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189話 準備完了 第三者 視点


>=====<>=====<>=====<


 第三者 視点


ーーー・・・とある山奥の洞窟内・・・・


 今、この山奥の洞窟内では悍ましい儀式が行われようとしていた・・・


 カツーンッ カツーンッ・・・・・・・・


 薄暗く静かな洞窟内の暗がりを靴音を響かせ誰かが歩く音がする。

 洞窟内の最深部にある広い空間、そこの中央に直径5メートルほどの円形の石舞台がある、石舞台の外周は5段ほどの階段状になっており、その階段には一部を除き無数の怪しく揺らめく蝋燭と、陶器の置物やアクセサリーなどの小物で埋め尽くされ、石舞台を不気味に照らす。その周囲には黒いローブに顔全体を覆う不気味な模様が描かれた仮面を被った信者達、50人ほどが石舞台の中心の方を向き、囲む様に静かに座っていた。

 その石舞台の中心にとぐろを巻いた禍々しい雰囲気の、大きな蛇をかたどった金属製の像が鎮座し、その大蛇の像の前には祭壇が設けられ、そこには簡素な服を着た虚な目をした男の子が横たわっている。その横には蛇を模した柄がついた質の良いロングソード添えられていた。

 先程から鳴っていた足音の主はその祭壇の前で止まり、恭しく跪いた、跪いたのは聖職者の様な格好をした男、その男は祭壇の上の男の子を気にかける事はなく金属製の大蛇の像に向けてこう告げた。


「フィジィ様、“器“の準備は滞りなく完了いたしました。いつでもお使い頂けます。捧げ物をお受け取りください」


「「「「「我らが全知全能の神よ、捧げ物をお受け取りください」」」」」「我らの願いを叶えたまえ」「我らの悲願を・・・」「あの忌まわしき神々に復讐を・・・」


 周囲の信者達も男の後に続くように座ったまま地面に両手をつけ頭を下げた。そしてついに怪しい儀式が始まる。信者達は静かに憎しみのこもった統一性のない呪文のようなものを口々に呟き始める。その声は徐々に大きくなりだすと、祭壇に飾られた大蛇の像の瞳が赤黒く怪しく光り、輪郭がボヤけたかと思うと2つに分かれ、黒く大きな影の蛇がぬるりっと像から出てきた。黒い大蛇は祭壇に横たわっていた男の子に視線をやる、その視線にもなんの反応も示さない男の子に、黒い大蛇はすぐに興味を失い、目の前で恭しく跪いている男に向かって細く長い先の割れた舌を出し、声にならないシューッシューッと音を出し話しかけた。だがその音とは別に頭に直接響く不思議な低い声が男には聞こえていた・・・


『・・・良くやった。これで、アレを奪う為の手立ては揃った。計画の決行の時は近い・・・』


「おぉっ、それではフィズィ様、自らあの忌まわしき神々に罰を下される日も近いと言う事ですな!」


 自身の計画の成果を満足げな様子で報告すると、ぬるりっと姿を現した主人から直々に、褒め言葉と共に己が主人から動く日が近いと宣言されたことで、自分の悲願を達させる日を今か今かと待ち侘びていた男は、大きな黒蛇に狂気を孕んだ笑顔と、喜びと期待をのせた眼差しを向ける。周囲の信者達は呪文の詠唱が早くなっていきヒートアップして、その信者達や周囲に並べられた無数の小物からドス黒いモヤが立ち上り、祭壇に横たわる男の子とロングソードに入っていく。


『・・・そうだ、あとはこの“神器“により多く、人の負の感情を染み込ませるのだ。さすれば、お前達の“悲願“も必ず達成される。・・・』


「我らの悲願が!おぉ、感謝申し上げます!・・・ですが、フィズィ様、不甲斐ない話ではありますが、“送還の儀式“を執り行う場所は特定できたのですが、計画の決行の要である“儀式“の日時は、教会やあの国の上層部の数人だけに知らされているようで、確かな情報は未だ特定できてはおりません」


 計画の実行日が近いと分かり喜んだのも束の間、その計画を成功させる為の重要な“送還の儀式“の日時が特定できていないと、自分の情報力の甘さを悔しげに語る。


『・・・よい、それはだいたい予想が付く』


「なんと!それは真でございますか⁉︎」


『あぁ、今日から5日以内に行われるであろう・・・』


「流石はフィズィ様!全てを見通しておられる!我らの全知全能の神よ!」


 黒い大蛇はどの様な方法かはわからないが、計画の実行日を予想する。その言葉に疑うこともなく盲目的に信じる男。それよりもこれから起こる、いや、自ら巻き起こす壮大な計画の成功を疑う事のなく、自信に満ちた笑みを浮かべ妄想していた。


『・・・ふっ、いつでも実行できるようにすぐに配下の者共を配置につかせよ。“儀式の場“である神殿は準備ができ次第、“儀式“の前日にはお前の手の者に知らせが入るはずだ。それまでにこちらの作業も怠るな、万全の備えで奴らの“儀式を妨害“するのだ。・・・・』


 そんな男を見て、黒い大蛇は心の奥底では嘲笑っていた、黒い大蛇とこの男は一緒に計画を進めてはいるが、最終的な目的は別々だからだ。黒い大蛇人だけでもできない事はない計画だが、そんな浅はかで傲慢な男でもいい使い道はあると思っている黒い大蛇は、自分の心内を巧妙に隠し新たな指示を出す。少しでも自分の目的の邪魔になるものを排除するために・・・


 信者達の唱える呪文が最高潮に達したのか、祭壇に横たわった男の子に黒いモヤが入らなくなって、ロングソードだけにモヤが集中して入り始めた。その様子を確認した黒い大蛇は、ニヤリと笑いその巨体を祭壇に近づけていく。


「はっ!畏まりました!」


『・・・失敗は許されぬ、この様な機会は一度きりだ・・・』


 そう言って、祭壇に横たわっていた男の子に溶け込むように消えていく、男は喜びに満ちた表情でその様子を見つめていた。少しすると男の子に反応があり瞬きをした、虚だった緑色の瞳が、一瞬赤黒く光ったかと思うとすぐに元の色に戻った。若干目つきが鋭くなった様な印象を受けるが、男の子は起き上がり自分の手を観察し、握ったり開いたりして、満足したのか目の前で跪いている男に視線を移し冷たくこう告げた・・・


「・・・我を失望させるなよ・・・」


「何に変えましても神命を遂行致します」


 そして、いつの間にか静まり返った空気の中、男は真剣な表情で再び恭しく頭を下げた・・・・





>=====<>=====<>=====<


  第三者 視点


ーーー・・・とある、重複した神域内・・・・


エンキネルウェ『・・・エネルギーの収束は順調、機材の正常な起動を確認した』


リトスティーナ『確認ありがとう、エンキネ。・・・これで、もう向こうにも近々“送還儀式“が行われる事がバレてる訳だけど、皆んなどう?何処か変な動きをしている国や地域はない?』


アナトフローラ『私が担当している隣国の“ズューウス“は今の所変わった動きはないわ』


オグマアレース『こちらの“ライヒスル“の方も今所ないな』


ホルセケル『“ヴェステ“も動きなしね』


クーベラクトリ『“イエロザーパト”もなしだ』


レゴンコシャル『“スマラクト大陸”方面もない』


エンキネルウェ『“シニストラ”も、反応無し』


リトスティーナ『そう、“ウェルセメンテ“国内も今の所動きはみられないわ。でも、奴らが今後、動き出す事は間違いないだろうから、油断せず監視を続けてちょうだい。いいわね?』


『『『『『『了解』』』』』』


月詠『ふむ、今、思ったがこれだけ見ると、どこかの大手企業のコールセンターか、インターネットカフェの様だな・・・』


天照『言い得て妙ですね・・・』


 今、この場所は“地球世界・アース“と、“宝球世界・ジェムシード“との次元の境に、神域を利用して設けられている空間。二つの世界を繋ぎ“勇者召喚“を行うため用意られることが目的とした場所。本来、正式な手続きを行なった“勇者召喚“なら、仁達はこの神域を通り神々とも接触する事なく“ジェムシード“に降り立つはずだった。今回は仁達を“送還“するためにこの空間を使用する。(正規の手続きで召喚した“勇者“が帰りたいと言った時もここを使う)

 ようはここがちゃんとした“勇者召喚“の儀式のシステムコントロールセンターという事だ。


 それを見て月詠と天照は自分達の管理している世界の風景と重ね、少し皮肉ったのだった。


リトスティーナ『もう、2人して、確かにパソコンの外面を見てるように見えるけえど、やってることは桁違いに高度な作業なんだからね!』


天照『ふふふっ、分かってますよ、ティーナちゃん。この風景を久しぶりに見てみると、文明や技術が進むと現世も神域に似てくるのねって思ってね。まぁ、まだ“アース“の現世ではホログラフ画面なんてできてませんけどね?』


 並べられた備え付けのデスクセットに座り、立体ホログラフの操作画面と睨み合っている、“ジャムシード“の神々を微笑ましそうに見ながらそう言う天照。


月詠『確か前回の“勇者召喚“は数十年前だ、その時に薄型のテレビ画面なんてなかったはずだ。だが、最近では技術が発展し、バーチャル世界への移行が進んでいるから、バーチャル世界ではホログラフなんて常識かもしれんがな・・・』


リトスティーナ『似てくるって、・・・そっちの世界は魔法がない分、技術が進んでるのはいいけど、その発想はどこから来てるんでしょうね?』


月詠『・・・確証はないが、死んだ魂が神界を通った後また生まれ変わった時にぼんやり覚えていたか、外宇宙からの干渉か、そのどちらかだろうな』


リトスティーナ『外宇宙って、他の生命体?いいのそれ?』


天照『まぁ、それは地球に害がなければいいと思ってますよ。外宇宙の者達もひっくるめて私達の世界の一員ですし』


 こんな風に月詠や天照達とリトスティーナが気安く会話している時、他の“ジェムシード“の神々は凄く緊張していた。何故なら天照や月詠は彼らからすれば大先輩の神々であり、自分達のようなペーペーの新人神が気安く話したりできる者ではないからだ。神としての格が違う。リトスティーナは彼らの少し後に“ジェムシード“と共に生まれた神なので気安い態度だが、他の神達は“ジェムシード“に人が多くなり始めた時に生まれた、存在し始めたばかり、まだ数千年といった所。神としては新人もいいとこ新人なのだ、尊敬できる先輩に久しぶりに会えて緊張するのは仕方ない事だったりする。

*リトスティーナはよく会うし親戚みたいなものなので皆んなきやすい感じで接している。彼女の性格もあって上下関係はなしとされいるので遠慮などはしていない。


月詠『皆、毎回世話になるな、それに今回は私達の世界のからの“転生者“が狙われていることで手間をかけてしまってすまない』


天照『私達も手伝えることはなんでもしますから、いつでも仰ってくださいね』


 と、申し訳なさそうな表情で“ジェムシード“の神々を気遣う2柱。


エンキネルウェ『い、いえ、毎回“勇者召喚“でお世話になっているのはこちらの方なのです。その度にお越しになっていただいで申し訳ないですわ』


アナトフローラ『え、ええ、そうですわ。アトリーちゃんの事も、私達はとても気に入ってますし。あの子がこの世界に来てくれた事で、こちらには多大な恩恵を受けていられているのですから、手間なんて思っていませんわ』


オグマアレース『そうです!姉君方はここでゆっくり見守っていただけるだけで心強いです!』


 格上の神々とは思えぬ優しい気遣いの言葉に、慌てた様子で答えるエンキネルウェ達、3柱の言葉に他の神々もウンウンッと、必死に頷く。


リトスティーナ『そうよ、いつもお世話になってるのはこっちだし、今回に至ってはあの“ズューウス“のくず貴族達が悪いんだもの、月詠達は無断で連れてこられた仁君達の件で怒ってもいいくらいよ。アトリーちゃんの件は思わぬ形で、こっちの長年の問題が解決できてラッキーって感じだから、気にしないで♪それに、邪神教の事は邪神自身がしでかした事だから、月詠達が謝る事じゃないわ。今回の“送還儀式“で捕獲して“次元神様“に突き出してやるんだから!』


 フンスッ!と手を握り力拳を作ってガッツポーズで気合を入れたリトスティーナ、他の神々も同じようにガッツポーズをして同意する。


天照『ふふっ、皆さん有り難う御座います。あ、でも、邪神の件は私達も手伝える事は多いですから、そちらの方は遠慮なさらないでくださいね?私達もそれなりに頭に来ていますので・・・うふふっ』


『『『『『『『・・・・・・・』』』』』』』


 この時、良い笑顔でそう言った天照を見た“ジェムシード“の神々は震えながら、“触らぬ神に祟りなし“、と言う日本のことわざを頭に刻み込んだのだった。


リトスティーナ(・・・こ、これは、邪神をボコる機会を邪魔すんなよってことかしら?“アース“の方でもあの邪神が色々としでかしていたみたいだから、相当怒ってんだろうな。向こうは人間にあまり干渉してはいけないって決まりがあるから、それを無視して色々アトリーちゃんの前世にちょっかいかけてた邪神のやらかしのせいで、あっちこっち歪みが生じて事後処理に追われたって言ってたし、ストレスも溜まってんだろうなぁ・・・(。-∀-))


月詠『まぁ、アトリーを囮にするのは心苦しいのだが・・・今回の“送還儀式“は、“ジェムシード“に入り込んだ邪神を誘い出すにはまたとないチャンスだ。アトリーの安全は我々が祝福を与えたあの“祭事服“をはじめ“色々“と手は打った。一番良いのは“送還儀式“前に邪神を捕らえることだが、相手は今までこの世界で逃げ続けたあの邪神だ、“送還儀式“が無事に終了するまでは何が起こるかはわからないからな、お互い油断せず世界の監視をしていこう』


『『『『『『『了解!』』』』』』』


 黒い一面を見せた天照とは打って変わって、月詠は今回の“送還儀式“を邪神捕縛のチャンスとして、両世界とアトリーの安寧のために神々に喝を入れて、その場を纏めるのだった・・・・


リトスティーナ(一応、私が“送還儀式“の総責任者なんだけどなぁ・・・)


 と、思っていたとか、いなかったとか・・・・


>ーーーーー<>ーーーーー<>ーーーーー<


 その頃、アトリーは・・・・・



 アトリー 視点


「それだ!それでいこう!それならコンプライアンス的にも僕の良心的にも負担が少ない!」


 と、何かをメタ発言と共に決めたようだった・・・・

















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