174話 “公開実技授業“当日〈後処理の時間〉
どうも、僕です。今ちょっと拗ねたような、寂しいような、悔しいような、でも、嬉しいような、恥ずかしいような、複雑怪奇な心境です。
盛大に泣いた後、僕は父様に抱っこされて慰められながら場所を移動する事に、今は両親とソル、仁達を連れて学園内の迎賓館の一室に来ている。僕の残りの家族全員もここに到着していた。ロシュ君やイネオス達はご両親が迎えに来たので、屋外運動場の出入り口で別れ、他の学生や保護者達も今日は家に帰らせれて、各国の要人達は事情説明のため迎賓館の大広間に集められている。(あ、そう言えば、王女様は結界に閉じ込めたまま置いて来ちゃったΣ('◉⌓◉’)・・・誰か回収してるよね、・・・きっと、多分・・・(:-∀-))
(むぅ、この年になっても父様に抱っこされて慰められるなんて・・・恥ずかしい(-᷅_-᷄๑)・・・)
「あの、父様、そろそろ下ろして頂けませんか?」
室内に着いてもなお、抱っこされたままの状態に耐えかねた僕が、とうとう下ろしてくれと言った。
父様「ん?父様の抱っこは嫌になったかい?母様に代わってもらう?」
ニコニコ笑顔でそう言ったのは、椅子に座った自分の膝に、横向きで乗せた状態の僕のお腹周りをガッチリホールドしている父様・・・
母様「あら、私に来ますか?」
母様もニコニコ笑顔で両手を広げ受け入れ体制は万全のようだ・・・
「えっ?いや、その、そうじゃなくてですね。地面に下ろして頂きたいと・・・・」モジモジ
(流石にソルや仁達からの視線が痛くなってきたし( ・∇・)いや、最初から痛かったんだが・・・)
指をモジモジと絡めながら下ろしてくれるのを待っていると・・・
「「「「「ぐふっ!」」」」」
どこからか、苦しむ声が・・・
「?」(?・・・あぁ、彩ちゃん達か・・・それにしては多かったような?(。-∀-))
また彩ちゃんのツボにハマったんだろうと分かったが数は合わない、まぁ、似たような現象だろうと気にしなかった。
*後の数人は自分の兄弟達だったりする・・・
父様「そんなに下りたいかい?」
「は、はい、流石に恥ずかしいので・・・」
尻窄みに理由を話すと・・・
父様「下ろしてあげてもいいけど、どうしてさっき倒れたんだい?その理由を話してくれたら膝から下ろしてあげるよ」ニッコリッ
「っ・・・・・・・」
(ひぇっ!そうだ忘れてた!ど、どうしよう、父様達に知らせていないスキル使ったせいで倒れたなんて言ったら、ま、また心配させて、迷惑をかけちゃう・・・)
ニッコリ笑顔で条件をつけてきた父様に、何も言えず黙った僕は冷や汗が止まらない。
父様「アトリー、「ビクッ!ご、ごめんなさい!」っ・・・アトリー、私はアトリーに謝らせたくて言ってるのではないんだよ?」ぎゅっ
反射的に誤ってしまった僕に、父様は僕の頭を抱き抱えながら、とても優しい声で宥めてくれた。
父様「アトリー、君が目の前で倒れた事で私達は凄く驚いた。そして凄く心配したんだよ。何が原因かも分からず、ただ苦しむアトリーに何もできないまま見ていなければならない、そんな、もどかしく、悔しい事はもう嫌なんだ。アトリー、君が私達に何か秘密にしている事がたくさんあるのは分かっているよ。「っ!」それが最善だと思って秘密にしている事も理解している。
でもね、アトリー、君がその秘密を打ち明けることができないのは、私達が信用できないと思われているからかと思ってしまう。それがとても、悲しいし、悔しい、「ぁっ・・・」君の、アトリーの全てを打ち明けてほしいとは言わない、でも、体調不良の原因が何かだけでも分かっていたなら、私達はもっと冷静に対処できたと思うんだよ、そうならないように気をつける事だってできる。
だから、今、アトリーに直接聞くよ。そして、できればさっきアトリーが泣いた理由も理解したい。こんな欲張りな父親ではあるけど、アトリーの事を大事に思っている、・・・どんな秘密を持っていようとも、私は、“アトリーの事を見放したり、恐れたりしないと誓うよ、だから怖がらなくていいんだよ“」
「えっ?・・・ぼ、僕・・・そ、そんな、事?・・・」
(・・・・ぼ、僕は無意識に父様達に否定されるのが怖かったのか?・・・・僕は、そんな事を気にした事はなかったはず・・・えっ?じゃあ何で、何で秘密にしたんだっけ?・・・)
優しく頭を撫でながら僕に話しかける父様の話の中で、父様も自分と同じ寂しさや悔しさを感じていた事が分かり、その気持ちが共感できた。そして父様の最後の一言で今まで無意識に目を背けてきた、自分の中の恐れを突き付けられ、これまで誤魔化してきた心がパニックを起こしかけていた。
イネオス達の兄弟に恐れられても、恐るのは無理はない、自分は規格外で自分が普通じゃない事を理解している、でも自分はそんな事は気にしない、そう言い放った時だってある。自覚していた、王女様に「化け物っ!」って罵られても、傷付いたりしてない。
“・・・そう、思ってきた。・・・・“
(な、何で?僕は何も恐れたりしてなかった、誰に恐れられても気にしない、最悪、家族に恐れられ、嫌悪されて、居心地が悪くなっても、1人で生きていく手立てはいくらでもあると分かっているから、家を出る覚悟もあった、僕は見た目は子供でも中身は自活して来た45過ぎの大人の精神があるんだから・・・僕は、…僕は大人なんだから・・・そんな事、平気だって、・・・“思ってた“、・・・・“本当に思ってただけ“、だった?・・・・)
今までの自分の言葉は全てただの言い訳に過ぎず、強がっていただけだったと気付いた。だが気付いたことも今までの強がっていた感情が認めたくないと言ってくる。
自分の気持ちの整理が上手くいかず、黙ったまま困惑して呆然とする僕の頭を、母様や父様は優しく撫でて静かに待ってくれている。
(僕はなんて“馬鹿“なんだ・・・あれだけのチート能力、元々隠し通せる訳ないのに、思い上がって、変に隠して、結局、自分が普通じゃない事がバレてて、家族を悲しませるなんて・・・・“本当、馬鹿“だ僕は・・・)
夜月『アトリー・・・、私が“加護“をバラしたから・・・すまない』「ぐぅ」
天華『アトリー、すみません、それに私達が隠した方がいいと提案したばかりに・・・』「きゅー」
(天華、・・・ううん、今までの全て、僕が悪いんだ、僕が自分で隠す事を選んだんだから)
夜月&天華『『アトリー・・・』』
1人で落ち込んで1人で反省していると、夜月が遠慮がちに近寄ってきて、パーティーで本来の“加護“をバラしたことを謝罪し、天華が僕の膝の上に乗って、頭を下げながらスキルを隠した件を自分達が悪いと謝ってきた。でも、今回のいや、全ての決定の判断は自分がしたことで誰のせいにするつもりも無いと断言した。
ジュール『ねぇ、アトリー、・・・アトリーはもう私達の事、嫌いになった?』「くぅーん・・・」
僕の膝を突きながら悲しそうな鳴き声でそう聞いてくるジュール。
(えっ?な、何で!?)
ジュール『だって、私達がアトリーを狙っていた宗教団体を秘密にしてたの怒ってたでしょう?それで私達のこと嫌いになったんじゃ無いかなって・・・』
(あっ、・・・・その事は確かに教えてくれなくて、寂しかったし、悔しいと思ったよ。でも、今、父様の話を聞いて、僕も同じ事を父様達にしてたんだって気付いた。そんな事をしてる僕がジュール達に文句を言える立場じゃないと思う。それに僕はジュール達が大好きだから、それぐらいじゃ嫌いになったりしないよ♪まぁ、今も少し悲しいけどね、僕の事を思って黙ってたんだって理解できるからさ・・・)
ジュール達『『『アトリー』』』
ジュールの言葉で今までの自分の行動にやっとけじめがついた気がした。自分は誰かの為に嘘を、隠し事をしたんじゃない、臆病で、人を信用できなくて、自分が傷つきたくなくて、家族に隠し事をしたんだって・・・・
でも、ジュール達や父様達は違う、僕の事を本当に思って、隠し事をした。
僕の動機と根本的に違った。僕は自分本位だった。それが今、はっきりと自覚した、僕は馬鹿で、卑怯で愚かな人間だった・・・
(そうか、そうだよね、ごめんね、皆んな、さっきは責めるような言い方をして。・・・僕は自己中の卑怯者だから、皆んなを責める資格なんて元からなかったんだから・・・僕は最低だ・・・むしろ僕の方が嫌われていてもしょうがない・・・もし時間が戻せるのなら、さっき、皆んなを責めた僕を全力でぶん殴りたい・・・)
ジュール『えっ⁉︎ア、アトリー⁉︎ど、どうしたの⁉︎そこまでするほどのことじゃないよ⁉︎』
天華『あ、・・・アトリー、自分を殴りたいなんて、私達はそんなこと望んでませんよ、私達はアトリーの安全と願いが一番ですから・・・アトリー?』(様子がおかしいですね・・・)
どん底まで自己嫌悪で落ち込み、顔を青くし俯く僕を逆に励まし始めるジュールと天華・・・
「王女様のいう通り、僕が皆んなに好かれてるのは神様達の“加護“のおかげなんだ、元々僕が誰かに好かれているなんて、幻想だったんだ。それを自信満々で好かれている自信があるなんんて、・・・なんて、痛いことを・・・・僕は、自意識過剰で、臆病で、家族を騙して、迷惑かけて、役立たずで、愚かで・・・あぁ、今からでも穴を掘って埋まりたい・・・」ぶつぶつっ
急に気持ちがどんどん沈んでいく、暗く、卑屈に、水底に沈むように・・・自分には何の価値もなかったあの頃の時のように。全て上手くいかず、誰からにも必要とされていなかった、あの時のように。社会的不適合者・・・そう言われて仕事を辞めさせられたあの頃のように・・・・
ジュール&天華『『っ、アトリー⁉︎』』 夜月『アトリー!アトリーっ!』「がぅ!がぅっ!」 ソル「アトリー様⁉︎」 家族「「「「「ア、アトリー?」」」」」 仁達「「「アトリー君?」」」
思考が沈みゆく中、様子のおかしい僕を呼ぶ声が聞こえる。そのタイミングで、各国の要人達との話し合いが終わった王族達が、僕達のいる部屋に入ってきた。
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第三者 視点
各国の要人達に向けた説明会、もとい、苦情&釘刺しを終えた王族一同が、デューキス公爵家一行が待機している一室に入って行った時・・・・
前国王「ん?どうした?」
最初に入ってきた前国王の“ロブルートズ・レイ・ウェルセメンテ“が室内の異様な空気を感じ取り、軽く眉を顰め聞いてきた。後ろから次々入ってくる王族達もそれを敏感に感じ取り、室内を見まわしアトリーや聖獣達の様子がおかしいことに気付いた。
前国王の言葉に弟であるアトリーの祖父“インディ・ノブル・デューキス“と、祖母“アメトリア・ノブル・デューキス“が、席から立ち上がり王族達を出迎えた。
アトリー祖父「兄上、各国の要人達との会議、お疲れ様です。今、ちょっと、込み入って・・・いや、私達にも理由は分からないんですが、アトリーの様子が変でして・・・」チラッ
そう言って、父親である“アイオラト“の膝の上で俯き、ひたすら何かを呟くアメトリンの姿に視線を向けた。周りでは聖獣達が心配そうに鳴きながらアメトリンを鼻先で突いたり、足に擦り寄ったりしていた。もちろん、家族も背中を擦ったり、頬や頭を撫でたりしている。
その異様な光景にさらに眉を顰めた前国王。
前国王「むぅ、どうしたというのだ?さっきまで元気そうにしていたではないか」
アトリー祖父「・・・ああ、それがですね兄上・・・・」
前国王は“ヴェステ王国第1王女“の協力者達が捕縛されて、爆発の危険がさった直後に会場から離れており、アメトリンがここに来るまで、倒れたことや泣いていた事を知らなかった。それに気付いたアトリーの祖父がここまでの事情をかいつまんで話した。
前国王「ふむ、そうか、あの後すぐにアトリーが倒れたと・・・、ん?同じ頃に捕縛した者達が何やら騒いでいたな・・・関係があるかもしれんな・・・」
サフィアス王「だが、その後に急に泣き出した事と今の状態にも関係あるだろうか?アトリーが何をしたかが分からない事にはどうにも・・・」
前王妃「それが知りたくて、ラト君達が理由を聞いたんでしょう?その前まではまだアトリー君は普通に会話していたそうじゃない、今の状態とは関係はないのでは?」
ローズ王妃「私もそうだと思いますわ、アトリー君は自分の秘密を話すか迷って黙り込んだんでしょう?今も迷ってるんじゃないのかしら?」
王太子「そうでしょうか?先程から聞こえてくる言葉が自分を卑下する言葉ばかりで、凄く不穏な気がします。それに意識が我々だけでなくご家族にも向いていないのは変です」
ローズ王妃「・・・そうね、いつものアトリー君らしくないわ、目もなんだが虚だし・・・」
第二王子「そうですね、いつものアメトリン君ならすぐに可愛い笑顔で迎入れて、礼儀正しく挨拶してくれますし・・・」
王弟「・・・・・・・」
用意されていた席に座り、事情を聞いた王族達が次々アトリーを心配し、様子がおかしい原因を探ろうと会話する。王弟の“ブルージル・ノブル・ドゥーカ“は深く何かを考えている様子で、顎に手を置き沈黙していた・・・
その様子を家族や仁達も何か予兆は無かったか、と思い出しながら考え込んでいる中、ソルだけはアトリーの感情の起伏を感じていた、倒れた原因にも思い当たる節はあるのだが、それを本人が話していないのに自分が喋る訳にもいかない、と思っていた。それに今のアトリーの感情は酷く沈んでいて自分には表現が難しかった。ソルはアトリーの前世を知らないので、どうして、そんなに落ち込むのかも理由が分からない。ソルは、ただ感じる感情だけでは原因の解明には役に立たないと、歯を食いしばる。
第三王子「ふんっ、また騒動を起こして、さらに人の気を引こうなんて、“迷惑“な奴だ!」
ピクッ
ローズ王妃「ロズ!なんて事をいうの⁉︎アメトリン君に謝りなさい!貴方は昼食の時も態度が悪かったでしょう!」
第三王子「事実を言って何が悪いんです⁉︎“神々のご加護“があるからと思い上がって、こんな騒動を引き起こし、方々に“迷惑“を掛けたのは紛れもない事実でしょう!!」
アトリーを心配する声が多い中、ただ1人だけ、不機嫌そうにアトリーに向かって嫌味を言い放った、第三王子の“ロズクオツ・レイ・ウェルセメンテ“。彼は常日頃から何かとアトリーを嫌っており、今回の件も自分の家族や各国の要人達を巻き込み“迷惑“をかけていると思っていた。
「・・・“めいわく“・・・・」ボソッ
第三王子の言葉に反応しそう呟くアトリー。
第三王子「ふんっ!当たり前だろう!最初は“勇者候補“を狙った国の工作員の仕業かと思って、衛兵隊だけでなく騎士団や軍部まで出てくる騒ぎにしたというのに、いざ蓋を開ければ、全てあのヴェステの王女が起こした、ただのチンケな復讐劇だった!それも、元々はお前がズューウスの王子を貶した事が発端だと言うではないか!
お前がそのような事をしなければ、今このような事にはならなかった!“神々の加護“に胡座を描き、自惚れた結果がこの有様だ!自身の家族だけではなく国まで巻き込んだ事件まで発展させる、“はた迷惑な奴“以外の何者でもない!!」
サフィアス王「ロズ!黙らないか!」
アトリーの呟きを拾った第三王子は激しくアトリーを酷評する。その言い方に流石のサフィアス王が自分の子を嗜める。室内にいる全員から厳しい目で見られている中、第三王子は何を勘違いしたのか目を輝かせた。
ガタンッ!
第三王子「いいえ!父上!僕はだまりません!こいつは今回のことは自分が上手くやると言って大見栄を切ったくせに、それが自分が引き起こした、ただの私怨だった事を有耶無耶にするために、わざと侵入者を1人逃して、あたかも他に狙いがあったと装いたかっただけではないですか?おおかたその思惑が自分の思い通りにいかなくて駄々を捏ねているんです!そんな、“はた迷惑な奴“を甘やかしてはダメですよ!!」
第三王子は親であるサフィアス王の言葉も聞かず立ち上がり、意気揚々と自分の持論を振り翳し、アトリーを甘ったれた“はた迷惑な奴“と決めつけた・・・・
シュンッ! ドコンッ!! 「うぐっ!!」
勝ち誇った様に言い切った第三王子、更なる追い討ちをかけようとした、その時・・・・何かが第三王子を巻き込み壁へ追突した。