネルギーを生み出す機能と、その生産されるエネルギーを土地に還元する機能も低下。その結果、元々土地に残っていたエネルギーも徐々に消費していって、自然の調和を維持してくれる精霊達もその土地を離れていき、自然が崩壊、最後にはエネルギーの生産すらもできなくなり、国全体が不毛の地になったってことだったんだよね。だから実際には神々はその国の土地には神罰は下してはないらしいんだけど、まぁ、その土地を救えるのに積極的に救おうとはしなかった、てのが真実だって、天華に聞いた。要は自業自得ってことだね・・・まぁ、見た感じ、今回の神罰は軽い方になりそうだが・・・)
そんなことを思っていと、礼拝堂の祭壇奥にあるティーナちゃんの神像が光出した。
「「「「「おぉっ!!」」」」」
(お、光った、じゃあこれで罰の付与は終わったのかな?意外と何もなさそう?(*´Д`*))
光った神像は、謝罪を述べるために祭壇前に並んで拝んでいたズューウス王国の王太子達を初め、国の宰相や高位貴族達に向けてその光を放った、その放たれた光を浴びたズューウス王国の人達は、光に包まれたと思ったら意外とすぐに、ほんの数秒で光が消えた、これで神罰が与えられたのか?と不思議に思っていると、王太子にはこれと言った神罰は下ったようには見えなかったが、ズューウスの関係者達の中から悲鳴をあげ、床に転がりのたうち回る人が数人出てきた。
(あー、あの人達はあまり反省してなかったのかな?(。-∀-)あんなに暴れ回ってるのはどんな神罰の影響だ?)
天華『・・・さぁ?それは分かりませんが反省してないのは確かなようですね。その点、あの王太子はちゃんと反省しているみたいですね』(多分あれは悪夢を見せるなどの神罰でしょう、それに比べて王太子はこれと言った変化は見られません、と、言う事は神罰は軽いものだったのでしょう、ちゃんと反省をしている証拠としては良いですが・・・そうなると、あの者達は王太子の反省具合の比較対象として連れてこられたんでしょうか?ただの比較対象として連れてくるにしても、今回の“儀式の場“にあのような者達を招き入れるのはどうかと思いますが・・・一応、注意しときましょう・・・)
(それは良かった、隣国の時期国王が愚かでなくて( ´∀`))
そう話している間に、のたうち回っている人達を神殿騎士達が手際よく礼拝堂から退場させていって。他のズューウス王国関係者は元の席に静かに戻っていくのが見えた。
(神殿騎士さん達、手際いいいなぁ・・・さて?次は何するんだっけ?(。-∀-)・・・・あ、“始まりの祝詞“だったけ?)
天華『そうですね、これから“送還儀式“を始めると神々に知らせる為の祝詞をあげます。それと同時に“儀式“を邪魔されないように、神殿全体を特殊な結界で包む為の“儀式“みたいなものですね』
天華の説明と共に今までズューウスへの神罰を見届けていた神官、ミシオン大司教の他に数人の神官達が祭壇前に出てきて、神像に向けて祈り、祝詞を捧げ始めた。
神官達「「「「「我らを慈しみ、見守っておられる全ての神々に請い願います。今、我らの罪により、召喚されし客人の帰還の準備が整いました。全能たる神々よ、いと尊き客人の帰還のために、この罪深き非力な我らにお力をお貸しくださいませ・・・・」」」」」
(祝詞って言うか、普通にお知らせとお願い?みたいな感じだね…!おぉ、魔法陣が少し光り出した・・・ん?なんか、下のエネルギーが・・・・(*´ー`*))
神官達の祝詞が始まると僕の下にある魔法陣がほんのり光だし、真下に溜まっていた大地のエネルギー的なものが動き出し、そのエネルギーが神殿を包み込み始めた。
夜月『これで外からの干渉はほぼ遮断できたはずだ』
(ほー、神殿全体の表面を覆うようにエネルギーが行き渡った、ん、このエネルギーは神様側からも操作できるのか、ふむ、これで“送還儀式“の第一段階が終了、次は・・・)
ミシオン大司教「・・・それでは、“勇者候補者様方“後ろの魔法陣の方へ・・・」
大司教は神殿全体が結界に包まれたことを確認して、魔法陣と魔法陣の間に座っていた仁達を、後ろにある魔法陣の上に誘導した。仁達は案内の神官達に促され席を立ち、少し不安そうに僕の方を見てる。僕は無言で頷き大丈夫だと伝えた。
(大丈夫、これで君達は元の世界に帰れるんだから、心配しないで・・・)
仁達は少し寂しそうな表情をした後、神官達の後を追った。
僕は少しお行儀が悪いができるだけ体を捻り、仁達の様子を伺っていると、仁達が後ろの魔法陣の中央にある空白の円の中に入り、神官達が何やら説明をしているのを仁達は真剣に聞いている、どうやらこの空白の円の中から出ないようにと念押しされているようで、仁達は頷いて了承していた。
(あそこが異世界転移の穴?が開く場所なのか・・・)
じっと様子を見ていると、仁達に説明を終えた神官が魔法陣から素早く出ていき、魔法陣を囲んでいる魔道具のような“神器“の方に行った。
(うーん、さっきまでは変な長四角い“神器“だなって思ってたけど、よく見ると何か装飾かたなスピーカーに見えてきた・・・(*´Д`*))
ジュール『ん?どこら辺が?』
(あの魔法陣の方向に向いている面にある丸い円盤型なのが、スピーカに見える。でもその裏側で神官さん達が何か操作してるからか、変な感じはするけどね?)
神官達が魔法陣を取り囲む“神器“で何か作業をしている様子を見ながら思ったのは、長方形の四角い箱型に丸い円盤が側面についている“神器“が、前世での舞台装置の音響設備に見えてきて僕は妙な気分になった。
ジュール『あの丸いの?そうなんだぁ、でもあれからは音は出ないよ?』
(ふーん、そうなの?じゃあ、あれって、何の“神器“なの?)
ジュール『えーっと、確か、纏めるのが難しいエネルギーを他に逃さないようにする装置?だったはず!』
(ほー、エネルギー安定化の為のものなのかな?・・・やっぱり、星を流れるエネルギーは扱いが難しいんだね…(´・Д・)」)
天華『そうですね。人間が自然のエネルギーを扱うのはまず無理ですが、神々には容易に扱えるものです、と言っても、神々が神界からこのエネルギーを使うと少し大雑把になりがちですから、そこを補助する形であの“神器“が使用されているんですよ』
(あ、そう言うこと、なくてもできるけど、あったほうがやり易い的な?( ´∀`))
夜月『そう言う感じだな』
魔法陣に使用する“神器“の必要性について話していると、神官達の作業が完了したのか、仁達がいる魔法陣の1番外側の円と、仁達を囲う円が強く光だし、その円に沿って結界ができた。
(お?あの魔法陣って一つの効果の魔法陣に見せかけて、複数の効果の魔法陣を段階的に発動させる為に分割させてある?(*´ー`*))
一部だけ光る魔法陣をよく見ると、光った場所の円はただの円状の線ではなく、細い二重線の間にびっしりと文字が書かれた魔法陣であることが分かった。今光っている仁達がいる所を囲う円の魔法陣と1番外側の円の魔法陣との間にも、数個、円状の魔法陣があり、それらはどの魔法陣とも繋がりはなく、それぞれ独立した魔法陣になっていることに気が付いた。
(何重もの円がそれぞれ魔法陣として用意されているのか。それに通常なら発動条件を書くはずの1番外側の二重丸の中に、発動した結界の設定が書かれていると言うことは、あちらの魔法陣の一つ一つの発動の条件は、全て外部に委ねていると言うことか、“送還儀式の異次元転移”の発動の条件自体はこっちの魔法陣にあるしな・・・ん?もしかしてあの“神器“も結界の発動の鍵になっているのか?遠隔スイッチ的な?うーん、興味深い、今後の魔法陣開発に役立つかもしれないな・・・(-᷅_-᷄๑))
なんて、魔法陣の考察をしていると・・・
ミシオン大司教「・・・“儀式の杖“を“歌い手“に・・・」
(お、やっと僕の出番か・・・)
“送還儀式”は大詰めを迎え、ミシオン大司教が祭壇に置いてあった杖を恭しく持ち上げ、魔法陣の上にいる僕の元に歩いて来る。僕はそれを見て椅子から立ち上がり、その場で膝をつき、両手を胸の前で交差させ、頭を下げてミシオン大司教が杖を持って来るのを待った。ジュール達は邪魔にならないように僕の少し後ろに移動して、さっきまで僕が座っていた椅子はオーリーが素早く持って魔法陣から降りて行き、ソルはまだ僕の斜め後ろに待機しているようだ。
コツッ コツッ コツッ コツンッ
そして、前方の階段からミシオン大司教が僕の目の前にやって来た。
ミシオン大司教「歌い手よ、神々から授けられし“儀式の杖“を受け取り、神々に歌を捧げよ・・・」
ミシオン大司教は“儀式の杖“を僕の目の前に差し出しそういった。差し出された“儀式の杖“を僕は無言で両手を出し、ソッと杖を受け取り、頭より高く上げて恭しく崇めた・・・
(さて、これからが僕の本番だ!)